「ウォレスとグルミット/ベーカリー街の悪夢」-ニック・パーク監督

愛すべき名コンビ、ウォレスとグルミットが帰ってきました!

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「ウォレスとグルミット/ベーカリー街の悪夢」(原題『Wallace and Gromit in 'A Matter of Loaf and Death'』)(2008年TV放映)
監督:Nick Park
脚本:Nick Park&Bob Baker
製作総指揮:Miles Bullough&Peter Lord&David Sproxton
製作:Steve Pegram
撮影:Dave Alex Riddett
編集:David McCormick
美術:Matt Perry
音楽:Julian Nott
声の出演:Peter Sallis(Wallace)
Sally Lindsay(Piella)
Melissa Collier(Fluffles)
Sarah Laborde(Bake O Lite Singer)

愛すべき名コンビ、珍発明家のウォレスと、その忠実なる愛犬にして心優しく、頭脳明晰な名犬グルミット。2人は力をあわせ、これまでにも数々のビジネスを立ち上げてきたが、今回は新たにパン業界に挑戦していた。今や2人の家は、小麦を挽くための巨大な装置をオートメーションで動かす歯車や、パン粉をこねるボウルやロボット・アームで埋め尽くされている。オーブンからは常にパンの焼ける香ばしい匂いが漂い、屋根に取り付けられた昔ながらの風車は、風を受けてゆっくりと回り続ける。まさしく2人が目指す“伝統的なパン作り”を象徴していて頼もしい。
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ビジネスは順調で、彼らは毎朝焼きたてのパンを街中に配達していた。朝も早くからグルミットはパン作りに精を出しているが、朝寝坊のウォレスはいつも“新早起きマシーン”でグルミットに叩き起こされる始末だ。グルミットは、慌しいパン配達前のひととき、新聞に目を通していた。そこには、ここ1年間でこの界隈に住む12人の優れたパン職人が次々と失踪しているニュースが報じられていた。自分たちの焼くパンもなかなかの好評であることから、グルミットはふと不安に襲われる。しかしながら、相変わらず能天気なウォレスは、心配性の相棒の懸念など気にも留めない。
今朝も2人はパン配達車に乗り込み、焼き立てパンを町の人々に配っていた。そこへ、自転車に乗った美しいご婦人が通りかかる。焼きたてパンを思わせる真っ白のドレスと白い肌、香ばしいパンの焼き色を思わせる麦藁帽子と金髪、大きな瞳に官能的な唇の美女。自転車の前のかごには、彼女に似つかわしく、ふわふわした可愛らしいプードルが乗せられている。ウォレスとグルミットの運転する車とすれ違い様、それはエレガントに挨拶をしたご婦人であったが、自転車のブレーキが壊れ、彼女はプードル共々坂道を猛スピードで転げ落ちていく。異変を感じたウォレスとグルミットは、彼女たちが哀れ動物園のワニの口の中へダイブする寸前、これを救い出した。ご婦人は感激し、自らをピエッラ・ベイクウェルと名乗った。彼女はその昔、パンのコマーシャルに出演していたほどの有名な美女で、今も尚熱狂的なパン好きであった。ウォレスは一目でピエッラに恋をしてしまう。プードルの名前はフラッフルで、大きな目が愛くるしい女の子であったが、なぜか何かに怯えたような表情をしている。ピエッラがウォレスに妙に馴れ馴れしく接することと、フラッフルの暗い様子にグルミットは本能的な警戒心を抱く。しかし恋に目を曇らされたウォレスは、まるで、かつてピエッラがCMで乗っていた気球のように、ふわふわと頼りない状態に陥ってしまうのだ。
寝ても覚めてもピエッラのことが頭から離れないウォレス。今まで以上にパン作りに熱中しなくなった。1人でパン屋を切り盛りして大忙しのグルミット。そんな彼らの家に、ある日ピエッラが訪ねてきた。先だって助けてもらったお礼がしたいというのだ。グルミットは、ピエッラに小突かれて恐る恐るウォレスの足元に擦り寄るフラッフルの様子を冷静に見つめていた。まるで、主人であるピエッラに無理強いされているようだ。グルミットの懸念を他所に、ウォレスは可愛いプードルの姿に目を細め、喜んで彼女たちを家に招き入れるのだった。
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それからというもの、ピエッラとフラッフルは、ウォレスとグルミットの家に入り浸るようになる。ある日、グルミットが1人でパン作りから配達までこなしてへとへとになって帰宅すると、家の中はがらりと模様替えされていて、あちこちに少女趣味の薔薇や小物が並べ立てられていた。グルミットは驚き、自室に入ると、そこも彼の持ち物は全て持ち出されていて、むせ返るような薔薇の花が飾られているのだった。グルミットの意思を無視するピエッラのずうずうしさと、それに全く気づかないウォレスの腑抜けぶりに、さしものグルミットも堪忍袋の緒が切れる。薔薇を投げ捨てようとしたグルミットだったが、フラッフルが怯えながらもグルミットの持ち物をこっそり返してくれたことに怒りを納める。
ピエッラたちが帰った後、彼女が忘れ物をしていることに気づいたウォレスは、グルミットに家まで届けるよう命じる。しぶしぶピエッラの家まで向かったグルミットは、屋敷の玄関が開いたままであることに驚き、人気の感じられない階段の上に不審な影を見出す。音を立てないよう、寝室らしき2階の部屋に上がったグルミットは、そこに恐るべきものを発見した。ピエッラと失踪した12人のパン職人を結びつける動かぬ証拠である。ウォレスの身に危険が迫っている。早く知らせに帰らなければ。しかし運悪く、そこへ、ベッドに入りにきたピエッラとフラッフルが現れる。慌てて証拠の日記を抱え、天井のシャンデリアに蜘蛛よろしく張り付くグルミット。息を殺すグルミットの真下で、何も気づいていないピエッラは満足げにいびきをかき始めた。
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翌朝。眠気と疲労と腕のしびれが頂点に達したグルミットは、ついにピエッラのベッドの上に落ちる。だが女主人は既に留守だった。慌てたグルミットは大急ぎで自宅に戻る。果たして自宅では、暢気なウォレスがピエッラとデートを楽しんでいた。ウォレスはグルミットにピエッラと婚約したことを告げる。青くなるグルミットが、あの忌まわしい日記を持っていることに気づいたピエッラは、さりげなくグルミットを威嚇し、その隙に日記を暖炉にくべて燃やしてしまった。これで、グルミットがウォレスにピエッラの正体を知らせる手段がなくなった。それでもグルミットは、金属探知機を作り、ピエッラが家にやってくるたびにチェックを行って対抗するが、抜け目なくウォレスの絶対の信頼を勝ち得ているピエッラ相手では、分が悪い。ついにグルミットは、ピエッラの卑怯な策略によって鎖でつながれ、口に噛み付き防止用のマスクをはめられることになった。果たしてグルミットは、死の危機に瀕している主人を救うことが出来るのだろうか…。

ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢 [DVD]
ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
2009-11-27

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近所のfnacで、ウォレスとグルミットの短編シリーズ(いずれも上映時間は25分から30分)3本に加え、新作1編が加わったDVDが販売されていました。シリーズの初期作品「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」「ウォレスとグルミット/危機一髪!」は私もDVDで所持しているので、正直なところ、購入するかどうか随分迷いましたねえ。日本でも、新作「ベーカリー街の悪夢」が7月には劇場公開され、日本語字幕つきDVDも既に発売されています。しかし、ウォレスとグルミットのシリーズは台詞も簡潔ですし、声はイギリス人が当てていますから、耳のみの聞き取りのストレスもかなり軽減されます。フランス版(音声:英語とフランス語、字幕:フランス語のみ)DVDで、思い切って新作を観てみることにしました。

初期3作品で確立していた今シリーズの基本設定は、そのまま踏襲された形になっています。ウォレスは相変わらずおまぬけでお人よしなクセにわがままで(苦笑)。やはり、しっかり者の忠犬グルミットのヘルプがなければ、彼は生きていけない状態なんですねえ。でも、今回もまた、以前の作品で繰り返されてきたモチーフであるところの“惚れっぽい性格”が禍いを為し、彼とグルミットを絶体絶命の危機に追い込んでしまうのです。ウォレスが恋をするたびにグルミットとの友情の絆が危うくなり、グルミットが災難に見舞われるパターンも不変。それでも、ウォレスが自ら招いてしまう事件の火消しに、グルミットは走り回る羽目になります。
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そんなグルミットとウォレスの関係に、今回は少し変化が加えられていました。従来では、異性に恋することでストーリーを動かすのはウォレスのみの役割だったのですが、今作ではグルミットにも異性(めすのワンちゃんですが・笑)と触れ合うシーンがあります。怪しげなバックグラウンドを持ち、なぜかウォレスに急接近する女ピエッラの飼い犬フラッフルですね。お目々パッチリの可愛らしいこのプードルの様子がいわくありげなのは、実写映画顔負けの細やかな心理描写と、サスペンス(今回はミステリーの要素が若干比重が大きいか)を盛り上げる優れた演出によって明らか。グルミットは、たぶん主人にないがしろにされつつも、これに懸命に仕えようとする彼女にシンパシーを覚えるわけです。そして、主人の罪を知りながら自らの良心の呵責に耐えている様子の彼女に、庇護精神を掻き立てられた、と。フラッフルの方でも、似たような境遇のグルミットを好ましく思います。彼らの結びつきは、後にピエッラが卑劣な殺人者であることが暴かれ、その本性をむき出しにしてウォレスとグルミットに迫ってきた際、大いに役立つことになるのですね。

