House of M

アクセスカウンタ

更新情報

zoom RSS 第66回カンヌ国際映画祭受賞結果。Unforgettable Cannes 2013

<<   作成日時 : 2013/05/27 09:29   >>

ナイス ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

追記しました。


現地時間26日夕刻、第66回カンヌ国際映画祭のラストを飾る作品「Zulu」が上映され、オドレイ・トトゥの司会でクロージングセレモニーが行われました。スティーヴン・スピルバーグを団長とする今年のカンヌ審査員団が、計20のコンペ参加作品の中から、各部門にどのような作品を選出するのか、おおいに注目を集めておりましたね。


第66回カンヌ国際映画祭 Winner's List


・コンペティション

パルムドール Palme d’Or: アブデラティフ・ケシシュAbdellatif Kechiche監督 「LA VIE D’ADÈLE - CHAPITRE 1 & 2 (Blue Is The Warmest Colour)」
(女優賞を確実視されていた主演のアデールAdèle Exarchopoulosが賞を逃したこともあり、このパルムドールは異例として、ケシシュ監督、アデール、もう一人の主演レア・セドゥー3名に対して贈られました)
グランプリ Grand Prix: ジョエル&イーサン・コーエンCoen Brothers監督 「Inside Llewyn Davis」
監督賞 Best Director: アマト・エスカランテAmat Escalante監督 「Heli 」
脚本賞 Best Screenplay: ジャ・ジャンクーJia Zhangke 「A Touch of Sin」
女優賞 Best Actress: ベレニス・ベジョBerenice Bejo 「The Past」
男優賞 Best Actor: ブルース・ダーンBruce Dern 「Nebraska 」
審査員賞 Jury Prize: 是枝裕和Hirokazu Kore-eda監督 「Like Father, Like Son」
カメラドール Camera d'Or: アンソニー・チェンAnthony Chen, 「Ilo Ilo」


・ある視点

グランプリ Prix Un Certain Regard: 「L’IMAGE MANQUANTE」 Rithy Panh監督
審査員賞 Prix Du Jury: 「OMAR」 Hany Abu-Assad監督
監督賞 Prix De La Mise En Scene: Alain GUIRAUDIE 「L'INCONNU DU LAC」
ある視点賞 Prix Un Certain Talent: 「LA JAULA DE ORO」 (Diego Quemada-Diez監督)に出演した俳優たちのアンサンブル演技に対して。
期待すべき新人賞 Prix De L’avenir: 「FRUITVALE STATION」 Ryan Coogler監督


・シネフォンダシオン

最優秀賞 Premier Prix :「NEEDLE」 réalisé par Anahita Ghazvinizadeh監督 (アメリカ The School of the Art Institute of Chicago)
第2位 Deuxième Prix :「EN ATTENDANT LE DÉGEL」 réalisé par Sarah Hirtt監督 (ベルギー INSAS)
第3位 Troisième Prix ex aequo: 「ÎN ACVARIU (In the Fishbowl)」 réalisé par Tudor Cristian Jurgiu監督 (ルーマニア UNATC)
第3位 Troisième Prix ex aequo:「PANDY (Pandas)」 réalisé par Matúš VIZÁR監督 (チェコ共和国 FAMU)
*シネフォンダシオンは、広くアマチュア・クリエイターたちに門戸を開いた、映画界への登竜門です。第1位を獲得した監督には15000ユーロ、第2位の監督には11250ユーロ、第3位の監督には7500ユーロの賞金が支払われます。また第1位の監督は、映画祭から処女作(長編映画)を製作するチャンスが与えられるそうです。



カンヌはサンダンス映画祭とは異なり、映画業界や他の業界から選ばれた著名人が審査員に名を連ね、作品を吟味し、賞を与える映画祭です。またカンヌの舞台裏では、作品の配給権の獲得にまつわる映画ビジネスの駆け引きが熾烈を極めており、上映の際の観客からのレスポンスや、上映後の新聞に出る映画評如何によって、それらの駆け引きの行方が大きく変わってしまいます。まあいわば、特にインディペンデントな映画にとっては、一寸先は闇の戦場であるわけですね。

毎年毎年、カンヌのコンペ部門受賞結果を見て感じる、“ああ、やっぱりあれもこれも今年の映画ビジネスの結果なのよね〜”というデジャヴ感。アメリカの映画のお祭りアカデミー賞が、どこまでもオーソドックスで、リスクを避け、斬新な冒険をしない、分かりやすい作品を好むように、カンヌだってやっぱり、常識を打ち破ろうと果敢に“冒険”にトライする作品はスルーされる傾向にあると思います。
…昨年のカンヌが、クローネンバーグ監督の「コズモポリス」に対して冷ややかであったのは、“理解するのに時間を要する”作品であったことが最大の原因でした。ローリング・ストーン誌の批評家ピーター・トラバース氏が、“「コズモポリス」は、2012年に製作された映画の中で最も不当に評価されたものだった”とボヤいておられましたが、分かりやすい作品を手っ取り早くあり難がる傾向が加速している現在、クローネンバーグ師匠の一連の作品は冷遇されてしまうでしょう。では、いたずらに難解な映画にすればいいのかというと、もちろんそれは違いますけどね。製作陣が、どこまで芸術の神に身を捧げるのか、はたまた観客の好みに合わせてどの程度まで妥協するのか、そのさじ加減は、各国の映画祭や映画賞の傾向に左右されると思います。

観客からの反応が良くても、また映画サイトや新聞などに掲載される批評が良くても、肝心の審査員たちがその作品を理解できなければアウト。賞はとれません。世知辛い話ですが、カンヌに出品される作品の多くは、海外への配給を目指しており、やはり賞をとれるか否かは、前述した“映画ビジネス”の明暗を分ける重要な要素となっています。受賞を逃せば“負け組”、賞を取れればあっという間に“勝ち組”となり、その格差は本当にえげつないほど。今回審査員賞を獲得した是枝裕和監督の「そして父になる」も、早速Sundance Selectsがアメリカの国内配給権獲得に動きましたしね。ですから、カンヌに参戦する作品の製作者たちはすべからく、“受賞すること”を目標に動くのです。

とはいえ、映画人も元々映画祭で“受賞する”ためだけに映画を作っているわけではありません。映画における芸術性と娯楽性の兼ね合いは、時代によっても大きく異なりますが、全ての映画人にとってのジレンマであると思います。結局のところ、カンヌでは、観客や批評家、審査員が作品を理解でき、なおかつ彼らの共感を得るような、適度にシリアスでエモーショナルな作品が好まれると考えていいのではないでしょうかね。

画像

(ユマ・サーマンから賞を贈られるアブデラティフ・ケシシュ監督)

…こういう現象をみていると、私のような一映画ファンがカンヌに何を期待するかと自問するに、それはやはり、新鮮な才能の発掘ではないかなあとつくづく思います。それも、魑魅魍魎跋扈する厳しい映画ビジネスに耐え得る、タフで本物の才能を持った逸材の発掘です。
今回の場合、パルムドールを授与された「LA VIE D’ADÈLE - CHAPITRE 1 & 2 (Blue Is The Warmest Colour)」のタイトルロールを演じたアデール、ベテランながらフランス以外の国ではまだ知名度は低い監督のアブデラティフ・ケシシュ、監督賞に輝いたアマト・エスカランテ、3部門を分け合ったアジア勢、ある視点部門各賞に選出された受賞者、及び作品など。とにかく今回の受賞一覧は、フレッシュな名前が並んだ印象が強いですね。その意味では、私が密かにカンヌに期待している役目を、スピルバーグ審査員長が汲んでくれたのだ(笑)と、都合よく解釈してもいいのかもしれません。
それに、旧来のモラルに囚われず、差異だらけの世界をもっと柔軟に理解しようという最近の時代の空気も踏まえてか、パルムドール作品は、同性の女の子に恋した女性アデールがそれを認めない社会と戦う姿を描いたものでした。今回、審査員に名を連ねているアン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」がついにオスカー作品賞の壁を打ち破ることが出来なかった少し前のことを思うと、時代はゆっくりとでも確実に変化していると実感できます。また、「LA VIE D’ADÈLE - CHAPITRE 1 & 2 (Blue Is The Warmest Colour)」に関しては、実は原作がコミックであるという点も、伝統的で保守的なカンヌにフレッシュな風を送り込んだ気がしますね。

後は、スピルバーグらしさの感じられる、リベラルでバランスの良いこれら選出作品が、日本の劇場でもきちんと公開されることを祈るばかりです。

長かったようであっという間に過ぎ去ってしまった、第66回カンヌ国際映画祭。ここで繰り広げられた、12日間の“映画と映画人たちによる仁義なき戦い”は、恐ろしくも、映画を愛する世界中の観客を惹き付けて止みません。その理由は、今年のカンヌで最も美しかった瞬間を捉えて凝縮した、この動画を見れば分かるかもしれませんね。

Le Best Of de la 66e edition en images, c'est ici (第66回カンヌ国際映画祭の“Best Of”映像):こちらでどうぞ

上記リンクのページに、各日ごとのカンヌの様子をまとめたダイジェスト版の動画のリンクも貼ってあるので、特定の日にちの様子を知りたい方はぜひ動画リンクを辿ってみてください。

カンヌでは毎年、過去の名作へのリスペクト、また観客に映画史の温故知新を促すため、昔の大スターも招待されて過去作品を特別上映したりします。今年は、ジェリー・ルイス、ヒッチコック監督の名カルト作品「めまい」に主演したキム・ノヴァク、今でもお元気そうでなによりのアラン・ドロンなどが登場。彼らの顔を見ますと、昔観た様々な映画のシーンが鮮やかに甦ってきて感無量ですね、やっぱり。このように、新しい才能の発掘と平行して、過去の映画史のおさらいを同時に行うのがカンヌの特徴だといえます。

記事では触れられなかったのですが、上記の“Best Of”動画の中に、今年のコンペ部門の中で最も興味を引かれている作品からの映像がございました。大ベテラン、マイケル・ダグラスによる故リベラーチェの伝記ドラマ「Behind The Candelabra」(スティーヴン・ソダーバーグ監督)です。随分前に書いた、当館内のリベラーチェご紹介記事はこちら。ご笑覧あれ。髪の毛は真っ白、顔には皺がいくつも刻まれ、失礼ながら“ご老体”と表現しても差し支えない現在のダグラスが、あらゆる邪念を吹っ切って演じたこの名エンターテイナーの赤裸々な生き様を、ぜひスクリーンで観てみたい。当初の話ではテレビ映画として制作されたとも聞いていたのですが、カンヌでも観客からは高リアクションを得ていたため、このままスクリーンにての上映となるかもしれませんね。画像やフッテージを見る限り、ますます本編への興味が高まります。日本での公開も速やかに決定しますように。



にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
ナイス ナイス ナイス

にほんブログ村

第66回カンヌ国際映画祭受賞結果。Unforgettable Cannes 2013 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる