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zoom RSS 「カッコーの巣の上で One Flew Over the Cuckoo's Nest」 Part 1

<<   作成日時 : 2014/03/09 20:54   >>

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“体制”とそれに反抗する一個人との戦いを、精神病院における非人道的な管理体制と、それに隷属させられる患者とを対比させることにより象徴的に描いた、アメリカン・ニューシネマ最後の傑作。まずはストーリーのご紹介から。

しかしこの映画「カッコーの巣の上で」には、ホロコーストによって家族を喪い、大戦後の故国を覆った全体主義を辛くも生き延びたミロス・フォアマン監督からの、未来に向けての警鐘も暗示されている。社会の秩序が混乱を来たし、一国家の“管理体制”である政府と、私達国民との間に異様な緊張が張り詰めるとき、この作品に含まれる暗喩は、私達にとってただの寓話以上の意味を持つだろう。


“Vintery, mintery, cutery, corn,
Apple seed and apple thorn,
Wire, briar, limber lock
Three geese in a flock
One flew East
One flew West
And one flew over the cuckoo’s nest”―マザー・グースの歌より


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「カッコーの巣の上で One Flew Over the Cuckoo's Nest」(1975年製作)
監督:ミロス・フォアマン
脚本:ローレンス・ホーベン&ボー・ゴールドマン
原作:ケン・キージー『カッコウの巣の上で』
製作:ソウル・ゼインツ&マイケル・ダグラス
音楽:ジャック・ニッチェ
撮影:ハスケル・ウェクスラー
ビル・バトラー(クレジットなし)
編集:シェルドン・カーン&リンジー・クリングマン&リチャード・チュウ
出演:ジャック・ニコルソン(ランドル・パトリック・マクマーフィー)
ルイーズ・フレッチャー(看護婦長ラチェッド)
マイケル・ベリーマン(エリス)
ウィリアム・レッドフィールド(ハーディング)
ブラッド・ドゥーリフ(ビリー・ビビット)
クリストファー・ロイド(テイバー)
ダニー・デヴィート(マーティーニ)
ヴィンセント・スキャヴェリ(フレドリクソン)
スキャットマン・クローザース(タークル)
シドニー・ラシック(チャーリー・チェズウィック)
ウィル・サンプソン(チーフ・ブロムデン)
マーヤ・スモール(キャンディ)

1963年9月、オレゴン州立精神病院に1人の男がやってきた。彼はランドル・P・マクマーフィ。実は未成年者と不適切な関係に及んだとして御用になり、刑務所内で強制労働を課せられていたのだが、それを逃れるために何度もトラブルを起こしていた。困り果てた刑務所側は、ひとまずマクマーフィを精神病院に移し、スパイビー医師に彼の精神鑑定を行うよう依頼してきた。マクマーフィが気狂いを装っているだけなのか、それとも本当に医療の助けが必要なのかどうかを確かめるために。

スパイビー医師の病院では、婦長ラチェッドの厳格な指導と管理と圧力の下、全ての患者達が決められた日課に合わせて機械的に動くだけの無気力な毎日を送っていた。比較的病状が軽く、“正常な人間”とコミュニケーションが可能な患者は、ラチェッド婦長の行うグループ・セラピー、ディスカッション療法に参加することが義務付けられている。マクマーフィ自身は、56日間の拘留期間を何とかここで穏便に済ませ、後は自由の身になる目論見でいるが、何しろ初めて見る精神病院の異様な世界に驚きを隠せない。
インテリだが、哲学をこじらせて現実を上手く把握することができないハーディング、最も若いが内気で怖がりで吃音症で自殺未遂を起こしたビリー、のっぽで威勢はいいが、頭はよくなくすぐキレるテイバー、いつもニコニコしているが状況を何も把握していない小男のマーティーニ、いつも眠そうな表情のフレドリクソン、ハーディングのカード仲間だが、しょっちゅうヘマをして友人のハーディングを怒らせているチェズウィック等々。夜、カード・テーブルを囲んでいるときには、皆それなりに個性的な面々だが、なにしろラチェッド婦長が怖いので彼女の前では羊のようにおとなしくなる。一日中病棟内に流れるBGMの音量を下げてもらうことすら、“規則に反するから”という理屈で許可しないラチェッドの方針に、短気なマクマーフィは早速戦闘意欲を掻き立てられる。

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ディスカッション療法に参加したマクマーフィは、今ワールド・シリーズ開催中なのだから、テレビでその中継を見せて欲しいと発言する。そのためには、ラチェッドが決めた日課を変更しなければならない。長い時間をかけてやっと日課をこなせるようになった重症患者もいるのだから、急な日課の変更は良くないと断じたラチェッドだったが、民主主義として多数決をとることになった。ワールド・シリーズのための日課の変更を希望した患者は、マクマーフィとテイバー、チェズウィックのみ。皆、いざとなるとラチェッドの顔色をうかがってしまうのだ。ラチェッドの専制は予想以上に手ごわい。その夜、マクマーフィは、皆の前で浴室の水飲み台を持ち上げて窓をブチ破り、奇跡を起こしてやると嘯いたが、当然、そんなに簡単に持ち上がるわけもない。マクマーフィは、どうにもならない苛立ちをスパイビー医師との面談にぶつけ、ラチェッドを尊大で嘘つきの女狐だと罵る。

しかし、外からやってきたマクマーフィの規則破り、破天荒な行動は病院内に少しずつ変化を起こしていく。耳も聞こえず、一言もしゃべれないインディアンの患者チーフに、マクマーフィは懸命に話しかけ、ボールを持たせてバスケのやりかたをコーチする。それまでは、誰に何を話しかけられても一切無反応だったチーフが、驚くべきことに初めてマクマーフィの言葉に従って身体を動かした。また、翌日のディスカッションの場では、自殺未遂の原因をラチェッドに追求されて悲しげにうなだれるビリーを見て、チェズウィックが初めてラチェッドのやり方に疑問を呈する。そして、ワールド・シリーズを皆で楽しく観戦するのも治療になるのではと提案。マクマーフィの行動で患者の皆が本来持っていた活力を取り戻しつつあったのだ。

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再度、ワールド・シリーズ観戦のための日課の変更に賛成か否かの多数決をとる。ディスカッションに参加できる患者9人は全員賛成したが、ラチェッドは、他にも完全痴呆の慢性患者が9人いるので賛成が過半数に達しなかったとみなす。マクマーフィは意地になり、慢性患者1人1人を口説いて回ってチーフの賛同を得たが、ラチェッドは冷ややかに時間切れを告げてマクマーフィの要望を却下した。完全に頭にきたマクマーフィは、何も映っていないテレビの画面を見ながら、今現在行われているであろう試合を想像しつつ、架空の実況中継をやり始めた。まるで本物の試合が目の前で行われているかのような、迫真の“実況中継ごっこ”を見た他の患者達は、何がなんだか分からないまま、演技で熱狂するマクマーフィにつられて大騒ぎし始める。マクマーフィが“ホームランだぞ!”と叫べば、患者達も一緒になってやんやの大歓声を上げる。今やマクマーフィは、この病棟の患者達の心を完全に掴んでいた。その様子を、ラチェッドはナースステーションから冷ややかに見つめていた。

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軽度の患者達は、決まった曜日にバスに乗って外にレクリエーションに出る。そこで悪知恵を働かせたマクマーフィは、チーフに協力させて単身病院の鉄柵を乗り越え外に脱出、仲間達が全員バスに乗り込んだのを見届けてバスをハイジャックした。目的地は小さな港である。途中でマクマーフィのダチである娼婦のキャンディも拾い、一行は一芝居をうって漁船を拝借し、大海原に出る。チェズウィックはおっかなびっくり船の舵取りをまかされ、その他の連中は危なっかしい手つきで釣り針に餌をつける。マクマーフィは、いつかスパイビー医師が彼に自慢げに見せた魚以上の大物を釣り上げろと一行に渇を入れる。その間に自分はキャンディとしけこもうという算段だったが、精神病を患う連中がおとなしく釣竿を見つめているわけはなく、船はたちまちパニックに陥ってしまう。しかし、一行はその後次々と大物を釣り上げ、皆心からの笑顔で意気揚々と港に戻ってくる。尤も、その頃には病院から警察に通報され、ヘリコプターと怖い顔をした病院の職員たちが待ち構えていたのであるが。

