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zoom RSS 「ロルカ 暗殺の丘 La Muerte en Granada」Part1

<<   作成日時 : 2013/10/16 11:52   >>

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いつになったらわかるの、神など存在しない!

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「ロルカ、暗殺の丘 La Muerte en Granada」(1997年製作)
監督:マルコス・スリナガ
脚本:マルコス・スリナガ&ニール・コーエン
原案:イアン・ギブソン
製作:モクテマス・エスパルザ&ロバート・カッツ&マルコス・スリナガ
撮影:ファン・ルイス・アンチア
音楽:マーク・マッケンジー
出演:アンディ・ガルシア(ロルカ)
イーサイ・モラレス(リカルド)
エドワード・ジェームズ・オルモス(ロベルト・ロサーノ)
ジェローン・クラッペ(アギーレ大佐)
ミゲル・フェラー(センテーノ)
マルセラ・ウォルターステイン(マリア=ウへニア)
ジャンカルロ・ジャンニーニ(タクシー運転手)

ヒナギクを押しつぶし
純粋な形が崩れたとき
私は奴らに殺された
彼らはカフェや墓地や教会を探した
棺をこじ開けたんすをあさり
頭蓋骨を割り金歯を奪った
でも私を見つけられなかった
彼らは私を見つけられなかった…

1936年7月17日スペイン内戦が勃発した。フランコ率いる国民戦線が武装蜂起、あっという間にスペイン全土を掌握。フランコ政権に反発する知識人、有名人をはじめ、名もない一般市民が100万人あまりも処刑されたという。
スペインはグラナダの生んだ世界的な天才詩人・戯曲家、フェデリコ・ガルシア・ロルカは、8月18日反乱軍によって連行され、翌日未明ビスナールの丘にあるオリーブの木のそばで暗殺されたと言われるが、その死の真相は今もって謎のままである。

死を待つロルカが監獄の中で呻吟する。彼の脳裏には、国民戦線による不気味な軍靴と、鳴り止まぬ銃声、残虐な虐殺の模様が走馬灯のように映し出されている。

午後の5時
少年が白いシーツを運ぶ午後の5時
石炭のかごが用意された午後の5時
あとは死を
死を待つだけ午後の5時
低温のうなりが響く午後の5時
車輪つき棺が彼のベッド午後の5時
額の上で雄牛がいななく午後の5時
もう壊疽が始まる午後の5時
股に開いた百合の傷口午後の5時
焼け付くような痛み午後の5時
群集が窓と言う窓を割る午後の5時
なんと無残な午後の5時
あらゆる時計が5時を指す
午後の影も5時だった

1954年プエルトリコ。戦争が終わり、街は活気を取り戻している。リカルドは18年前、両親とともにこの地に逃れてきた。両親は、スペインのことも内戦のことも決して語ろうとはしない。リカルドは少年の頃に一度だけロルカ本人に会ったことがある。彼にとってロルカは、当時の多くのスペイン国民にとってそうであったように、世界に誇る英雄だった。長じて新聞記者となった彼は、彼についての伝記を書こうとしていた。『午後の5時』はスペインで闘牛が始まる時間だ。そしてまさしくその午後5時に、ロルカの故郷でありリカルド自身の故郷でもあるグラナダで、内戦が始まったのである。

1934年12月、マドリッド。少年リカルドは、親友のホルへや両親と一緒に、ロルカの戯曲「イェルマ」の初日に足を運んだ。彼の大ファンであったリカルドが、嫌がる両親を説得したのだ。

神がなんなの!
神など大嫌い!
いつになったらわかるの、神など存在しない!

スペインには敬虔なカトリック信者が多い。そうしたスペインの旧態依然とした道徳と思想に、新しい風を吹き込もうとするロルカの作品は、度々挑発的で神への冒涜だと批判されることもあった。詩や文学が、時にその作者を危険にさらすこともあるということを、リカルドはこのときはじめて理解した。案の定「イェルマ」の初日は、怒り狂う観客と拍手喝采する観客の怒号が渦巻き、騒然となる。舞台上の役者はうろたえるが、ロルカは芝居を続けるよう命令する。そして、怒る観客に挑戦するかのように、舞台に出てきて次の台詞を叫ぶ。

神はいるはずよ、小さな神が
子種の腐った男どもを滅ぼし
光をもたらすために

観客にまぎれて、そんなロルカの姿を密かに追っている怪しい男達がいた。しかし誰も―ロルカ本人ですら―そんなことに気づきもしなかった。
さらに舞台ではかなり露骨な性描写が披露される。「イェルマ」は賛否両論を巻き起こしたが、国民の彼の作品への愛情と、尊敬する姿勢には揺るぎはなかった。富裕階級の偽善と偏見や不正を憎む貧しき人々にとって、ロルカは英雄だったのだ。もちろんリカルドにとっても、彼は父親以上の絶対的な存在であった。
彼はホルへと共に楽屋へ忍び込み、戯曲を出版する計画について話しているロルカと対面した。初めて間近に見る英雄に、緊張しつつも『ジプシー歌集』を差し出してサインを求めるリカルド。ロルカは気さくに応じ、グラナダから来たというリカルドに、心や体に染み付いている詩を忘れぬようにと、サインの下にこう書き足した。

“君とまた会えることを祈って。私を忘れないで。フェデリコ”

「私を忘れないで」―これがリカルドの聞いた、ロルカ最後の言葉となった。この後、リカルドだけでなく全スペイン人が悲劇に巻き込まれていくのだが、少年であった彼にとって、その悲劇はあまりに急激で膨大で、思い返そうとしてもいつも混乱状態に陥ってしまう。彼はその欠けた思い出のピースを埋めるために、ロルカ暗殺の謎を追う決意を固めた。プエルトリコに逃れてきたスペイン人ですら、実際に誰がロルカを殺害したのか、誰も知らないのだ。死体も発見されていない。

内戦勃発直前。街は異様な緊張感に包まれていた。フランコが放った秘密警察が暗躍していたからである。心ある知識人たちが皆スペインから脱出する中、なんとロルカは一人グラナダの地に帰ってきた。彼はこの後待ち受ける悲惨な運命を知っていたのだろうか。おそらくそれを覚悟してのことだろう。ロルカは、ルネッサンス人のように豊かな才能に恵まれていただけではなく、リベラルな思想を持ち、常日頃から自由を蝕むファシズムへの嫌悪感を露にしていた。国民的な人気作家である彼の影響力を憂慮したフランコは、彼を“危険人物”とみなし、武装蜂起にともなって彼の逮捕・抹殺も計画していた。

国民戦線本部。武装蜂起が5時と決まった。軍部の有力者アギーレ大佐は、息子ホルへや娘マリア=ウへニア、リカルドたちが庭でロルカの詩を朗読している様を見て眉をしかめる。大佐にたしなめられて、子供達の無邪気な遊びは終わりを告げた。リカルドの目に、軍人たちの姿が恐ろしく映る。

ホルへが、ロルカがグラナダに戻っていることを伝えてくれた。リカルドとホルへは喜び勇んでロルカに会いに行く。すると、街なかで突如軍部が武装して現れた。午後5時。内戦のひぶたが切って落とされたのである。逃げ惑う民衆の混乱の中、逃げようとするホルへを説得してロルカを探そうとするリカルド。

一方ロルカは、友人であるグラナダ市長が早々に軍部に逮捕されたことを知る。また、ロルカのマネージャー、マルコスも、兵隊に家を包囲されてしまった。ロルカは家人とマルコスを山から逃したが、自身はグラナダに残る決意をした。故郷が蹂躙されているというのに、逃げるわけにはいかない。

兵隊に追われて逃げるリカルドとホルへ。先を走っていたリカルドの手違いで門扉の鍵がしまってしまい、ホルへが逃げ遅れた。あわてて鍵を開けようとするものの、間に合わず、ホルへは目の前で兵隊に銃殺されてしまった。

