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zoom RSS 原点(お家)に帰ろう―第40回LA映画批評家協会賞発表。

<<   作成日時 : 2014/12/09 13:11   >>

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ロサンジェルス映画批評家協会(The Los Angeles Film Critics Association)が、現地時間で12月7日の日曜日に、第40回目を数えるロサンジェルス映画批評家協会賞の受賞者、受賞作品を発表しました。この結果が、先日ここでも触れたNY映画批評家協会賞(2014 New York Film Critics Circle Awards)の受賞結果同様、個人的にとても興味深く、また嬉しいものでもあったので、急遽ここに記録しておきますね。



>第40回ロサンジェルス映画批評家協会賞 The 40th Annual Los Angeles Film Critics Awards 受賞リスト Winners List


・作品賞 BEST PICTURE

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「6才のボクが、大人になるまで。 Boyhood」

オスカーのチョイスが実際どうなるのかは、神のみぞ知る。しかしながら、特にアメリカの映画批評家たちが、リンクレイター監督のこの人生と映画への深い愛情に満ちた作品に賞を与えたくなる気持ちは、私には痛いほど理解できます。

私たちの社会では、莫大なカネと技術の粋を結集した最新鋭の食品添加物を山のように付加した、安価でお手軽で値段の割りに美味な食べ物が広く流通しています。時間と手間をかけて根気強く豊かな自然の恵みを集めた自然食は、確かに貴重かもしれないけれど高価でもあり、庶民にとってはなかなか手の出ないものになってしまいますね。だから、一般社会には食品添加物でこしらえた代替品の方が多く出回るわけです。
高い品質を保持し続けることは至難の業であり、悪貨はいずれ良貨を駆逐してしまいますが、映画の世界もこれ同様でしょう。カネと技術をかけ、大量生産システムを導入されたまがいものは、ベルトコンベアに乗せられて次から次へと休みなく生産されていきます。そんな大量生産品に毒された身体には、人の手で一つ一つ丁寧に作られた本物は、金貨や宝石よりも貴重なのです。



・監督賞 BEST DIRECTOR

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リチャード・リンクレイター Richard Linklater 「6才のボクが、大人になるまで。 Boyhood」

この際なので白状すると、シネフィルの方々が大絶賛されていた、リンクレイター監督人生3部作「恋人までの距離(ディスタンス) Before Sunrise」 (1995年)、「ビフォア・サンセット Before Sunset」(2004年)、「ビフォア・ミッドナイト Before Midnight」(2013年)は、さして好きではありません。私はケツの青いひよっこで精神年齢5才のガキなので、ロック馬鹿ダメダメ人間礼賛映画「スクール・オブ・ロック The School of Rock」(2003年)を大喜びで取り上げているぐらいですから(笑)。

正直な話、この方のフィルムメーカーとしての特徴というか、個性というものがイマイチ茫洋としていて掴みどころが無いのも確かなのですよね。ウチのクローネンバーグ師匠みたいに、一目見てああ変態だと分かるタイプではないですし(笑)。
将来への期待と不安に揺れつつ、アルコールとドラッグ、ダンスにロックンロールで青春を謳歌する若者の一夜の狂騒を描いたかと思えば(Alright, alright, alright,「バッド・チューニング Dazed and Confused」(1993年))、フィリップ・K・ディック原作の観念型SF作品「暗闇のスキャナー」をアニメ仕立てにしてみたり(「スキャナー・ダークリー A Scanner Darkly」(2006年))…。人生のひと時を切り取ってみせた生々しいドラマ作品をインディペンデントで撮る映画監督なのかなあと思った矢先に、メジャー・スタジオでちゃっかりファミリー向けの娯楽作品を撮られたりすると、私としてはどのように判断すべきか分からんようになるわけですよ(笑)。
ま、リンクレイター監督って人はきっと、観客をこんな風に煙に巻きながら、レッテル貼りやカテゴライズから逃れようとしているのでしょうよ。フットワークの軽さ、そして選び取る題材への自由さは、リンクレイター監督をして、まさしく今この瞬間をカメラに収めようとする意味で、多分に“今の時代のヌーヴェル・ヴァーグ”的なクリエイターにしていると思われます。



・主演男優賞 BEST ACTOR

'LOCKE' Movie Trailer (Tom Hardy - 2014)


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トム・ハーディ Tom Hardy 「Locke」

ウチの師匠が新境地を開拓したスリラー「イースタン・プロミス Eastern Promises」等の脚本家として知られるスティーヴン・ナイト Steven Knightの初メガホン作品「Locke」。

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仕事も軌道に乗り、家族との関係も良好な青年Ivan Lockeは、間近に仕事上の大きな転機を控えていました。そんなある夜、車に乗り込んだ彼の元に一本の電話がかかってきます。その電話は、これまで苦労して築き上げてきたIvan青年の人生を根底から覆し、めちゃめちゃにしてしまうものでした…。

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上映時間80分少々。登場人物はIvan青年のみ。物語の舞台はIvan青年の車の中のみ。たった一本の電話によって、たった一つの決断によって、1人の人間の人生が脆くも崩れてしまう悲劇を、完全なるワン・シチュエーションで最後まで見せ切るスリラー作品です。最近作では「ゼロ・グラヴィティー Gravity」が、全編ほぼサンドラ・ブロックの1人芝居であり、2010年の「127時間 127 Hours」(ダニー・ボイル監督)もジェームズ・フランコの1人芝居といって過言ではありませんでした。しかしこの「Locke」に至っては、最初から最後まで車の中だけで進行するお話で、しかも登場人物は車の運転中というように、登場人物の動きと背景が極端に制限されている特異な状況です。この狭い空間の中で、人1人の人生が如何にして狂い、崩れていったかというダイナミックなドラマを描いてしまうのですから、これはもう、映画の成功の9割方が演技する俳優の力量に託されているようなものでしょう。俳優さんとしては挑戦し甲斐のある役柄、作品だったと思います。筋肉とタフなイメージが先行しがちなハーディの、演技派としての真骨頂を見せる作品で評価されて、本当に良かったですよね。



・主演女優賞 BEST ACTRESS

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パトリシア・アークェット Patricia Arquette 「6才のボクが、大人になるまで。 Boyhood」

この受賞は、今作自体へのリスペクト込みでパトリシアに捧げられたものだと思います。



・助演男優賞 SUPPORTING ACTOR

J.K.シモンズ J.K. Simmons 「Whiplash」



・助演女優賞 SUPPORTING ACTRESS

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アガタ・クレシャ Agata Kulesza 「イーダ Ida」

そして!私が結果を見た途端思わず絶叫した、ウルトラ・スーパー・サプライズ受賞がこれです!アガタ・クレシャ!!!この素晴らしき女優による渾身の演技がアメリカで評価され、私は本当に嬉しゅうございます!まだ記事を書いていないので、早く書かなくちゃ。ポーランドからやってきた傑作「イーダ Ida」で私の涙腺を破壊したこのアガタは、もう1人のアガタ(・チュシェブホブスカ Agata Trzebuchowska)演じる修道女見習いアンナ/イーダと共に、彼女達の封印されし苦悶の過去を探る旅に出るヴァンダを演じます。イーダは自分の悲痛な過去を知らず、静謐な湖面のような少女でしたが、ヴァンダは全てを承知の上でイーダをその恐ろしい過去から遠ざけようとしていました。聖女イーダの肖像は、イーダを含めたユダヤ人の苦痛の歴史全てを目撃してきた、ヴァンダの苦悩の上に成り立つものです。対照的な2人の女によって浮き彫りになる、ポーランドの光と過去の闇は、そのまま全ての人間が持つ業の深さをも示唆するものであったことが分かります。…うーん、この作品については、また後日詳しく。聖女イーダが自分自身の過去と向き合うのを影から支えたヴァンダを、アガタ・クレシャは喜怒哀楽の激しい感情のうねりによって体現しました。…あー、それにしてもよかった、彼女の受賞は本当に嬉しい選出でした。



・脚本賞 BEST SCREENPLAY

ウェス・アンダーソン Wes Anderson 「グランド・ブダペスト・ホテル The Grand Budapest Hotel」



・アニメーション映画 BEST ANIMATION

「かぐや姫の物語 The Tale of Princess Kaguya」



・外国語映画賞 Foreign Language Film

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「イーダ Ida」



・ドキュメンタリー映画 Documentary

「Citizenfour」



・新人賞 New Generation

Ava DuVernay 「Selma」



・編集賞 Film Editing

サンドラ・アデア Sandra Adair 「6才のボクが、大人になるまで。 Boyhood」

12年間に及ぶ子供の成長の記録を、この作品が観客を飽きさせることなく最後まで魅せてくれたのは、編集の巧みさがあってこそのこと。今作の編集には敬意を払いたいと思います。



・撮影賞 Cinematography

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エマニュエル・ルベツキ Emmanuel Lubezki 「バードマン Birdman」

今の時代の名撮影監督、ルベツキ。「ゼロ・グラヴィティー Gravity」もそうでしたが、とにかくこの方のカメラは奥行きがとんでもなく深い。平面の画面が、恐ろしいほど際立った3次元に早変わりします。長回しを得意とするフィルム・メーカーと組むと、彼自身の持つ流麗かつ視点の広いダイナミックなカメラワークが映えますね。…というかね、「バードマン Birdman」が日本でも公開されることになったのはめでたいですが、もうちょっと早く公開してくれてもいいんですよ、ホントに(笑)。



・プロダクション・デザイン賞 Production Design

アダム・ストッコーセン 「グランド・ブダペスト・ホテル The Grand Budapest Hotel」

これは順当なチョイスだと思いますよ。ウェス・アンダーソン監督の作品はどれも、箱庭的というか細部まで緻密に作りこまれた独特の“ザ・アンダーソン・ワールド”の中で展開する御伽噺だと考えているので、小道具や背景など、作品世界の作り込みの完璧さに毎回感心させられます。



・音楽賞 Music/Score

ジョニー・グリーンウッド Jonny Greenwood 「Inherent Vice」
ミカ・レヴィ Mica Levi 「アンダー・ザ・スキン 種の捕食 Under the Skin」(同点受賞)

ジョニー・グリーンウッド、ポール・トーマス・アンダーソン監督との新たなるコラボレート作品(「Inherent Vice」日本公開はまだ決まらないのですか、そこんとこどうなんでしょうか、早く公開しましょうよ)で見事受賞。ダニー・エルフマン(ティム・バートン監督とのコラボで有名になった)と同じようなケースで、彼もすっかり映画界の人になっちゃいましたね。



・ダグラス・E・エドワーズ賞(インディペンデントあるいは実験的な映像作品に対して) Douglas E. Edwards Independent/Experimental Film/Video

ウォルター・ルーベン Walter Reuben 「The David Whiting Story」



・生涯功労賞 Career Achievement

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ジーナ・ローランズ Gena Rowlands

“インディペンデント映画”の父、故ジョン・カサヴェテス監督の長年のパートナーだったジーナ・ローランズ。カサヴェテス監督との間にもうけた息子さんのニック、娘さんのゾーイも父親と同じ映画監督の道を進み、志半ばで逝ってしまった偉大なフィルム・メーカーの遺志を継いでいます。その様子を見守りつつ、カサヴェテス亡き後もマイペースに女優業を続けてきたローランズには、もっともっと映画界で活躍していただきたいですね。彼女ももう84歳になるそうですが、どうかいつまでもお元気で、バリバリ現役の最高にクールな格好良い女を演じてくださいませ。私のベリー・ベスト・オブ・ジーナ・ローランズは、もうこれしか考えられません、「グロリア Gloria」の最高にクールでハードボイルドな、そしてあの映画「レオン Leon」の原型でもあるグロリアの画像を貼って、リスペクトとさせていただきます。



今回の受賞リスト全体を眺めてみると、“本当に良い映画とは何か”、“小手先のアイデアや技術に頼り切るのではなく、映画の基本形をもう一度見直そうじゃないか”という意思が明確に働いているように思えてなりません。なんとなく、行き着くところまで行き着いた映画界が、原点回帰しようとしているのかなあと感じますね。


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