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zoom RSS ...and Life ends cleanly... 「Hadley TK-421」追記終了!

<<   作成日時 : 2012/10/27 17:27   >>

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ありがとうHadley TK-421、君のおかげで、英国は迅速でクリーンなオフィス環境が得られることになる。

“Hadley TK-421”

Hadley TK-421 from Jonathan Reid-Edwards on Vimeo.



「Hadley TK-421」(2011年)
監督:Jonathan Reid-Edwards
脚本:Jonathan Reid-Edwards
出演:George Taylor(Richard Simpson)
Fiona Hampton(Maggie Thornhill)
Anthony Howell(Malcolm Howard)
Luke Morris(Arthur Sepinwall)他。

受賞:Student Visionary Award – Geneva Film Festival, 2012, USA
Best Script – Screentest 2012 Film Festival, 2012, England
Best Score - Screentest 2012 Film Festival, 2012, England

ノミネート:Best Film – Deep Fried Film Festival 2012, Scotland
Best Film - Screentest 2012 Film Festival, 2012, England
Best Comedy - Screentest 2012 Film Festival, 2012, England
Best Cinematography - Screentest 2012 Film Festival, 2012, England
Popularity Award – International Student Short Film Festival, England

映画祭招待:Short of the Week - shortoftheweek.com
BUSHO Budapest Short Film Festival 2012, Hungary
Cannes Court Metrage, Festival de Cannes 2012, France
Deep Fried Film Festival 2012, Scotland
Early Bird Student Film Festival 2012, Bulgaria
Emmentaler Filmtage 2012, Switzerland
ECU European Film Festival 2012, France
Geneva Film Festival 2012, USA
International Student Film Festival London 2012, England
Leids Film Festival 2012, Netherlands
Luxor European & Egyptian Film Festival 2012, Egypt
Portobello Film Festival 2012, England
Screentest Film Festival 2012, England
XI Open St Petersburg Student Film Festival 2012, Russia

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1960年4月18日の月曜日。八ドリー社に入社して数年が経過するリチャードは、長年の地道な開発努力の結果生み出した、我が子にも等しい画期的なコピー・マシーン“Hadley TK-421”の正式なお披露目を控え、気持ちを引き締めていた。おそらく初めて英国に導入されることになるであろうHadley TK-421の働きは上々、今までの常識を覆す全く新しい、そして快適なオフィス環境を英国の企業に提供することが期待される。
愛機Hadley TK-421の全てを余すところなく解説した彼の報告書も会社上層部による審議を経て、正式にHadley TK-421プロジェクトが起動することになるだろう。Hadley TK-421開発の中心人物たるリチャードは、きっと上層部より大抜擢を受けてプロジェクトのリーダー的役割を担う。リチャードは、未来への夢膨らむ心境で密かに想いを寄せている秘書マギーにデートの申し込みをしようと話しかけたが、これから一緒に上層部との会合に向かう上司マルコムに遮られた。

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会議室。上層部はHadley TK-421の斬新なアイデアと開発成功にいたく魅了され、引いては企業に大きな変革をもたらすと太鼓判を押した。そしてこのプロジェクトを推し進めることを決定したのだが、その大仕事に抜擢されたのは、なんとリチャードではなく、マルコムの方であった。Hadley TK-421の開発には、マルコム自身は直接携わってはいない。ほとんどリチャードが一人で完成したようなものだ。それなのに。マルコムは家柄もよくハンサムで人当たりもよく、上層部の連中に覚えも良い。つまりは、そういうことなのだ。社内では、その高い才能で人より抜きん出て早い出世を果たしたリチャードではあったが、結局“家柄”というバックボーンを持たぬ彼に、会社のトップに近づくことは許されないのだ。

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夜、オフィスでは就業後に皆でパーティーを開いていた。輪の中心はもちろんマルコムだ。彼はこれからHadley TK-421のプロジェクトを牽引するリーダーとなる。プロジェクトの立役者であるリチャードを蚊帳の外に置いて。リチャードは憤懣やるかたない思いで自分のデスクで自棄酒をあおる。友人のアーサーはそんな彼を慰める。マルコムはいい奴だし、人当たりもスマートだし、彼と並んで比較されでもしたら、分が悪いのはこちらに決まっている。仕方がない。リチャードには次のチャンスがあるだろう、と。しかしそんな理由では、もはやリチャードは自分自身を納得させることができないほど怒りを膨らませていた。従って、マギーが長期休暇申請用紙を持ってきた時、リチャードの堪忍袋の緒がついに切れる事態となったのである。

マギーは言葉少なに今回のリチャードの処遇に意見するが、彼女の本題は長期休暇申請にリチャードのサインが欲しいということだった。マギーはリチャードが密かに自分に寄せる好意も知らず、私、ひょっとしたら恋に落ちたかもしれないと目を輝かせる。リチャードはサインしようとしていた手を止め、散々だった一日の最後に最高のプレゼントを得られるのかと、沈みかけた意識を浮上させた。しかし、彼女の口から出てきた“恋に落ちた相手”とは、無情にもリチャードではなく、マルコムであった。

またマルコムか。どいつもこいつもマルコム、マルコムと、まるで彼に洗脳されてでもいるようだ。だがあいつは、俺の真にクリエイティヴなアイデアを、俺の長年の努力の結晶を、いともたやすく盗み取っていきやがったんだぞ。あのハエも殺さぬ善人面と、ハンサムな笑顔と、柔らかな物腰、上品で粋な言葉遣いで、周りにいる全ての連中を篭絡する腹黒い男、それがマルコムだ。突然怒り始めたリチャードの豹変に驚いたマギーが、泣きながらマルコムの胸に飛び込み、慰めてもらっている。その親密な様子を目にしたリチャードは、憎っくき目の上のたんこぶであるマルコムに、ついに殺意を抱くようになった。

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パーティ終了後、リチャードはマルコムに酒を一杯振舞う。居心地悪げに小さく謝罪し、君なら次のチャンスがあるさと決まり文句を口にするマルコム。だがマルコムは、“君のアイデアとレポートは素晴らしい”と空々しく賞賛したその口で、リチャードをプロジェクトから外すよう上層部をたぶらかし、結果的にリチャードが受けるべき称賛を横取りしたのだ。リチャードは頭を押さえつけられてきた積年の恨みつらみを爆発させるが、マルコムはのらりくらりとリチャードの非難をかわし、涼しい顔で帰路に着いた。片手にペーパーナイフを握り締めてブルブル震えていたリチャードと、彼の苦悩など一顧だにせず、堂々と彼を踏み台にして出世街道を邁進するマルコム。この残酷な対比は、もはや才能のあるなしに関わらず、弱肉強食の世界における勝者の法則とでも呼ぶしかない事実だ。

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リチャードは、これから先もずっとこの調子で自分の手柄を掠め取っていくマルコムの軽薄な笑顔が、頭に浮かぶようだった。マルコムが部屋を出て行き、階段を下りて路上まで出て行く足音を、リチャードは全身を耳にして捉えていた。

階下では、郵便受けをあらためるマギーにマルコムが挨拶をするところだった。浮かない顔色のマギーに、いつもの調子で気さくに話しかけるマルコム。
「大丈夫、マギー。心配しなくていい。すぐなんでもなくなるさ」
先に外に出たマルコムの後姿を見送っていたマギーだが、しばしためらったあと、その後を追っていった。

マギーは、歩道に出たところで、まるで自分を待つように立ったままタバコに火をつけていたマルコムに追いついた。
「マルコム!」
マルコムが彼女の方を向いて口を開いた瞬間。
天からHadley TK-421が落ちてきたのだ。
マルコムの真上に。

それは一瞬の出来事だった。

マルコムがマギーに声をかけようとした瞬間、大きなHadley TK-421マシーンが上から落ちてきて、マルコムを押しつぶしてしまった。何が起こったのか理解できず硬直するマギーの目の前で、まるで冗談のようにマルコムを押しつぶして路上に鎮座したHadley TK-421。その下から、スローモーション映像のように、マルコムの身体から血液が押し出されてきた。それは血溜りとなって、じわじわと周囲に広がっていく。その様子は、つい数分前にマルコムが飲んでいた酒のグラスから、時間の経過と共に水滴が吹き出し、それがやがて置かれたテーブルの上に水溜りとなっていくようである。

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マギーが立ちすくむ路上とHadley TK-421とその下の血溜り。彼女が空を仰ぐと、オフィスがある部屋から、書類が紙ふぶきの様に舞い落ちてきた。この光景は悪夢のようにシニカルで美しかったといえるかもしれない。遅ればせながら絶叫し始めるマギーの隣に、酩酊でもしているような、妙に楽しげな様子のリチャードが足取りも軽くやってきた。陰惨な光景を目にして、彼はやれやれと頭を軽く振った後、震えるマギーに微笑を投げかけた。
「大丈夫、マギー。心配しなくていい。すぐなんでもなくなるさ」

天から舞い降りてきた書類はゆっくりと路上に積み重なってゆく。マルコムの血溜りの上に、見覚えのある書類がパラリと落ちた。それは、マギーがリチャードに申請した長期休暇申請用紙であった。それには、リチャードの“許可する”というサインが書かれていたのだが、果たしてマギーはそれを確認できたのであろうか。


私は今回Vimeoではじめてこのショート・フィルムを観たのですが、もうなんといいますか、鑑賞後の感想といえば、ただ一言、“素晴らしい”としか言いようがありません。

ショート・フィルムのお手本のごとき鮮やかな演出。必要なシーンを、適切な位置に適切なタイミングで、無駄なく重ねていくクレバーさ。本編の最初と最後で時間軸を交錯させる(全て見終わった後でそうと観客が理解できる仕掛け)粋さ。クライマックスに至る数分は、最終的に起こったことを先に観客に見せた後、なぜそんなモンティ・パイソン的シュールかつブラックな状況になったのか、そのからくり(それは動画をご覧になってお確かめあれ)を時間差で種明かしするという複雑な構造になっています。なので、初見時では“ほぇっ?!一体何がどうして起こったん?!”と、マギー同様に呆然とする羽目に陥りますね(笑)。
でも、本編自身がショート・フィルムであることが幸いし、またショート・フィルムであるがゆえの利点を大いに利用し、一瞬の出来事を視座を変えて繰り返し表現する演出が、殊更くどく感じられないわけです。しかしながら、先ほどから繰り返しているように、この作品ではシュールな結末を噛んで含めるような野暮な演出は為されていません。“実際に起こった、あるいは行動に移された出来事”を視点を変えて必要最小限描くことで、それらが合わさって結果的に突拍子もない運命を導いた因果関係を匂わせているのです。

「モンティ・パイソンの空飛ぶサーカス」では、天から突如振り下ろされる切り絵アニメの大きな足が、今まで様々なドラマを演じていた下界を一瞬にして“ぶしゅっ”と潰してジ・エンドとなる展開がよくみられました(笑)。今までのお話の流れとかそういうものを一切無視し、世界を全てぶっ潰してジ・エンド(再笑)。
このショート・フィルムでは、“インクすら必要としない新世代のコピー機Hadley TK-421―しかも一度に大量の文字情報を記憶・記録することができる―で、ともすればゴミとして増えていくばかりの紙媒体に煩わされない、実に“クリーンな”人生を送ることができるというモチーフが重要なキーポイントになります。リチャードはつまり、自らの生み出した“クリーンな”人生を提供するマシーンで、ものの見事に煩わしい存在のマルコムをぶっ潰して(文字通り・笑)、彼の周囲の人生を“クリーン”にしたというオチになるわけですな(苦笑)。まあ、シニカルもここに極まれりという、英国の伝統芸ブラック・ユーモアの面目躍如であります。まさに英国のクリエイターによる作品であることが、よく分かりますよね。

リチャードを演じた役者さんGeorge Taylorも印象的。粘着質なオタク人間を好演しておりました。ハンサムでダンディな外面だけは良い“外見男”マルコムと、実に好対照でしたね。彼ら二人のキャラクターの違いを明確に比較させる演出も良かったと思います。

うーん、それにしても。必要なシーンの構成もいいし、一つ一つの場面の見せ方も良いし、こりゃあ、新鋭監督のJonathan Reid-Edwards(ロンドンをベースに活動中)、彼の今後の動向をチェックしておかねばなりますまい。

Jonathan Reid-Edwards on Vimeo
"Hadley TK-421" Official Site

…ああそれにしても。

青田刈りって楽しい(笑)…。

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