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zoom RSS 第54回ニューヨーク映画祭 The 54th NYFF 特別イベント Special Events

<<   作成日時 : 2016/10/02 10:50   >>

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ついに開幕した第54回ニューヨーク映画祭 The 54th New York Film Festival。映画祭の作品の全てをここで取り上げることはできないのですが、もう一つだけ、今年のメジャーな新作映画の中で、メインスレートなどから漏れたものの、注目度の大変高い作品たちを“特別イベント Special Events”としてまとめて上映する企画があります。簡単に予習しておきましょう。


第54回ニューヨーク映画祭スペシャル・イベント部門作品ラインナップ The 54th New York Film Festival Special Events' Line-up


"Best Worst Thing That Ever Could Have Happened" (2016) USA
監督:Lonny Price

スティーヴン・ソンドハイム、監督を務めたロニー・プライス、他のゲスト陣とのQ&Aトーク・セッションは10月9日に、また翌日10月10日には、ロニー・プライス監督と他のゲスト陣とのトーク・セッションが行われます。

実はこのドキュメンタリー映画、ある特殊な事情を扱ったものです。1981年、スティーヴン・ソンドハイムとハロルド・プリンスは、1934年のジョージ・S・カウフマンとモス・ハートによるコメディを"Merrily We Roll Along"というミュージカルに仕立てる企画を立ち上げました。ところが、この黄金コンビによるユニークな作品をもってしても、空回り気味のプロダクションは酷評され、わずか16回の公演の後打ち切りの憂き目に遭ってしまいました。公演が終了するまで最短の日数を記録したこの作品は、通常とは違う意味でブロードウェイの歴史に残ることになったわけですね(苦笑)。
このドキュメンタリーは、オリジナル・キャストだったロニー・プライスがメガホンをとったものです。ハロルド・プリンスとスティーヴン・ソンドハイムが共同作業をしている映像など、世界初公開となる貴重なフッテージをはじめ、舞台の興行自体は失敗に終わったけれども一生に一度の体験となった特別な思い出を、プライス監督の共演者たちと共に分かち合う内容になっているそうです。
彼ら役者たちにとって最高の、でも結果的に最悪となってしまった悲喜こもごもの思い出話は、これ自体が一つの“バックステージもの”のストーリーを紡いでいるのですね。舞台裏には、表舞台に見られる以上のドラマが詰まっているとよく言われますが、このドキュメンタリーもまさにそれを体現する内容になっていることでしょう。


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"Billy Lynn's Long Halftime Walk" (2016) USA
監督:アン・リー Ang Lee

そして、個人的に興味津々なのが名匠アン・リー監督の新作ですね。全く斬新な切り口であのイラク戦争の実態を切り取り、このアメリカという国を苛んでいる“理想と現実の間の落差”を、恐ろしいまでに明確な映像表現で示します。新しい技術にも柔軟に取り組んできた名匠は、今回も新しい撮影プロセスを経ることで、映画の芸術的表現方法を進化させたと言われています。

結局アン・リー監督という人は、どのような題材を扱っても、どのような技術を使おうとも、“人間とは何ぞや”という視座に立ったまま、彼独自の美学をスクリーンに描き出すことができる稀有なバランス感覚の持ち主であるのです。リー監督の作品のレビューについては、当ブログには今のところ「ブロークバック・マウンテンBrokeback Mountain」しかない状態ですが、他にも多くの秀作を世に送り出している“オールマイティー”の諸作品を、ぜひ手に取ってご覧になってみてください。

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ベン・フォンテーン Ben Fountainのベストセラー小説『Billy Lynn's Long Halftime Walk』を、「スラムドッグ・ミリオネア Slumdog Millionaire」(ダニー・ボイル監督)でオスカーを受賞した脚本家サイモン・ボーフォイ Simon Beaufoyが脚色。イラク戦争から“英雄”として帰還した兵士ビリーは、共に戦った部隊の生還者と共に、感謝祭に行われるアメフトの試合のハーフタイム・ショーに招かれます。ド派手な花火が上がり、賑々しいショーが行われる中で彼の脳裏によみがえるのは、目の前の狂騒とは裏腹に、血なまぐさく激しかった戦闘の恐怖と、親しかった仲間を喪った悲しみのみ。ハーフタイム・ショーと彼の戦場のトラウマが残酷なまでに対比されるところに、この国の抱える大いなる矛盾が暗示されて痛ましいですね。

