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zoom RSS 摩天楼に映画を―55th NY Film Festival

<<   作成日時 : 2017/09/28 23:30   >>

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フィルム・ソサエティー・リンカーン・センター Film Society of Lincoln Centerによる映画祭、ニューヨーク映画祭も今年で55回目を数えるようになりました。毎年一度だけ摩天楼が巨大映画館に様変わりする映画のお祭りも、既に長い歴史を刻んでいたんですねえ。NY映画祭の開催期間は、9月28日から10月15日まで。追加チケットも既に発売されていますし、今年の映画界を代表する作品が一堂に会しておりますので、ニューヨークに行かれる予定のある方、彼の地に在住の方はこぞって足をお運びくださいませ。


第55回ニューヨーク映画祭公式サイト The 55th New York Film Festival Official Siteはこちら。

Film Society of Lincoln CenterのYou Tube公式チャンネルはこちら。

第55回ニューヨーク映画祭フェイスブック公式ページ The 55th New York Film Festival Facebook Official Pageはこちら。


実は記事にはしていなかったのですが、特に今年の各国の映画祭では、女流監督、女性クリエイターの手になる作品が多く招待されておりました。それが特に目立っていたのは、先に閉幕したトロント国際映画祭 Toronto International Film Festivalですね。現地時間で28日開幕のニューヨーク映画祭 New York Film Festivalも、その後に開催されるBFIロンドン映画祭 BFI London Film Festivalも、女流監督、女性クリエイターの作品をたくさんピックアップしています。映画界の多様性受容、あるいは性差平等化へ向けて、映画界も着実に前進していると思います。なお、“女流監督”、“女性クリエイター”という呼び名は、私が便宜的に取り入れているだけであり、例えば女性アーティストへの逆差別を促すような意図はこれっぽっちもないということを強調しておきます。早いところ、わざわざ“女流”だの“女性”だのという言葉を頭につける必要がなくなる世の中になってほしいもんです。



・招待作品 Main Slate
(全25作品。各映画祭や映画賞で注目された、今年の映画界を代表するような優れた作品ばかりを25作品に厳選して上映)

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『Last Flag Flying』(USA) 開幕上映作品

リチャード・リンクレーター Richard Linklater監督
ブライアン・クランストン Bryan Cranston,、ローレンス・フィッシュバーン Laurence Fishburne、スティーヴ・カレル Steve Carell出演
ベトナム戦争に従軍した経験のある3人の中年たち―ドク、サル、ミュエラー―は、イラク戦争で亡くなったドクのたった一人の息子の葬儀のために久しぶりに再会した。3人の人生の中で最も辛い体験となった戦争が、皮肉にも彼らの間に揺るぎない絆を結んでいく様子をほろ苦くも可笑しいロード・ムービー形式で描いた作品。
とにかく早く本編が見たいの一言。可笑しくてどこか哀しい人間模様を描かせたら天下一品のリンクレーター監督の、しかもロード・ムービーとくれば、素晴らしい仕上がりに違いないと思うもの。


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『Wonderstruck』(USA) Centerpiece Selection作品

トッド・ヘインズ Todd Haynes監督
オークス・フェグリー、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ出演
マーティン・スコセッシ監督によってファンタジックに映画化された小説「ヒューゴの不思議な発明 Hugo」を著した作家ブライアン・セルズニックの小説「ワンダーストラック Wonderstruck」をトッド・ヘインズ監督が映画化したもの。1927年、耳の聞こえない少女ローズは、当時の大スターであったリリアン・メイヒューに会うために、必死の思いでニューヨークまで旅をする。1977年、母子家庭で育った片耳が聞こえない少年ベンは、その母親も喪い、天涯孤独の身の上となった。彼は、顔も覚えていない父親に会いたい一心で、もう片方の耳の聴力を失いながらも、“ダニー”という名前と電話番号を手掛かりにニューヨークに向けて旅に出る。彼らロースとベンの物語が交互に描かれる。
トッド・ヘインズ監督は私の好きな作品をたくさん作ってくれる監督だ(笑)。感性が合うんだろう。ダグラス・サーク監督の諸作品を蘇らせたような「エデンより彼方に Far from Heaven」(2002年)、ボブ・ディランを大解剖した「アイム・ノット・ゼア I'm Not There」(2007年)、個人的には胸が痛くなるような感銘を受けた傑作「キャロル Carol」(2015年)。彼の新作は、1つの願いに対して強い執着を抱く人間(子供だけど)のお話で、ある意味、これまで彼が扱ってきたテーマに沿うものだと思う。2つの時間軸を自在に行き来するという語り口も、ヘインズ監督お得意の手法ザッピングである。今作では“無声”というもう一つのモチーフが付加されるので、映像も面白いものになりそう。


『Wonder Wheel』(USA) 閉幕上映作品

ウッディ・アレン Woody Allen監督
ジェームズ・ベルーシ James Belushi、ケイト・ウィンスレット Kate Winslet、ジュノー・テンプル Juno Temple出演
1950年代のアメリカ、コニー・アイランドの遊園地で働いていた男は、彼を悩ませていた妻とつましく暮らしていたが、ある日疎遠になっていた娘の来訪を受ける。こんがらがった人間関係を軽妙な筆さばきで描く名匠ウッディ・アレン監督の新作。新境地を開拓したとの評価もある今作への注目も高まっている。


『Before We Vanish』(日本)

黒沢清 Kiyoshi Kurosawa監督


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『BPM (Beats Per Minute)』(France)

ロビン・カンピオ Robin Campillo監督
1990年代初期のフランスで、“ACT UP”運動の一環として同性愛者への偏見と差別と闘ったHIV陽性と診断された男たちの物語。今年の映画祭の傾向として、同性愛を扱った作品に大きな注目が集まっていることも挙げられる。そんな粒ぞろいの作品たちの中でも、個人的にはこのフランス製の作品と、次にご紹介する作品に最も心惹かれるものを感じる。偏見や差別との闘いは、この作品が描く時代より20数年も経過した現在もなお続いているのだから。


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『Call Me by Your Name』(Italy/France)

ルカ・グァダニーノ Luca Guadagnino監督
アーミー・ハマー Armie Hammer、ティモシー・シャラメット Timothée Chalamet出演
陽光輝く北イタリアに、大学教授である父親と共に休暇にやってきた10代の少年は、父親に招待されてやってきた教え子の青年に恋をする。エキゾチックな異国の地ではじめて自分自身の性と向き合った少年の、瑞々しい成長物語。ストーリー自体はあまり珍しいものではないが、繊細な感情表現や性描写は極めて緻密であり、10年前の状況とは隔世の感がある。“Love is love is love is love.”の精神も、まだ完全ではないとはいえ、映画界に確実に浸透しつつあることを感じる。


『The Day After』(韓国)

ホン・サンス Hong Sang-soo監督


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『Faces Places』(France)

アニェス・ヴァルダ Agnès Varda監督、 Jr JR出演・監督
Bravo映画!映画を見続けて本当によかったと実感するのは、思いもよらない時期に、思いもよらない人々による、思いもよらない傑作がひょっこり生まれた瞬間に立ち会えた時だ。この愛すべきロード・ムービー兼ドキュメンタリー映画もそう。
アニェス・ヴァルダ監督といえば、半ば伝説化した人物であり、現在活躍しているすべての女流映画監督たちの大先輩にあたる。映画監督として活躍できた女性が数えるほどしかいなかった時代に、次々と問題作、傑作をものにした優れたアーティストだ。厳しい心理劇で才能を発揮してきた、御年88歳の彼女が、自分の孫に等しい年齢の若者JR33歳(…しかもビジュアル・アーティストなんぞというイマドキの肩書)とタッグを組み、フランスの鄙びた田舎を駆け巡って、様々な職業における“職人”たちの姿と、彼らの生み出すものたちに独特のセンスで付加したアートをフィルムに収めたのだ。異なる年齢層、異なる性、異なる社会的地位、異なる生活環境を代表する者や物がぶつかりあい、新しい形のアートを生み出してゆく場に立ち会えた幸せを、私たちは感じることができるだろう。


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『Félicité』(France/Senegal/Belgium/Germany/Lebanon)

アラン・ゴミ Alain Gomis監督
セネガル出身のアラン・ゴミ監督の新作は、キンシャサのバーで一時雇いのシンガーとして歌うフェリシテという女性が主人公だ。彼女は息子が交通事故で怪我をしたために、治療費を捻出すべく、奔走しなければならなくなる。厳しい生活環境によって鍛えられたため、フェリシテは精神的にタフではあったが、同時に感受性が鋭く、陽気でもあり神秘的な側面も持っていた。カメラは、多面的な彼女の内的探求に迫っていく。


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『The Florida Project』(USA)

