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zoom RSS 事実は小説よりも奇なり−「将軍月光に消ゆI'll Met by Moonlight」

<<   作成日時 : 2015/01/20 01:00   >>

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そもそも、フランス風刺週刊誌シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)が掲載したイスラム教預言者ムハンマドの風刺画に抗議し、テロリストたちがシャルリー・エブド本社で銃を乱射した事件が事の始まり。

多大な犠牲者を出しつつ事件がようやく終息し、“表現の自由”への最も暴力的な圧力への反発と抗議運動が世界規模で広がったのが第2の波。
そして今、再び雑誌の表紙にムハンマドの風刺画を掲載して“我々はテロに屈しない”と声高らかに謳ったシャルリー・エブドの“行き過ぎた表現の自由”を巡り、世界中が混乱に陥っているようです。
元々キリスト教とは相容れないイスラム教の教徒達は、世界中で抗議のデモのために蜂起。“表現の自由を笠に着た他宗教弾圧”ではないかと、キリスト教教会に対し、不快感と怒りを表明しています。また、キリスト教圏内の人たちの中にも、シャルリー・エブドの妥協を許さぬ批判精神、異文化、異民族、異宗教への非寛容さを隠さぬ同紙のやり方に疑問を呈する声も上がり始めています。

…きな臭い雰囲気ですね。嫌な予感がします。黒人と白人の対立だけでも厄介なのに、この上、キリスト教とイスラム教という宗教がらみの因縁の戦いまで蒸し返してしまったら、それこそ、なし崩し的に第3次世界大戦になだれ込んでしまってもおかしくありません。

ネットで世界が一つに繋がっている今の時代、ストレスや怒り、哀しみ、不安といった伝播しやすいネガティヴな感情が、あっという間に世界中に広がるようになりました。そのため、暴動やデモ活動などの規模が膨らむスピードも数年前より格段にアップしており、また当初は理性的で民主的だったはずのデモ活動が暴徒化するのも一層速くなってしまいました。世界が小さく小さくなり、人々が狭い空間で押し合いへし合いしながら、お互いがお互いの行動を疑心暗鬼で監視し合う世の中。こんな世も末な時代に、私達がいったん“戦争”の境界線を踏み越えてしまったら、後はもう全てが死に絶えるまで争いは終わらないのでしょう。

ブラッド・ピットが主演と製作を兼ねた入魂作「フューリー Fury」を見ていて感じたのは、第1次世界大戦時代だろうが、第2次世界大戦時代だろうが、ベトナム戦争時代であろうが、はたまたアフガニスタンであろうが、結局いつの時代でも、戦争は人と人の醜い殺し合いに他ならないという不変の真理です。それでも、昔の戦争時代にはまだ、敵同士であってもお互いを尊重できる“人間らしさ”が残されていたように思いますね。


若かりし頃のダーク・ボガードDirk Bogardeの作品を一つご紹介しましょう。50年代の作品ですから、彼がまだランク製作会社との契約に縛られていた時期のものですね。ええ、これももちろん製作はランクで、パインウッド・スタジオを使って撮影されたものです。監督は、主に40年代に優れた作品を連発したパウエル=プレスバーガーのコンビです。

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「将軍月光に消ゆ I'll Met by Moonlight」(1956年製作)(英国)
監督:マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー Michael Powell & Emeric Pressburger
製作:マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー
原作:ウィリアム・スタンリー・モス
脚本:マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー
撮影:クリストファー・チャリス
音楽:ミキス・テオドラキス
出演:デヴィッド・オックスリー(ウィリアム(ビル)・スタンリー・モス大尉)
ダーク・ボガード(パトリック・リー・ファーマー少佐・フィレデム)
マリウス・ゴーリング(クライぺ元帥)
ドミトリー・アンドレアス(ニコ・ソルダン・エメリス)
シリル・キューザック(サンディ・レンドール大尉)
ローレンス・ペイン(マノリ)他。

第2次世界大戦も末期の1944年。クレタ島はドイツ軍が占拠し、島民を武力でもって支配していた。ドイツ軍に恨みや不満を持つ現地の男達は、島内の切り立った山岳地帯を根城にパルチザンを結成。英国軍は彼らを援護するために、島にファーマー少佐を送り込んでいた。少佐はスパイとして島民に溶け込み、密かにパルチザンをまとめ反ドイツ網を島中に張り巡らせていた。ファーマーは、島に在駐するドイツ占領軍司令官クライぺ元帥を官舎から誘拐し、捕虜にしてカイロへ連行するという大胆不敵な計画を立てる。そのために島中のパルチザンを配下に置き、英国からは友人でもあるビル・スタンリー・モス大尉を呼び寄せた。

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夜陰に乗じて英国軍駆逐艦がクレタ島の片隅に接近。モスは無事上陸に成功。すっかり日に焼け現地民と化している、ファーマー少佐こと愛称フィレデムと再会した。少佐からクライぺ誘拐計画を聞いたモスは、ろくに戦闘訓練も受けていない寄せ集めのパルチザンと自分だけで作戦を遂行することに戸惑いを覚える。確かにこの作戦が成功すれば、なによりメンツを重んじるドイツ軍は精神的な打撃を被るだろう。それに、ドイツ占領軍の中でも一番の切れ者はクライぺ元帥だ。彼がいなくなれば、ドイツ軍は総崩れになる。モスは、まるで十年来の知己のように自分を熱くもてなしてくれる島民の暖かさに触れ、この危険極まりない作戦に協力する決意を固めた。

島に点在するパルチザンと山岳地帯を挟んで連絡を取り合う。前もって手に入れていたドイツ軍警官の制服に身を包んだファーマーとモスは、夜、官舎に帰る途中の元帥の車を待ち伏せして奪取。元帥1人を捕虜にして、延々と続くドイツ軍の警戒網をなんとか突破した。英国軍の僚艦が接近できる島の南岸まで、険しい山岳地帯を徒歩で乗り越える。時間は限られている。やがて異変に気づいたドイツ占領軍の副司令官は、偵察艇を飛ばしたり、島民に脅迫まがいのビラを配ったりして、ファーマー達の居所を突き止めようと躍起になった。軍力だけで言えば、パルチザンはドイツ軍に圧倒される。彼らの味方はこの切り立った山岳地帯だ。敵の目を欺くには、ぎりぎりまで山から下りないようにしなければならない。一方元帥も、身に付けていた帽子や勲章などをこっそり道しるべに置いたり、わざと崖から落ちて怪我を負った振りをするなど、なんとか一行の足を引っ張ろうと画策する。あげくに、一行が追い詰められたと知るや、ドイツ軍の優位をほのめかして戦意を喪失させようと皆の気持ちをかく乱するのだ。

酒場で酔っ払って大事な伝令役をすっぽかした仲間や、せっかく届いた重要な連絡をうっかり読み間違える仲間などに悩まされながらも、ファーマー達はようやく山越えを果たし、南岸に到着した。だが一足遅く、ドイツ占領軍が既に海岸線を封鎖していたのだ。一行に危機が迫る。これを好機とみた元帥は、俊足な伝令ニコ少年を金貨で買収、自分の居場所をドイツ軍に知らせようとする。が、ブーツを買う金は欲しいが頭の良い少年は、金貨を握り締めてドイツ軍将校に嘘の情報を流した。ドイツ軍は一路、見当違いの方角へ移動し、ファーマー達は無事に海岸に降りることが出来た。ところが、沖合いに控える僚艦に連絡する段になって、モスもファーマーもモールス信号をさっぱり覚えていないことが発覚。あきれ果てる元帥。だがその場に、壮絶な臭いを撒き散らしながら仲間のサンディ大尉が現れ、彼が代わって懐中電灯で信号を点滅させた。

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僚艦内へ拿捕される元帥。モスは、彼が道しるべにするために山中に置き去りにした持ち物を全て返す。ニコ少年に与えた金貨もだ。のらりくらりとしていながらも、元帥の企みは全てモスとファーマーに筒抜けだったのだ。ここに至って元帥は、彼らを本物のプロと認め、その大胆な計画の成功に兜を脱いだのであった。

泥と垢だらけになったファーマーとモス。ファーマーに至っては、ブーツをニコに与えてしまったので、すっかり裸足の有様だ。今の彼らの願いはただ一つ、“リッツ・ホテルでビールを飲むこと”だ。


事実は小説より奇なり。これは第2次世界大戦中に実際にあった戦争秘話です。映画にも出てきた、ウィリアム・スタンリー・モス大尉の体験記を基に映画化されました。
脚色・監督は、1948年のバレエ映画「赤い靴 The Red Shoes」が有名な、パウエル=プレスバーガー Michael Powell & Emeric Pressburgerの両名。実は私、彼らの監督作品は、デボラ・カーの尼僧姿が美しくも鮮烈だった「黒水仙 Black Narcissus」、モイラ・シアラーが素晴らしかった「赤い靴 The Red Shoes」、戦時下で製作された「老兵は死なず The Life and Death of Colonel Blimp」(1943年)ぐらいしか観ておりませんでして。こんなにもコミカルタッチな作品があったなんて、不勉強にも知りませんでした。

今作製作に当たっては、ギリシア政府とギリシア映画界の全面的な協力があったそうです。それもむべなるかな、劇中、風光明媚なクレタ島の景色が随所に見られますね。特に島の山岳地帯から下を見下ろすショット、白い壁に太陽の日差しが照り付けて輝いているような、村のショットが美しいです。画面はモノクロなんですが、背景の美しさはさすがですね。ファーマー一行が厳しい山越えを行うシーンは、スタジオにセットを組んで撮影されたそうです。辺りに霧が散る中を闇に乗じて歩き続ける彼らのロングショットは、幻想的な雰囲気すら漂っています。ただ惜しむらくは、夜のシーンが多いのと、俳優の顔が泥やら垢やらで薄汚れているために、折角の俳優の顔をほとんど識別できないことですね(笑)。脇ですけど、味のある俳優シリル・キューザックやマイケル・ガフまで出演していたのに、これは実に残念。

クソ真面目なモス大尉役のオックスリーも、派手さはないけど好感が持てます。また、軍人として才能も決断力も優れていながら、パルチザンのまとめ役などという閉職に甘んじているファーマー少佐役のボガードも、余裕たっぷりなハンサム振りが実に新鮮でした。ピンチに陥ってもジョークを忘れず、それでいて虎視眈々と一発逆転を狙う豪快さも持ち合わせた、魅力的な英国紳士でしたね。後年、地獄に堕ちてしまったり、哀れな老醜の身をベニスの浜辺に晒すことになるお方とは、到底信じられない爽やかな二枚目っぷり(笑)。この作品でも、子供ながら賢いギリシャ少年ニコとの約束をきちんと守ったり、仲間とジョークの応酬に興じてみたり、なかなかキュートな表情を見せてくれます。思うに、案外ボガードの素顔に近い役柄だったのではないかしらん。彼の著作「レターズ―ミセスXとの友情 A Particular Friendship」を読んでみても、彼が意外におっちょこちょいでお茶目な一面を持っていることが伺えますもの。もっともこの頃のご本人は、自分が望むような深みのあるキャラクターを演じさせてもらえず、俳優として相当ストレスが溜まっていたようですが。

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「レターズ―ミセスXとの友情 A Particular Friendship」
著:ダーク ボガード
翻訳:乾 侑美子

さて、確かにこの作品は、シリアスに反戦を訴える類のものではありませんし、生々しい戦闘シーンで観客を圧倒するわけでもありません。クレタ島の人たちも、戦時下とは思えないような陽気さで、戦争をまるでお祭り気分で受け止めているように感じられますしね。その辺が受け入れられないという方もいるでしょう。でもこの景色とバックに流れるご機嫌なギリシャ・ソング(ミキス・テオドラキスによるメイン・テーマは最高!)を聴いていると、当時の島民と連合軍側の人々との触れあいは、案外ほのぼのとしたものだったかもしれないなあと思うのです。ドイツ軍将校だって、皆が皆、ナチス親衛隊みたいな連中ばかりじゃなかったでしょうし。現にロンメル将軍のような人だって実在したのですから。まあ、自分の心のどこかに、そんな風であって欲しいと願う気持ちがあるせいかもしれません。

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最後に、マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督コンビのフィルモグラフィーをご紹介しておきます。

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マイケル・パウエル Michael Latham Powell
1905年9月30日生まれ
1990年2月19日没

エメリック・プレスバーガー Emeric Pressburger
1902年12月5日生まれ
1988年2月5日没


●フィルモグラフィー Filmography

1969年「としごろ」(マイケル・パウエル単独監督)
1960年「血を吸うカメラ」(マイケル・パウエル単独監督・出演も)
1960年「ハネムーン」(マイケル・パウエル単独監督)
1956年「美わしのロザリンダ」
1956年「将軍月光に消ゆ」
1956年「戦艦シュペー号の最後」
1951年「ホフマン物語」
1950年「快傑紅はこべ」
1950年「女狐」
1948年「赤い靴」
1946年「黒水仙」
1946年「天国への階段」
1945年「渦巻」
1943年「老兵は死なず」
1942年「わが一機未帰還」(劇場未公開)
1940年「潜水艦轟沈す」
1940年「バグダッドの盗賊」
1939年「スパイ」

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彼らパウエル&プレスバーガーといえば、なんといっても有名なのは1948年の「赤い靴 The Red Shoes」でしょう。童話「赤い靴」のストーリーと、モイラ・シアラー Moira Shearer演じる“赤い靴”に魅入られた才能ある新進バレエ・ダンサーの人生物語が絶妙に、そして為すすべもなく悲劇的に交錯し、同化していく語り口の上手さ。クライマックスのバレエシーンでの、人工美を結集した幻想的映像マジック。当時SFXなど存在しなかったことを考えれば、技術的な意味においても脅威の映像ですね。

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悪魔によって仕立てられたこの赤い靴を履いた少女は、ただ単に踊ることが大好きで、楽しく踊ることだけを望んでいたのに、まるで揚げ足を取られるような形で悪魔の姦計に嵌ってしまいました。

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恋人の願いに従って一旦はバレエをやめた彼女も、バレエへの未練すなわち“赤い靴”を捨てきれず、恋人をとるかバレエに殉ずるのか、究極の選択を迫られます。

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今作の基調である童話「赤い靴」のストーリーでも、踊ることのへの情熱と恋人との平穏な生活という相容れない問題に引き裂かれたヒロインの人生でも、“赤い靴”が彼女に課す過酷な運命から逃れるためには、死を選ぶしかありませんでした。これは、皮肉と呼ぶにはあまりにも残酷な結末。

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この映画を子供の頃に初めて観た時、バレエで再現される“赤い靴”の圧巻の映像と、ヒロイン自身の人生が分かち難く結びつき、バレエ世界とヒロインの見ている現実があっという間に混濁、現実と妄想の区別がつかなくなってくる演出にゾッとしたものでした。一連のバレエシーンは非現実的で美しくも妖しく、地獄の淵がすぐそこで口を開けて待っているかのごとき、悪夢のような演出が施されていたからですね。結局、「赤い靴」の恐ろしい世界にヒロインの人生も吸収されてしまったわけで、“赤い靴”はヒロインにとって地獄への道を開く鍵になってしまったのでしょうか…。
マイケル・パウエル監督は、エメリック・プレスバーガーとのコンビを解消した後も単独でいくつか映画を撮っていますが、奇しくも「サイコ Psycho」と同年に製作したカルト映画「血を吸うカメラ Peeping Tom」(原題は“出歯亀”の意味)に、この「赤い靴 The Red Shoes」でも明確だった“現実と妄想の危うい混濁”というテーマが再現されているように感じましたね。

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このデジタル・リマスター版は、過去の傑作映画の修復とデジタル化作業に奔走する巨匠マーティン・スコセッシ監督Martin Martin Scorseseの監修によって完成したバージョンです(2006年から修復作業開始、2009年に完成)。スコセッシ監督は、昨年のNY映画祭でも、セルゲイ・パラジャーノフSargis Hovsepi Parajanyan監督の傑作群を修復、本来の鮮やかな色彩を取り戻したデジタル・リマスター版で上映していました。彼は、文化的見地からの映画作品の保護を訴え、多くの企業、団体から援助を得てフィルムの劣化が進んでいる過去の作品をサルベージすることをライフワークとしています。「赤い靴 The Red Shoes」ほど彼の熱意に応え得る映画もないでしょう。この作品に初めて触れるという方がいらっしゃるなら、ぜひとも、このスコセッシ監修版デジタル・リマスター・エディションBlu-rayでの鑑賞をお勧めします。


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パウエル&プレスバーガーのコンビ作品の中で個人的に特に気に入っているものは、この「赤い靴 The Red Shoes」と1947年の「黒水仙 Black Narcissus」ですが、両作共にロケ撮影を行わず、全て屋内にセットを組んで製作されています。“黒い水仙”というタイトルからして禍々しさを感じさせる「黒水仙 Black Narcissus」は、ヒマラヤ山麓にある、元はインドの領主の城であった女子修道院を舞台にした、世俗から隔離された密室世界で起こる心理崩壊劇です。英国の女流作家ルーマー・ゴッデンRumer Goddenの小説の映画化。

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恐ろしささえ感じさせるヒマラヤの壮麗な景色に対し、尼僧達の暮らす世界は女性だけの空間であり、文化的に異なる世界での孤立感に苛まれ、宗教の戒律と世俗からの要求の落差にも苦しむという、苦悩に満ちたものでした。

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若き修道院長シスター・クローダーを演じたのは、エレガントを極めた美貌で著名な名女優デボラ・カーですが、閉塞した状況の中で現実を見失い、妄想にとりこまれて自滅する人間の哀れという、今作の主題を文字通り体現したのは、狂っていくシスター・ルースに扮したキャスリーン・バイロンでした。

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シスター・ルースはありもしない妄想に支配され、現実と非現実の境界線を踏み越えて、美しき院長シスター・クローダーへの憎しみを募らせます。まさしく、妄想に現実を乗っ取られてしまった、あの赤い靴を履いたバレリーナそのもの。非現実的な世界を背景にした“現実と妄想の危うい混濁”というパウエル&プレスバーガー監督のメインテーマを象徴するキャラクターでした。
やはり子供の頃に初めて今作を観た私は、何が起こっても毅然とし、冷ややかで人間らしい感情に突き動かされることのないシスター・クローダーよりも、宗教に殉ずることもできず、激しい感情に翻弄されるシスター・ルースの方に、より大きな哀しみと共感を感じてしまいました。


このある意味強烈な“人工美”が彼らの作品の特徴の一つにもなっており、今回の「将軍月光に消ゆ I'll Met By Moonlight」のタッチを想像するのは正直難しいのですが、初期ボガードの貴重な作品の一つであることは確かです。それに、古きよき英国映画の節度あるユーモア、がっちりと構成された画面の美しさを気に入っていただける方なら、充分に楽しんでもらえると思います。VHS版ならば、置いているレンタル屋さんもあるかもしれません。機会があったらぜひご覧になってみてくださいね。


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