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zoom RSS ティムのガールズ・ムービー―「アリス・イン・ワンダーランド Alice in Wonderland」

<<   作成日時 : 2013/04/30 22:48   >>

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ティム・バートン監督という人は、その特異なビジュアリストっぷりで有名になった、“オタク監督”の始祖である(笑)。特に彼の熱心なファンではない私だが、大ヒット作「ビートルジュース」、こちらに記事を書いた「マーズ・アタック!」は非常に気に入っている。オタならではの自虐的ひねくれ視点といい、マジョリティに真っ向から反発するごとくのマイノリティ&フリークス礼賛といい、世界中の根暗なgeekたちに希望を与える映画を撮り続けてきた。


そんな、メインストリームからは明らかにずれた感性の持ち主であるにもかかわらず、彼の映画は実にコンスタントにハリウッドに富をもたらしてきた。そして、気づけば“世界の恋人”ジョニー・デップ兄貴と名コラボを披露する、ハリウッド屈指の名監督にまでなってしまったのだ。
だからというわけではなかろうが、世界的に著名な童話作品から着想した新作「アリス・イン・ワンダーランド」、妙にウェルメイドな、ハリウッド臭がプンプンする作品のように感じられてしまう。バートン監督が何年構想していたか知らないが、映画を観れば、これが「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」をミックスして、そこに“少女”から“大人”になろうとする過渡期の女性ならではの“心の揺らぎ”と、彼女が力強く成長していく様を織り込んだ作品だとわかるだろう。



3D版、2D版ともに日本で大ヒットした本編。私が劇場に足を運んだ際も、それはもうジョニデ目当ての奥様方やら、原作ファンらしき夢多き淑女たちで客席はいっぱいだった。これは映画の公式ガイドブックだが、あまりに見ごたえがある内容なので、ぜひ映画を観終わってから購入されたい。


実際、映画の内容を説明しようとすると、それだけで事足りると思う(笑)。ストーリーはごくシンプル。

アリスは子供の頃、毎日のように“不思議の国”での冒険を夢に見ていた。ところが、芳紀19歳になったアリスは、てっきり夢のはなしだと思っていた“ワンダーランド”が、実在する世界だと知る。到底現実とは思えない、きちがいじみたフリークスが闊歩するその世界では、それらフリークスの頂点に立つような“デカ頭”こと赤の女王が恐怖政治を行い、傍若無人な振る舞いを極めていた。アリスは、ワンダーランドでのかつての記憶が戻らぬまま、その住人たちによって知らぬ間に救世主に祭り上げられてしまう。結局、成り行きから、赤の女王を倒す鍵となる“勇者の剣”を命懸けで手に入れたアリスは、赤の女王の妹で心優しい白の女王の居城に逃げ込んだ。
だが、アリスを迎え入れた白の女王は、さも当たり前のような顔でアリスが史上最悪のモンスターと戦ってくれるものと期待する始末。冗談ではないと尻込みするアリスだが、自分を助けてくれた人々のため、やがては自分の恐怖心に打ち勝って怪物に立ち向かっていく。赤の女王の軍勢と白の女王の軍勢が真っ向からぶつかり合う中、アリスはついにモンスターの首を切り落とした。赤の女王は国を追放され、ワンダーランドに平和が戻る。伝説通り、アリスは真の救世主になったのだ。ワンダーランドの住人はアリスとの別れを惜しむが、彼女は現実世界に戻り、新たに手に入れた勇気でもって閉塞していた現状を打破し、新しい人生の航海に乗り出してゆく。

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「アリス・イン・ワンダーランド Alice in Wonderland」(2010年)
監督:ティム・バートン
製作:リチャード・D・ザナック&ジョー・ロス他。
製作総指揮:クリス・レベンゾン
原作:ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
脚本:リンダ・ウールヴァートン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
プロダクションデザイン:ロバート・ストロンバーグ
衣装デザイン:コリーン・アトウッド
編集:クリス・レベンゾン
音楽:ダニー・エルフマン
シニア視覚効果監修:ケン・ラルストン
出演:ミア・ワシコウスカ(アリス)
ジョニー・デップ(マッドハッター)
ヘレナ・ボナム=カーター(赤の女王)
アン・ハサウェイ(白の女王)
クリスピン・グローヴァー(ハートのジャック)
マット・ルーカス(トウィードルダム/トウィードルディー)
声の出演:アラン・リックマン(芋虫のアブソレム)
マイケル・シーン(白うさぎ)
スティーヴン・フライ(チェシャ猫)
ティモシー・スポール(ベイヤード)
ポール・ホワイトハウス(三月うさぎ)
バーバラ・ウィンザー(ヤマネ)
マイケル・ガフ(ドードー鳥)
クリストファー・リー(ジャバウォッキー)他。
注:声の出演が超弩級の豪華な配役(笑)

