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zoom RSS 第1回放送映画批評家協会ドキュメンタリー映画賞Critics' Choice Documentary

<<   作成日時 : 2016/12/08 23:02   >>

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ここ数年の間に、すっかり映画界の主流になったドキュメンタリー映画の分野では、以前から優れたドキュメンタリー映画を作り続けていた才人たちへの注目度が上がったと同時に、他ジャンル映画の優れた人材がドキュメンタリーに挑戦したりと、今年もスケールを広げつつ発展中です。慢性的アイデア不足で、ここ数年間飢饉が続く商業用劇映画ジャンルに対し、ドキュメンタリー映画畑は豊作続き。

先日、放送映画批評家協会 The Broadcast Film Critics Association (BFCA)が第22回放送映画批評家協会賞 The 22nd Annual Critics' Choice Awardsのノミネート作品を発表しました。その放送映画批評家協会 BFCAは、昨今の映画界の流れを汲み、ついにドキュメンタリー映画部門だけを独立させた映画賞を新たに設立してしまいました。放送映画批評家協会ドキュメンタリー映画賞 Annual Critics’ Choice Documentary Awardsは今年から始まり、第1回目の受賞者が既に発表されています。



第1回放送映画批評家協会ドキュメンタリー映画賞受賞者一覧 Full List of Winners for The First Annual Critics’ Choice Documentary Awards

最優秀ドキュメンタリー作品賞(長編劇映画) Best Documentary - Theatrical Feature

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“O.J.: Made in America”


最優秀監督賞(長編劇映画) Best Director - Theatrical Feature
エズラ・エデルマン Ezra Edelman (“O.J.: Made in America”)


最優秀ドキュメンタリー作品賞(テレビ/配信映画) Best Documentary - TV/Streaming
13th


最優秀監督賞(テレビ/配信映画) Best Director - TV/Streaming
エイヴァ・デュヴァーネイ Ava DuVernay (“13th”)


最優秀ドキュメンタリー処女作品賞(長編劇映画) Best First Documentary - Theatrical Feature
“Weiner” dir. ジョッシュ・クリーグマン Josh Kriegman, エルシー・スタインバーグ Elyse Steinberg


最優秀ドキュメンタリー処女作品賞(テレビ/配信映画) Best First Documentary - TV/Streaming
Everything Is Copy” dir. ジェイコブ・バーンスタイン Jacob Bernstein, ニック・フッカー Nick Hooker
“Southwest of Salem: The Story of the San Antonio Four” dir. デボラ・エスケナージ Deborah Esquenazi
2作品タイ受賞


最優秀政治ドキュメンタリー賞 Best Political Documentary
“13th”


最優秀スポーツ・ドキュメンタリー作品賞 Best Sports Documentary
“O.J.: Made in America”


最優秀音楽ドキュメンタリー映画賞 Best Music Documentary
“The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years”


最優秀楽曲賞 Best Song in a Documentary
“I’m Still Here” from “Miss Sharon Jones!”


最優秀ドキュメンタリー・ミニシリーズ作品賞 Best Limited Documentary Series
“O.J.: Made in America”


最優秀現在進行形ドキュメンタリー・シリーズ Best Ongoing Documentary Series
“30 for 30”


最も革新的なドキュメンタリー作品賞 Most Innovative Documentary
Tower” キース・メイトランド監督 dir. Keith Maitland


この結果をみると、今年のドキュメンタリー映画界では、テレビでドラマ版も制作され、そちらの方も非常に高い評価を受けているO・J・シンプソン Orenthal James Simpsonのドキュメンタリー作品“O.J.: Made in America”と、Netflix制作の話題のドキュメンタリー作品“13th”の2つが頂点をなしたことが分かりますね。今年の映画界の動向を見ていると、この結果は容易に予測できます。

映画はいつもその時代そのものを映し出してきました。映画が作られた国の政治や経済、文化、歴史、人間の生活を描きながら、時代そのものを切り取ってきたのです。

アメリカでは今年、国の在り方を根底から揺るがす大きな出来事がありました。大統領選挙です。オバマ政権が終わり、政治、経済両面で世界の勢力図が書き換えられようとしているこの難しい時代、大国の舵取りを行う新たな大役を決めるための、重要な、今後の世界情勢に大きな影響を与える極めて重要な出来事でした。大統領選の結果はもう既に皆さんご存じだと思いますが、これが今後の世界情勢をどのように変えるのかはまだ分かりません。分かりませんが、アメリカ国民だけではなく、他の国々の人々も将来について危機感を感じているのは確かなようですね。

