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zoom RSS 高齢化社会のアクション映画―「RED/レッド」

<<   作成日時 : 2017/08/28 22:20   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 8 / トラックバック 0 / コメント 0

以前、故赤瀬川原平氏の「老人力」という本を読んだことがありましてね。この本が発売された当時は随分流行りましたから、今も覚えてらっしゃる方も多いと思います。流行語にまでなった“老人力”という言葉は、創作者(笑)の赤瀬川氏の手を離れ、勝手に独り歩きをはじめました。

しばらく経って赤瀬川氏のエッセーを読むと、この“老人力”という言葉が多くの人たちに誤って解釈されてしまったことを、残念そうに愚痴ってらっしゃいましたね。
ニュアンスを理解するのが難しいというか、デリケートだったために仕方がない面もあろうかと思います。本来赤瀬川氏は、加齢によって身体に様々なネガティヴな異変を来たすことを“ネガティヴ”と捉えずに、老人特有の別種のパワー、つまり“老人力”と名付けて新たに認識し直そうではないか、と主張したかったわけです。そうすれば、トシをとって腰が曲がったり目がかすんだりすることに、いちいに落ち込まずに済みますしさ。
ですがまあ、多くの高齢世代の方々は、それを“高齢でも若者に負けずにガンバル!”パワーだと捉えちゃったのですね。従って、赤瀬川氏の下には、“80過ぎてもスポーツを頑張ってます!”とか“おばあちゃんと言われたくないので、毎日美容に気を使ってます!”といったような内容のレスポンスが続々と寄せられるように。心ならずも赤瀬川氏、全国のおじいちゃんおばあちゃん達を元気付ける役割を果たしてしまったのです(笑)。

自分も老後のことを実感するようになった今、赤瀬川氏のおっしゃりたかったことも、またそれを誤解しちゃったじいちゃんばあちゃん達の気持ちも両方、私にはよくわかる気がしますね。人間は皆、加齢からは逃れられない運命にあります。若い頃どんなに美しくても、またどんなにある分野に秀でていても、老いればそのパワーは自然と衰えていくもの。自分自身が実際にそうなってしまったとき、一体どのような心境に至り、またどのような行動をとるのだろうか?複雑な気分ではありますが、それは近い将来に必ずやってくる現実ですからね。“老後”に到達した自分の姿から目を背けてはいけません。

“若造、引っ込んでな”

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「RED/レッド RED」(2010年)
監督:ロベルト・シュヴェンケ Robert Schwentke
製作:ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ&マーク・ヴァーラディアン
製作総指揮:グレゴリー・ノヴェック&ジェイク・マイヤーズ
原作:ウォーレン・エリス&カリー・ハムナー
脚本:ジョン・ホーバー&エリック・ホーバー
撮影:フロリアン・バルハウス
視覚効果監修:ジェームズ・マディガン
プロダクションデザイン:アレック・ハモンド
衣装:スーザン・ライアル
編集:トム・ノーブル
音楽:クリストフ・ベック
音楽監修:ジュリアンヌ・ジョーダン
出演:ブルース・ウィリス Bruce Willis (フランク)
モーガン・フリーマン Morgan Freeman (ジョー)
ジョン・マルコヴィッチ John Malkovich (マーヴィン)
ヘレン・ミレン Dame Helen Mirren DBE (ヴィクトリア)
カール・アーバン Karl Urban (ウィリアム)
メアリー=ルイーズ・パーカー (サラ)
ブライアン・コックス(アイヴァン)
ジュリアン・マクマホン(ロバート・スタントン副大統領)
リチャード・ドレイファス(アレクサンダー)
レベッカ・ピジョン(シンシア)
アーネスト・ボーグナイン Ernest Borgnine (記録保管室のヘンリー)他。

