House of M

アクセスカウンタ

zoom RSS 失われた都市を求めて―"The Lost City of Z"

<<   作成日時 : 2017/01/20 17:10   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

このブログでも以前ご紹介した「エヴァの告白 The Immigrant」(2013年)、私の大好きな「リトル・オデッサ Little Odessa」(1994年)などの監督として知られる映画作家ジェームズ・グレイ James Gray監督の、公開が待たれる新作『The Lost City of Z』について。当ブログ内の同作についての記事はこちらにあります

画像

グレイ監督は、批評家筋や映画好きの間では非常に評判の良い映画監督です。彼の映画に出演した俳優さんたちが軒並み素晴らしい演技を披露していることでも、彼の演出家としての技量とセンスの良さは証明されているでしょう。しかしながら、異文化間の衝突と葛藤などをテーマにした映画作りをライフワークとしている生真面目さと反骨精神から、なんというか、華やかな作品は期待できない人なんですよね。地味ながらも、シリアスでシビアなストーリーのドラマを重心の低い演出で見せていくタイプ。寡作な監督ですが、彼のフィルモグラフィーは見応えがある内容になっています。

では、ティーザーですが予告編も出てきたことですし、作品の雰囲気をつかみやすい画像も付けて見てみましょう。

The Lost City of Z - Official Teaser Trailer | Amazon Studios
shared from Amazon Studios

画像

『The Lost City of Z』(2017年)
監督 Directed by :ジェームズ・グレイ James Gray
製作 Produced by : ブラッド・ピット Brad Pitt、デデ・ガードナー Dede Gardner、デイル・アーミン・ジョンソン Dale Armin Johnson、アンソニー・カタガ Anthony Katagas、ジェレミー・クライナー Jeremy Kleiner
脚色 Screenplay by :ジェームズ・グレイ James Gray
原作 Based on 「ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え The Lost City of Z: A Tale of Deadly Obsession in the Amazon」 by デヴィッド・グラン David Grann
音楽 Music by :クリストファー・スペルマン Christopher Spelman
撮影 Cinematography :ダリウス・コンジ Darius Khondji
編集 Edited by :ジョン・アクセルラッド John Axelrad
出演 Starring: チャーリー・ハナム Charlie Hunnam
ロバート・パティンソン Robert Pattinson
トム・ホーランド Tom Holland
シエンナ・ミラー Sienna Miller

製作会社 Production company :Plan B Entertainment, MICA Entertainment, MadRiver Pictures
配給会社 Distributed by :Amazon Studios, Bleecker Street
公開日 Release date :2016年10月15日(NY映画祭にて) October 15, 2016 (NYFF)
2017年4月21日(アメリカ国内) April 21, 2017 (United States)

この作品が描くパーシー・フォーセット中佐とは、如何なる人物でどのような人生を送ったのか、ということですが。この映画が原作としている伝記「ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え The Lost City of Z: A Tale of Deadly Obsession in the Amazon」 (デヴィッド・グラン David Grann著)の邦訳版が既に出版されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
歴史に名を残す人物は、常人には理解しがたい桁外れな部分を持っており、そんな彼らに振り回される家族はたまったものではなく、往々にして不幸になるというマーフィーの法則は本当だったと痛感します。パーシー・フォーセット中佐(“大佐”は自称であり本当は中佐身分で退役した)の破天荒な人生は、実にスクリーン映えする凄まじいストーリーでありますが、彼の熱に浮かされたようなジャングルへの執着人生の脇でひっそりと忘れられていった彼の妻ニーナの哀れな境遇に、個人的には非常に胸が痛みました。映画が日本で公開されるかどうかはまだ未定ですが、それを別にしても一読の価値のある、大変貴重な内容且つ面白いルポになっていると思います。

ロスト・シティZ~探検史上、最大の謎を追え
日本放送出版協会
【著】デイヴィッド・グラン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ロスト・シティZ~探検史上、最大の謎を追え の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

「ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え The Lost City of Z: A Tale of Deadly Obsession in the Amazon」 デヴィッド・グラン David Grann著

画像

パーシー・フォーセット“大佐”ことパーシバル・ハリソン・フォーセットの人生にはいくつものステージがあり、第一のステージは、1906年10月から1907年5月にかけて強行されたアマゾン探検です。

画像

これは、ブラジルとボリビア間のジャングルで文字通りマチェーテを振るって行く道を切り開き、測量して国境線を定める任務でした。

画像

一口に測量といっても前人未踏のジャングルの中での作業ですから、23名からなっていた探検隊には想像を絶する困難が立ちはだかっていました。猛獣、毒蛇、マラリアやデング熱、黄熱病などの病気を媒介する蚊や蠅、川の中にはピラニア、電気ウナギ、吸血魚カンジールなど、過酷な環境に不慣れな人間にとっては致命的な危険に囲まれています。

画像

しかしそれ以上に探検隊にとって脅威であったのは、白人に敵意を持つ好戦的なインディオの部族でした。彼らは緑深い草むらに潜んで気配を隠し、矢じりに猛毒を塗った矢を突如探検隊に向けて放ってきました。フォーセットの率いる探検隊の中からも何人もの犠牲者が出たそうです。

画像

隊員たちのほとんどは昆虫が媒介する病気に罹り、食料不足にも悩まされて体力が衰え、任務が終了する頃には死に至る者もありました。ところが、元々ジャングル向きの体質であったのか、頑健な身体に恵まれたフォーセットだけは病気知らず。彼はその後もアマゾン探検を続けることになります。

イギリスの家族の元に戻っても、“緑の地獄”の魔力に憑りつかれたフォーセットは日常生活に飽きてしまいます。1908年には、9人の探検隊を率いてブラジル南西部にあるコルンバ周辺と、コロンビアとの国境沿いを流れる川リオ・ヴェルデの測量のため、再びジャングルに立つことに。マチェーテでジャングルを開削しつつ前進するため、探検隊の歩みは遅々としてはかどらず、隊の食料は底を尽き、体力の弱った隊員たちは次々と感染病になり、なんとかリオ・ヴェルデの源流を調査することはできたものの、隊員のうち5名が亡くなる悲劇に見舞われました。

画像

命懸けの任務であるにもかかわらず、なぜかフォーセットだけはピンピンしていて、彼自身の士気が下がることは皆無。1910年にはペルーとボリビアに接するヒース川の調査と測量を任されます。この探検の際には、外国からやってくる探検隊にとっての大きな収穫が得られました。それは、地元に暮らすインディオの部族の中でも非協力的、好戦的な部族への対応術です。
毒矢が飛び交う中、フォーセットは攻撃の意思のないことを身振りで示しつつ、インディオたちのいる場所まで歩き、地元の言葉で自分たちは友だと叫びました。フォーセットから帽子をプレゼントされたインディオは、以降、隊員たちを友人として歓待してくれたそうです。無益な殺生を避け、友好的な関係をインディオの部族と結ぶことができれば、乏しくなりがちな食料を分けてもらえるかもしれませんし、それ以降の探検に力を貸してもらえる可能性も高まります。この外交術は、なにもジャングル内に限ったことではなく、どんな状況下でも有効な手段だと言えるでしょう。もちろん危険な賭けではありますが、言葉も通じない、もちろん文化も生活様式も全く異なる異民族と対峙する場合は特に、非暴力、物々交換による交流は重要だと思いますね。フォーセットはこれ以降隊員たちに、インディオへの銃撃を固く禁ずることになります。

画像

フォーセットの次なる任務は、1911年のボリビア北西部の調査と測量でした。…よくもまあ、こんなに次から次へと過酷な探検に出かけられるもんです。彼の身体能力の高さというか、頑丈さは尋常じゃなかったのでしょう。それと同時に、やはり彼もまた、“緑の地獄”に棲む悪魔に魅入られてしまった人間だったのでしょうね。しかし今度の探検では、ジャングルの過酷な環境以外にフォーセットの頭を悩ませる問題が持ち上がります。南極大陸の探検で一躍有名になった冒険家にして科学者のジェームズ・マレーが加わったことですね。今回の隊には、他にもアメリカからやはり探検家兼科学者という身分でヘンリー・コスティンが参加しています。

問題は、フォーセットと同じぐらい気位が高くて強情っ張りで反骨精神に富む男マレーが、フォーセットと全くそりが合わず、任務中に何度も何度も対立しては隊の前進を妨害したこと。マレーは寒い場所で名声を得た人ですから、熱帯の環境に耐性がありません。探検が始まってすぐに複数の病気に罹り、ジャングル内での開削という重労働と慢性的食料不足から、たちまち瀕死の状態に陥ってしまいます。フォーセットは、隊全体を守ることと、任務遂行を第一目標に掲げていたため、途中で力尽きて倒れた者に対しては情けをかけず、そのまま捨てていく方針でした。また、肉体的な苦痛以上に、慣れ親しんだ文明社会と真逆の環境に放り込まれたストレスから、精神に異常をきたす隊員も後を絶たなかったそうです。そんな混乱した状況の中、悩んだ末にフォーセットは探検をいったん中止して、遂に動けなくなったマレーを開拓民一家に預けました。マレーは一命をとりとめ、そのまま帰国し、後に北極調査に参加します。

さて、フォーセットの調査隊はジャングルの開削・測量を再開し、1か月後、ペルーに到着。これで彼は、満足に地図も作成されていなかった未開の地、南米の国境を全て画定するという偉業を成し遂げたことになるわけですね。英国政府がフォーセットにこの任務を与えたのは、莫大な天然資源を持つ南米の状況を正確に把握し、他国に先駆けて資源開発に優位な立場で着手したいという意向もあったでしょう。政府の思惑はともかく、フォーセット自身の、特にジャングルに詳しい探検家としての名声は世界に轟きました。

