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<<   作成日時 : 2015/08/08 23:35   >>

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ニューヨーク、ブルックリン、ユダヤ人として生きることと、愛すべき映画…=ポール・マザースキー。


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「グリニッジ・ビレッジの青春 Next Stop, Greenwich Village」
監督:ポール・マザースキー
製作:ポール・マザースキー&トニー・レイ
脚本:ポール・マザースキー
撮影:アーサー・オーニッツ
編集:リチャード・ハルシー
音楽:ビル・コンティ
出演:レニー・ベイカー(ラリー・ラピンスキー)
シェリー・ウィンタース(ラリーの母親フェイ・ラピンスキー)
ルー・ジャコビ(ハーブ)
エレン・グリーン(サラ)
クリストファー・ウォーケン(ロバート)
ジェフ・ゴールドブラム(クライド・バクスター)
ロイス・スミス(アニタ)他。

1953年。
インテリ演劇青年であったユダヤ人のラリーは、いくつになっても子離れできない過保護な母親の猛反対を押し切り、カレッジを卒業すると同時にグリニッチ・ビレッジへと旅立った。当時のグリニッジ・ビレッジはアートの最先端をいく街であり、俳優、作家、画家など、およそアート関連の道を志す若者たちで溢れかえっていたのだ。ラリーも、星の数ほどの見習いアーティストたち同様、将来への希望を胸にこの街に降り立った。
演劇の訓練に励む一方、ラリーはここでたくさんの友人と知り合う。お互いに励ましあい、また時に衝突したりしながらそれぞれの道を模索する日々。サラという恋人もできたが、自身のユダヤ人としてのルーツと現実社会との軋轢に悩み、さらには彼女の妊娠と中絶という苦々しい経験も得た。大切な仲間の1人を自殺という形で失い、出会いと別れを経て一回り大きく成長したラリーは、念願のスクリーン・テストの合格通知を手に入れた。そして、自らの青春そのものだったグリニッジ・ビレッジに別れを告げ、彼はこの懐かしい街を去っていくのだった。

画像

ニューヨークはブルックリン出身のユダヤ人映画作家、ポール・マザースキー。彼の監督作品は時に、とても感傷的だと否定的なニュアンスで語られることがある。

しかし、私は彼がメガホンをとった作品が大好きだ。それらは、子供の頃に一生懸命作った宝箱にも似て、死ぬまでなくしたくない大切な映画たちである。大昔、レンタル屋の片隅で埃をかぶり、半ば擦り切れかけていたビデオを大切に持ち帰り、繰り返し観たあの日を懐かしく思い出した。元々俳優でコメディアンだったマザースキー監督は、最近ではもっぱら役者としての活動がメインになっているようだ。だが、主に70年代に彼が製作した映画は、どれも繊細かつ珠玉のドラマ作品である。その中でも、個人的に特に大好きだったのが、この「グリニッジ・ビレッジの青春」と、後に触れる「ハリーとトント」だ。

「グリニッジ・ビレッジの青春」の主人公である演劇青年ラリーとは、もちろんマザースキー監督自身。今作は、監督の自伝的映画なのだ。50年代、アメリカのアート事情の最先端をいく街であったグリニッジ・ビレッジでの、焦燥と躍動感に満ちた刺激的な日々を、ノスタルジックに描いている。恋人との間に横たわる埋めがたい人種的溝や、仲間の死など、かなり重いエピソードも織り込まれながら、しかし決してウェットになり過ぎない演出が素晴らしい。若者たちの青春群像劇を、喜びも悲しみも抑制の効いたタッチで軽やかに綴っている。マザースキー監督作品の特徴は、登場人物たちの日常生活までもが透けて見えてくるリアルな生活感覚と、彼らが生きている街の情景の切り取り方にある。
今作でも、ジャズの旋律を多用したビル・コンティのご機嫌なスコアに乗って、今作当時はまだ本当に俳優の卵だったクリストファー・ウォーケン(儲け役!)やハエと合体する前のジェフ・ゴールドブラム、台詞なしのチョイ役ビル・マーレイ、体重は減らした方がいいだろうが役者としての貫禄は当時からメガトン級のシェリー・ウィンタースらが、生き生きとした演技をみせてくれる。また、グリニッジ・ビレッジに実際にロケを敢行し、街の息使いをも瑞々しく映像に捕らえている。
役者たちのフレッシュな演技、そして懐かしさを感じさせる情景の数々…。それらが一体化して、“アメリカの原風景”なるものが再現される喜びを、私たちはマザースキー監督の作品から得ることが出来るのだ。そこで織り成されるドラマは決して甘ったるいものばかりではなく、人間の機微の襞を丹念になぞった、むしろほろ苦いもの。しかし、人の“思い出”が時間の経過と共にセピア色の記憶に包まれていくように、マザースキー監督の作品も、最後には全てを受け入れた穏やかなぬくもりを観る者の胸に残してくれる。

悲惨かつ過酷になる一方の今だからこそ、また、目が回るような3D映画やジェットコースターのごとき忙しない映画がもてはやされる今だからこそ、マザースキー監督の名作を手に取ってみるべきではないのかと思う。まだ豊穣だった頃のアメリカ映画の輝きを思い出させてくれる名画が、DVDとなって再び若い人たちの手にゆだねられることは、今後のアメリカ映画の発展を促す意味でも大変に意義深いだろう。“アメリカ映画の良心”とでも呼ぶべき、繊細かつほろ苦くも暖かい人間ドラマをじっくりご覧になっていただきたい。


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