かつてCIAの腕利きエージェントとして活躍したフランク。引退した今ではオハイオの田舎町で独り静かに暮らし、互いに顔も知らない役所の年金課勤めの独身女性サラと電話で会話することを唯一の楽しみにしていた。そんなある日、フランクの家に武装集団が侵入。しかしフランクは難なく一味を仕留める。政府に電話回線も全て監視されていたためサラの身にも危険が及ぶことを察知、はたして暗殺の危機から彼女を救い出すのだった。そして、今は老人ホームにいる元上司ジョーのつてを借り、一連の原因を調べると、フランクの他9人の名が記された“暗殺リスト”を発見。そのリストにも名前が挙げられ、また昔のフランクの同僚で宿敵でもあったマーヴィンにくだんの暗殺リストを見せると、彼ら10名は中米グアテマラでのある“特殊任務”の関係者たちだと判明する。そこうするうちにも、マーヴィンと合流したフランクとサラ、そしてジョーの身に暗殺の魔の手が伸びる。CIAから派遣された若手エージェント、ウィリアムの仕業であった。ウィリアムはフランク抹殺の密命を帯びていたのである。
フランクはかつての仇敵で現在はロシア大使館にいるアイヴァンを頼り、彼の人脈を利用して大胆にもCIA本部に潜入。目的は、CIAの真意と事態の謎を解く鍵となる“グアテマラ文書”である。旧知の記録管理人ヘンリーの好意で文書を手に入れたフランクは、グアテマラの特殊任務に隠された驚くべき真相と、それを隠蔽しようと躍起になる政府、またその政府すらも操ろうと画策する軍需企業のCEOアレクサンダーらの癒着関係を知る。フランクは自らに着せられた濡れ衣と理不尽な暗殺から逃れるため、元英国諜報局MI6の名狙撃手ヴィクトリアの助力を請うべく、今は暗殺者稼業から引退してペンションを経営する彼女の元に身を寄せた。こうして再び結集したフランクら歴戦の勇者たちは、全ての黒幕であるアレクサンダーの隠れ家に潜入し、真相を明らかにするよう迫るのだが、思わぬ悲劇が彼らを待っていた。
 ―allcinemaonlineから抜粋、編集

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『RED』
原作:ウォーレン・エリス 作画:カリー・ハムナー

原作は、今やすっかり映画界の売れ筋カテゴリに定着したグラフィック・ノベルです。エリスがストーリーを手がけたコミックスの中では今品は比較的マイナーで、知る人ぞ知るといった位置づけにあります。不肖、わたくしも原作の方は未読で、映画版を観賞後に目を通してみました。

主要登場人物の設定、並びにストーリーの骨子をみると、映画版は原作をかなり忠実に踏襲していることがわかります。伝説的工作員であった主人公フランクが、かつての任務のせいで引退返上を余儀なくされ、今度は組織のしがらみなしのフリーな立場で再び工作員人生を歩みだす、というもの。ただ、彼の“第2の人生”の伴侶となる女性キャラが、映画版でははっきり形作られていたことが大きな違いですね。

映画版のアクションの過激さと過剰さからも察せられる通り、原作コミックのバイオレンスもかなりのもの。映画版ではレイティングを下げるため、意図的に血しぶき映像が抑えられていましたが、その点コミックの緻密な描写はハンパありません。ええ、正直血なまぐさい(苦笑)。そして、映画版で成り行き上フランクと行動を共にし、最終的に恋仲になるサラの存在が、思った以上に作品全体の雰囲気作りに影響を与えていることも意外でした。

原作では、主要キャラたちを取り巻く状況はリアルに厳しく、先行きも決して明るくはありません。“年齢の限界点”という最初の高いハードル(なにせ年金を貰ってるような高齢者ばかりだし)のせいで、ストーリーには常に死の影がつきまとい、経験値を蓄えたベテランたちの余裕というよりは、どちらかというと悲壮感の方をより強く感じてしまうのですよ。しかし映画版では、能天気にフランクとくっついちゃう一般人サラの存在こそが、ベテラン勢の“老い”による力の衰えと、諦め、間近にある死といったネガティヴな要素を、やんわりとオブラートにくるんでくれていたのだと気づきました。元美女スナイパー、ヴィクトリアと、老獪な古だぬきアイヴァンの復活愛という、いわばローストビーフとボルシチを間違って一緒に食べたかのような、腹に堪える恋物語(笑)も本編のアクセントにはなっていましたが、サラの存在はまた別格。フランクがサラを心の拠り所にしていたように、シリアスに描けば暗くウェットになってしまう題材も、彼女のおかげで随分風通しがよくなったと思いますね。