スパイビー医師、ラチェッド婦長はじめ、医師たちが集まってマクマーフィの身柄をどうするか議論した。皆、マクマーフィの身勝手さやキレやすさには手を焼いていた。スパイビーには、マクマーフィは単に危険であるだけで精神異常の兆候は見えなかったが、刑務所側もトラブルメーカーであるマクマーフィの再度受け入れを渋っていた。ラチェッドは、彼を刑務所へ戻すことも他の病院に移すことも本人にとって良くないと断じる。このまま病院に残して根気よく治療を続ければ、彼を救えるだろうと発言した。それはつまり、マクマーフィを無期限に病院に留め置くことを意味していた。しかし、ラチェッドこそマクマーフィを最もよく理解している人物だと信じるスパイビーは、全て彼女の要求通りにしたのである。

ラチェッドの専制の呪縛から逃れつつあった患者達は、自分の意思で行動するようになる。岸に打ち上げられた瀕死の魚のような無気力な表情だった患者達が、職員と共にバスケの試合ができるまでに快活にもなった。その日の試合で大活躍したのは、なんと、大男のチーフ。あの物言わぬ男がシュートを決め、仲間からの歓声が上がると、彼の顔にも笑顔が生まれるようになった。ところが、患者達がプールで水泳中のこと、マクマーフィは看護人の1人から、56日間の拘留期限が過ぎても病院側の判断一つで永久に病院に閉じ込められると聞き、怒り狂う。そう、ここはあくまでも病院であって刑務所ではないからだ。

ディスカッションで、マクマーフィのように病院に強制的に入れられている患者はわずかであり、皆自分の意思で入院していることを知ったマクマーフィは、唖然とする。ビリーなど、ガールフレンドと一緒にデートを繰り返しているような年齢だ。何が悲しくて自らこんな地獄に入りたがるのだ。マクマーフィは、怒りの矛先を、自分に対して悪巧みを働いたに違いないラチェッドに向ける。彼の怒りが伝染したか、チェズウィックまでが口角泡を飛ばしながら、タバコの配給をやめて自分のタバコを返してくれとラチェッドに歯向かった。ハーディングとの賭けカードで、タバコを巻き上げられていたことをすっかり忘れて。ディスカッションの秩序が乱されて激怒したラチェッドが怒鳴り始め、ハーディングのタバコが足に当たったテイバーは、その熱さに突如暴れだし、チェズウィックがかんしゃくを起こして場はめちゃくちゃになる。

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騒ぎを止めに入って看護人と殴り合いになったマクマーフィと、そのマクマーフィを助けようと思わず看護人を怪力で吹っ飛ばしたチーフ、それにチェズウィックの3名は懲罰を受けることになった。電気ショック療法である。反抗的な患者を懲らしめるために黙認されていた、もちろん今では違法とされる療法だが、頭にすさまじい激痛を加えられる。さすがに不安になったマクマーフィはチーフとガムを噛む。そのときはっきり「ありがとう」と礼を言ったチーフは、驚くマクマーフィに、実は耳も聞こえるししゃべることもできると秘密を打ち明けた。チーフはこの病院に入院して初めて他人に心を開いたのだ。マクマーフィはチーフを大いに気に入り、合法的に病院を出ることができないなら、こちらから脱走するまでだと、2人で脱走する計画を立てる。警備のゆるいこの病院なら簡単に成功するはずだ。

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しばらくはラチェッドの前でしおらしくしていたマクマーフィだったが、ある晩、チーフに脱走決行を告げた。しかしチーフは、自分はまだ“小さい人間”だから病院から出る勇気がないのだと脱走を渋る。かつての父親のように“でかい人間”になるまでは無理だと。マクマーフィは仕方なく、クリスマスの晩、外にいる仲間に、酒と友人の娼婦二人と車を用意させた。夜間の警備人タークルを抱き込んで“お別れ乱痴気パーティ”を病院内で開き、そのままトンズらしようという魂胆だ。普段からラチェッド婦長らに抑圧されて鬱屈を抱える患者達は、このときとばかり大いに羽目を外す。ビリーは、漁船を拝借して魚釣りに出かけたときから、マクマーフィの女友達キャンディに恋していた。いざマクマーフィが出発する段になってようよう、キャンディに惚れていることを告白。ビリーの兄貴分のような気でいたマクマーフィは、早くこんな場所からおさらばしたい気持ちを抑え、キャンディに一晩だけビリーの相手をしてやるよう頼み込んだ。カナダに逃げて落ち着いたら、ビリーに連絡先を教えてやればいい。彼は自分の意思で退院できるのだから。

羽目を外しすぎた面々はくたびれてそのまま眠りこけ、翌朝、ラチェッド婦長や看護人たちが出勤してくるまで誰も目を覚まさなかった。職員達は、めちゃくちゃに荒れ果てた病院内の惨状を目の当たりにして呆然とする。何があっても冷静沈着、冷徹な姿勢を乱さないラチェッドまでが、神聖なる自らの職場を荒らされ、逆上してしまう程に。窓の鍵を手に持ったまま眠ってしまっていたマクマーフィとチーフは焦る。何とか隙を見つけて逃げ出さねば。しかし、ビリーとキャンディがまだベッドの中だ!

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ラチェッドの金切り声に飛び起き、慌てて皆の前に出てきたビリーは、ようやく“一人前”になった自信で、いつもの酷い吃音まで消えていた。ところが、患者達から歓声を受けて、ラチェッドに反抗的な言葉を返したビリーに、ラチェッドは、そもそもの彼の自殺未遂の元凶である彼の実母を持ち出した。ビリーの母親に、彼のしでかしたふしだらな事の次第を知らせるとすさまじい剣幕で言い募られると、ビリーの態度は豹変。いつも以上にどもりながら、自分はマクマーフィとキャンディに無理強いされてベッドに入ったのだと必死に弁解し、母親にだけは知らせてくれるなと泣き付いた。しかしラチェッドは聞く耳を持たず、ビリーを院長室に放り込む。その直後、ビリーは自らの首をガラスの破片で切り裂いて事切れた。恋した女の子と一緒に一夜を過ごした翌朝、彼は自ら死を選んだのだ。この騒ぎで、マクマーフィとチーフに逃げるチャンスが生まれるが、ビリーを自死に追い詰めて平然としているラチェッドに、マクマーフィはついに堪忍袋の緒を切る。彼女の首に手をかけると、渾身の力を込めて締め上げた。あと少しでラチェッドを地獄送りにできるところでマクマーフィは看護人に取り押さえられ、そのままどこかへ連れ去られて皆の前から姿を消した。

院内に、ラチェッド婦長の理想とする穏やかな空間が戻ってきた。彼女は首にギプスを巻いた姿でナースステーションにつめている。患者達は表向き、ラチェッドに従順に薬を飲んで決められた日課をこなしていたが、影ではマクマーフィ仕込みの賭けカードで、相変わらずタバコをのやり取りをしていた。マクマーフィの姿は見えなくなっても、彼が引き起こした“変化”は、消えずに患者達の中に生き続けていた。小声でマクマーフィの“その後”を噂しあう患者達。看護人をぶん殴って逃亡したと言う者もいれば、2階で羊のようにおとなしくなったと言う者もいる。チーフは1人心を痛めながらマクマーフィの帰りを待っていた。
ある夜のこと、そのマクマーフィが、2人の看護人に付き添われ、おぼつかない足取りで病室に戻ってくる。マクマーフィはされるがままベッドに横たわり、足に拘束具をつけられ横になった。看護人が去っていくまで息を潜めていたチーフは、安堵しながらマクマーフィに語りかけた。彼が必ず帰ってくると信じて待っていたこと、今ようやく自分自身が“でかい”気持ちになってきたこと、ここから外に出る覚悟が出来たこと、カナダにある先祖の土地に行きたいこと…。だがマクマーフィの表情には何らの変化も現れなかった。チーフがその肩を揺り動かしても無反応。それもそのはず、マクマーフィの額にはロボトミー手術を施した傷跡があった。チーフは“自由な魂”を失って“小さく”なってしまった親友を抱きしめる。…彼をこのままここに置いてはいかない。約束したのだ、一緒に自由になると。

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さあ、出かけよう。チーフはマクマーフィの顔に枕を押し当て、渾身の力を込める。親友の魂が肉体の枷から解き放たれ、彼が行きたいと願っていた場所にいけるように。そしてかつて親友が持ち上げられなかった水飲み台に腕をかけると、すさまじい力でそれを持ち上げた。水道管から水が噴出す。親友はこれを持ち上げて奇跡を起こすと言っていた。今は彼の代わりに自分が奇跡を起こす。チーフは、床からひっぺがした水飲み台を病室の窓に叩きつけ、ぶち破った。夜が明けようとしている。端がうっすらと白み始めた藍色の空の下、先祖の大地を求めて走り続けるチーフの後姿が徐々に小さくなっていった。


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「カッコーの巣の上で One Flew Over the Cuckoo's Nest」感想はこちら(Part 2)

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