今シリーズのクオリティを支えるサスペンス演出の秀逸さは、謎の女ピエッラの描写でも遺憾なく発揮されています。これまでの作品群と違い、ピエッラはヒロインというよりヒールのキャラクター。パンのCMに出演していた頃の妖精の様な面影は今はなく、腹に一物抱えた人間特有のぎらついたまなざしが加齢と相まって異様です。そんな彼女が、ウォレスに近づくためにシナを作り、自分の正体に気づいた邪魔なグルミットを遠ざけるために画策する様子は、シリーズ中最も恐怖を感じるポイントでしょうね。見た目は飄々とした表情のクレイの人形であるのに、やっていることは妙にリアルというか、キャラが女性なだけに生々しい印象も受けました。今作を観ていて当初感じた違和感のほぼ全ては、このピエッラの性格付けにあると思った次第です。これまでならば、ファンタジー風味なアレンジで薄まっていたリアリティが、今回は現実にもありそうな展開であるために、グロテスクさを増していたのでしょうかね。彼女と、ウォレス&グルミット&フラッフル同盟(ただし、ウォレスは今回もほとんど役に立たず・笑)との戦いが始まるクライマックスは、文字通り命がけの攻防戦。今シリーズならではの、3次元的空間と小道具を最大限有効に用いたハラハラドキドキなシーンの連続で、大げさでなく手に汗握ります。ぜひこの部分の醍醐味は、実際にご覧になって楽しんでいただきたいところですね。そして最後の決着は、なんとゲスト出演である女性2人にゆだねられるという捻り技。彼女たちの愛憎関係もシーンの背後に見え隠れするので、この辺りは生臭かったですなあ(笑)。生臭いといえば、実は今作のオチのつけかたも、今までになくグロテスクです。ストーリー初期の段階で示された伏線が最後に生きてくるのですが、哀れピエッラは…といった具合(笑)。長編「チキン・ラン」でも、卵を産めなくなった雌鳥が女主人によって捕まえられ、次のカットでは丸焼きになっているという描写がありましたが、それに似たブラックな雰囲気ですね。

そして、シリーズの大きな魅力であるところの、大小様々のガジェット類の目にも楽しい仕掛けは今作でも健在。自動パン粉挽きマシーンや、改良を加えられた自動お目覚めマシーンなど、何の意味があるのか皆目見当もつかない歯車が家中にひしめいている様子は、メカ好きならずとも大いに笑え、かつワクワクすることでしょう。
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今作は、2009年度Annie賞では短編アニメーション部門を制し、同じく2009年度BAFTA賞でも最優秀短編アニメーション賞を受賞しました。日本では2009年7月18日から全国順次劇場公開となり、ニック・パーク監督自身も来日を果たしました。世界中にクレイアニメの魅力を再認識させた偉大なシリーズの健在振りを、ぜひ皆さんもご自分の目で確かめてくださいね。


ウォレスとグルミット 20周年記念DVD-BOX
ポニーキャニオン
2009-07-15

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ウォレスとグルミットのシリーズが誕生してちょうど20年経ちます。それを記念して、最新作「ベーカリー街の悪夢」劇場公開と併せた形でDVD-BOXが発売されるそうですよ。過去に発表された短編3作に加え、未公開映像を収録した特典ディスクも
含めた、計4枚組になる模様です。

●収録内容
「ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー」(本編23分)
「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」(本編29分)
「ウォレスとグルミット、危機一髪!」(本編31分)
・特典映像DISC(未公開映像)

こちらは2009年7月15日に発売済みです。


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