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スタイリッシュかつハードボイルドな原作の雰囲気もいいですが、これを映画として広く“開かれたエンターテイメント”に移植するならば、テイストとしては多少軽くなったとしても、ユーモアを前面に押し出した方が賢明でしょう。従って、映画版では、これが“特攻野郎Aチームの高齢者バージョン”(笑)だという位置づけが、より鮮明になったように思います。それも悪くない。じいさんばあさんの映画だからといって、無理やり抹香臭くする必要はないわけだし。
全体的に肩の力が抜けた感じになった映画ですが、その反面、劇中で使用される火薬の量はとてつもなく(笑)、フランクはじめ、彼を付け狙うCIAエージェント、ウィリアムらのアクションはかなり気合の入ったもの。どえらい銃撃戦の連打や、エージェント同士のガチンコ勝負、スパイ活動のスリルで観客の度肝を抜いたかと思えば、フランク、サラ、マーヴィンのトリオの織り成すとんちんかんなやりとりで笑わせて…と、緩急のバランスもよし。この辺りはまあ、アクション・エンターテイメント映画の“予定調和”ではあるけれど、安心してワクワク出来るという意味では合格です。

そんなわけで、今作におけるメイン・ストーリーが、“過去、世界中の国の内戦に首を突っ込んでいたアメリカが犯した、外道にも程がある過失と、そこから派生した政界と軍需産業の癒着と暴走”という、一昔前ならハリウッド映画では禁忌であったモチーフを、実はちゃっかりいただいていることに意識が届きにくくなるわけですよ。ひょっとしたら、これも計算のうちかもしれませんな。“高齢者による(笑)ド派手なアクション”という意外性、ブルース・ウィリス渾身の自虐ネタ(禁断のハゲネタ、ついに解禁・笑)を含むお笑い、ベテラン俳優たちによる“いかにも楽しんでやってます”風の余裕綽々演技アンサンブルを面白がっているうち、かつて本当にあったかもしれないからこそ恐ろしいストーリー展開に、いつのまにやら引きこまれているという。コミックスでしかありえないエンターテイメントの中に、ふとした拍子にリアリズムが混入すると、観る者の頭の中では、その数パーセントのリアルの方が鮮明に見える原理ですね。
フランクが何故古巣のCIAに命を狙われたのか、その真相に至るや、今まで味方だと思っていたものが敵となり、敵だとばかり思っていたものが実は共闘すべき相手だったとわかります。米ソ冷戦時代には仇敵同士だったフランクとアイヴァンが、共同戦線を張ったという設定からもわかるように、時代の変遷とともに敵味方の概念も大きく変化し、その境界線はますます曖昧、複雑になっていきますね。昨今のスパイ映画ものが、総じていまひとつ消化不良気味なのは、誰が敵で誰が味方か、現行ではさっぱりわからないのが要因なのです。帰るべき祖国の政府は、ともすれば自分の最大の敵になってしまう可能性もありますし。国や思想、人種の違いが、敵味方を区別する判断材料にはもはやならないわけで、そんな混沌とした時代だからこそ、立場の違いはともかく“同じ時代の空気を共有した者”を“仲間”とみなす風潮になるのでしょう。今作も、そんな点で極めて“現代的”だといえます。