ホルへの葬式。雨の中、悲しみにくれる遺族と共に、リカルドも出席した。彼はホルへの棺の前で、ロルカの『午後5時』を暗唱する。そして最後にロルカの詩集を棺に投げ入れたのだった。リカルドの目の前を、逮捕され連行されていく人々のトラックが走りすぎる。理不尽な虐殺と暴力が支配するグラナダの象徴である。

ロルカ宅に、センテーノ指揮するフランコ配下の秘密警察がやってきた。家人に拷問を加えた彼らに怒りを爆発させたロルカは、逆に彼らによって痛めつけれる。

リカルド宅。軍の有力者であるアギーレの息子を死なせたかどで、リカルド一家にも逮捕の恐怖が迫る。しかし、ホルへを死に追いやった悔恨に苦しむリカルドを、父ビセンテが力づける。彼はなんとか一家を救うために奔走し始めた。

1954年プエルトリコ。リカルドは、ビセンテにグラナダに戻る決意を話した。ロルカの本の執筆も人生も行き詰まった彼は、故郷で自分を見つめなおしたいのだ。しかしビセンテは猛反対する。フランコ政権が父や家族にした仕打ちを忘れたのかと。彼は、一家が故郷を捨てる決意をした晩警察に連行され、ひどい拷問を加えられた。血まみれで泣き崩れる父の姿を忘れたわけではないが、今の自分にはグラナダに戻ることが必要なのだ。リカルドは、ビセンテの反対を押し切って故郷へ赴いた。

18年ぶりの故郷では、相も変わらず兵隊が大きな顔をして歩いている。駅で出迎えてくれたタクシーの運転手は、やたら親切だった。

グラナダ
アンダルシアの鏡
途方もない悲哀に苦しむアンダルシア
女達の扇やベールの陰に隠れ
のどを血に震わせながら
雪と赤い眼差しにおののく
むなしく空気に耳を傾けても
君の耳に甘い調べは聞こえない
カーテンの後ろから見つめても
君の心には深い悲しみだけ…

運転手の勧めで“マタモロス”という宿屋に落ち着いたリカルドは、早速アギーレ大佐に連絡を入れる。しかしそこに運転手が割って入る。彼はアギーレの名前を聞いて、警戒の色を顔に受かべている。怒ってもいるようだ。わけもわからぬまま、リカルドはアギーレの自宅に向かった。

そこでアギーレやマリア=ウへニアと再会し、彼は歓待される。すっかり美しく成長したマリア=ウへニアに、今までの筆不精を優しくとがめられたリカルドは、心が騒ぎ出すのをどうすることもできなかった。彼はマリア=ウへニアだけには、グラナダに戻った本心を打ち明けた。彼女にロルカの晩年を知るネストール・ゴンザレスを教えられた彼は、“エル・レイ・チコ”という店に向かった。アギーレの、「この国では聞いてはいけないことがあるんだ」という警告は無視して。
“エル・レイ・チコ”でネストール・ゴンザレスを待つリカルド。そんなリカルドをセンテーノが密かに見張る。リカルドの行動は警察に筒抜けのようだ。ネストール本人を掴まえた彼は、粘り強くロルカの晩年の聞き込みをする。そしてついに彼の口から晩年のロルカの様子を聞くことが出来た。

ネストールは軍部に属し、政治的立場は違っていたが、友人としてロルカを自宅に匿った。ロルカは彼の家で最後の日々を過ごしたのだ。そこでネストールの母や姉妹達を相手にピアノを弾いたり、モームの小説を諳んじたりしていた。だが彼は迫り来る逮捕・処刑におびえ、死のはなしばかりしていたという。ロルカの妹コンチャの夫も射殺され、ロルカに縁のあった人々は、残らず死を覚悟しなければならない状態であった。その後、警察の魔の手はロルカ本人にもおよび、彼はついに逮捕される。獄中にある彼を救うべく、ネストールは奔走するが、彼の処刑を止めることはできなかった。

ここでネストールは姿を消してしまい、残されたリカルドは困惑する。そこへ“エル・レイ・チコ”で絡んできた女クロティルデが、ネストールの真の姿を教えてくれた。ネストールは最後までロルカ処刑を止めようとしたが、彼の逮捕状にロベルト・ロサーノの署名があったことを知り、愕然とする。ロサーノはロルカの理解者だったはずだ。ロサーノは、保身のためにフランコ政権に魂を売ったばかりでなく、同性愛者であったロルカとネストールとの仲を勘ぐり、二人を愚弄する真似までしてのけたのだ。クロティルデはさらに、ロルカをよく知る“ジプシーの女王”ことナジャの存在を教えてくれた。リカルドの執筆に協力を約束して、彼女は去っていった。その後を密かに秘密警察が追っていく。リカルドはホルへの墓を訪ね、押し寄せる辛い思い出に圧倒される。

午後4時、リカルドになんとロサーノ本人から連絡が入る。ロルカのことを話してやるという。嫌な予感に押されるように、リカルドはクロティルデのところへ急いだ。案の定、彼女は血まみれになった姿で警察に連行されていった。リカルドはナジャの店に向かう。

ジプシーの町よ
誰がお前を忘れられよう
悲しみと麝香の町よ

ギターと掛け声に合わせて情熱的なステップを踏むダンサー達。生前のロルカが愛してやまなかったものだ。ここでリカルドは、マリア=ウへニアとかつての友人リディアと出会う。マリア=ウへニアは、夜になるとこの店でダンサーに変身してストレスを発散しているのだった。女主人ナジャによると、ネストールは今朝グラナダを離れたという。今もなおグラナダでは、独裁政権の抑圧が幅を利かせているのだ。

ロルカは生命力、行動力にあふれ、高い理想を持つ男だった。生前彼はこの店で『ジプシー歌集』を書き上げた。物思いに沈んでいたかと思うと、急に踊りだしたり…。誰もがロルカを愛した。が、リカルド一家がスペインを出た後、軍部が街を占拠して反体制派を処刑した。それからは、軍部は反体制派ではなく、一般の人々を殺害し始めた。軍部による大量殺戮だ。

ナジャは、ロルカが殺されたビスナールの丘にリカルドをともない、ロルカの死に際にそばにいた人物、闘牛士のガビーノのことを話した。ガビーノはロルカの古い友人だ。彼はまもなく、闘牛ショーを行うためにグラナダに戻ってくる。リカルドはガビーノに会う決意を固めた。
宿に戻ると、アギーレ大佐がリカルドを待っていた。父ビセンテが心配するから無茶をするなと警告に来たのだ。そこへ、ロサーノからの電話をタクシー運転手がとりついだ。アギーレは彼の顔に見覚えがあるようだった。明朝、ロサーノの所有する印刷所“リビング・ワード”へ会いに行く約束をする。

君への愛に気づかずに僕は去った
君の瞳を思い出せない
君の手も君の髪も
思いだせるのは
僕の額への君のキス

リカルドはマリア=ウへニアに会いに行った。二人きりの食事を楽しむはずが、彼がアギーレの私室を覗き見したために、険悪なムードになってしまう。そこには、ロサーノが執筆した『ファシスト・マニュアル』なる本に、“新制スペインよ永遠なれ”とサインが書かれていた。日付は1937年だ。アギーレはロルカ暗殺の後、ナチスから表彰もされていたようだ。リカルドはマリア=ウへニアを責めてしまう。彼女は、父アギーレがナチスから表彰されて、心ある家族がどんなに良心の呵責に苦しんだかを吐露した。そんな父親でも、彼女にとっては唯一の父親なのだ。二人は気まずく別れてしまった。リカルドをセンテーノが密かに追っていく。

マドリッド。リカルドはロサーノに対面する。彼は、ロルカの全作品集を出版する準備を進めていた。彼の作品を世界に広めたいという。しかし彼はロルカ逮捕に手を貸したではないか。リカルドは怒りを抑えられず、言い募った。ロサーノは彼だけが知る真実を話して聞かせる。