映画はいつもその時代そのものを映し出してきました。2016年、アメリカは大きな変革期を迎えました。これまで“存在しないもの”として記憶の片隅に追いやられてきた人種差別に基づくアメリカ社会の歪みを、積極的に直視して検証し直そうとする映画が、今年アメリカから多く生まれたのは偶然ではありません。そんな中、ドキュメンタリー映画では“O.J.: Made in America”と“13th”、受賞は逃しましたがアメリカの作家ジェームズ・ボールドウィン James Baldwinの未完の著作を下敷きに彼自身の人生を紐解いたドキュメンタリー“I Am Not Your Negro”(2016年、ラウル・ペック Raoul Peck監督)などが高い完成度と共に注目を集めたわけです。それぞれの作品が取り上げた題材は、過去に起こった事件であったり、既に亡くなった人物の伝記であったり、はたまたアメリカ社会の歴史そのものであったりしますが、いずれの作品も、“今のアメリカ社会”が抱える問題に直結する普遍的なテーマと問題を提起するものなのですね。

リンクを貼った作品については、興味のある方は以前このブログで書いた記事を参考になさってください。

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なお、Netflix制作、配信によるエイヴァ・デュヴァーネイ Ava DuVernay監督(「グローリー/明日への行進 Selma」(2014年)のドキュメンタリー映画「13th -憲法修正第13条 -」は、Netflixに加入していればご覧になることができる作品です。とにかく、1人でも多くの方に見ていただきたい必見ドキュメンタリーですので、興味を持たれた方は是非是非ご覧になってみてください。

遠い昔に廃止されたはずの奴隷税度が、今現在もなお、様式を変えて社会のあちこちに巣食っている事実を、立場や意見を異にする大勢の識者からの証言を基に、非常に分かりやすく証明して見せたものです。奴隷制度という究極の人種差別、人権侵害現象が、何故長年にわたってアメリカ社会を蝕んでいるのか、そのからくりがアメリカ社会の成り立ちと構造、そして矛盾を内包したアメリカの刑務所制度と共に紐解かれていくのですね。

1865年に制定された奴隷制を禁ずる修正法案“合衆国憲法修正第13条 13th”は、アフリカ系アメリカ人を含む全てのアメリカ国民に平等に自由を保証することを目的に成立しました。ところが、“第13条は犯罪者には適用されない”という条文の一部が、アフリカ系アメリカ人が白人以上に犯罪者として逮捕、検挙、投獄される皮肉な状況を招いてしまうことに。刑務所を巨大ビジネスにした“大量投獄システム”は何年もかかってアメリカ経済に根付き、結果として、アフリカ系アメリカ人や移民などが金を生み出すために些細なことで逮捕され、重い刑罰を科されて投獄される標的になってきたわけです。

トランプ新大統領を来季から迎えるアメリカは、今いろいろな側面で揺れ動いている最中でしょう。今現在アメリカに住む人たちにとっては切実な問題を提起したこの「13th -憲法修正第13条 - 13th」。しかし今作で徐々に明らかにされる人種問題の病巣は、アメリカのみならず、他の国々でも同じ病を発症せしめているといえます。アメリカ人だけといわず、私たちも、他の国々の方々も、一度は見ておくべき重要な作品であることに間違いはありません。


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「13th -憲法修正第13条 - 13th」(2016年)
監督:エイヴァ・デュヴァーネイ Ava DuVernay
製作:Spencer Averick、Howard Barish他。
脚本:Spencer Averick 、エイヴァ・デュヴァーネイ Ava DuVernay
撮影:ハンス・チャールズ Hans Charles、キラ・ケリー Kira Kelly
編集:Spencer Averick
音楽:ジェイソン・モラン Jason Moran
アニメーション制作:フランク・リン Frank Lin、ダン・ミーハン Dan Meehan

また、この作品の素晴らしいところは、テーマの深淵さとそれを紐解く鋭い考察だけではなく、1本の映像作品として高い完成度を誇っていることですね。出来の悪いドキュメンタリー作品にみられるような、アーカイブ映像や関係者へのインタビュー映像をだらだら繋いだだけというミスは賢明に避けているわけです。グリフィス監督の「国民の創生」などの映画作品からの引用や一目瞭然の解説用アニメーション映像が、本編でディスカッションされている内容に沿ってテンポよく挿入され、背景にはクールなラップ・ミュージックが流れて、スピーディーかつ流麗な編集の技を堪能できる作品にもなっているのです。


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