1914年、フォーセットは彼自身の希望でブラジルを旅し、以前から温めていた調査の下調べを行います。それは、単なる未開の野蛮な地であると認識されていただけのアマゾン奥地に、想像を上回るような高度に洗練、発達した文明があったのではないかという仮説を裏付けることです。俗に言うところの“エル・ドラード”伝説ですね。尤も、全てが黄金で覆いつくされた都市伝説なんぞ、フォーセットの時代の人々ですら信じていなかったそうですが。彼はブラジル南西部のジャングルで、これまで知られていなかったインディオの部族、マスビ族と遭遇しました。農具や土器を用い、効率的な農耕を行って生活しているマスビ族の文化的な生態を観察すればするほど、彼自身の、アマゾンの中心にかつて高度な文明をもった部族がいたのではないかという仮説は、確信に変わっていきました。そしていつの日か、自分自身の手で今はなき文明の遺跡を発見しようと決意も新たにするわけですね。フォーセットは、これまでの経験と見聞したことから判断し、ブラジルのバイーア州のジャングルに目星をつけました。

画像

ところが、第一次世界大戦が始まり、フォーセットも古代都市探索への夢を一旦棚上げして帰国し、英国陸軍の砲兵隊に入りました。ジャングルで鍛えた体力とガッツで、凄惨を極めた西部戦線を生き延び、1916年には中佐に昇格。一日で何万人もの同胞が戦死し、負傷者のうめき声と断末魔の叫び声、死臭と硝煙、糞尿の匂いで呼吸もできない塹壕の中で正気を保つため、フォーセットは戦争が終わったら古代都市探索に出発するのだと何度も語ったそうです。…過酷な環境のジャングルにあってビクともしなかったフォーセットの精神が、砲弾や銃撃でバタバタと人が死んでいく戦場の狂気に耐えかねたのですからね。戦争が如何に無益で不条理なことであるかがうかがえます。武器によって人為的に与えられる死の危険より、自然の脅威によってもたらされる死の危険の方が、フォーセットにとってはより身近で自然の摂理に即した当たり前のものに感じられたのでしょう。

1919年6月19日、ようやく第一次世界大戦が終結。フォーセットは中佐の身分で退役します。帰国すると、彼はすぐさま古代都市探索のためのスポンサー探しにとりかかりますが、なにしろ戦争が終わったばかりで国が疲弊しきっていた時期。誰もフォーセットのスポンサーにはなってくれませんでした。1920年に、僅かな私財とブラジル政府から得た助成金を頼りに急遽探検隊を組織しましたが、この探検は大失敗に終わってしまいます。1921年には私財を全てはたき、たった1人でジャングルに入っていったフォーセットは、3か月間古代都市を探し続けましたが、物資が尽きて探索の中断を余儀なくされます。それでも資金をひねり出そうと奮闘しますが、万策尽き果て、失意のまま家族と共に英国に帰国しました。

画像

巨大な夢に憑りつかれた破天荒な人間にとっては、己の夢を追求することが人生の最優先事項になります。そして、そんな人間の家族の人生もまた、見果てぬ夢に振り回され続けることになってしまいます。フォーセットは、父親に憧れていた長男ジャックは別にして、理解ある妻ニーナの希望を叶えることも、父や兄のように見果てぬ古代都市にロマンを見出せなかった次男ブライアンを構ってやることもできませんでした。家族の生活を守るどころか犠牲にして、彼は古代都市を発見することだけを考えていたのですね。

画像

1924年、偶然知り合ったアメリカ人新聞記者のつてを頼り、アメリカから資金援助を得たフォーセットは、今度こそ本腰を据えて準備にとりかかります。ジャングルの中で2年間は古代都市の探索に専念し、遺跡を発見するまでは戻らぬ覚悟だったそうです。ただ、フォーセットの常軌を逸した情熱についてこれる人材が最早いないため、彼は、父親同様頑健だった息子ジャックと、彼の親友の2人だけをジャングルに連れていくことにしました。1925年2月にリオデジャネイロからアマゾンの奥地に入り、3人だけの探検隊の苦難に満ちた冒険が始まるわけですが、ジェームズ・グレイ監督の映画版ではおそらく、フォーセットと彼の長男の探検譚がメインに描かれることになると思うので、彼らの人生に関する予習はここまでにしておきます。

予告編や出回っている画像から判断するに、異文化・異人種同士の衝突、軋轢といった、グレイ監督の作品群を貫く大きなテーマは健在のようですし、ダリウス・コンジ Darius Khondjiの雄大なカメラワークが今から楽しみでなりません。女性ファンの皆さんには、フォーセットを演じるチャーリー・ハナム Charlie Hunnamや、アメリカの探検家ヘンリー・コスティンを演じるロバート・パティンソン Robert Pattinsonの変貌ぶりが気になるところでしょうね。これまで演じてきた役柄からはかけ離れたキャラクターに挑んだチャーリーの捨て身の演技、そして、慣れぬジャングルの環境の中で疲弊し、追い詰められていくコスティンに扮したパティンソンの雰囲気には凄みすら感じます。また、フォーセットの息子ジャック役には、新しいスパイダーマンに決定したトム・ホーランド君が扮しており、俳優陣の演技も楽しみですね。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
失われた都市を求めて―"The Lost City of Z" House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる