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zoom RSS 2016年度AFIフェスティバル温故知新編 AFI Festival 2016 Part 2

<<   作成日時 : 2016/11/09 12:53   >>

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2016年度アメリカ映画協会フェスティバル伝説的映画 Cinema's Legacy Sections at AFI Festival 2016、特に「カルメン Carmen Jones」(1954年)(オットー・プレミンジャー Otto Preminger監督)、「市民ケーン Citizen Kane」(1941年)(オーソン・ウェルズ Orson Welles監督)、『Daughters of the Dust』(1991年)(ジュリー・ダッシュ Julie Dash監督)、「アメリカの災難 Flirting with Disaster」(1996年)(デヴィッド・O・ラッセル David O. Russell監督)、「ヒッチ・ハイカー The Hitch-Hiker」(1953年)(アイダ・ルピノ Ida Lupino監督)について。




2016年度アメリカ映画協会フェスティバル AFI Festival 2016のラインナップが面白いので、他の部門についてもう少し触れておきます。ここでは、明日の巨匠、名匠の誕生を目の当たりにできるかも知れない、新人映画作家のための部門と、過去の名作、珍作をリバイバルする温故知新企画を見てみましょう。


2016年度アメリカ映画協会フェスティバル新人映画作家招待作品 The New Auteurs Sections at AFI Festival 2016

処女作、あるいは第2作目の商業用長編作品を手掛けた新進映画作家の作品が招待され、プラットフォーム形式で最優秀作品が選出される部門です。今年は招待された10作品のうち、実に7作品が女流監督の手になる作品だそうですよ。これは期待できそう。近い将来、このリストに載った人たちの中から、映画界を背負って立つ逸材が出てくるやも知れません。


"Always Shine" dir. Sophia Takal (アメリカ USA)
出演: Mackenzie Davis, Caitlin FitzGerald, Lawrence Michael Levine, Alexander Koch, Jane Adams

"Buster's Mal Heart" dir. Sarah Adina Smith (アメリカ USA)
出演: Rami Malek, Kate Lyn Sheil, DJ Qualls, Mark Kelly, Sukha Belle Potter, Lin Shaye, Toby Huss

"Divines" dir. Houda Benyamina (フランス France / カタール Qatar)
出演: Oulaya Amamra, Jisca Kalvanda, Kevin Mischel, Deborah Lukumuena, Yasin Houicha, Majdouline Idrissi

"The Future Perfect / El Futuro Perfecto" dir. Nele Wohlatz (アルゼンチン Argentina)
出演: Xiaobin Zhang, Saroj Kumar Malik, Mian Jiang, Dong Xi Wang, Nahuel Perez Biscayart

"Godless" dir. Ralitza Petrova (ブルガリア Bulgaria)
出演: Irena Ivanova, Ivan Nalbantov, Ventzislav Konstantinov, Alexandr Triffonov, Dimitar Petkov. Bulgaria

"Kati Kati" dir. Mbithi Masya (ケニア Kenya / ドイツ Germany)
出演: Nyokabi Gethaiga, Elsaphan Njora, Paul Ogola, Peter King Mwania

"Kill Me Please" dir. Anita Rocha da Silveira (ブラジル Brazil)
出演: Valentina Herszage, Dora Freind, Julia Roliz, Mari Oliveira, Bernardo Marinho

"One Week and a Day / Shavua ve Yom" dir. Asaph Polonsky (イスラエル Israel)
出演: Shai Avivi, Evgenia Dodina, Tomer Kapon, Sharon Alexander, Uri Gvariel, Carmit Mesilati-Kaplan, Alona Shauloff

"Oscuro Animal" dir. Felipe Guerrero (コロンビア Colombia)
出演: Marleyda Soto, Jocelyn Meneses, Luisa Vides, Verónica Carvajal, Josué Quiñones, Pedro Suárez, Lorena Vides

"Still Life" dir. Maud Alpi (フランス France)
出演: Virgile Hanrot, Dimitri Buchenet



伝説的映画 Cinema's Legacy

所謂リバイバル上映作品ですね。映画の歴史の中で燦然と輝く不朽の名作、あるいはすっかり忘れられてしまった作品を掘り起こし、それらに再度スポットライトを当てて映画史を振り返ろうという企画。今年のAFIフェスティバルでは、映画祭の公式ポスターのテーマにもなっている女流映画人のパイオニア達の代表作や、「市民ケーン Citizen Kane」といった有名作品から、知られざるカルト作品まで、バラエティに富んだラインナップになりました。


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「カルメン Carmen Jones」(1954年)
監督:オットー・プレミンジャー Otto Preminger
出演:ハリー・べラフォンテ Harry Belafonte、ドロシー・ダンドリッジ Dorothy Dandridge他。

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元々「カルメン Carmen」というお話は、フランスの作家プロスペル・メリメ Prosper Merimeeの中篇小説が原作です。朴訥としたバスク人の男が、気性の激しい美しきジプシー女カルメンに恋をしましたが、彼女に振り回された挙句犯罪者に身を堕としてしまいます。最終的には移り気なカルメンが別の愛人に走り、男は嫉妬に狂って自滅、死刑に至るというわけです。
原作小説は、スペイン国内の不安定な社会情勢といった陰鬱な物語の背景に、かなりの比重を置いていました。この物語の登場人物の1人に過ぎなかったカルメンのキャラクターを原作から切り離して一人歩きさせ、激しい恋の駆け引き、嫉妬、闘牛、死といったセンセーショナルな要素を原作に付加したのが、ジョルジュ・ビゼー Georges Bizetのオペラ版「カルメン」であり、こんにち私たちが“カルメン Carmen”と聞いて真っ先に思い浮かべるイメージとして定着したわけです。
オットー・プレミンジャー Otto Preminger監督の「カルメン Carmen Jones」は、メリメの小説「カルメン」を翻案したオスカー・ハマースタイン2世 Oscar Hammerstein IIによる1943年の舞台劇に基づき、ミュージカルとして再生したもの。恋に生きる情念の女、男を支配する魔性の女カルメンを、その小悪魔のような美貌で生き生きと演じきったダンドリッジだけではなく、プレミンジャー監督や作品そのものへの評価も大変高い傑作になりました。


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「市民ケーン Citizen Kane」(1941年)
監督:オーソン・ウェルズ Orson Welles
出演:ジョゼフ・コットン Joseph Cotten、オーソン・ウェルズ Orson Welles、リンダ・ウィンターズ Linda Winters他。

巨大な廃墟の如き大邸宅の中で、インクワイラー紙の創始者にして大富豪チャールズ・フォスター・ケーンが、“バラの蕾”という言葉を残して亡くなります。ケーンの生涯をまとめたニュース映画を作っていたロールストンは、ケーンの不可解な最期の言葉の意味を探らせるべく、トムスンに彼の身辺調査を命じました。トムスンは、ケーンと共にインクワイラー紙を立ち上げた親友たち、ケーンの愛人から2番目の妻になった女、執事など、ケーンに近しかった人々にインタビューを試みます。明らかになったのは、栄華を極めた新聞王の砂を噛むような孤独な人生であり、“バラの蕾”の意味は最後まで分からないまま。しかし映画の最後のシーンで、ケーンが子供の頃に遊んでいた橇に“バラの蕾”という言葉が刻まれていたことが観客に明かされます。死を目前にしたケーンの心が、最も幸福だった幼少時に戻っていたことが暗示された瞬間ですね。しかしその直後、橇は他の遺品と共に燃やされてしまいます。ケーンにとって最も美しかった思い出さえ、誰にも理解されることなく炎の中に消えていったわけで、ケーンその人の人生の哀れさをいや増す結果になりました。ケーンという謎に満ちた人物の真の姿を追い求めるサスペンスフルなストーリーが、最後になんとも悲しい結末に至る展開も、この作品を真の名作たらしめている要素ですね。


