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zoom RSS 芸術と煩悩の狭間にあるもの―「カストラート Farinelli」Part1

<<   作成日時 : 2016/03/17 12:41   >>

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「カストラート Farinelli Il Castrato / Farinelli」(1994年製作)
監督:ジェラール・コルビオ Gérard Corbiau
製作:ヴェラ・ベルモン
脚本:アンドレ・コルビオ&ジェラール・コルビオ
撮影:ワルテル・ヴァンデン・エンデ
音楽監督・指揮・編曲:クリストフ・ルセ
衣装:オルガ・ベルルーティ
出演:ステファノ・ディオニジ(カルロ/ファリネッリ)
エンリコ・ロ・ヴェルソ(リカルド)
エルザ・ジルベルシュタイン(アレクサンドラ)
カロリーヌ・セリエ(マーガレット・ハンター)
ジェローン・クラッベ(ヘンデル)
オメロ・アントヌッティ(ポルポラ) 他。

1740年、マドリードにあるスペイン国王フェリペ5世の居城。ここに住まうことを許された、国王お抱えのカストラート歌手カルロ・ブロスキは、憂鬱から逃れるために今日も飲み物にアヘンを注ぐ。彼の脳裏には、教会で歌っていた少年時代、彼の目の前で投身自殺したカストラート歌手の死に際の言葉がこだましていた。「カルロ、それ以上歌うんじゃない!その声がお前を殺すぞ!」
フェリペ国王の傍近くに控えるカルロの前に、ある日満身創痍のやつれ果てた兄リカルドが現れる。彼は、3年がかりでようやく所在を突き止めた弟に向かって、完成したオペラ“オルフェオ”の楽譜を振り回した。「カルロ、また俺と一緒に公演をしよう!」
カルロは兄を視界の隅に捕え、顔をゆがめる。彼はほんの10歳の時、その天性のボーイソプラノを高く評価された。そして師であったイタリアの作曲家ニコラ・ポルポラの推薦で、当時の大作曲家であったG・F・ヘンデルの元に向かったのである。ところがヘンデルは人当たりが悪く、毒舌家で、いつも腰ぎんちゃくのように弟にくっついている兄リカルドの凡庸さを忌み嫌っていた。カルロは、一心同体の兄を愚弄された上、ことさら威圧的に自分に迫ってくるヘンデルが恐ろしく、また目の前で自殺したカストラート歌手のことも忘れられず、ついに一声もあげることなくヘンデルの前から逃げ出してしまう。思えば、あれが天才作曲家ヘンデルと、カルロ兄弟の確執の始まりであった。それからほどなくして、カルロは去勢されてしまう。彼が飼い馬から落馬したのが原因だ。彼自身には記憶がないが、親代わりであった8歳年上の兄リカルドはそう言い張っている。そしてヘンデルと再会したのは、8年後のナポリでのことだった…。

ナポリの街角。トランペット奏者とカウンターテナーの歌い手が、どちらの声がより力強く響くかを競い合っていた。楽しみの少ない市民にとっての、ほんの余興である。高音を誇る歌手が次々とトランペットのときの音に敗北する中、その場に居合わせた18歳のカルロは、その恐るべき高音で安々とトランペット奏者を打ち負かしてしまう。市民はカルロの声に熱狂し、彼は自身を“ファリネッリ”だと名乗った。ファリネッリことカルロが、伝説のカストラートとして歴史に名を刻んだ第一歩であった。この模様を馬車の中から密かに見ていたのが、かのヘンデルである。
ヘンデルは直後、カルロだけに宛てて手紙を送りつけた。彼をロンドンに連れて行って、自身の曲を国王の劇場で歌わせたいという申し出だ。だが、今や女を抱くときも兄弟2人一緒でというほど絆の強い兄リカルドは、作曲家として凡庸な自分を切り捨て、弟だけと契約を結ぼうとするヘンデルに反発した。遠慮なくリカルドの無能振りをあざ笑うヘンデルに、カルロの怒りも爆発する。「お前は兄といる限り、一生縁日の出し物のままだ」
彼はヘンデルの顔につばを吐きかけた。