ええ、いいお話であった。とてもポジティヴで。バートンの監督作品とは思えないほど(笑)。そして映画からは、終始非常に“フェミニン”な雰囲気を感じた。これは意外だったな。
バートン映画のヒロインは、美人なのに変わり者で、本人も周りから浮いていることを意識してか、常に不貞腐れた顔で無表情なのが定番だ。今回アリスを演じた新人女優ミア・ワシコウスカも同じ。特にアリスの場合は、自分の意思とは無関係に己の運命を定められてしまっていることに困惑している。そんなわけで、劇中、ミア=アリスが終始こわばった表情なのもいたし方のないところだろう。ま、そんな無愛想な顔もチャーミングなのだから、美人は得だ。かのウィノナ・ライダーを彷彿とさせますな。
そんなヒロイン、アリスが、妄想だかパラレルワールドだか知らないが、不思議の国のために私心を捨てて戦うことが、すなわちそのまま彼女の現実世界での苦悩を打破するパワーとなる、という設定は、とてもわかりやすく感情移入しやすい。従来のバートン映画の世界観を大きく逸脱することなく、より広い観客層にもアピールできる、実にうまいやり方だと感心した。
“バートンチック”を強く感じさせるのは、ジョニー兄貴演じるマッドハッター、バートンの正妻ヘレナ・ボナム=カーターが特殊効果で怪演する赤の女王といった数多いキャラクターたちの、文字通りのアクの強さだ。設定上、赤の女王が見た目にもキャラクター的にも突出して強烈なのは言及するまでもないが、相対する目の巨大なアン・ハサウェイ扮する白の女王も、なかなかどうして、一筋縄ではいかないキャラクターとして描かれている。従ってこの2人の女王様が画面に登場すると、ヒロインがかすんでしまうほどだ。あちこちで騒がれるジョニー兄貴の“マッド”っぷりは、むしろ定石通りというか、普段より抑え目。彼は今回は狂言回しとヒロインのサポートに徹し、観客の共感を集める“良心”の役割を担って、映画の重心をきっちりと支えているのだ。映像が摩訶不思議で美しい“しゃべる猫”や、英国の愛すべきコメディアン、マット・ルーカス演じるデブの双子の方が、ビジュアル的には目立っていたかもしれない。ストーリーが王道中の王道を進むだけに、全体的に毒成分薄めで物足りなさを感じる向きは、キャラクター設定でバートン調を楽しむといいだろう。

バートン監督は観客が期待する予定調和通り、ヒロイン、アリスに花を持たせる。そのさわやかな幕切れは、まるで女の子を礼賛するガールズ・ムービーの趣きである。だが、実際に映画を観終わった後にまで残る不思議な余韻は、フリークスの極点ともいえる赤の女王の悲哀だ。
暗黒の中世時代に実在した王そのままの醜悪さと残虐非道さで、彼女は観客の憎悪を一身に集める。しかし、その心の内は空虚だ。妹に国民の愛と信頼を奪われる悲しみ、そして、友達と呼べる人間が1人もいない孤独とで、彼女の精神は狂気の域にまで達してしまう。クライマックス、赤の女王と白の女王が直接対決するシーンは、今作の白眉であろう。善意の象徴たる白の女王と、悪意の塊たる赤の女王の哀れなまでの対比は、“勧善懲悪”という名のマジョリティーの無言の弾圧を感じさせる。そう、赤の女王が敗北を喫するのは、最初からわかりきったことなのだ。彼女の最終兵器、史上最悪のモンスター、ジャヴァウォックにしたところで、子供が描いたイラストのごとき長閑さだ。戦闘経験もない小娘と、腹に一物抱えた“善意”の女王に、あっけなく屈する醜いフリークスたち。この、一見すると日和見的な描写は、その実、バートン監督の“フリークス礼賛”という裏の真意が、逆説的に感じられて面白い。

してみると今作は、表のヒロイン、アリスと裏のヒロイン、赤の女王に象徴された、徹頭徹尾バートン監督印の作品だといえるのだろう。


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