ショーン・ベイカー Sean Baker監督
ウィレム・デフォー出演
フロリダ州オーランドには、巨大なウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートがある。その端っこにあるモーテルに暮らす6歳の女の子と、彼女の風変わりな“親友”たちが織りなす可笑しな冒険を描く。社会的にみればまさに崖っぷちというか、最下層の暮らしに甘んじている少女の世界には、私たちの目には見えない美が満ちている。それをめいっぱいのパワーと愛情でもって描いたショーン・ベイカー監督は、前作「タンジェリン Tangerine」(2015年)では、なんと2台のiPhoneカメラで愛すべき物語を撮りあげた。そして、主人公の頼れる親友を好演したトランスジェンダー女優ミア・テイラー Mya Taylorに、数多くの映画賞をもたらした功労者でもある。今回は、名優ウィレム・デフォーから、恐らく彼のキャリアの中でも最高のハートウォーミングな演技を引き出した。実は、長年のファンであるウィレムに是非ともこの役で映画賞レースに参戦してほしいという願いがある。悪役でも変態的な役でもなく(笑)、ごくごく普通の愛すべきおっさんを演じるというのは、ウィレムに限っては大変珍しい出来事であり、従って大層新鮮な感動を覚えるわけである(笑)。そんな役で賞をとって欲しいというのは、ファンの偽らざる心境だ。


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『Ismael's Ghosts, Director's Cut』(France)

アルノー・デプレシャン Arnaud Desplechin監督
マチュー・アマルリック Mathieu Amalric、マリオン・コティヤール Marion Cotillard出演
アルノー・デプレシャン監督の尊敬すべき点は、既にベテラン映画作家であるにもかかわらず、いわゆる“寡作のスパイラル”に陥ることなく、淡々と自分の撮りたい題材だけを映画にし続けていることだ。簡単そうに見えるが、実はそれは簡単なことでは全くない。スランプや資金面での困難をものともせず、コンスタントに秀作を世に問い続けるその尋常ならざる映画的体力は、一体どこから生まれてくるのだろう。
この新作は、デプレシャン監督にとっての「8 1/2」(フェリーニ監督、1963年)にあたるかもしれない。スパイ・スリラー映画を撮ろうとしている映画監督の前に、20年も前に突然失踪してしまった妻カルロッタが、またもや姿を現した。情緒不安定で、まるでヒッチコック映画に登場するヒロイン達のような“ファム・ファタール”であるカルロッタの存在は、彼の精神にも、映画製作にも、大いに混沌をもたらしてしまう。映画というアートが形成されていく過程において、どれほどの混乱と狂気がエネルギーとして消費されていくのか、この映画を見れば、映画監督稼業の厳しさが実感できるかもしれない。


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『Lady Bird』(USA)

グレタ・ガーウィグ Greta Gerwig監督
シアーシャ・ローナン Saoirse Ronan、ローリー・メトカーフ Laurie Metcalf出演
今年のNY映画祭のラインナップは、女流監督にとって嬉しい内容になった。女性の手になる作品が例年より確実に増えている。良いことだ。「フランシス・ハ Frances Ha」(2012年)や「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ Maggie's Plan」(2015年)、「20センチュリー・ウーマン 20th Century Women」(2016年)などの個性的な作品群で個性的な魅力を発揮してきた個性派女優グレタ・ガーウィグは、これまでにもノア・バームバック監督作品などで脚本も兼任してきた。その才媛ぶりは、いつメガホンを手にとっても不思議ではない程だったが、今回、初の長編商業用映画の監督としてデビューした。
主演は芳紀23歳の英国女優シアーシャ・ローナンだ。彼女が「ブルックリン Brooklyn」に続いて、繊細で風変わりな少女を熱演している。強い母親の陰に隠れて生きてきた芸術家気質の少女が、その陰から脱して独り立ちすべく奮闘する様子を、同じような“はみだし者”を演じて観客の共感を得たガーウィグ監督が、限りない愛着を持って瑞々しく描いた。


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『Let the Sun Shine In』(France)

クレール・ドゥニ Claire Denis監督
ジュリエット・ビノシュ Juliette Binoche出演
クレール・ドニ監督も、既にベテランの域に達した女流監督だ。彼女の創作意欲も一向に衰えることがない。主演に、これまた年をとって益々血気盛んなベテラン女優ジュリエット・ビノシュを迎え、パリに暮らす中年の芸術家が愛情を求めて流離う様子をエモーショナルに活写している。


『Lover for a Day』(France)

フィリップ・ガレル Philippe Garrel監督
エステル・ガレル Esther Garrel出演
男女間の禁じられた関係や、捻じれた家族関係など、業の深い物語の語り部として知られる“情念の映画作家”フィリップ・ガレル。彼の子供たちもまた才能ある映画人となり、特に最近のガレル監督の作品群は、ファミリービジネス的な色合いも深めている。また、新作を発表するたびに各国の映画祭や映画賞で取り上げられる彼もまた、疲れを知らぬ旺盛な創作欲の持ち主だといえよう。新作『Love for a Day』では、父と娘の間に起こる軋轢を描いている。手痛い失恋を味わったばかりの娘ジャンヌが、なんとなく疎遠になっていた大学教授の父親の家に戻ってくる。ところが父親は、彼女と同年代の教え子と同棲していた。この作品では実娘エステルが主演しており、ひょっとしたらこのストーリーは、ガレル監督その人とエステルが実生活で経験したことなのかしらんと勘繰りたくなる(笑)。


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『The Meyerowitz Stories (New and Selected)』(USA)

ノア・バームバック Noah Baumbach監督
アダム・サンドラー Adam Sandler、ベン・スティーラー Ben Stiller、エリザベス・マーベル Elizabeth Marvel、ダスティン・ホフマン Dustin Hoffman、エマ・トンプソン Emma Thompson出演
出世作「イカとクジラ The Squid and the Whale」で取り組んだテーマに立ち戻ったバームバック監督は、中年世代となった3兄妹が、頑固一徹の父親と気の向くままに行動する身勝手な母親と対決する様子を描いた。なんぼ年をとろうが親と子の関係は、やっぱり親と子のままだ。あんまり見栄えが良いともいえない古今東西変わらぬ親と子の確執を、ゴージャスなオールスター・キャストでどのように料理したか。興味を惹かれる作品だ。


『Mrs. Hyde』(France)

セルジュ・ボゾン Serge Bozon監督
イザベル・ユペール Isabelle Huppert出演
現在日本で大変な人気を呼んでいる、変態映画作家ポール・バーホーヴェン監督の変態スリラー映画「エル Elle」で、年齢の上限が厳しいと言われる女優稼業を堂々と謳歌している大女優イザベル・ユペール。熱狂的なユペール信者の弁を借りずとも、加齢なぞどこ吹く風のユペール様が、向かうところ敵なしのキャリアを楽しんでいらっしゃるのは一目瞭然。「ジキル博士とハイド氏」に想を得たこの作品で、ユペール様がまたもやどんなチャレンジをなさっているか、信者は膝を正してお待ち申し上げましょう。


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『Mudbound』(USA)

ディー・リーズ Dee Rees監督
ケアリー・マリガン Carey Mulligan、メアリー・J・ブライジ Mary J. Blige、ジェイソン・ミッチェル Jason Mitchell、ギャレット・ヘドランド Garrett Hedlund、ジェイソン・クラーク Jason Clarke出演
ライター兼監督のディー・リーズは、“異人種間の軋轢”が最も問題視されている今の時代の空気を反映し、ヒラリー・ジョーダン Hillary Jordan著の小説を映画化した。第二次世界大戦直後のミシシッピー州を舞台に、貧しい土地を耕して厳しい時代を生き延びようとする貧しい白人農家と黒人農家の苦闘をじっくりと描く。時代背景こそ違えども、白人層と黒人層の対立がただならぬ緊迫を招いている今こそ、目を背けずに向き合わねばならない問題が、この作品で提起されているように思う。


『On the Beach at Night Alone』(韓国)

ホン・サンス Hong Sang-soo監督


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『The Other Side of Hope』(Finland)

アキ・カウリスマキ Aki Kaurismäki監督
Sherwan Haji出演
各国の内戦による悪影響が溜まりに溜まり、今になって大量の難民の全世界への流出として大爆発した。戦火によって故郷を追われ、命からがら国外に逃げ延びた人々も、彼らを受け入れる立場にある国々も、双方ともに解決の見通しのつかない苦しい問題に直面している。アキ・カウリスマキ監督の新作は、フィクション映画としては恐らく初めて、世界的に注目を集めた難民が主人公の作品だ。フィンランドに流れ着いたシリア難民男性が、安心して暮らせる場所を確保しようと奮闘する。カウリスマキ監督は、故郷を失った人々への共感と、彼らを追い詰めた政治家全般への批判を、コミカルな味わいでくるんで軽妙な映像に仕立て上げた。今後、ドキュメンタリー映画に留まらず、劇映画にも難民の問題は反映されていくだろう。


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『The Rider』(USA)

クロエ・ザオ Chloé Zhao監督
再起不能なほどの大怪我を負ったロデオ乗りと、調教師は、かつて彼らが愛し、人生を捧げていた生き方を諦めざるを得なくなった。サウス・ダコタの農場を舞台にドキュメンタリー・タッチで描かれるこの作品は、傷ついた者同士だけが理解できる痛みと癒しの尊さを丁寧に描いてゆく。


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『Spoor』(Poland/Germany/Czech Republic)

アニェシュカ・ホランド Agnieszka Holland監督、カシア・アダミック Kasia Adamik監督
アニェシュカ・ホランド Agnieszka Holland監督も今年68歳だ。月日の経過は飛ぶようだ。ポーランド、ワルシャワ出身のこの女流監督は90年代に活躍し、今の若い世代によるポーランド映画が昨今俄かに再評価の機運を高めている原動力となった。そのホランド監督の新作は、もう1人の女流監督との共同作業である。ポーランドのチェコの国境で動物を狩ることを生業とする男たちが、連続して不審な死を遂げた。その連続死事件の奇妙さ同様、この事件を動物たちの人間への報復ではないかと考える女性を主軸に、人間と動物を巻き込んだラブ・ストーリーにまで発展する、何ともはや摩訶不思議な物語である。ホランド監督ならではの、現実と幻想が曖昧に混じり合う独特の世界観を思い起こさせる。


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『The Square』(Sweden)

リューベン・オストルンド Ruben Östlund監督
エリザベス・モス Elisabeth Moss、クレス・バング、ドミニック・ウェスト Dominic West出演
2017年度のカンヌ、パルムドールを獲得した『The Square』は、2014年の「フレンチアルプスで起きたこと Turist」でも、実はとても重く深刻なテーマにコミカルな味付けを施すことにより、独特のブラック・ユーモアを生み出していたリューベン・オストルンド Ruben Östlund監督の新作である。彼はこの作品でカンヌの“ある視点”部門の審査員賞を受賞していた。今年のカンヌ・コンペティションへは、ギリギリになっての参加決定だったにもかかわらず、皆の予想を覆して最高賞を射止めることに。オストルンド監督は、スウェーデン人映画作家として2人目のパルム・ドール受賞者となった。
一度結婚には失敗したものの、ヒューマニストを気取り、人望篤い現代アートの著名キュレーターであるクリスチャンが、典型的な富裕層の世界から転落していく様子をこれでもかと笑い飛ばすコメディ映画。カンヌが純然たるコメディ映画に最高賞を与えるのは極めて珍しいが、この作品は、社会問題となって久しい移民や難民の問題にも触れた内容であり、そういった社会問題に親身になって取り組んでいるとされる富裕層の化けの皮を剥ぐ趣向が、逆に多くの観客の支持を得たのではないかと思われる。カンヌは審査員が受賞作品を選ぶが、審査員だって人の子、やはり観客の反応が大きかった作品に心惹かれるものだ。


『Thelma』(Norway/Sweden/France)

ヨアキム・トリアー Joachim Trier監督
エリー・ハーボウ Eili Harboe出演


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『Western』(Germany/Bulgaria)

ヴァレスカ・グリーゼバッハ Valeska Grisebach監督
Meinhard Neumann、 Reinhardt Wetrek、 Syuleyman Alilov Letifov出演
ドイツからは、昨年「ありがとう、トニ・エルドマン Toni Erdmann」で旋風を巻き起こしたマーレン・アーデ Maren Ade監督に引き続き、中堅映画監督のグリーゼバッハ監督の作品がエントリーされた。この作品では、ブルガリアの人里離れた場所で水利を建設中の、男ばかりの閉鎖された空間で起こる心理劇が鋭く描写されている。


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『Zama』(Argentina/Brazil/Spain/France/Mexico/USA/The Netherlands/Portugal)

ルクレツィア・マルテル Lucrecia Martel監督
ダニエル・ヒメネス・カリョ Daniel Giménez Cacho出演
アルゼンチン出身の女流監督ルクレツィア・マルテル監督による、「頭のない女 La mujer sin cabeza」(2008年)に続く久しぶりの新作「サマ Zama」。18世紀末、パラグアイに赴いた実在のスペイン軍士官サマの数奇な生涯を描いた、アントニオ・ディ・ベネデット著の小説の映画化作品である。なんとなく、ジョゼフ・コンラッド Joseph Conrad著の「闇の奥 Heart Of Darkness」(1902年刊)を思わせる内容の物語だ。高すぎる理想と狂気の域に達した思想に押しつぶされる男を、雄大な自然を背景に描写したマルテル監督の手腕は、高く評価されている。


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