12年後、30歳となったカルロは、当代最高のカストラートとして各地で熱狂的に迎え入れられた。リカルドが作曲し、それをカルロが歌う。公演先では、女性客は容姿も美麗なカルロに我先にと身体を差し出す。兄弟は星の数ほどの取り巻き連の中から、気に入った女を好きなだけ抱いた。カルロが女を愛撫してエクスタシーを与え、リカルドが“種”をまく。音楽面だけでなく、私生活においても彼ら兄弟の共同作業は順調であった。ところがカルロは、兄の書く曲には心を振るわせる旋律がなく、くだらぬ装飾音だらけだと早くから気づいていた。そんな曲よりも、兄が何年も前から書き続けていて未だ未完成のオペラ“オルフェオ”を早く歌いたいと願っているのだ。しかし作曲家としての才に恵まれないと自覚しているリカルドに、“オルフェオ”を完成させることはできないだろう。

すべての公演を成功に終わらせるカルロとリカルド。リカルドは、カルロの声に失神する女性客が続出する様を見て、そして幕が下りた後の会場からの割れんばかりの拍手を聞いて、民衆の憧れの的となった弟への賛美を、自身の曲に対するものと勘違いしてしまう。有頂天になる兄を尻目にカルロの表情は浮かない。いつからか、彼はリカルドの曲に優れた歌手としての満足感を得ることが出来なくなっていたのだ。また、カルロの歌声に魅了されたモエ伯爵夫人の、カストラートは性的に不具であるという侮蔑の言葉も、彼の心を深く傷つける。去勢したがために奇跡のような歌声を持つことが出来、民衆の賛美を一心に集める存在となれたのは確かだが、一方では、去勢を固く禁じるカソリックの教えに反し、彼は結婚することすら許されない禁忌の存在でもあったのだ。男でも女でもない人間、それがカルロだ。この社会で、結婚して自分の子供を持つという、ごく当たり前の幸福を享受することが許されない孤独感に、彼の胸は痛む。
ある日ヘンデルからカルロ宛てに手紙が届く。ドレスデンでの彼の公演を見に来るという、挑戦状であった。とたんにカルロはひきつけの発作を起こして、声が出なくなる。パニックに陥ると、カルロはいつも落馬する直前の悪夢を見る。その直後に、彼は去勢という屈辱的な目に遭ったのだ。カルロは熱にうなされ、去勢の日の真相を兄に問いただす。リカルドは嫌々その日の出来事を話して聞かせた。もう何度も話したことなのだが、カルロは納得していないのだ。父が早くに亡くなり、リカルドがカルロの親代わりとなっていた少年時代のこと。カルロが高熱を出して錯乱し、ヘリオスという馬に乗ったが落馬してしまった。弟の命を救うため、やむをえずリカルドはカルロの去勢を強行したのだと。しかしカルロの悪夢は終わらず、彼はまたもアヘンに頼るようになっていく。彼は病み上がりの衰弱した身体のまま、ヘンデルの前で実力を見せ付けると雄々しく宣言する。
公演当日ヘンデルが、青い顔で出番待ちをするカルロの前に姿を現した。英国王が主催する国王オペラの歌手になるようにという依頼を申し出たのだ。国王オペラの音楽監督を務めるヘンデルは、自分をそのまがいものの声で感動させることが出来れば雇ってやると、高圧的に挑発した。だが心身ともに弱りきったカルロはヘンデルからのプレッシャーに耐えられず、10歳の時と同様、ステージ上で気を失ってしまう。その醜態を見たヘンデルは密かにほくそ笑み、その場を去っていった。
公演が中止となった楽屋に、アレクサンドラという女性が急ぎの伝言を持ってくる。かつてのカルロの師、ポルポラからの依頼だ。彼は、国王オペラに対抗してできた、王太子主催の貴族オペラの音楽監督を務めているのだが、競っている相手、ヘンデルに負けそうだというのだ。ポルポラも名の通った音楽家ではあったが、天才作曲家ヘンデルには敵わない。そこで、著名な歌手であるカルロにポルポラの貴族オペラで歌わせて、一気にヘンデルの国王オペラに差をつけたいというのが狙いだった。

