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zoom RSS エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に Everybody Wants Some!!

<<   作成日時 : 2016/11/23 11:03   >>

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テキサスはヒューストン出身のリチャード・リンクレイター Richard Linklater監督の作品には、彼自身の人生での経験であるとか、地元テキサスの風物などが色濃く反映されている事が多いように思います。


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日本でもファンが多い、すれ違いラブ・ストーリー3部作「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 Before Sunrise」(1995年)、「ビフォア・サンセット Before Sunset」(2004年)、「ビフォア・ミッドナイト Before Midnight」(2013年)は、ウィーンでの最初の出会い、9年後のパリでの再会、そのさらに9年後、とうとうパートナー同士となった2人のギリシャでのバカンスのひと時といったように、ヨーロッパが舞台になっています。とはいえ、ストーリーの主軸はあくまでも2人の男女、アメリカ人ジェシーとパリジェンヌ、セリーヌの間で交わされる怒涛の会話劇ですからね。この3部作の面白さは、ジェシーとセリーヌの間に横たわるアメリカ人とヨーロッパ人のカルチャー・ギャップ、また男女のギャップ、価値観のギャップの対比であります。ヨーロッパの情景は、本当に映像の背景程度にしか使われていません。


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それに比べ、日本での劇場公開は製作から10年以上経ってからとなった出世作「バッド・チューニング Dazed and Confused」(1993年)は、1976年、テキサスの田舎にある高校に進学した新入生たちと、彼らを迎え入れる上級生たちによる一晩の乱痴気騒ぎを描いたもので、地域色も自伝的な要素も色濃い典型的な“リンクレイター・スタイル”の作品。
実は私、ベン・アフレック Ben Affleckだのパーカー・ポージー Parker Poseyだのミラ・ジョボビッチ Milla Jovovichだのマシュー・マコノヒー Matthew McConaugheyだの、豪華な顔ぶれが脇を固めているこのアホらしく喧しいお祭り騒ぎ映画が大好きでしてね。若い連中がおバカの限りを尽くす爽快さもさることながら、それ以上に、祭りの後の寂しさや、パーティーでは荒ぶってる連中が皆密かに悩みや不安を抱えていたりする繊細さが、複雑な余韻を残してくれるからです。


1980年9月、南東テキサス州立大学 STU野球部寮。新学期開始まで3日と15時間。

「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に Everybody Wants Some!!」(2016年)
監督:リチャード・リンクレイター Richard Linklater
製作:ミーガン・エリソン &ジンジャー・スレッジ&リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター Richard Linklater
撮影:シェーン・F・ケリー
プロダクションデザイン:ブルース・カーティス
衣装デザイン:カリ・パーキンス
編集:サンドラ・エイデアー
音楽監修:ランドール・ポスター&メーガン・カリアー
出演:ブレイク・ジェナー (ジェイク)
ウィル・ブリテン(ビューター)
ゾーイ・ドゥイッチ(ビバリー)
ライアン・グスマン(ローパー)
タイラー・ホークリン(マクレイノルズ)
J・クィントン・ジョンソン(デイル)
グレン・パウエル(フィネガン)
ワイアット・ラッセル(ウィロビー)
オースティン・アメリオ(ネズビット)
テンプル・ベイカー(プラマー)
ターナー・カリーナ(ブラムリー)
ジャストン・ストリート(ナイルズ)
フォレスト・ヴィッカリー(コーマ)他。

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野球推薦で入学することになった新入生のジェイクは期待と不安を抱き、大人への一歩を不器用に踏み出そうとしていた。そう、今日は野球部の入寮の日だ。お気に入りのレコードを抱え、ジェイクが野球部の寮に着くと、4年生のマクレイノルズとルームメイトのローパーから、好意的とはいえない歓迎を受ける。高校時代、イケイケのスター選手だったジェイクに対する先輩方の洗礼だった。しかも寮生活をしている先輩方は野球エリートとは思えない風変わりな奴ばかり。マリファナ愛好者で謎めいていて、「コスモス」の熱狂的ファンのウィロビー、ノーラン・ライアンの再来を自認する妄想癖の塊、ナイルズ、どうしようもないギャンブル狂のネズビット、噛みタバコ好きで気さくな男だが、寮生から嫌みの“ビューター・パーキンス”という田舎者っぽいあだ名を付けられたビリー。カリスマ性はあるがどこか陰りのある早口のフィネガンなど一筋縄ではいかない兵揃いだ。
面倒見の良いフィネガンがこの門限のない素晴らしき世界のツアーガイド役を買って出る。大学を巡るツアーは、当然のように女子寮に行くことから始まる。女の子たちの品定めだ。車で通りかかった2人組の女の子に早速フィネガンがアタック。あえなくフィネガンの強引なナンパは拒否られるが、ジェイクは同じ新入生で演劇専攻のビバリーに一目惚れ。彼女もジェイクには好意的だ。先輩の手前、控えめにしていたのが功を奏したのだ。一通りツアーを終えて、寮に戻ったジェイク。しかし、長い入寮初日はまだ終わらない。今度は最高の夜に繰り出すことに。チームのメンバーはタイトなジーンズにポリエステルのシャツを着こんで地元のディスコで夜通しのナイトフィーバー!続いて街で一番のカントリー・バー“ホンキートンク・バー”でカウボーイハットをかぶり、ラインダンスで「コットンアイジョー」を踊りまくった。そして週末にはパンクのライブで初めてのモッシュを体験。自主練の後も、もちろんチームメイトたちとバカ騒ぎ。ジェイクは今までに感じたことのない自由と希望を抱きながら大人の扉を開け、青春を謳歌していた。それは決して長くは続かないけど、人生最高の時の幕開けだった。
「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に Everybody Wants Some!!」公式サイト official siteより抜粋

この作品を見た時には、いの一番に「バッド・チューニング Dazed and Confused」(1993年)を思い出しました、やっぱりね。「バッド・チューニング Dazed and Confused」の大学生バージョンそのまんまですよね(笑)。監督自身も今作は、登場人物やストーリーに直接的な関連はないけれども、「バッド・チューニング Dazed and Confused」の“精神的な続編”であると定義付けているそうです。分かる分かる。しかし、「6才のボクが、大人になるまで。 Boyhood」を経て、リンクレイター監督の人物描写にはさらにきめ細やかな配慮が加わったと感じますね。これまでも、何気ない日常の光景や登場人物のちょっとした仕草で、彼らの心理状況を繊細に描いてきたリンクレイター監督ですが、「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に Everybody Wants Some!!」ではその技に磨きがかかっていました。

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もうホント、ストーリーなんぞ無きに等しく、主人公が野球部の男子寮に入ってきてから実際に大学の新学期が始まるまでの3日間と少々、上級生たちにからかわれたりいびられたり、うまく先導してもらったりしつつ、その実、パーティーとナンパと酒に明け暮れるだけという(大笑)。ひたすら酒、オンナ、パーティー(たまにマリファナ)、酒、オンナ、パーティー、酒、オンナ、パーティーのローテーションが続く体力勝負の映像の中、監督の真意は、ファッション、音楽をはじめとする80年代懐かしのポップカルチャーへの愛情を、スクリーン狭しとぶちまけることにあったんじゃなかろうかと勘繰りたくなるほど(笑)。リンクレイター印の“青春グラフィティ”作品ですから、そりゃもう、音楽、ファッション、80年代の地元テキサスの文化背景の描写は異常なほど緻密で歴史考証(笑)も完璧。抜かりありませんものね。

しかしながら、ジェイクを囲んで登場する野球バカたちは、年齢だけを見れば「バッド・チューニング Dazed and Confused」の連中より一段階上の大人(笑)なので、個々人が抱えている悩みも、高校生のそれよりうんと現実味を帯びていて深刻なものでもあります。若者の特権で“永遠には続かないけれど、人生最高の瞬間”を存分に享受しつつも、すぐ目の前に迫った現実―自分自身以外にも責任を持たねばならなくなること―に立ち向かうべく、“幼年期”を脱することへの不安と期待が入り混じった複雑な感情が、この作品全体を包んでいるようにもみえます。

成長の過程で誰しもが経験する“どっちつかずの不安定さ”を、今作では大学野球という特殊な背景の中でうまく表現していると思いますよ。大学野球を巡る事情って、日本ではどうなのかよく分かりませんが、今作でのジェイク達の様子から薄っすら伺えるのは、大学野球の世界では最強のチームに入っている花形スターであっても、プロの野球の世界で通用するのかどうかは全く別問題なのだということ。
チームの精神的リーダーでありムードメーカーで、世渡りの上手そうなフィネガンですら、いくら大学野球最強チームのレギュラーであっても、将来プロの野球選手としてやってはいけないだろうと諦めているようですし、ナイルズが“自分はノーラン・ライアンの再来だ”と憑りつかれたように叫んでいるのも、結局、プロの世界で自分が通用するかどうか自信がないから。パーティーの傍ら、甘い夢を見ていられる大学時代は短い。あまりにも。だからこそ、プロではやっていけないけれど野球の実力はそこそこあるから、大学で、大学生として、野球を続けたいと違法行為に手を出すとんでもない輩も出てくるのでしょうよ。…誰がその“輩”なのかはここではネタバレしませんけど、こういう人、どこの世界にもいそうで妙に生々しい。そして、甘い夢をずるずると引きずり、いつまでもそれに縋りついていたいと願う気持ちは誰にでもあるのだと思うと、何となく彼の境遇に同情めいた気持ちを感じ自己嫌悪に陥りますね(苦笑)。

複数の人間が集まり、複数の人生が複雑に交錯する物語は、古くは「グランド・ホテル Grand Hotel」(1932年)や「舞踏会の手帖 Un carnet de bal」(1937年)など、優れた群像劇映画を生み出してきました。人の数だけ異なる人生があり、大勢の人間が集まれば、そこで異なる人生同士がぶつかって化学反応を起こし、別の人生のストーリーを生み出していくでしょう。群像劇の面白さは、異なる人生を俯瞰するだけではなく、それらが思わぬ場所で思いがけぬ新たな人生を生み出す瞬間を目撃できるところです。そしてその驚きは、様々な異なる人生の変転を見つめてきた群像劇の主人公を、大いに成長せしめる原動力になるでしょう。観客である私達が感動するのも、まさにその点でありますよね。

「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に Everybody Wants Some!!」も、酒、オンナ、パーティー、酒、オンナ、パーティーのローテの中で、しかもたった3日間という限られた時間の中で、ジェイクは様々な(…揃いも揃って変わり者の・笑)連中と出会って交流し、高校時代の旧友(…の変わり果てた姿・笑)と思わぬ再会を果たし、一目惚れしたエキセントリックな演劇科の女の子とぶきっちょにお近づきになり、野球選手としての人生と不透明な将来への不安の間で、見失いかけていた目標を最後に見出すジェイクの成長の物語として締めくくられます。これからどう変わるか分からない彼の未来に、私ら観客もまた思わず希望を託しちゃう所が、リンクレイター監督作品の真骨頂なのでしょうね。



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