ロー・アングル、長回し、神の目の如き上空からのショットの自由自在なるカメラワーク、時間軸を行き来しつつストーリーを語る手法など、今では当たり前になった数々の映像技術、映画話法が、この作品で初めて最良の形で試みられたといっても過言ではありません。今作は初公開から今年で75周年を迎えたため、リバイバル上映作品リストに加えられました。そのAFIが選出する“アメリカ映画ベスト100”でも、今作は堂々の第1位にランキングされていますし、1989年にはアメリカ国立フィルム登録簿にも登録された、泣く子も号泣する名作です。もちろんアカデミー賞にも作品賞、監督賞など主要部門9部門でに渡ってノミネートされていました。主人公ケーンのキャラクターが、当時の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストにえげつないほど似ていたため、当人の妨害を受けてオスカー制覇は成りませんでしたが、この作品が後続の映画たちの、つまり今私たちが楽しんでいる多くの映画たちのお手本になった事実には変わりありません。
若い映画ファンの中には、初めてこの作品に触れる人も多かろうと思います。好き嫌いは別にして、ぜひ、この作品のように、今もなお映画史を支える不朽の名画を見る機会を無駄にしないでいただきたいと思いますね。


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『Daughters of the Dust』(1991年)
監督:ジュリー・ダッシュ Julie Dash
出演:アディサ・アンダーソン Adisa Anderson、バーバラ・O Barbara-O、シェリル・リン・ブルース Cheryl Lynn Bruce、コーラ・リー・デイ Cora Lee Day、ジェラルディン・ダンストン Geraldine Dunston他。

AFIは、映画文化の保護と発展をすすめることを目的に、映画製作を志す人たちのために、映画に関するあらゆる知識や技術を教える教育機関としての役目を担っています。フェスティバルといった要素より、むしろこの教育機関としての役割の方が重要だと思いますね。AFIから巣立っていった映画人は数多く、テレンス・マリック監督やキャサリン・ビグロー監督など有名映画監督を輩出しています。
このたび、リバイバル映画部門での上映が決定した『Daughters of the Dust』(1991年)のジュリー・ダッシュ Julie Dash監督もその1人。日本でも未紹介の『Daughters of the Dust』は、古くはアフリカから奴隷として連れてこられた人々の子孫である、祖母、母、娘の3世代に渡る女性たちの、北への旅の模様をつづったロード・ムービーだそうです。美しく幻想的な映像で、それぞれの世代の女性の苦悩を繊細に描いた作品に、今一度スポットライトが当たることを祈ってやみません。
ここ数年の間に、黒人を描いた映画も様変わりしました。「それでも夜は明ける 12 Years A Slave」や今年初頭のサンダンス映画祭で観客賞を獲得した「ザ・バース・オブ・ア・ネイション The Birth of a Nation」(ネイト・パーカー Nate Parker監督)、あるいはエイヴァ・デュヴァーネイ Ava DuVernay監督の「グローリー/明日への行進 Selma」(2014年)やドキュメンタリー「13th」(2016年)のように、容赦なく黒人迫害の歴史を告発するへヴィーかつパワフルな作品が次々とリリースされています。そんな中、差別や社会の不平等を声高に糾弾するのではなく、そういった深刻なテーマも踏まえつつ、もっとアーティスティックな側面で普遍性を追求した作品の価値も見直されるべきだと私は考えています。


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「アメリカの災難 Flirting with Disaster」(1996年)
監督:デヴィッド・O・ラッセル David O. Russell
出演:ベン・スティーラー Ben Stiller、パトリシア・アークェット Patricia Arquette、テア・レオーニ Tea Leoni、メアリー・タイラー・ムーア Mary Tyler Moore、ジョージ・シーガル George Segal他。

私が初めて観たデヴィッド・O・ラッセル David O. Russell監督の作品は「スリー・キングス Three Kings」(1999年)でした。本国アメリカでは、ジョージ・クルーニーやマーク・ウォルバーグ、アイス・キューブといった実力派人気俳優の出演もあり、社会派戦争アクション映画として批評家の受けも、興行成績も上々だったとか。まあ、私自身はあまりこの作品にピンとこないまま、「ハッカビーズ I Heart Huckabees」(2004年)に至っては完全にラッセル監督への興味を失ってしまいました。ところが、「ザ・ファイター The Fighter」(2010年)を見て、オープニング・シーンからキレのある編集と、複数の個性豊かな登場人物が織り成す悲喜こもごもの人間ドラマが見事に絡み合い、すっかり魅了されてしまったのですねえ。「世界にひとつのプレイブック Silver Linings Playbook」(2012年)と「アメリカン・ハッスル American Hustle」(2013年)は、編集のあのキレ味が鈍ったかなとも感じましたが、それでも、キャラクターの個性を的確に描き分けるラッセル監督の人物描写は面白かった。
監督自身、「ザ・ファイター The Fighter」でブレイクして以降、オスカー常連の名監督になったわけですが、そんな彼の初期の作品「アメリカの災難 Flirting with Disaster」を見直してみて、「ザ・ファイター The Fighter」以降トレードマークになった、“ちょいとピントのずれた愛すべき変人たちの、猥雑な人生ドラマ”の雛形が既にしっかり出来上がっていたことが分かりました。里親の下で育った男メルが結婚して子供を授かり、自身のアイデンティティを探すため、実の両親を探す旅に出ます。養子斡旋協会職員の手引きで母親を探し当てたと思ったら、それは赤の他人。以降、メルは変人たちにつきまとわれ、振り回される羽目に陥ります。そのてんやわんや道中のお話が、可笑しいんだけど、そこはかとなく物悲しい余韻を残すのがいいですな。


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「ヒッチ・ハイカー The Hitch-Hiker」(1953年)
監督・脚本:アイダ・ルピノ Ida Lupino
出演:エドモンド・オブライエン Edmond O’Brien、フランク・ラヴジョイ Frank Lovejoy、ウィリアム・タルマン William Talman他。

イギリスからアメリカに渡り、1940年代のハリウッドで美人女優として活躍したアイダ・ルピノ(ラオール・ウォルシュ監督の「ハイ・シェラ High Sierra」など)は、今年のAFIフェスティバルのテーマにも選ばれています。彼女はその後、出演も兼ねた当時としてはリスキーな内容のラブ・ストーリー、「二重結婚者 The Bigamist」(1953年)を監督して、映画監督としてのキャリアもスタートさせました。続くフィルム・ノワール「ヒッチ・ハイカー The Hitch-Hiker」で脚本も手掛ける多才ぶりを見せ、女流監督として初めてフィルム・ノワールを製作したという事実だけでは終わらない才能を示しました。ヒッチハイカーが起こした実際の事件を基にしたお話です。
自動車でメキシコに釣り旅行に行く途中だった2人の男。道中、あるヒッチハイカーを拾います。ところが、こいつがとんでもない変態殺人鬼野郎でした。車に乗った途端、隠し持っていたリボルバーを2人に突き付け、目的地まで運転させようとするのですね。そこに到着するまでに2人をぶっ殺すと宣言し、数々の嫌がらせを繰り返して精神的に追い詰め、サディスティックな欲望を満足させようとするわけです。しかもこの殺人鬼マイヤーズ、自身の不幸な生い立ちと、身体に障害があること―片目のまぶたを閉じることができない―を理由に、殺人者になった自分を正当化するという厚かましさ(苦笑)。まあ、別に殺人鬼でなくとも、実生活においてもこの種の輩はゴロゴロいますけどね(苦笑)。

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サイコ・サスペンスものも、すっかりアイデアが出尽くした感がある今の感覚で見ても、このマイヤーズという変質者のキャラクターはかなり強烈です。しかも、その描写にしても、ホラー映画のモンスターのようにあからさまなものではなく、片目を常に開けているという特異な点を除けば、ひょっとしたら日常生活の風景の中にふと紛れ込んでいそうなリアリティがあるんですよね。それが怖い。後ろを振り返ったら、こんな男が音もなく立っていそうでね。
これを50年代の映画で映像に仕立てたルピノ監督の、人間観察眼の鋭さ、冷徹さは群を抜いています。演出は全体的に無駄なくタイトなもので、マイヤーズの描写もサスペンス描写も容赦ない。この作品だけを見たら、ルピノ監督が女性だとわからないかもしれません。“女性らしい感性”を徹底して排除しているかの如き今作には、そのような例えようのない不安感もあるのです。


……ごめんなさい、ここで一旦記事を切り上げます……。まだ続くんですよ。

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