Don’t steal my posts. All posts on this blog are written by me.

House of M

アクセスカウンタ

zoom RSS 理性は本能を制御でき……ない?―「ALPHA」

<<   作成日時 : 2013/01/24 11:05   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 0

アニメーション制作を学ぶ才能豊かな学生や、インディペンデントに創作を行っているアニメーション・クリエイターたちを発掘し、その知られざる作品を世に問う活動を行っているMad Artist Publishing。彼らは、今や世界中に無数の視聴者を抱える大手情報発信ツールであるYou Tubeにも、専用のチャンネルOfficial Independent Artist & Animation Channelを所有しております。このチャンネルには、いまだ無名ながら面白い作品が数多く登録されており、将来ここから、世界にはばたくクリエイターが誕生するかもしれません。

本日は、そんなMad Artist Publishingから、SF映画の名作「2001年宇宙の旅」と「時計じかけのオレンジ」からインスパイアされたコミカルなショート・アニメーション作品を観てみましょう。

“ALPHA” (HD) Super Funny Animated short By Nicolai Slothuus & Team


「Alpha」 (2010年) The Animation Workshop presents
Credits : Nicolai Slothuus, Matthías Æ. Bjarnasson, Christian Munk Sørensen
Direction & Script & Graphics & Storyboard & Layout & Animation : Nicolai Slothuus, Matthías Æ. Bjarnasson, Christian Munk Sørensen
Produced : Michelle Nardone
Background : Christian Munk Sørensen, Andreas Thomsen
Music & sound : Jakob Gadegaard, Mathias Winum, Thomas Almark
Editing : Matthías Æ. Bjarnasson

画像

とある国で、“ALPHA“と名付けられた極秘プロジェクトが発動した。


画像

ジャングルから野生のチンパンジーが攫われ、彼は人間によって徹底的な“教育”を施された。

画像

サルと人は共通のコミュニケーション手段を持たないため、彼への教育は過酷を極めた。

画像

サルの中でも一際高い知性を持つチンパンジーをもってしても、それはある意味洗脳に近いものであった。

画像

早期に優秀な頭脳を備えた人材(彼はヒトではないが)を確保する必要性に迫られてのことだ。…一体彼はどんな任務のために厳しい訓練に耐えているのであろうか。

血の滲むような苦労を経て、ついに彼への教育は終了した。彼はこの“ALPHA”プロジェクト実行にふさわしい力を持ったのだ。そして今、彼がどこにいるかというと……


画像

無人探査ロケットの操縦席に押し込められていた。

画像

世界で初めて宇宙に飛び出した動物は犬だったというが、自分で宇宙船を操縦した動物は彼が初めてだろう。

画像

無重力空間に慣れた彼の目の前に、地上では見られない神秘的な宇宙の美が広がる。

画像

宇宙空間から見た地球と星々の美しさを、彼は決して忘れないだろう。

長いようで短かった宇宙探査の旅も終わり、貴重なデータを満載した操縦船と彼は、地球の大気圏に突入した。いざ、堂々の帰還である。

画像

ところが、彼の乗った操縦船は当初の目測を誤り、海上ではなく、なにやら見覚えのある場所に墜落してしまった。

画像

そう、なんと彼は、自分の生まれ故郷に戻ってきたのである。そうとは知らず、たった一人で重要なミッションを成し遂げた誇りと自信に満ち溢れた彼が、雄々しく船から降り立った。

彼の周囲に、彼と同じ種族のチンパンジーたちが物珍しげに寄ってきた。見たところ同じ仲間のサルなのに、妙ちきりんな宇宙服を着ているわ、おまけに2本の足で突っ立っているわで、野生のチンパンジーたちにとっては未知の珍客だ。そこで彼らは、彼らが大昔からやってきたように、客人とコンタクトを図るため、そのお尻を“彼”に向けて突き出した。こうすることで、彼らは未知の相手が敵か味方かを判断してきたのだ。

しかし、並みの人間以上の優れた知性と、本能をコントロールする強靭な理性を身に着けた今の彼にとって、その恥ずべき行為は下劣な本能にまみれた原始的なものでしかない。裸の尻を赤の他人(サルだが)に向けて振るなどと!鼻の上に皺を寄せて嫌悪の表情を浮かべた彼であったが、しかし、とっくの昔に眠らせたはずのサルとしての“本能”が、徐々に目覚め始めてもいたのだ。

彼の脳裏に、宇宙船に乗るまでの長く辛い訓練の数々が甦る。血の滲むような苦労の結果、やっと会得した“理性”と“知性”。その末に宇宙旅行まで成し遂げたこの自分が、そう安々と原始人(サルだが)に戻ってなるものか!……なるものか。……なるもの…か。………。

満面の好奇心を顔に浮かべて尻を振っていたチンパンジーたちは、“彼”が一向に反応を示さないのに気づき、やがて客人に興味を失って去ってしまった。1人ぽつねんと残された“彼”はどうしたか。もちろん、サルらしく胸を叩いて雄叫びを上げ、仲間の後を追いかけていったのである。


時計じかけのオレンジ [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 時計じかけのオレンジ [Blu-ray] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

凶悪な犯罪者、あるいは精神を病んだ人間を実験台にして、薬や外科手術、ショック療法などの科学的な処置が、どこまで彼らの精神を“正常に”矯正できるか…といったモチーフは、様々な映画に取り上げられてきました。ああそうだ、これをちょっとひねった変則パターンもありましたね。ダニエル・キイス原作のSF小説「アルジャーノンに花束を」を映画化した「まごころを君に Charly」(1968年)(ラルフ・ネルソン監督、クリフ・ロバートソン主演)も、幼児並みの知性を持たない男性を脳の外科手術で天才に生まれ変わらせるお話でした。

昔からこの手のストーリーは、手を変え品を変え何度も語られてきたにもかかわらず、それらが最終的に到達する結論は一つしかないように思います。つまり、いくら最先端科学を駆使しようとも、人間に生まれながらに備わっている気質を無理やり変容させることはできないのではないか…ということですね。もちろん、一般的な話をすればこの限りではないんですよ。アルコールや薬物依存などから努力して立ち直ったケース、あるいは精神的な疾患とうまく共存するケースなど、多々ありますからね。今は、フィクションの世界でテーマとなるような、極端なお話をすることにしましょう。

宇宙旅行のリスクを調べるため、野生のサルを捕まえてきて、無理やり“人間の正常な知性”と“人間の正常な理性”を植えつけて改造する…なんてことは、今でもどこかで実際に行われていそうな話です。このショートムービーのように、電気ショックや刷り込みで強制的に気質を変容させることが、果たしてどこまで有効なのかはわかりません。でも、教訓として得られるのは、こんな風に当人の意思を無視して施される変革を、どんな状況であれ“正義”とは呼べないということです。
一時的に、あるいは表面上、変革に成功したように見えても、それはあくまでも仮初の変化に過ぎない。深層心理のさらに奥深くに無理矢理沈められた本能やもともとの気質は、何かの拍子にいともたやすく水面上に顔を出してしまうものなんですね。立派にミッションをこなして“人間化”したチンパンジー君が、元の環境に戻された途端に、文字通り元の木阿弥状態になっちゃったという皮肉が、それをよく物語っていますよ。
元々備わっている本能や気質を頭から否定するだけではやっぱりだめ。それらを本当にコントロールしたいのなら、まずはその実態をきちんと理解することから始めないといかんのかなあとも思いましたね。何かを克服したいと思うなら、まずは、その克服すべきモノの正体を理解してからにせよってことですかね。

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 2001年宇宙の旅 [Blu-ray] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

この作品の全体的なイメージ―ストーリー、演出、音楽の使い方含め―は、「2001年宇宙の旅」から直接インスパイアされていると感じます。人類最大の夢であり野望であるところの宇宙旅行の行き着く果てが、子宮で育つ胎児の姿だったというシーンを思い出してしまいましたねえ。何かを極めた先には、もはや退行しかありえないのか。サルを実験台にしてなにかをやろうとする人間の傲慢と利己を戒める以前に、このチンパンジー君の辿った運命には、人間自身の未来の姿が暗示されているような気もします。高度に発達した文明も、その進化を極限まで突き詰めれば、結局、太古に置き忘れた原始的な本能に立ち戻っていくのかもしれませんね。


にほんブログ村 映画ブログ 映画備忘録へ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 5
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
理性は本能を制御でき……ない?―「ALPHA」 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる