House of M

アクセスカウンタ

zoom RSS フランクに語ると映画「フランクFrank」はフランクの映画じゃなかったのよ。

<<   作成日時 : 2015/03/14 19:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

……誤解の無いように強調しておきますが、「FRANK -フランク- Frank」は、可笑しくて哀しくて…というドラメディ作品としては、英国映画らしい味わい(正確にはアイルランド作品)が濃厚でクセになる小品でした。個人的には好きな部類の作品です。


こりゃあ気のせいではありませんよ。最近、役者さんが映画の中で実際に歌って演奏し、そしてそれが意外や上手いじゃん!と観客の驚きと共感と感動を誘導するような作品が増えています。私は救い様のない映画バカで、マニアックな音楽ばかり選ぶ変態音楽好きなので、この“音楽映画(Not ミュージカル映画)”の静かなブームには喜びを隠せませんですね。


画像

だいぶ前に、マイケル・ファスベンダーことファス男がフランク・サイドボトムというケッタイな被り物で有名になったミュージシャンの映画に主演するというニュースを当館内でご紹介したことがありました。英国では知られたコメディアン/ミュージシャン/アーティストだったフランクも、日本じゃ無名。なので、フランクというアルターエゴを生み出したミュージシャン、クリス・シーヴィーの略歴もひっそりと掲載しておいたんですわね。下記のリンク記事の一番下のもの(マイケル・ファスベンダー in 「Frank」!)が、その記事に該当します。


当館内の「フランク Frank」関連記事:

ついに覚醒する芸人魂―マイケル・ファスベンダー Michael Fassbender

'Frank' at Sundance!―ファスの『Frank』サンダンス映画祭で初お披露目。

マイケル・ファスベンダー in 「Frank」!!


画像

そして、Ladies & Gentlemen、ここ日本でもついに「フランク Frank」が実際に劇場公開されてしまったのでありますよ(笑)。だいぶ前にね。

私はおそらくこれまでのファス男映画の中では、この「フランク Frank」の公開を最も楽しみにしていました。

画像

…んが、それをもってしても、ホンマに劇場公開されるとは思いもよりませんでしたけどね、正直なとこ(笑)。共演がマギー・ジレンハール、「スター・ウォーズ Star Wars」ニュー・サーガにも格好良く登場する予定の売れっ子ドーナル・グリーソン君(パパンは愛すべきじゃがいも名優ブレンダン・グリーソン)だし、タイミングが実に良かったんでしょうね。

画像

こういう、“共演者に恵まれる”運というのもね、【ファス男強運伝説】の裏付けとなることだと思いますよ。【】で強調してみましたけどね、ええ。今思い付きで勝手に命名した伝説ですけどね、ええ。

画像

ファス男が、映画本編の最後までケッタイな被り物で顔を隠したまま、シャワーシーンはあれども積極的に裸を見せるわけでもなく、ダッサイ服もちゃんと着たままで(日曜日のお父さん仕様のシャツ裾はズボンの中にイン)演技するということで話題になったドラメディ「フランク Frank」ですが。
日本でも既に、多くの映画バカどもや、英国俳優ファンのレディ達がご覧になったことだろうと思いますが。
英国俳優だけではなく、英国映画や英国音楽、英国の文化全般が大好きだというハイセンスな女性なら、ぶっちゃけファス男はどーでもよくても、かなりの割合の方がご覧になって下さったんじゃないかなーと睨んでおりますが。

ごめんなさい!白状します!ワシ、音楽世界の片隅で肩を寄せ合って生きる孤独でダメダメな人間を扱ったドラメディとしての映画「フランク Frank」は、思いのほか後味が苦々しいわ痛々しいわ、英国らしいシニカルな小品で良い作品だと思うのよ。好みは分かれるでしょうけども。でも、フランク・サイドボトム/クリス・シーヴィーの映画でもなんでもなかったという意味では、この作品はちょっと期待外れでござったよ。残念じゃのぅ。

画像

こんなことならね、いっそのこと、クリス・シーヴィーという才能豊かなミュージシャン/アーティスト(素顔はなかなかのハンサムさん)が、何故に“フランク・サイドボトム”なる不気味なビジュアルのアルターエゴ(英国にお住まいのある女性ファンは、子供の頃にフランクをテレビ番組でうっかり見てしまい、以来トラウマになったと告白してくれましたよ…)を生み出さねばならなかったのか、クリスの複雑な内面を追っていくストレートな伝記映画として作ってもよかったんじゃないかと思うのじゃよ。それでも、絵的には充分ぶっとんだ面白い映画になったと思うよ(笑)。素材が元からぶっとんでるからね(笑)。まあしかし、相変わらず伝記映画大流行りの現在、今後もおそらくこの「フランク Frank」のように、映画のモデルになった実在の人物から得たインスピレーションを基にして、全くのフィクションを作るというパターンの作品が製作され続けていくんでしょうね。

画像

そのあたりのモヤモヤが、私にとっては残念だなあと思う部分です。映画の方のストーリーは、かつて本物のフランク・サイドボトムのバンドでキーボードを担当し、レコーディングにも参加した経験のある作家ジョン・ロンスン(イギリスのジャーナリスト。「ヤギと男と男と壁と The Men Who Stare at Goats」(2009年)というタイトルで映画にもなった「実録・アメリカ超能力部隊」の著者でもある)が書いた新聞用の小さな記事をベースにしているとはいえ、ほとんどはフィクション。新聞記事に書かれていた、人里離れたコテージで1年間缶詰になって行われた風変わりなレコーディングの模様は、映画の中でも再現されていましたが、脚本には、フランクの特異なビジュアルとその背景だけしか引用されていないという印象を受けました。“被り物をした天才ミュージシャン”というフランクのビジュアルが欲しかっただけなのか?しかも、フランク自身にとって“フランク”というアルターエゴとの関係って、常人には理解し難い共依存関係だと思うのですが、今作では“少年期からの精神疾患が原因でした”、でチョン。そりゃないぜ、ベイベー。ただ、主人公ジョンやバンドのマネージャー、ドンが憧れていた、フランクが持つ“神性”にしても、紐解けば、実は特別でも何でもないことなんだよ、というメッセージに繋げたかったのでしょうかね。

画像

映画の中の“フランク”のキャラの造形は、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソン等、頓狂なエピソードを持つ天才肌のミュージシャン達から採取したエッセンスをミックスしたもの。今作のテーマの一つが“本物(の才能)”と“偽物(の才能もどき)”の残酷なまでの対比にあるので、“フランク”という存在をある種の不可侵な“本物”の象徴とした解釈は、間違っていないと思います。いや、却って、体裁を“クリス・シーヴィーの伝記映画”にしてしまうと、そのあたりの対比がうまく描けなかったかもしれませんね。

「シェフ三ツ星フードトラック始めました Chef」でも書いたように、ツイッターをはじめとするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)バーチャル世界では、フォロワーの数が増えれば増えるほど、ユーザーは見当違いの優越感を抱いてしまいがち。“自分はこんなにたくさんの人たちから支持されている!凄いんだ!”ってさ。いるでしょ?そういうユーザー。しかしそれは大間違いであり、単なる幻覚なんですよ。だからこそ、きちんと地に足をつけていられるように、SNSとは慎重に付き合わなければならないわけでね。

フランク・サイドボトム/クリス・シーヴィーが活躍した時代にはSNSなどありませんでしたが、もしフランクの時代にSNSが存在していたとしたら、彼ならそれをどのように利用したでしょうか?あるいは、個人がSNS経由で情報発信する今の時代に、クリス・シーヴィーが生きていたら、彼はアルターエゴをどのように演出し、彼はまた大衆にどのように消費されたのだろうという興味はあります。それが、この映画のそもそもの出発点だったんじゃないかと思う程ですよ。だから、フランクという非凡を際立たせるための対比として、悲しいほど普通、泣きたいほど凡才なジョンに、凡人のための魔法のアイテムSNSを使わせたわけです。映画の後半で、YouTubeやツイッターを駆使してバンドの宣伝に努めるようになる凡人ジョンは、自身には何の才覚もないのに、SNSでの知名度の拡大で己がスペシャルだと勘違いするようになります。それはとりもなおさず、哀れな私ら一般ピープルの無様な姿の象徴であり、結局この作品は、今の時代の浅薄な“ソーシャル(『何がソーシャルだ、笑わせんな』の意味)”を皮肉っているのです。実は今作初見時、残念な一般ピープルの1人である私にとって、映画の嘲笑っぷりがあまりに痛く凡人ハートに突き刺さり、結構辛いモンがありました。皆さんはいかがでした?

しかし二度目に見た時は、選民意識丸出し、フランクの右腕はアタシよ的なテルミン奏者にしても、英語をまるでしゃべろうとしないタカビーなフランス人にしても、いつもジョンを小馬鹿にしている無口なドラム女にしても、結局は社会にうまく適合できなくて、怖くて震えている可哀想な人間に過ぎないことが分かりました。その証拠に、主軸フランクを失った彼らの演奏の、何とシケたこと。どこの素人バンドだよ。彼らも所詮は、フランクという本物を囲んで初めて機能する連中だったわけです。

画像

フランクを今の社会における“本物の才能”のシンボルにすることで、昨今のエンターテイメント業界ではなくてはならない存在になったSNSの欺瞞と矛盾がくっきり浮き上がりました。SNSは、芸術の門戸を広く一般ピープルに対して開きましたが、その実、ホンモノとニセモノを容赦なく選別し、ニセモノを淘汰する流れが一層早くなった気もしますね。そして、晴れてホンモノと認定されても、SNSによって情報が世界中で瞬時に共有され、大衆に飽きられるスピードも一段と早くなってしまいました。SNSの功罪の“罪”の方ですな。芸術も瞬時に解体されて“情報”化され、SNS内でグルグルたらい回しにされ、最初の刺激が治まるとすぐ飽きられポイ捨て。折角芸術の間口が広がっても、肝心の受け皿の方がホンモノですら生き残れない麻痺社会になったのでは、あんまり意味がないと思いますね、個人的には。その辺りのジレンマも、今作では、フランク達のバンドがネット上では完全なイロモノ、お笑い扱いだったことで苦々しく描かれていました。

画像

フランク達にとって音楽は成功するための道具ではなく、この社会の中で自分達の居場所を確保するための手段でした。厳しい世の中で生きていくため、音楽をせずにはいられない。呼吸するように。フランク個人にとって、張りぼてのデカい頭がそうであったように。だからこそ、彼らはSNSを通じて偶然転がってきた商業的成功のチャンスにも懐疑的だったわけです。成功がてめえのアイデンティティの証明ではないんですよ。紆余曲折ありましたが、最終的にそれを正しく理解できた凡人ジョンは、本当にラッキーでした。彼自身もそこから一歩足を踏み出して前進することができますもんね。ジョンと同じように元バンドのキーボーディストで、才能が無い自分に絶望しながらも未練がましくフランクにくっついていた“もう1人の凡人”ドンとジョンの違いはそこ。もう1人の凡人ドンの方は、フランクを崇拝するあまり、フランクの真の姿を理解するどころか“フランクになれない自分”すら全く理解できず、許せませんでした。…泣けてきますねえ。

画像

ガタガタ文句も書いてきましたが、この作品の最も素晴らしい部分であるフランク達のバンド、ソロンフォルブスの音楽を生み出したスティーヴン・レニックスStephen Lennicksには拍手喝采しましょうね。かなりヘンテコなんだけど、親しみやすいメロディーを隠し持った愛すべきポップソングたち。気がつけば、妙なリズムと不思議な旋律に身体を委ねてしまいます。奇妙奇天烈さとポピュラーソングの間に、奇跡的に保たれているバランス感覚ですね。それが良く分かるのは、作曲に悩むジョンにフランクがアドバイスするシーン。ソファーの布地から1本だけぴょこっと飛び出した毛糸を題材に(笑)、即興で曲を作るあの名シーンです。ユニークさと親しみやすさの共存っちゅうのは、口で言うほど簡単なこっちゃありません。それを見事にやってのけ、バンドメンバーを演じる俳優達に特訓を施して実際に演奏までさせた今作の音楽は、値千金だと思うのですよ。

FRANK フランク [DVD]
東宝
2015-03-18

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by FRANK フランク [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

「FRANK -フランク- Frank」(2014年)
監督:レニー・アブラハムソン
製作:エド・ギニー&デヴィッド・バロン&スティーヴィー・リー
製作総指揮:テッサ・ロス他。
原作:ジョン・ロンソン
脚本:ジョン・ロンソン&ピーター・ストローハン
撮影:ジェームズ・マザー
プロダクションデザイン:リチャード・バロック
衣装デザイン:スージー・ハーマン
編集:ネイサン・ヌーゲント
音楽:スティーヴン・レニックス
出演:ドーナル・グリーソン(ジョン)
マイケル・ファスベンダー(フランク)
マギー・ギレンホール(クララ)
スクート・マクネイリー(マネージャー、ドン)
フランソワ・シヴィル(バラク)
カーラ・アザール(ナナ)他。

…いまさら繰り返す必要もないでしょうが念のため。最後の最後までフランク頭を脱がないファス男は、あんなケッタイな被り物をしていても、やっぱりファスが演技しているんだということがにじみ出てくるような名/迷演だったと思います。考えてみたら、これってかなりすごいことではないでしょうか。実際には演者の顔の表情が見えなくても、透けて見えるような気にさせられているわけで、つまりは、ファス男の役者としてのカリスマ性が一層強くなっていることを意味します。このなんとも奇妙なコメディ作品の肝を、ファス男がしっかり担っていたことが分かって感心しました。いい役者になってきてるよね。一癖あるバンドメンバーたちも、個性的かつキャラが立ちまくった役者さんによって演じられ、アンサンブル演技も楽しかったです。

画像

今作が上映されていた映画館では、こんな手の込んだフランク人形がお出迎えしてくれましたな、そういえば(笑)。このフランク人形とセルフィー撮ってる方がいらっしゃったわ。私も一枚撮っとけばよかったな。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い
フランクに語ると映画「フランクFrank」はフランクの映画じゃなかったのよ。 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる