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zoom RSS 「ザ・ウォーカーThe Book of Eli / Le Livre d'Eli」世紀末を歩く人。

<<   作成日時 : 2016/03/22 13:48   >>

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さて、不安定で不穏な世界情勢を反映してか、映画界では相も変わらず“世紀末映画”の製作が人気です。以前公開されたデンゼル・ワシントン主演SF世紀末映画「ザ・ウォーカー The Book of Eli」は、残念ながら巷の評価は奮わなかったのですが、今後、類似したテーマ性を持つ作品がお目見えするだろうことを予想して、パリ滞在中に書いた2009年の旧記事を再奉納しておきますね。あのスティーヴン・キング Stephen King先生の筆になるダーク・ファンタジー大作「ダーク・タワー The Dark Tower」の映像化企画がいよいよ始動する噂もありますし。

〜〜〜〜〜2009年に書かれた旧記事〜〜〜〜〜

アメリカの興行では、ついに「アバター Avatar」の独走を止められなかったという(泣笑)、デンゼル・ワシントン主演の世紀末映画「ザ・ウォーカー The Book of Eli」。本日、Bercyのシネコンで観てまいりました。いやあ、当初の予定では、ジョージ・クルーニー兄貴にオスカーを獲らせてあげたい「Up In the Air」を観に行く予定だったのですが…。ですが…。追記終了しました。

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やっぱり、ゲイリーが悪玉を演じるとあらば、どーしても見に行かねばーっ!ごめんよーっジョージ!

生き残ったウサギ顔の男、またの名をお髭なのに何故キュート?のゴッサム・シティのコミッショナー(妖笑)ことゲイリー・オールドマンが、久しぶりにビッチな悪党野郎を好演していると聞けばあなた、これはでかいスクリーンでその逝きっぷりを見届けねばならんと思うでしょ?ね?
先にゲイリーの初見感想をメモしておきますが、いやあ、やっぱこの人は悪党をやると上手いわ(涙)。もうブラボー!としか(泣)。本当にそれは地じゃないんだよね?と念押ししたくなるほど、見事な逝きっぷり。ただ、今まで彼が演じてきたイカレポンチ役と違うところは、ゲイリー演じるところのカーネギー(ホールじゃないわよ)という男、物語の中ではかなりの知性と知識を持っているのですね。冷酷非情ではあるけれど、ただ単に人々の上に君臨したいと願う独裁者でもなさそうな気配が感じられるんです。カーネギーは、イーライという謎の男が30年間たった1人で守り続けてきた“本”(ネタバレになるのでまた後ほど解説しますが)を手に入れようと暴走し、結果的に数多くの犠牲者を出してしまいます。しかし彼は、イーライの本には、暴力で押さえつけるだけではなく、偉大な知性によって人々を教え導く術が書かれていると確信していました。カーネギーはその“知性”を真の“力”と呼び、それを欲していたわけですね。

数十年前に起こった核戦争により、視力を奪う死の光線が地上に降り注ぐようになった地球では、物理的にも、また精神的な意味合いにおいても、“光”を失ってしまった人間があふれるようになりました。動植物もその多くが死滅したため、人間は飢餓と渇きに苦しみ、自分より無力な人々を襲う蛮族と化しました。もちろん学問だの知識だのは何の役にも立たず、腕力こそが全てを支配するという、太古の地球に逆戻りしたかのような暗黒の未来世界。戦火を逃れて地上に残った雑誌や書籍を見ても、文字を知らないから中身を読むことすら出来ない人間ばかりなわけです。そんな状況下で、文字を読み、それを正しく理解できる数少ない人間であったカーネギーは、わずかに残った水源地を掌握しました。そして自分専用の軍隊を持ち、その水源地を独占して無政府状態であった人々を支配します。曲がりなりにも、自ら作ったコミュニティーの“王”となった彼は、その支配をさらに磐石にするために、暴力と共に、絶対的な…つまりは人々の精神的な拠り所にもなる“力”を探していた、と。その鍵となるのが、イーライが持っていた本であるのです。

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暴力で蛮族の王になるのは簡単ですが、もちろんそれだけではその支配基盤は脆いもの。カーネギーは早くからそれに気付いていたわけですから、自分と同じように文字を理解するイーライに脅威を感じるのも当然ですし、私がカーネギーというキャラクターに知性を感じるのも、まさにその点においてなのです。また彼は、さきの戦争で視力を失った妻クラウディアと娘ソラーラをも、まさに暴力によって支配しており、“本”を奪うためなら彼女達を捨て駒にすることにも躊躇はしません。まさしく典型的な悪党の所業です(笑)。でも、結局イーライの“本”を前にして何も出来ない無力な己を知ると、結果的にコミュニティに再びカオスを招いてしまった事実を悟り、怯えるわけですね。頼りになる右腕兼用心棒レッドリッジを失い、自分の元から去っていこうとするクラウディアに思わず縋りついてしまう。クラウディアに改めて指摘されるまでもなく、諸悪の根源が他ならぬ自分自身であることは、彼とて百も承知していたのでありましょう。一筋縄ではいかない、なかなか面白い悪党キャラだと思いました。ゲイリー・オールドマンが演ずる悪役が面白いのは、単なるイカレポンチに見える奴であっても、そこに何らかの奥行きが垣間見えるせいでしょうね。


…とまあ、今作の物語の設定からして、核戦争による荒廃した地球を舞台にしたSF西部活劇ということで、かの「マッドマックス」シリーズのようなモチーフは、既に使い古されている感もあります。おまけに、同時期に「ザ・ロード」という、同じく荒廃した未来世界を背景にした暗鬱な作品も公開されているわけで、今作の細かいストーリーのアラは、やはりどうしても作品の質を下げてしまうでしょう。Rotten Tomatesだかの評価が概ね低いのも理解できるのですが、しかし個人的には、世間で言われているほど酷い作品とは思いませんでした。今作をシリアスな作品と捉えず、B級SF娯楽作品なのだと考えれば、最後にストーリーが気持ちよくまとまっている点を評価して、10点満点中6.9点(中途半端な・笑)ぐらいあげてもいいかなと思いましたわ。


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「ザ・ウォーカー The Book of Eli」(2010年)
監督:アルバート&アレン・ヒューズ Albert Hughes&Allen Hughes
製作:Joel Silver&David Valdes&Denzel Washington他。
脚本:Gary Whitta
撮影:Don Burgess
音楽:Atticus Ross&Leopold Ross&Claudia Sarne
出演:Denzel Washington(Eli)
Gary Oldman(Carnegie)
Mila Kunis(Solara)
Ray Stevenson(Redridge)
Jennifer Beals(Claudia…mother of Solara)
Michael Gambon(George)
Frances de la Tour(Marta)
Tom Waits(Engineer)
Malcolm McDowell(Lombardi…Leader of new community)他。

ここから先は大幅にネタバレとなっていますので、今更ですが、そうした情報を仕入れたくない方はご覧にならないで下さいね。

さて、核戦争によって荒廃しきった広大なアメリカの、道なき道を黙々と西へ向かって歩く男、イーライ。彼が今までにどのような修羅場を潜り抜けてきたのか、はたまたどのような事情があってひたすら西へ向かうことになったのか、劇中ではあまり語られることはありません。しかし、手作りの弓矢や銃火器、かの座頭市も思わずちびってしまいそうな蛮刀で完全武装した彼が、道中を妨げる山賊たちを容赦なく叩き切ってゆく(文字通り首や手が飛びます・笑)冒頭の様子を見る限り、普通の男ではないことはすぐに知れます。
そんな彼が命がけで守り、かつ、自身も毎日欠かさず目を通している“本”の正体も、劇中では一応伏せられてはいますが、勘の良い人ならばすぐにわかると思います。イーライが偶然立ち寄ったコミュニティーで、その支配者たるカーネギーに目をつけられたイーライは、一晩をソラーラと過ごす羽目になるのですが、そのとき彼女に食事の前のお祈りの言葉を教えるシーンがあるからです。それをヒントに、カーネギーは運命の“本”を持つのがイーライだと感づくわけですね。

カーネギーの支配を良しとしない若いソラーラは、本を奪われる前にカーネギーの軟禁を逃れたイーライを追いかけていきます。1人でカーネギーの飼うごろつきどもをのしてしまったという腕力もさることながら、やはり、ある信念に基づいて黙々と歩く彼になにかシンパシーを覚えるものがあったのでしょう。イーライを演じるのが安定感抜群のデンゼル・ワシントンだけに、こういう設定のキャラクターにも説得力が増しますよね。尤も、イーライとて生身の人間、キリストのような聖人君子ではありませんで、道中、卑劣な暴力に晒される男女を見殺しにせざるを得ない場合もあったりします。その辺りの描写が、荒唐無稽なお話ながらなかなかにリアルな演出になっていると思わせる部分です。結局、ソラーラというお荷物が増えたために、イーライはカーネギーの追跡をかわしきれなくなりました。イーライとソラーラが道中出会う奇妙な老夫妻マーサとジョージの家で、やむを得ずカーネギー軍団と最後の決戦を演じることになるまでの流れは、おなじみの西部劇のスタイル。

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まあ、この作品全体が古式ゆかしい西部劇のスタイルに則っているため、“放浪の旅を続ける孤高のガンマンが、独裁者の支配する忘れ去られた町に流れ着き、そこで悪党どもと決闘する…”というイメージで捉えていただければまず間違いありません(笑)。どうしてそこで止めを刺さないの?とか、どうしてそこでみすみす取り逃がすわけ?等、冷静に考えればご都合主義的展開も、まあ西部劇特有のお約束だと思えば腹も立ちませんし(再笑)。

イーライの本はカーネギーの手に渡ってしまいますが、ようやく自身の中に眠る自我とパワーに目覚めたソラーラがカーネギーの元を逃げ出し、重傷を負ったイーライを支えつつ再び2人は西へ…つまり海辺に向かっていきます。目指すは、かつてアルカトラズ刑務所であった場所。そこを拠点にして、新しい平和な共同体を作ろうと腐心する指導者ロンバルディに、“本”の内容を伝えるためですね。イーライは放浪の旅の間に、本に書かれていた内容を全て暗記していました。人々の正しいリーダーであるロンバルディにそれを筆記させ、イーライ自身はようやく肩の重荷を降ろすことが出来ました。

そう、イーライとは、ある日神の啓示を聞き、地上に唯一残った“聖書”を守り、かつ、それを正しく使える者に伝える使命を持った、いわゆる“聖人”だったと考えられるわけです。なんでもアメリカ方面では、イーライを手っ取り早く“救世主”と説明しているようですが、それはちょっと違う気がするなあ。あの未来世界を良い方向に変えていくのは、これから登場する新しい世代の“リーダー”達の役目であろうし、また、イーライから直接聖書の言葉を伝え聞いたソラーラの使命でもあろうし。イーライの役目とは、希望を次の世代に伝えることであったと解釈するのが、自然だと思いますね。そしてもうひとつ、このお話では、荒廃した地上に複数のコミュニティが存在する設定になっているのですが、そこも私が今作を気に入った理由の一つです。というのも、人間は、例えどんな混沌の中に放り込まれたとしても、何らかの機能を成すコミュニティを作らねば生きてはいけないと思うからです。またそれこそが、人間と他の生き物を区別する境界線でもあるでしょう。ですから、この映画のように、健全なコミュニティもあれば悪いコミュニティもあると考えた方が、私には自然だと思えるのですね。

まあしかしながら、聖人であるのに、劇中ではいかな悪党相手といえど、どえらい殺生を行っているイーライ(笑)。“汝、殺すなかれ”という一文は聖書の中にないの?と突っ込みたくなるのは、きっと私が日本人であるからでしょう。それから、未来に希望を託すものが、ハムラビ法典でも仏典でもないところが、またなんとも言えない気持に(笑)。ま、アメリカはキリスト教の国ですから、仕方ないですな。

それから、ミラ・クニス演じるところのソラーラについて。ソラーラというキャラクターは、ぶっちゃけこの作品には必要ではなかったのでは?という意見もあるようです。私自身は、やはりあった方がいいと感じました。キリストにも彼の教えを広める使徒がいたように、イーライにも、彼の言葉に直接耳を傾ける人物がいていいと思います。ソラーラは実際、イーライとの交流を通じて、彼の精神をこの厳しい世界に伝える使命を自ら選択しました。家族をはじめ、多くの同胞が苦しむ現実から逃げていた彼女が、再びそこに戻る決意をしたわけですね。こんな形で、イーライの遺していった信念の種が芽吹いていく様を見るにつけ、昨今、至極真っ当なメッセージをストレートに主張できるのは、ひょっとしたら今作のようなジャンル映画だけなのかもしれないとふと感じました(笑)。

そうそう、今作には、映画オタにはたまらない豪華な俳優陣が、友情出演で登場されます。興味のある方は、劇場でお確かめください。

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画像向かって右は、ラスト、思わず一目惚れしそうなほどかっこいい後ろ姿を見せてくれたミラ・クニスちゃん。左は、劇中、足を撃たれてハァハァ弱っていくお姿も披露してくれる(大笑)、カーネギーことゲイリー。前から気になっていたんですが、ゲイリーって顔小っちゃいな!隣に並んでるミラちゃんの顔が…(以下、強制終了)。

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