カルロとリカルドは、ロンドンへ出向いた。アレクサンドラの叔母である貴族マーガレット・ハンターと会見するためだ。マーガレットは英国貴族界の有力者で、貴族オペラの庇護者でもある。当然国王側についているヘンデルとは反目しあう仲だ。ヘンデルは人好きのする人間ではないが、その天才には敬意を表さずにはいられない。マーガレットはそんな人物と真っ向から勝負しようというのだ。カルロは思わず彼女の無謀に呆れてしまう。だが、いつも偉そうに人を見下しているヘンデルも、その実、借金取りに追われる哀れな身の上だった。カルロは同じくヘンデルを憎んでいる兄のためにも、貴族オペラで歌うことになった。また、マーガレットの1人息子ベネディクトの懇願も彼の決意を後押しした。ベネディクトは生まれながらにして身体が不自由で、誰かの手助けがないと日常生活を送ることもままならない。社会の中では、カルロ同様、彼も疎外者の孤独を囲っていたのだ。カルロは次第にベネディクトと心を通わせるようになっていく。
当代髄一の歌手を得た貴族オペラは、連日満員御礼が続く大盛況をみせた。民衆はカルロの声に熱狂し、対する国王オペラのコヴェント・ガーデン劇場は、閑古鳥が鳴いた。ヘンデルは数々の名曲を生み出す才能にもかかわらず、またしてもカルロに栄光を邪魔され、さらなる苦境に陥っていく。

カルロは、公演の成功に浮かれる貴族達のパーティーを欠席し、兄と2人きりで対峙した。まるでヘンデルのように兄の興奮を鼻であざ笑い、凡庸に堕した兄の曲に怒りを爆発させたのだ。カルロには、ヘンデルの作り出すような琴線を震わせる曲、自分の才能に見合った素晴らしい曲が必要だ。だがこのリカルドには、そんな曲は永遠に書けない。それをリカルドでさえ承知しているが故に、カルロは余計に苛立ちを深くする。この栄誉は偽りのものだと弟に断じられて意気消沈したリカルドは、恥も外聞もなく弟に縋りつき、その不義理を罵倒するのだった。カルロは酔ったままパーティーの席に赴き、ヘンデルの鼻をへし折ってやったと声高く笑う王太子に噛み付いた。真の芸術を解せぬ者のヘンデルへの嘲笑は、すなわち音楽家全般への侮辱を意味する。ポルポラの目の前で、カルロはヘンデルを擁護し続けた。「ヘンデルの名前は、人々の敬意と共に音楽史に永遠に残るのだ!」と。

