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zoom RSS “死”は彼女と彼を別たない?!―「永遠に美しく… Death Becomes Her」

<<   作成日時 : 2017/12/23 15:00   >>

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"過ぎたるは及ばざるがごとし。 Less is More."

「永遠(とわ)に美しく… Death Becomes Her」(1992年製作)
監督:ロバート・ゼメキス Robert Zemeckis
製作:ロバート・ゼメキス&スティーヴ・スターキー
脚本:マーティン・ドノヴァン&デヴィッド・コープ
撮影:ディーン・カンディ
特撮:ILM
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:メリル・ストリープ(マデリーン)
ブルース・ウィリス(アーネスト)
ゴールディ・ホーン(ヘレン)
イザベラ・ロッセリーニ(リスル)
シドニー・ポラック(クレジットなし)他。

1978年。かつての人気女優マデリーンも、忍び寄る老化のせいで、今や見る影もなく落ちぶれている。内心焦る彼女の元に、学生時代からなにかにつけていがみ合い、競い合ってきた永遠のライヴァル、ヘレンが現れた。ハリウッドでも引っ張りだこの著名な整形外科医、アーネストと婚約したことを自慢にしにきたのである。怒り心頭のマデリーンは、女優のメンツにかけても2人の結婚を阻止せんと燃える。その結果、数ヵ月後にアーネストと結婚していたのはマデリーンの方だった。ショックのあまり過食症に陥ったヘレンは身体を壊し、それから7年後についに療養所に収容されてしまった。

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さらに7年後の1992年。一方のマデリーンは、メイドに傅かれてビヴァリーヒルズの豪邸で優雅に暮らしていたが、結婚当初から波乱続きだった夫アーネストとの仲はとっくに冷え切っていた。しかもアーネストは、マデリーンに利用されつくした挙句、整形外科医としての信用を失って葬儀屋に転職している有様だ。マデリーンは齢50代に入り、いかな美容術を施してもかつての美貌を取り戻せないことに、苛立ちと焦りを隠せない。彼女はそのうっぷんを、情けない夫アーネストにぶつける毎日だったのだ。そんな2人にある日突然、ここ数年音沙汰のなかったへレンから、自伝出版記念パーティーの招待状が届く。半信半疑のマデリーンは、アーネストをひったてて早速敵陣に向かっていった。ヘレンは、居並ぶ報道陣の前で、足の付け根まで見えるようなセクシーな真紅のドレスに身を包みポーズをとっていた。まるで別人のようなヘレンの美貌に、開いた口がふさがらないマデリーン。ヘレンは、過食症から立ち直り、別人に生まれ変わった秘訣を記した自伝でベストセラー作家となっていたのだ。
ライヴァルの成功に気を悪くしたマデリーンは、ヘレンの美貌だけではない、若さの秘訣をなんとしても探り出したかった。そこで行きつけのエステの社長に頼み込み、リスルという謎の美女を紹介してもらう。早速リスルの元に赴いたマデリーンは、外の世界でリスルの名前を絶対に明かさないことを条件に、大金と引き換えに怪しげな秘薬を授けられた。その秘薬は、老いた肉体に若さと美しさを甦らせ、さらに肉体の老化を永遠に止めてしまうという。リスルは、くれぐれも自分の身体を傷つけたりしないようにと念を押す。この秘薬の秘密を外に漏らしたりするのもご法度だ。震える手で秘薬を飲んだマデリーンのたるんだ肌には張りが戻り、胸はきゅっと盛り上がり、ウェストも20代の頃のように引き締まった。もちろん顔も全盛期のマデリーンそのものだ。

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一方その頃、ゴージャス美女となったヘレンはかつての婚約者アーネストを訪ねていた。マデリーンへの復讐のため、彼をその肉体で誘惑すると、マデリーンを殺害するようそそのかすのだ。その直後、若さと美貌を取り戻してすっかり有頂天のマデリーンが帰宅した。自信を取り戻した彼女は、相変わらずうだつの上がらない夫を一層高飛車にののしった。アーネストは思わずカッとなって彼女を階段から突き落としてしまう。嫌な音がして、マデリーンの首は完全に折れてしまった。ところが、妻を殺害してしまったと青ざめるアーネストの目の前で、当の本人はむっくりと起き上がる。そして首がぐるぐると捻じ曲がったままの状態で、何事もなかったかのように再び怒鳴りはじめるのだ。マデリーンの肉体は完全に死んでいるはずなのだが、本人は自分が死んだことにすら気づいていないらしい。これは例の秘薬の副作用だった。秘薬は肉体の若さを永遠に保つ。つまり、肉体が何らかの理由で死んでしまっても、その若さだけは永遠に保たれるわけだ。秘薬は不老だけではなく不死の力をも肉体に授けている。リスルが身体を傷つけるなと警告したのはそのためだった。

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信じられない話を聞かされたアーネストは、すぐにで逃げ出したい心境になる。だが、マデリーンに協力して彼女の肉体をなんとかしなければ、自分はあっというまに妻殺害犯になってしまう。アーネストは、葬儀屋として死体に施す防腐処置をマデリーンの身体に行った。こうすれば死んだ肉体はとりあえず腐らずに済む。そこへ、事の首尾を偵察するためへレンが現れた。ヘレンの悪だくみを瞬時に察知したマデリーンは、猟銃を持ち出してライヴァルの腹のど真ん中を撃ち抜く。衝撃でプールに吹っ飛んだヘレンは、しかし蒼白な顔のまま立ち上がり、負けずにマデリーンに怒鳴り返す。ヘレンもリスルの秘薬を飲んでおり、不老不死であったのだ。完全にぶち切れた女2人は、積年の恨みつらみを晴らすべくついに素手で殴り合う。しかしよく考えればお互いに不死の身である。相手の身体にナイフを突きたてようが、スコップで頭を殴ろうが、2人とも死にはしない。くたびれた女2人は不毛な争いをやめ、改めて長年の諍いの種であるアーネストを見やる。情けなくもうだつの上がらぬ、単なる中年男のアーネスト。自分たちはこんな男のために命を張ってまで争っていたのだ。馬鹿らしくなった2人はさっさと和解協定を結び、死なせてしまったお互いの肉体の保持のため、とりあえずアーネストの葬儀屋としての腕を利用することにする。

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ゾンビが2体に増えた。アーネストは、自分勝手で己のエゴしか頭にない女2人の奴隷になってなるものかと、家を出て再出発する決意を固める。しかしここでアーネストに出て行かれると、身体のメンテナンスを行う者がいなくなる。マデリーンとヘレンは結託し、アーネストを無理やりリスルの元に連れて行った。彼を自分たちと同じように不老不死にしてしまえば、これから永遠に死化粧メーキャップをさせることができると考えたのだ。女たちの恐ろしい企みから逃れるため、アーネストは必死にリスルの隠れ家から脱出する。ところがその途中で彼は足を滑らせ、屋根に宙吊りになってしまった。マデリーンとヘレンは、今こそ秘薬を飲むように彼に懇願する。アーネストは悩んだ末、その秘薬をポケットから出したが捨ててしまった。誰しも死を逃れることはできない。腹をくくった彼は運命を神に託し、手を離して落下していった。アーネストが秘薬の秘密をもったまま逃げ出した責任を問われ、マデリーンとヘレンはリスルの組織から追放されてしまった。その頃、当のアーネストは、プールの中に落ちて事なきを得ていた。

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数年後。自由を求めて逃走したアーネストは、別の女性と平凡ながら幸せな結婚をする。彼は、マデリーンとヘレンという2人の女との壮絶な経験から、結婚して子をなすことこそ人生の最上の幸せであると心から悟った。彼は後半生をかけてその教訓を人々に教え説き、自らも大勢の子供や孫、ひ孫に囲まれて大往生した。
彼の葬儀が行われている教会には、たくさんの参列者に混じってあのマデリーンとヘレンもいた。お互いのために常に一緒に支え合っていなければならなくなった女2人は、愚痴をこぼしつつ、ミイラ化した身体をギクシャクいわせている。顔にはピカソの抽象画のような化粧。身体が硬直しきった彼女たちの技術ではそれが限度だったのだ。階段で足を踏み外した2人は、ついに身体がバラバラに砕けてしまう。それでも死ねないマデリーンとヘレン。首だけの状態で、女2人は何事もなかったかのようにお互いに悪態をつくのだった。

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いつまでも若くありたい。成人した娘がいようがどうしようが、私は永遠に20才。そう、目指すのは“エイジレス”…。
今に始まったことではありませんが、女性の若さと美しさへの渇望は、近年ますます極端になった感がありますね。綺麗な肌で細い身体こそ至上の美と認識する世間の風潮は、年齢に関係なく全ての女性に対し、ダイエットやそのほか様々な美容術を強制します。もっと美しくなりたいでしょう?もっと若く見られたいでしょう?もっともっとほっそりしたいでしょう?…挙句の果てには、恐ろしげな美容整形にまでハマり込んでいく恐怖。最近では、そうした行き過ぎた美容術偏重の弊害で、健康を脅かされる人の増加が懸念されています。それに、こういった問題はなにも女性だけに限らず、今や男性諸氏における美容への関心の高さは上昇する一方であるとか。かくも“美”への妄執とは、人の理性と自我を失わしめるものなのですね。

スティーヴン・スピルバーグ監督の「1941」の脚本を手がけて以来、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズや「フォレスト・ガンプ/一期一会」などの監督作で大ヒットを飛ばしてきたロバート・ゼメキス監督。彼がメガホンを取ったこの「永遠に美しく…」は、コリン・ファース主演の不条理心理劇「アパートメント・ゼロ」の脚本・監督を手がけたマーティン・ドノヴァンと、同作で共同脚本を手がけ、後に「ミッション・インポッシブル」などの脚本家として脚光を浴びることになるデイヴィッド・コープの手になるブラック・コメディです。自身、脚本家でもあるゼメキス監督は、ドノヴァンとコープの脚本の面白さに惹かれ、この企画を進めることになりました。優れた演技派俳優陣を得たこのホラー・コメディは、スピーディーで無駄のない展開にピリッと辛味の効いた描写を織り交ぜ、エンターテイメントとして充分鑑賞に耐える作品に仕上がっていると思いますね。メリル・ストリープのフィルモグラフィーの中でも、あまり重要視されることのない作品かもしれませんが、私は結構気に入っています。

かつては美人女優だったものの今は落ち目の女優マデリーンと、その永遠のライヴァル、ヘレンの1人の男性を巡るいがみ合いが、やがては全ての女性の秘めたる願望でもある、若さと美への執着に変貌していきます。その有様は、傍目には確かに可笑しいんですけど、あながち笑ってばかりもいられないようなリアルさが含まれていて、相当にシニカル。それに、この2人の女性、さすがライヴァル同士らしく、実にささいなことで真剣に争うのですが、結局はその原因もおもちゃの取り合いをする子供のけんかと大差ありません。どちらかが先に手にしたおもちゃを、先を越された方が取り返さんとするため、さらに豪華なおもちゃに手を出していく。要はその繰り返しなんですね。2人が取り合うものが、“アーネスト”から“永遠の若さと美” に変わっただけ。しかし彼女たちが手にした次なるおもちゃは、一歩間違えば自然の摂理を曲げてしまう恐ろしいものでした。

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この、永遠の若さと美を肉体に与える秘薬の設定が上手いですね。若く美しい身体を作り出す代わりに、死の概念を肉体から奪ってしまうのです。秘薬をマデリーンたちに与える怪しげな美女リスルが警告したとおり、うっかり肉体を傷つけてしまうと、傷はそのままで身体だけが生き続けるというおかしな状況になってしまうのです。秘薬を飲んだ者は一種の不死身になるわけですから、まるでゾンビのように、殺しても殺しても元気に動き回れるわけですね。
ですがいくら不死身といえど、マデリーンとヘレンのように調子に乗って肉体を破壊してしまうと、身体はミイラ化していくのに生き続けねばならない恐怖が訪れます。原題の『Death Becomes Her』はそういう意味合いが含まれているのですね。映画は、肉体が塵のようにバラバラになってしまっても尚身体に塗るための大量のペンキを持ち歩く、女の美への執念を意地悪く笑い飛ばしています。マデリーンとヘレンの恐怖の末路とは対照的に、アーネストのその後は、“美の誘惑”の魔の手を振り切って平凡な結婚に幸福を見出し、神が与える自然そのままに子宝に恵まれたというもの。まあ自業自得だというものの、神の摂理に逆らった女たちをことさら罰するかのような、勧善懲悪的解釈も感じられますね。周りの迷惑を顧みず、ただひたすら己の欲求を満たすことに邁進する女性を煙たがり、貶めようとする視線が、画面からこちらを窺っている気すらします。これは多分に、脚本の書き手も監督も男性であるせいでしょうね。かといって、マデリーンやヘレンのような女性の擁護をする気にはなれませんが。己の欲望のみに忠実に生きるなんて、野生動物の生き方と大差ないじゃありませんか。

この映画の見所の1つ、視覚効果ですが、特殊メイクの神様ディック・スミスの協力を得て、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でおなじみになったILMのメンバーが多彩なイマジネーションを画面上に展開しています。1992年度のアカデミー賞では、ケン・ラルストン、ダグ・チャン、ダグ・スマイス、トム・ウッドラフJr.の4名が見事受賞の栄誉に浴しました。授賞式では、テレビ中継のカットの餌食にならないように、4人があっという間に謝辞を述べてスピーチの最短記録を作ったとか(笑)。地味な部門ですから、テレビ中継では真っ先にカットされてしまうんですよね(笑)。大女優であるメリル・ストリープの首を「エクソシスト」よろしく180度回転させたり、アメリカの偉大なるコメディエンヌ、ゴールディ・ホーンの腹に風穴を開けたり、やりたい放題していながら、この2人の女優のすさまじい肉弾戦にしっかりスパイスを効かせていました。対する女優たちも、この奇天烈でありながら、“若さと美”偏重の社会を風刺する一面も持つコメディを随分楽しんで演じているようです。

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特に、この作品に出るまであまり極端なコミカル演技とは縁のなかったストリープのそれは見もの。本来ならば、ストリープの方が、ライヴァルへの復讐に余念のないいじけ女ヘレン役で、ホーンが強欲で見栄っ張りなマデリーン役を大仰に演じるのが妥当な線でしょう。それをあえて逆に配したキャスティングも成功していますね。容色の衰えに焦るマデリーンが、別人になったヘレンと再会するシーンは白眉。下手なホラーよりよほど怖いですわ(笑)。2人の間に、一瞬演技とは思えないほどの嫉妬と怒りと妬みの感情が交錯します。ストリープの眉間の縦皺の深さに、女の業の深さを垣間見た思いがしました(笑)。その後彼女たちが、“美の保持”という共通の利害のためにいともあっさりと同盟を結ぶ辺り、女性のしたたかさと現実主義的ちゃっかりさを見事に体現しています。彼女たちの、善きにつけ悪しきにつけ周囲を圧倒する佇まいに比べ、アーネストを演じたウィリスのなんと貧相なことか(笑)!
彼は、コメディの微妙な間合いの取り方も上手ではなかったですし。これは役柄のせいだけではないでしょう。熟女2人の身体を張ったがちんこ勝負を前にしては、いかなダイ・ハード・マンといえども見せ場を逸してしまった感が強いです。ミス・キャストとは言わないですが、これでは、アーネストの最期が幸福だったというオチの説得力が半減してしまいますねえ。身体が塵と化しても、変わらず元気に悪態をつける分だけ、女2人の生き方の方が見ていて爽快な気がします。アーネストの役は、元々ケヴィン・クラインに打診されていたそうですが、ケヴィンの絶妙なボケ演技が2大女優に絡む様を観てみたかったものです。

この作品は、若さと美への妄執にとりつかれた女性を描いたものですが、華やかなりしハリウッドの裏側を覗き見る、バックステージものとしても興味深いですね。リスルの秘薬によって永遠の若さを得たスターとして、モンローやらガルボやらが実名で登場するのです。彼らは表向き、謎の死を遂げたことになっているのですが、実は不老不死の身体になって身を潜めて暮らしているというわけです。ハリウッドは映画の都、ファンタジーの都です。どんどん写実的になっていく時代でも、こんな奇想天外な物語がひょっとしてあるのかもしれないと思わせるだけの魅力が、まだまだハリウッドには残されているということでしょう。

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リスル役のイザベラ・ロッセリーニ(「ブルー・ベルベット」)も、ゲスト出演ながら楽しそうに怪演していましたよ。永遠の若さを得たいという女の欲望に応えるリスルとは、さしずめハリウッドの魔の誘惑を象徴する存在なのでしょうね。


"It's amazing how complete is the delusion that beauty is goodness." -- グリム童話より from Grimm's Fairy Tales

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