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アン・リー監督の新境地を開くかもしれないこの作品は、テーマ性も映像もかなり挑戦的であるようです。映画祭での反響が楽しみです。そうそう、主人公の兵士ビリー役には新人のジョー・アーウィン Joe Alwynが扮し、共演にクリステン・スチュワート、クリス・タッカー、ギャレット・ディラハンド、スティーヴ・マーティンという豪華な面子が揃いました。そして、ビリーの悲しみの根源であるキーパーソンを演じるのが、満面の笑顔が“死亡フラグ”を予感させて胸が痛むヴィン・ディーゼルという布陣。これはかなり楽しみな配役です。


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"Gimme Danger" (2016) USA
監督:ジム・ジャームッシュ Jim Jarmusch

今やある意味アンタッチャブルなイコンとなったイギー・ポップ。ストゥージス The Stoogesなんて聴いたことがなくても、イギーの顔は知ってるなんていう方も結構いると思います。
一方、映画通に愛される映画作家ジム・ジャームッシュ Jim Jarmuschには、ニューヨークのアンダーグラウンド・カルチャーの歴史の素養があります。ジャームッシュ監督の作品については、当ブログでは「ブロークン・フラワーズ Broken Flowers」「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ Only Lovers Left alive」の2作しかレビュー記事を書いていませんが、アングラ・カルチャーとの繋がりは大変強いお方だったんですねえ。それについては、今年のNY映画祭のドキュメンタリー部門に招待されているアーロン・ブルックナー Aaron Brookner監督の"Uncle Howard" (2016)でも触れられているので、興味のある方はご覧になってみてください。
つまり、ジャームッシュ監督がイギーのドキュメンタリーを撮るという流れは、大変自然であるということです。2010年、ストゥージスはロックの殿堂入り Rock and Roll Hall of Fameを果たしましたが、その際、イギーは後に有名になるこの言葉を残しました。

「音楽は人生だ。そして人生は決してビジネスなどではない Music is life and life is not a business.」

彼の人生はまさにこの言葉通りのものでした。波乱万丈の人生をサバイブし、今も奇跡的に生き残りロックし続ける男の半生をインタビュー、数々の写真、そしてバンドのパフォーマンス映像でコラージュしてゆくこのドキュメンタリー作品、カンヌ国際映画祭 Cannes Film Festivalに続き、NY映画祭にも登場することになりました。やはりこの作品は“スペシャル”な作品の一つだとみなされているようですね。


"Hamilton's America" (2016) USA
監督:Alex Horwitz

2009年の初演からブロードウェイを席巻し続けてきたミュージカル「ハミルトン Hamilton」は、天才クリエイター、リン=マウエル・ミランダ Lin-Manuel Mirandaの手によって生み出されました。ドキュメンタリー作品"Hamilton's America"は、社会現象にまでなったこの作品の舞台裏を紹介するものです。リン自身のナビゲーションによって、「ハミルトン Hamilton」の舞台となった場所であるペンシルバニア州のバレーフォージ Valley Forgeからホワイトハウスの西棟West Wingまでを訪問し、リンとオバマ大統領の対談の模様も収録。作品が生み出された経緯を知ることができる内容だそうですよ。


"Jackie" (2016) USA/Chile/France
監督:パブロ・ラライン Pablo Larraín

この作品も、第73回ヴェネチア国際映画祭 The 73rd Venice International Film Festivalで最優秀脚本賞を受賞してから、ジャクリーン・ケネディを熱演したナタリー・ポートマン Natalie Portmanへの評価も高まり、今年のオスカー・レースで注目される作品になりました。こちらの記事で今作について触れていますので、興味のある方はどうぞ。


その他の特別イベントについては、NY映画祭のサイトでお確かめください



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