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zoom RSS 2016年度AFIフェスティバル温故知新編 AFI Festival 2016 Part 3

<<   作成日時 : 2016/11/11 11:35   >>

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2016年度アメリカ映画協会フェスティバル伝説的映画 Cinema's Legacy Sections at AFI Festival 2016の「追い越し野郎 Il sorpasso / The Easy Life」(1962年)(イタリア)(ディーノ・リージ Dino Risi監督)、『Mifune: The Last Samurai』(2015年)ドキュメンタリー(日本)(スティーヴン・オカザキ Steven Okazaki監督)、「ピカデリー Piccadilly」(1929年)(英国)(エドワード・アンドレ・デュポン E. A. Dupont監督)、「ロイドのスピーディ Speedy」(1928年)(テッド・ワイルド Ted Wilde監督)について。



さて、アメリカ映画協会 AFI主催の映画祭AFIフェスティバル AFI Festival 2016が本日から始まります。アメリカの大統領選の結果やらなにやらで(苦笑)、世界中が不穏な空気でピリピリ緊張感を高める中、こんな時だからこそ、肩に入った余計な力を抜いてリラックスし、高ぶった気持ちを落ち着けることが必要です。わたしゃ心からそう思いますよ。


2016年度アメリカ映画協会フェスティバル伝説的映画 Cinema's Legacy Sections at AFI Festival 2016

所謂リバイバル上映作品ですね。映画の歴史の中で燦然と輝く不朽の名作、あるいはすっかり忘れられてしまった作品を掘り起こし、それらに再度スポットライトを当てて映画史を振り返ろうという企画。今年のAFIフェスティバルでは、映画祭の公式ポスターのテーマにもなっている女流映画人のパイオニア達の代表作や、「市民ケーン Citizen Kane」といった有名作品から、知られざるカルト作品まで、バラエティに富んだラインナップになりました。…Part 2からの続きです。


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「追い越し野郎 Il sorpasso / The Easy Life」(1962年)(イタリア)
監督:ディーノ・リージ Dino Risi
出演:ヴィットリオ・ガスマン Vittotio Gassman、ジャン=ルイ・トランティニャン Jean-Louis Trintignant、キャスリーン・スパーク Catherine Spaak、クラウディオ・ゴラ Claudio Gora他。

正直、侮蔑的な意味を込められているこの言葉を引き合いに出すのは気が引けます。が、ディーノ・リージ Dino Risi監督のスタイルを説明するのに最も適切なので、あえて書かせていただきますね。エットーレ・スコラ監督、ルイジ・コメンチーニ監督らと並び、“イタリア式コメディ Commedia all'italiana / Italian Comedy Style”の代表する映画監督がディーノ・リージ Dino Risi監督です。

そのリージ監督のカルト作品「追い越し野郎 Il sorpasso / The Easy Life」(1962年)がAFIフェスティバルに選ばれたことに、驚きと同時に喜びも覚えましたね。リージ監督の作品の中では、個人的にこれが一番好きなので余計にね。一般にはあまり知られていない、いわゆるカルト作的位置づけにある作品なのですが、これ、すごく良い映画なんですよ。

ローマで学生生活を送る法学生ロベルトは、今日もアパートの部屋の中に籠っていた。季節は8月、黙って机の前に座っていてもうだるような暑さだった。そこへ、太陽に焼かれるローマの街より暑苦しい中年男性の怒鳴り声が届いた。「友達に一本電話をかけてくれないか」と。

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何処の誰かも知らない男のために電話を掛ける筋合いはない。いくら、ランチア・アウレリア・コンヴェルティブレというクールな車に乗っている男でも。ロベルトは自分の部屋まで上がってきて自分でかけろと伝え、彼自身の友達との約束をすっぽかす羽目になってしまった。その中年男ブルーノは、ついでにロベルトの目の前で一層大きな声で自分の名前を連呼し、自己紹介するロベルトの声をもかき消してしまった。ブルーノは詫びのためにロベルトに一杯奢ると言い張り、後に引かなかった。おとなしくて地味な、ついでに声も小さいロベルトの単調な生活に、突然ブルーノが騒々しく飛び込んできた。声もでかいが押しも強いブルーノに根負けしたロベルトは、結局ブルーノと出かけることに。
ブルーノの車がアウレリア街道に入り、車から見えるのはラツィオ州とトスカーナ州の風光明媚な海岸線になった。気持ちの良い快晴、おまけに車は素晴らしいスピードですべるように街道を走る。これで開放的にならぬ方がおかしいだろう。陽気で騒々しくて細かいことは一切気にしないブルーノと、正反対の性格のロベルトは、それゆえ妙にウマが合い、腹を割ってお互いの身の上話をした。お陰でロベルトは、自分は常に優等生だと思い込んでいた輝かしき子供時代が、実はそんなに良いものではなかったと分かったし、ブルーノの方とて、女房に逃げられ、おまけに娘からは惨めな父親だと烙印を押されているありさまだったのだ。2人とも、己の人生が昼間の地中海の太陽のように常に輝いているわけではないと認めざるを得なかった。

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人生に躓いていたことを思い知らされた2人だが、代わりにかけがえのない友人を得た。思いがけない場所で、思いがけないきっかけで、思いがけない成り行きで友情を育んだ2人。しかしそれは突然終わりを告げる。すっかり羽目を外したロベルトが、ドライブ・テクニックを自慢するブルーノをけしかけて危険な運転をさせたのだ。お調子者のブルーノも、つい挑発に乗ってしまった。その後は、何もかもが一瞬のうちに起こった。ブルーノのランチアは、できたてほやほやの友人を乗せたまま崖下に墜落、車から放り出されたブルーノは、気が付けば血塗れで道路のカーブにへたりこんでいた。現場に警察官が到着して名前を聞かれた時に初めて、ブルーノは、ロベルトと一緒に過ごした時間が、ロベルトの姓も知らないほど短い間でしかなかったことを思い知るのだった。


典型的なラテン系親父と、地中海の太陽の日差しにもヘナヘナと溶けてしまいそうなほど(笑)ひ弱な地味男君、性格から見た目から生活背景まで何から何まで正反対の男2人による、騒々しくもアホらしく、そしてどこまでも愛おしい珍道中が、あっという間に悲劇の奈落の底に落ちていくラスト。それまで、ロベルトとブルーノの凸凹コンビに多大なシンパシーを覚え、彼らと一緒にゲラゲラ笑ったりしんみりしていた観客も、ラストではブルーノ同様呆然とスクリーンを凝視することになります。その時になって初めて、彼らと共有していた、まるでぬるま湯に浸かっているようだった楽しさ―この作品全体に流れる享楽的感覚は多分に軽薄で刹那的で、戦後イタリアを象徴するような物質的なもの―から目が覚めるのですよ。そして、現実の悲劇を嫌というほど思い知らされる。この映画も、映画という夢を見続けていたいと願う観客の期待を最後に裏切り、夢は夢でしかないと観客の目の前でシャッターを下ろしてしまうのですね。個人的にこの映画は、戦後イタリアのフワフワした、不安定な物質主義時代をよく描写した作品であると同時に、このラストシーンで忘れられない1作になったと思っています。


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「Mifune: The Last Samurai」(2015年)ドキュメンタリー(日本)
監督:スティーヴン・オカザキ Steven Okazaki
出演:三船敏郎 Toshiro Mifune、キアヌ・リーヴス Keanu Reeves、マーティン・スコセッシ Martin Scorsese、スティーヴン・スピルバーグ Steven Spielberg、香川京子 Kyoko Kagawa、土屋嘉男 Toshio Tshuchiya、役所広司 Koji Yakusho他。

日本の豊穣たる映画最盛期を代表する三船敏郎は、世界的に名を知られる偉大な名優です。その三船敏郎のドキュメンタリー映画にもう一度スポットライトが当てられました。2007年に製作、公開された問題作「ヒロシマナガサキ White Light, Black Rain: The destruction of Hiroshima and Nagasaki」で脚光を浴びた日系米国人映画監督スティーヴン・オカザキ Steven Okazakiが再び大きなテーマに取り組んだドキュメンタリー作品です。「ヒロシマナガサキ White Light, Black Rain: The destruction of Hiroshima and Nagasaki」でも、原爆投下の是非というデリケートで難しい問題についてニュートラルな立場で立ち向かい、思索的で示唆に富んだ作品を完成させたオカザキ監督のこの作品も、世界中の映画祭で話題になりました。これを機会に、日本での劇場公開も実現されるよう願ってやみません。


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「ピカデリー Piccadilly」(1929年)(英国)
監督:エドワード・アンドレ・デュポン E. A. Dupont
出演:アナ・メイ・ウォン Anna May Wong、ジルダ・グレイ Gilda Gray、ジェイムソン・トーマス Jameson Thomas、キング・ホー・チャン King Ho-Chang、シリル・リチャード Cyril Ritchard、チャールズ・ロートン Charles Laughton他。

今年のAFI フェスティバルのテーマにも選ばれているアナ・メイ・ウォン Anna May Wongの代表作。タイプキャストされてしまったハリウッドでの活動に限界を感じ、渡欧して出演したメロドラマですね。製作は英国です。アナの演じた役柄は、ハリウッドでよく演じていた妖艶で影のあるというお馴染みのヴァンプ役ですが、作品の内容の方は、複数の人間ドラマが“ピカデリー”というクラブで絡み合う、入り組んだラブストーリーになっています。日本でも劇場公開されてほしいなあと思う1品。
個人的には、この作品のアナに、ヨーロッパ映画界に飛び込んだ際のルイーズ・ブルックス Louise Brooks的な独特の陰りとエロティシズムを感じています。そうですね、ルイーズが渡欧中に出演した「パンドラの箱 Die Buchse der Pandora」(1929年)、「淪落の女の日記 Das Tagebuch einer Verlorenen」(1929年)、「ミス・ヨーロッパ Prix de beaute」(1930年)に刻印されたのと同じ雰囲気が、この作品にも流れていると思います。


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「ロイドのスピーディ Speedy」(1928年)
監督:テッド・ワイルド Ted Wilde
出演:ハロルド・ロイド Harold Lloyd、アン・クリスティー Ann Christ、バート・ウッドラフ Bert Woodruff、ベーブ・ルース Babe Ruth、ブルックス・ベネディクト Brooks Benedict他。

偉大なる喜劇王ハロルド・ロイド(丸縁のロイド・メガネがトレードマーク)の、最後のサイレント・スクリューボール・コメディ作品です。名野球選手ベーブ・ルースまで引っ張り出しての、タイトル通りの“スピーディー Speedy”な作品ですね。やかましい音がなくても十分にパワフルで面白い作品ができると照明した優れた映画でもありますよ。

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