ロサーノは、自分と違って才能にあふれるロルカを尊敬し、もちろん味方でもあった。ネストールの自宅に踏み込んだのも、逮捕ではなく、ロルカを保護するためであったのだ。少なくとも彼自身はそのつもりだった。ロサーノは怯える彼をなだめ、センテーノ達が見守る中、外へ連れ出したのだ。逮捕状に署名したのは、彼の身の安全を軍部から保障されていたから。そこへネストールがやってきたので、その旨を説明しようとしたところ、センテーノに止められた。軍部には別の計画があったのだ。ロサーノはもちろん軍部に逆らえるはずもない。どうすることもできず、ロルカは翌日ビスナールに連れて行かれ、射殺された。誰が射殺命令を下したかはわからない。
だがロサーノは、ロルカの身体から取り出した血濡れの弾を酒に入れて飲むセンテーノの姿を目撃している。センテーノは詩人の血を飲み下した。彼は冷酷無比な輩で、ロルカを殺して英雄気取りだった。詩人を殺したのはセンテーノに違いない。しかしそんなロサーノも、闘牛士ガビーノのことは知らない。リカルドは、自分がまだ真相にたどり着いてはいないと痛感するのだった。

リカルドは図書館の資料閲覧室で、当時の新聞を読み漁る。ロルカが危険な思想の持ち主で、大衆を扇動する無心論者であると弾劾する、ヒステリックな記事が並ぶ。ロルカは共産主義者だとも書きたてた新聞もあった。彼が性的な言葉を戯曲に組み込んだため、反感を持つ保守的な人々がそれを責め立てていた。ついに新聞は、ロルカに裁きの一撃を下すべきだとの結論に達していた。

“裏切り者は血の海に死すべき”

ロルカを死に追いやったのは、軍部だけではない。軍部の恐怖政治に洗脳されたマスメディアも同罪である。資料室を出たリカルドは、秘密警察に暴行される。命のあるうちに帰れという警告だ。一方マリア=ウへニアは自宅に軟禁される。リカルドと接触を持たないようにするためだ。リカルドはリディアに、ナジャの店で会いたいという伝言を頼む。そしてタクシー運転手が止めるのも聞かず、ネストールのただ一人生き残った姉に会いに行った。

彼女によると、秘密警察が踏み込んできたとき、ロルカは冷静で立派だった。ロサーノはだまって彼を連行して行った。そのときと同じように、ネストール宅を辞去したリカルドを待っていたのは、センテーノ達であった。彼はリカルドをサディスティックに痛めつけ、ロルカの死の真相をかぎまわるのをやめ、国へ帰れと警告した。うずくまる彼を助けてくれたのは、運転手だった。彼は仲間の知らせでリカルドを探していたのだ。そしてナジャの店まで運んでくれた。

ナジャの店では、自宅を抜け出したマリア=ウへニアが、リカルドの手当てをしてくれた。彼に迫る死の危険を憂い、ロルカの件から手を引くように懇願するが、リカルドにしてみれば、いまさら後には引けない。彼が核心に近づいたからこそ、軍部があわて始めたのだから。またリカルドは、そうすることでホルへの死を償おうともしていた。しかしマリア=ウへニアは兄ホルへのためにも生きて欲しいと言う。その夜、二人は初めて結ばれた。

君の瞳をみた
僕がまだ押さなく純情だったころ
君の手が僕の肌をなでキスしてくれた
僕の心は大空の下、花開いた
欲望の花びら
夢の中のおしべ

翌朝、二人が眠る部屋に軍部が踏み込んできた。リカルドは刑務所に入れられ、マリア=ウへニアは父アギーレによって連れ去られた。リカルドはアギーレと刑務所で対面する。アギーレは言う。
「内戦で何万もの人命が失われ、多くの家族が傷ついた。なのに君が突然現れてすべてを穿り返し、皆の命を危険にさらしたのだ。ホルへを忘れたとは言わせないぞ」

翌日、リカルドは釈放された。彼の身を案じる父ビセンテが、すぐ帰国するよう促した。刑務所から出た彼を拾ったのはマリア=ウへニアであった。タクシー運転手も一緒だ。彼によると、リカルドはグラナダに降り立った日から尾行されていたという。運転手もまた、反政府側の人間であったために6年間刑務所に入っていたのだった。
マリア=ウへニアに、一緒に米国に連れて行って欲しいと懇願されるリカルド。二人はしっかりと抱き合った。しかし飛行機に乗る前に、彼はどうしても闘牛士ガビーノに会いたかった。闘牛場に向かうリカルドをセンテーノ達が追う。もうすぐ午後5時だ。場に牛が放たれる。
リカルドは、牛に対峙するガビーノになんとかメモを渡すことに成功する。マリア=ウへニアの後を追ってアギーレも闘牛場にやってくる。時間がない。闘牛場の裏手で彼は手早くガビーノに真相を尋ねる。ロルカの友人だったのに、なぜガビーノは無事だったのか。

ガビーノの回想。彼は政府側の人間として、あの晩ロルカの処刑に立ち会っていたのだ。ロルカともう一人の老人が、オリーブの木のそばに連れてこられた。ガビーノは助けるべきであったが、顔を背けた。ロルカを見殺しにしたのだ。暗闇の中、老人はあっというまに頭を打ちぬかれて絶命した。次はロルカの番だ。センテーノは彼の頭に銃を押し付け、引き金を引いた。…それがガビーノが知る、ロルカの最期のすべてであった。

リカルドにセンテーノ達が迫る。逃げ惑うリカルド。一方、ガビーノは牛に向かう。彼の脳裏に、誰よりもいい友人だったロルカの顔が浮かぶ。
リカルドはセンテーノと揉みあう。やらなければこちらがやられる。リカルドが彼に銃を向けたそのとき、ガビーノも牛と戦っていた。現れたマリア=ウへニアに一瞬気をとられたすきに、リカルドはセンテーノに反撃を食らう。同じ時、ガビーノも牛に反撃され、その角の餌食となっていた。アギーレもその場に駆けつけ、リカルド、センテーノ、マリア=ウへニア、アギーレの4人がついに真実に対峙するときがきた。

あの晩、リカルドの父ビセンテはアギーレの元に連れて行かれた。ホルへのことで家族を守るためだ。そこにロルカ処刑の命令が上層部から下され、明けて未明にセンテーノ達はロルカをビスナールの丘に連行した。ロルカに銃口を向けたのはセンテーノだが、そのセンテーノにロルカは、悲しげにこう問うた。

「僕の月はどこに出ているんだ」

さすがのセンテーノも良心の呵責に耐え切れず、引き金を引くことができない。ためらう彼に痺れを切らしたアギーレは、ロルカを撃った。だが彼はまだ絶命していない。とどめを刺せる者はその場にはいなかった。そこへビセンテがアギーレを追ってきた。ビセンテが泥酔状態なのをいいことに、アギーレはホルへを殺したのはロルカだと言い含め、なんと彼にとどめの引き金を引かせたのである。“撃て!撃て!撃て!”
ビセンテは言われるままに撃ち、ロルカの返り血を浴びた。あの晩、警察に暴行されたとばかり思っていた血まみれのビセンテは、実は詩人の血にまみれていたのである。泣いていたのは、自分がロルカを撃ってしまったことに気づいたから。

リカルドは誰に銃を向けていいかわからなくなった。ロルカを撃ったのは自分の父だった。慟哭するリカルド。

誰もおまえを知らない
でも私はおまえを歌う
おまえの横顔とおまえの気品を
後のために歌おう
おまえの死への欲求と
その死の味
おまえの陽気さのかげの哀しみを

1962年プエルトリコ。リカルドはマリア=ウへニアとの間にかわいい子供を授かっていた。自分がまだ幼かった頃のように、孫とサッカーに興じる父ビセンテ。その姿を見守るリカルドの眼差しは、階段を一つ上り終えた者の達観に満ち、むしろ静かに凪いでいた。…長い時間がかかることは分かっている。これほど明るいアンダルシア人が再び生まれるためには…。

嘆きの言葉で彼の優雅さを歌い
オリーブの木々に
哀しみの風邪を思い出す

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フェデリコ・ガルシア・ロルカ―1898年生まれ、1936年没。わずか38歳での死であった。

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