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zoom RSS “彼女と彼女”の物語―リサ・チョロデンコ

<<   作成日時 : 2010/05/10 15:17   >>

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キャサリン・ビグロー監督のオスカー獲得に準じ、女流映画監督全般への注目度もアップしたのではないだろうか。これから先、多くの女流映画監督たちが製作する作品にスポットライトが当てられ、なおかつ正当な評価が与えられることを期待している。

「ハイ・アート High Art」「しあわせの法則 Laurel Canyon」等で知られるリサ・チョロデンコ監督の、最新作のトレーラーが公開され始めている。その作品は、『The Kids Are All Right』というタイトルの風変わりな家族コメディものだそうだ。シノプシスを見る限り、なかなか興味をそそられる内容である。

アネット・ベニングとジュリアン・ムーア演じる同性カップルに育てられたティーンの子供たち(「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ、「センター・オブ・ジ・アース」のジョシュ・ハッチャーソン)は、たとえ生物学上の繋がりだけだとしても、やはり自分たちに生命を与えてくれた“精子提供者”を探していた。
彼らはようやく“父親”にあたる人(マーク・ラファロ)を探し当てる。子供たちは驚くべきことに、彼をちょっと変わった自分たちの家族の中に迎え入れようと計画するのだ。この、“ママ2人にパパ1人、子供2人”の家族は、果たしてどのように変化していくのか。複雑化した現代社会の中で、改めて問い直されることの多い“家族の絆”を、ユーモアたっぷりにあぶりだしていく。

The New York Times―“現代社会における家族の肖像を見事に活写した作品”
Entertainment Weekly―“ちょっと可笑しくて知的でありながらセクシーな作品”

私自身は、チョロデンコ監督の劇場公開作品のうち、1998年の「ハイ・アート」と2002年の「しあわせの法則」しか観ておらず、コロンビア大学在学中に撮った短編『Dinner Party』は全くの未見。また、他に監督としての彼女の仕事振りが観られるのは、テレビ・ドラマシリーズの「シックス・フィート・アンダー」と「Lの世界」だけだということもあり、なかなかその真価を判断できる状況にはない。
しかしながら、新作『The Kids Are All Right(子供たちは平気よ)』の出来如何では、ひょっとしたらチョロデンコ監督への評価もぐんと高まるかもしれないとひそかに期待している。なぜなら、今作では、おそらく彼女が本当に取り組みたかったであろう題材に、真っ向から挑んでいるように思えるからだ。


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リサ・チョロデンコ Lisa Cholodenko(「しあわせの法則」演出中のリサ。画像向かって右側)

1964年6月5日生まれ
アメリカ、カリフォルニア州ロサンジェルス出身

コロンビア大学在学中に手がけた短編『Dinner Party』で高い評価を受ける。低予算で仕上げた作品「ハイ・アート」では、新進女性編集者と謎の女流写真家の間に生まれた、曖昧で隠微な愛情を美しく描いた。写真家を演じたアリー・シーディーの演技に対しNational Society of Film Critics Awardが授与され、サンダンス映画祭ではThe Waldo Salt Screenwriting Awardを受賞した。その後、しばらく人気テレビドラマシリーズのエピソードを監督する仕事を挟みつつ、あくまでもインディペンデントな姿勢で、女性の観点に立ったドラマ「しあわせの法則」を製作。実力ある俳優たちの賛同を得、カンヌ映画祭で作品が上映された。
2004年にはサンダンス映画祭でスタッフとして働き、2005年にはレズビアン女性の生態を生々しく描いた画期的なドラマ「Lの世界」に監督として参加する。なお、チョロデンコ監督は、私生活ではミュージシャンのウェンディ・メルヴォアンとパートナーシップを築き、子供も得ている。

●フィルモグラフィー

2010年『The Kids Are All Right』兼脚本
2005年「Lの世界 シーズン2」(TVシリーズ)
2004年『Cavedweller』
2002年『Push, Nevada』(TVシリーズ)
2002年「しあわせの法則」兼脚本
2001年「シックス・フィート・アンダー シーズン1」(TVシリーズ)
1999年『Homicide: Life on the Street』(TVシリーズ)
1998年「ハイ・アート」兼脚本
1997年『Dinner Party』兼脚本、編集
1994年『Souvenir』兼脚本、製作

チョロデンコ監督にとって、レズビアンとしての自身のアイデンティティを映画にどのように生かすかということは、長年のテーマであったと想像する。世捨て人のように暮らしていた女流写真家と、そんな彼女を再び表舞台に立たせようとする野心家の女性編集者との間に生まれる、危うい心の結びつきを繊細に描いた「ハイ・アート」然り、はたまた、医者を目指す生真面目な女の子と、その婚約者の奔放な母親との間で交わされる奇妙な交流を描く「しあわせの法則」然り。2作品とも、結局は、“同性愛”とそれを異質なものとして拒む社会との間の軋轢に題材が収束してゆくような気がする。

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「ハイ・アート」では、女性の持つ複雑な愛情観念を、そのまま映像に焼き付けたイメージが強い。女性は時として、同性へ友情以上の感情を抱くことに抵抗が少ない。格別身構えてみなくても、フラットな感覚でもって“同性愛”を受け入れることができるのだ。少なくとも男性よりは。友情と愛情の間に見え隠れする曖昧な境界線。それをいち早く認識できるのも女性なら、それをひょいと飛び越えてみせるのも女性であろう。実は、ヘテロセクシュアルとホモセクシュアルの間の境界線も、あって無いようなもの。その曖昧さこそ、“愛情のカタチ”の本質だといえる。今作では、女性同士のセクシュアルな交流の中に、それを痛感できるのだ。
余談だが、今作で熱演を披露したアリー・シーディーの姿は、また別の意味で感慨深い。“ブラットパック”という言葉にピンとくる人(笑)なら、わかっていただけるだろう。90年代は遠くになりにけり。


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ところがチョロデンコ監督は、続く「しあわせの法則」で、家族の絆と男女間の絆という普遍的な生活風景の中に、あえて違和感をもよおさせる“同性同士の接近”を放り込んでみせた。結果として、母親と息子の間、もしくは息子とその婚約者の間の意識の軋轢を描きたいのか、あるいは、1人の女性が性への既成概念の殻を破って成長する姿を描きたいのか、どっちつかずの中途半端な印象を与える仕上がりになってしまった。これは残念だ。

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おそらく、現実に社会の中で当たり前のように見られる性認識の曖昧さ、コミュニティーの中で、それこそごくごく普通の人々の中に混じって同性愛が存在しているのだということを、監督は描きたかったのだろう。ローレル・キャニオンという、アメリカの中でもある種特殊な場を舞台にした意図も、異性愛、同性愛の線引きが曖昧な舞台背景が欲しかったからではないだろうか。

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「しあわせの法則」では、母親が息子ほども年が離れた男性との奔放な恋に落ち、息子は息子で、そんな母親に反発しつつ、自らも婚約者以外の女性の関心を買ってしまう。真面目一辺倒だった息子の婚約者は、堅い自己防衛の殻を破る手伝いをしてくれた女性と擬似恋愛し、婚約者以外の男性と性の冒険をする。それぞれの絆は一度破綻し、しっちゃかめっちゃかになるのだが、“雨降って地固まる”のことわざ通り、より深い相互理解を獲得した上でそれぞれが元の関係性に戻っていく。そう、性の不確かさなんて特別なことじゃなく、ごく当たり前のように経験するものなんだよ、という監督の主張はよく理解できる。
劇中、女性同士のレズビアンもどき(笑)のラブシーンがあるのだが、いかんせん、ケイト・ベッキンセールに“性の曖昧さ”が足りず、従ってエロティシズムも不発。「ハイ・アート」は耽美的であったが、今作はセクシャルな描写が本編から浮きがちで、それがちと物足らない。また、作品をコメディ寄りにしたいのか、はたまたシリアスなドラマにしたいのか、演出のベクトルに迷いがあるような気もする。


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その点、新作『The Kids Are All Right』では、レズビアンカップルと1人の男性が新しいカタチの家族を築くという、確固としたテーマ基盤がある。自身も女性と家庭を築いている、チョロデンコ監督の自伝的要素の濃い内容かもしれない。ならば、彼女が本当に描きたいと思うシーンを躊躇なく構築できるのではなかろうか。私がこの新作に寄せる期待も、その部分に起因する。
それにしても、アネット・ベニングとジュリアン・ムーアとは、また濃いカップルもあったもんだ(笑)。彼らの重心の低い演技と、地味ながら渋い脇役として光るマーク・ラファロの演技合戦も楽しみである。
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
豆酢さーん、The Kids are all right、これすごーく見たいです。今予告編見て余計わくわく。多分日本公開ないだろうから早くDVD出ないかなあ〜。
アネット・ベニングは軽やかにしてる時のほうが好き。ジュリアン・ムーアは来月センチュリーでA SingleManで見られますね、多分いつものムーアが。
最近どうも気分がくさくさしてよろしくありません。到着したRedRiding始め見るものはたくさんありますが、気持ちがね。
atsumi
2010/09/13 17:45
atsumiさ〜ん、お返事が遅くなってごめんなさいヽ(;▽;)ノ。実は、まだ布団と熱愛中でありまして…(ーー;)。
チョロデンコ監督のような映画作家が、もっとたくさんの作品を手がけられるようになるといいですよね。新作は、私もすごく興味があり、楽しみにしてるんです。アネットもジュリアンも、コメディの方がアクの強さが中和されてイイ感じだよね。
シングル・マンは、とにかくコリン・ファースの映画。ジュリアンは重いけど、ぜひ観てほしい作品です。Red Ridingは、観ると気分が荒れます(笑)。要注意。
豆酢
2010/09/15 09:16
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