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1人で1本の映画をしょって立てる主役級俳優が、マンガ発の娯楽映画でアンサンブルを演じている不思議(笑)。そりゃ皆さん、若い頃に戻ってドンパチやったり、スパイごっこに興じてみたかったに違いありません。
特攻野郎Aチームでいうところの“クレイジー・モンキー”的キャラ、マーヴィンに扮したマルコヴィッチのキレっぷりが、個人的には爽快でした。まあ、これもリアルに描いたら相当痛々しいキャラですので、マルコヴィッチぐらいのベテランがお遊び感覚で演じるぐらいがちょうどいいのかも。
モーガン・フリーマンじいちゃんは、いつものように(笑)おいしいとこを持っていく役回りであまり意外性はありません。彼も、出てくるだけで安定感や安心感をもたらしてくれる俳優さんですね。むしろ私にとって意外だったのが、フランクを演じたブルース・ウィリスの自然体。いやだって、今まで彼が作ってきたコメディ映画や、コミカルな味付けのアクション映画ときたら、笑いが自己満足で空回りするものばかりでしたからね。今作も当初は全然期待していなかったんですよ。でも、彼に拮抗するオーラの持ち主が他に何人も出演しているせいで、彼独特のクサさが中和されたのが幸いしました。冒頭の年金暮らしの中で、黙々と家事をこなしていく無表情っぷり然り、今作のコミカルの匙加減も、肉弾戦含むアクションのキレっぷりも、実にいい塩梅だったと思いますよ。
そのウィリスと文字通り真っ向勝負するのが、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのエオメルことカール・アーバン君。序盤こそウィリスの引き立て役っぽいシーンばかりですが、クライマックスに向けては、唯一の泣き所を突かれて動揺したり、敵に対してもあくまでもフェアと仁義を貫こうとする側面を見せたり、冷酷非情な暗殺者なのに正義の概念には忠実でファミリーマンという、複雑なキャラクター設定をきちんと演じ分けていました。オマケに、演技とはいえウィリスを面と向かって2度も“爺”呼ばわりしたのは、たぶん彼が最初だと思いますし(笑)。記念碑的な(笑)演じ甲斐のある配役をゲットできて、本当に良かったねえ、エオメル(違)。

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実は大変グラマラスなボディーの持ち主であったヘレン・ミレン大姐御。彼女が若かりし頃、英国の伝統的なシェークスピア俳優の中で唯一“セクシー・クィーン”とあだ名されていたことは存じ上げていましたが、銃火器があんなにお似合いとは思いませんでした(笑)。表向きは優雅なカリスマ主婦兼ペンションのマダム、しかして、裏稼業は非情な人殺しという、「必殺」も真っ青の役回りです。しかも、若い頃の炎のような恋愛のオトシマエもきっちりつけるだなんて、なんてセクシーでエレガントで男前なんでしょう。本気で惚れそうです。還暦を過ぎようが引退しようが、いくつになっても“現役”のオンナであるだろうと予想されるほど、その存在感はギラギラと生々しいですね。
そんなわけで、REDたちのアクがあまりに強烈すぎるため、サラ役には、華のないメアリー=ルイーズ・パーカーぐらいの地味な女優さんがちょうどいいわけです(笑)。

既製の楽曲を多用した軽快な音楽と、ポストカード風のシーンで場面転換し、登場人物たちがアメリカ中をあちこち飛び回っていることを示したポップな演出も、まあもベタっちゃベタですが(笑)、途中でだれることがないのでよしとしましょうか。ちょっとだけ不満だったのはクライマックスの決着シーンかなあ。全体の構図をフレームに入れなければならないため、カメラが引きすぎてしまっているのですよね。寄る、引くをもっと繰り返してメリハリをつけても良かったかも。

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さて、果たしてこの映画は、“老人が若者に負けないようにガンバル”内容だったのでしょうか?

おそらく違うでしょう。老いてパワーを失っていることぐらい、彼らのような生き方をしていた人間なら、嫌というほど自覚しているはず。彼らはその不足しつつある部分を、これまでに培った経験値で補っているだけなのです。いわゆる赤瀬川氏が提唱していた方の“老人力”を活用しているわけですね。それでも充分やっていけることがわかった。老いたからといって、猫を相手に日向ぼっこをしなくともよいとわかったのです。自分が本当にやりたいと思っていること―スパイ工作とか暗殺請負とか(笑)―を、若い頃とは違った方法論でやればいいのです。自分の存在意義を見出せる事物を、自分自身の定めた理論でもう一度やり直す、と言い換えてもいいかもしれません。自分自身がもう充分だと感じるまで。

それこそが、“老人力”の真の自由だと思いますね。

…併せて読みたい(笑)1冊はこちら。

老人力 全一冊 (ちくま文庫)
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