カルロと同じく父親を早くに亡くしたベネディクトは、カルロに父親になって欲しいと懇願した。不自由な身体で懸命に生きようとする少年のたっての願いに、カルロは心打たれる。彼の心境に変化が芽生え始めた。子供を持つことの許されぬ彼は、ベネディクトに家族の幻影を見るようになる。
カルロは、人っ子1人いない劇場で作曲に専念するヘンデルの元を密かに訪れた。誰も聴く者がいなくとも、カルロにはヘンデルの曲の価値がわかる。兄の音楽にはない魂が、旋律のひとつひとつに宿っているからだ。カルロをつけてきたアレクサンドラが、驚くべき行動に出た。なんとヘンデルのオリジナルの楽譜を盗み出してきたのだ!彼女は、その声に相応しい曲を歌いたいというカルロの本心をわかっていた。カルロも、彼女の軽率な行動を責めながらも感謝し、ヘンデルの曲を夢中になって稽古する。たった1人でヘンデルの曲に耽溺した彼を待っていたのは、当然のようにリカルドと寝ていたアレクサンドラの裏切りだ。彼女はカルロと結ばれながらも、同時にリカルドとも同衾した。兄弟の間で暗黙のうちに交わされていた約束事も、今のカルロには怒りの対象に過ぎない。彼はアレクサンドラもリカルドも拒絶し、今まで保たれていた兄弟間の均衡が崩れていくのだった。
翌日カルロは衝動的にマーガレットに結婚を申し入れる。衆人環視の中だ。マーガレットは呆れたように笑い出し、即座にそれを拒否した。同席したポルポラもあざ笑う。つまりは、カルロが“種”をもたぬ男であるため。暗に去勢者の存在を否定するマーガレットの言い分に、カルロは動揺する。
ヘンデルの元には借金取りが群がった。彼のオペラは公演中止の憂き目にあっている。金など逆さに振ってもない。彼は、経済的な理由で才能を枯渇されかねない状況に、自暴自棄になっていた。そこへ密かにカルロが現れる。盗んだ楽譜の曲を貴族オペラの舞台で歌いたいと申し出たのだ。なんとしても、ヘンデルの名曲を埋もれさせるわけにはいかない。聴衆や貴族の反対を押し切ってでもヘンデルの曲を歌い、聴衆にその真価を知らしめ、真の芸術的感動をもたらしたいと願ったのだ。音楽が貴族たちのくだらぬ権力争いの道具になるのは間違っている。しかし、プライドをさらに傷つけられたヘンデルは、カルロが最も嫌う言葉で彼を罵倒した。「自然の摂理を捻じ曲げた者になにがわかるのだ」
ベネディクトの世話をしていたアレクサンドラ。カルロは固い表情のまま黙って彼女の手を握り、改めて彼女への想いを伝えた。
一方ヘンデルは盗まれた楽譜を取り戻しにきたが、リカルドが劇場の屋根裏部屋で1人“オルフェオ”の作曲に難儀しているのを見ると、敵対する立場も忘れてその手ほどきをしてやる。“オルフェオ”は、リカルドの手になるものとは思えないほど、力強い魅力に満ちた楽曲だったからだ。ヘンデルは夢中で曲の手直しをするうち、カルロの存在そのものが自分とリカルドを滅ぼすことになるだろうと予言した。カルロは歌の世界に生まれた一種の怪物だ。とてもリカルドやヘンデルの手に負えるものではない。しかも、すでにカルロはリカルドを必要としておらず、逆にカルロなしでは生きていけなくなっているのはリカルドの方なのだ。ヘンデルに図星を指され、リカルドはとうとう秘められた真実をヘンデルに告白した。カルロの去勢は落馬事故のせいなどではなく、類稀なボーイソプラノであった彼の声を保つために、リカルドが内緒で強行したことだったのだ。リカルドはそれをひた隠しにし、以来、弟への罪滅ぼしのために、ただ弟のためだけに、“オルフェオ”をものにしようと決意したのだ。

貴族オペラの劇場では、聴衆が大ブーイングをしている。よりによって敵対する国王オペラ専属のヘンデルの曲を、カルロが歌おうとしているからだ。だがベネディクトだけは1人カルロに拍手を贈った。カルロはヘンデルの哀感溢れる曲“いとしい花嫁よ”を歌い始める。静かなさざ波の音のように歌い始めた彼は、美しい旋律を天まで届く声でなぞっていく。殺気立った劇場内は徐々に静まり、やがて、1人また1人…と感動の波が広がっていった。カルロが舞台で放った白鳩は、ベネディクトの手の中に飛んでいく。カルロの誠心誠意を込めた歌声は、ついに聴衆の心を捕えた。彼らの歓喜の声が劇場を揺るがす中、リカルドは弟が永遠に自分と袂を分かったことを悟り、深くうなだれた。その横にいたヘンデルは、天井の隙間からカルロに向けて手紙を投げる。カルロが“うずまく風よ”を歌い終わったときのことだ。手紙は文字通り風にもまれ、きりもみ下降しながらカルロの足もとに落ちた。
幕間、カルロはヘンデルからの手紙を読んだ。そこには、彼の去勢の真実が明かされていた。ヘンデルは、真相に愕然とするカルロに追い討ちをかけるように、リカルドのみならず自分自身もまた、カルロの声によって創作意欲を奪われてしまったと言い募った。この公演の成功は結果的にヘンデルの窮状を救うことにはなるが、彼は以後二度とオペラを作曲しないと告げる。できないのだ。カルロの声は余りに神々しく、旋律を生み出す作曲家の自信をも失わせる。カルロはそうなった責任をとらねばならない。ヘンデルは自己嫌悪に苛まれながらも、なおもカルロを挑発せずにはいられなかった。その驚異的な声で己に課された運命を耐え忍び、盗んだ楽譜を寸分の間違いもなく歌えるのかと。

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舞台に上がったカルロは、己の人生に起こった全ての悲しみをひとつひとつ思い出しながら、万感の想いを込めてヘンデルの“涙あふるる”を歌い上げる。客席に戻ったヘンデルに挑むかのように、まっすぐに彼の目を射すくめながら、まさしく至上の声を聴かせたのである。生きながら天国を垣間見たヘンデルは、その場に卒倒する。歌い終わって呆然自失とするカルロの耳に、聴衆の声が繰り返しこだました。「唯一の神、ファリネッリも唯ひとり!」

マドリード、フェリペ5世の居城。リカルドは、自室にこもりきりのカルロに向かって大声で叫んだ。彼はついに“オルフェオ”を完成させた。兄弟の真の共作だ。弟に捨てられてからの3年間というもの、リカルドは彼なりに苦労を重ね、血のにじむ努力の末に唯一の傑作をものにしたのだ。カルロを天下にとどろく歌手ファリネッリにしてやったのは自分だと叫びながら。カルロは、厩でねばるリカルドの手から“オルフェオ”の楽譜を盗んだ。それを知ったリカルドは怒りのあまり奇行に走る。
カルロはリカルドから逃れるためにマドリードまでやってきたのだが、所詮兄弟の絆は簡単には断ち切れない。子種を持たぬ彼にとって、やはりリカルドはなくてはならない存在であり、それは兄弟を共に愛するアレクサンドラにとっても同じだった。しかし兄が自分にした仕打ちをどうしても許すことが出来ない。兄は己の野心のために弟を去勢し、さらに彼の才能を利用し、音楽界での成功を目論んだのだから。リカルドはカルロに、また一緒に“オルフェオ”を公演しようと懇願するが、カルロは冷ややかにそれをはねつける。彼は既にフェリペ国王だけのためにしか歌わない。そうすることでようやく心の安寧を得たのだ。
皆既日食の際、国王1人のために歌うカルロを見て、リカルドはようやく弟の決意が翻らないことを悟った。手首を切って失神したリカルドは、カルロたちの居室に担ぎこまれる。アレクサンドラは、憔悴するリカルドを憎みきれずに介抱してやる。アレクサンドラとカルロが睦みあう場に出くわしたリカルドは一瞬戸惑うが、意を決して2人のベッドに歩み寄った。そして昔のように、リカルドはアレクサンドラを抱く。“種”を彼女にまくために。

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リカルドは翌日、1通の手紙を残して弟の前から去っていった。彼は“オルフェオ”の楽譜を焼き捨て、そのまま戦場へと赴いたのだった。音楽の世界も過去の偽りの栄光も、彼にとっては既に何の意味もなさない。ただ彼は、弟から奪った“人並みの人生の幸福”を返したかったのだ。兄弟最後の“共作”は、無事にアレクサンドラの子宮に宿り、カルロはたった1つの新しい生命がこの世に生まれるのを心待ちにしている。

リカルドはその後戦場で消息を絶ち、カルロも二度と音楽の表舞台に戻ることはなかった。ファリネッリことカルロ・ブロスキは1782年に亡くなり、ボローニャの街を見渡せる小高い丘に埋葬された。しかし、ナポレオン軍の進軍によって破壊されて以後、彼の墓は跡形もなく消えてしまったという。

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