House of M

アクセスカウンタ

更新情報

zoom RSS 第54回NY映画祭 54th New York Film Festival Part 1

<<   作成日時 : 2016/08/10 17:42   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

待ちに待った第54回ニューヨーク映画祭 The 54th New York Film Festivalのメインスレート Main Slate(今年の映画賞レースにも絡んでくるであろう、今年製作・公開された主要招待作品)に選ばれた作品群が発表されましたので、ざーっとおさらいしておきましょう。…後ほど追記します。


第54回ニューヨーク映画祭メインスレート作品 54th New York Film Festival Main Slate Lineup


画像

開幕上映作品 Opening Night
"The 13th" エイヴァ・デュヴァーネイ監督 dir. Ava DuVernay 2016年製作
アメリカ USA

今年のニューヨーク映画祭の新しい挑戦は、まず第一に、開幕上映作品として“ドキュメンタリー映画”を選んだことです。すでにあちこちの映画サイトで取り上げられていますが、2014年、映画監督としては3作目となった長編劇映画作品「グローリー/明日への行進 Selma」によって、アフリカ系女性の映画監作家として初めて、ゴールデングローブ賞監督賞とアカデミー賞作品賞にノミネートされた、エイヴァ・デュヴァーネイ Ava DuVernay監督の新作です。
彼女は元々大手スタジオで映画宣伝の仕事に携わった後、自身の映画宣伝会社を立ち上げ、スティーヴン・スピルバーグやマイケル・マン、ビル・コンドンなどの映画作家たちの作品の宣伝を行っていました。彼女自身がメガホンを持つようになったのは2006年からで、2010年までに短編、長編、テレビ用含め6本のドキュメンタリー作品を完成しています。2011年、半自伝的作品となった長編劇映画『I Will Follow』を自主製作、配給。翌年2012年には、2作目の長編劇映画監督作『Middle of Nowhere』を製作し、サンダンス映画祭監督賞を初受賞、インディペンデント・スピリット賞のジョン・カサヴェテス賞を授与されました。

そこで今回彼女が取り組んだのは、なぜアメリカの牢獄が世界でも最高の監禁率を誇るようになったのか―しかもその大半がアフリカ系アメリカ人―そのシステムを紐解きながら、アメリカにおける人種不平等の歴史を描くというシリアスなテーマです。以前投獄された経験を持つ数々の活動家、政治家、歴史家たちの証言やフッテージ映像を通じ、D.W.グリフィス監督の「国民の創生 The Birth of a Nation」から始まり、KKKによる黒人迫害、60年代の黒人の人権運動の盛り上がり、現在大きなムーブメントになりつつある“Black Lives Matter”に至るまでの歴史的現象から、差別の構造そのものを解明しようとしているようです。

劇映画ではなく、古巣のドキュメンタリー畑に戻ってのリスキーな作品ですが、アメリカの歴史の暗部に光を当てた意義深い内容だと思います。映像製作の分野への進出が著しい映像配信の大手Netflixによる製作ですので、おそらくメジャー・スタジオでは実現不可能な題材であったと推察します。そんな作品を、ドキュメンタリー映画というカテゴリーの枠組みすら超えて、映画祭のオープニングを飾る重要な作品に選んだニューヨーク映画祭の運営陣に、大きな意欲を感じますねえ。今年のデュヴァーネイ監督作の選出については、映画祭始まって以来初のドキュメンタリー映画による開幕、また女性監督の監督作品による開幕上映という、“初めて”尽くしの記念すべき出来事となりました。

また、「グローリー/明日への行進 Selma」を見た時にも感じたのですが、厳しい史実から目を背けることなく、痛みが伴おうともそれが指し示す真実と真摯に向かい合おうとする姿勢には、デュヴァーネイ監督自身の毅然とした人柄がしのばれますね。彼女の選ぶテーマ、ライフワークからは、あらゆる種類の不平等をなくしたいという切実な願いも充分に感じ取れます。劇映画であろうともドキュメンタリーであろうとも、彼女が今見つめている地平線は、揺るぎないものなのでしょう。彼女が同時代の映画人の多くに支持され、尊敬されるのには、ちゃんとした理由があったのですね。


画像

注目作品 Centerpiece
"20th Century Women"マイク・ミルズ監督 dir. Mike Mills 2016年製作
アメリカ USA

昨年のNY映画祭の“注目一押し作品 Centerpiece”は、ミヒャ・ファスベンダー男主演の「スティーヴ・ジョブズ Steve Jobs」でした。今年は、当ブログでもレビューを書いたことがある(でもあんまり褒めてはいない…ごめんね)「人生はビギナーズ Beginners」(2010年)のマイク・ミルズ監督の新作"20th Century Women"です。ふむ、これはいったいどのような作品なのでしょうか。

1979年、アメリカはサンタバーバラにある、明らかにヒッピー文化をひきずった趣の家で、10代の1人息子ジェイミーを育てるシングルマザー、ドロテア。彼ら親子が住まう家は、他にも流れ者の大工やら、70年代のデヴィッド・ボウイそっくりのヘアスタイルのパンク娘やらによってシェアされている。そこへ、ジェイミーのガールフレンドで、理由なき反抗10代娘のジュリーが入り浸っているという塩梅。社会から緩やかにはみ出し気味の、個性立ちまくりの面々が織りなす、70年代アメリカ、シェアハウスてんやわんや日記。面白うてやがてしんみり感慨深いドラメディの秀作に仕上がっているようですぜ。

「人生はビギナーズ Beginners」(2010年)や「サムサッカー Thumbsucker」(2005年)からの印象なのですが、ミルズ監督の作品の主人公って台詞が多いと思う。しかもほとんど独り言(涙笑)。同じく独り言が多い私としては、とても他人とは思えないキャラクターが登場するような気がしますね。今作では、ジェイミーの奔放なママ役を名演している大女優アネット・ベニングはじめ、数々の秀作の助演で顔を出しちゃあ、印象深い演技を残しているビリー・クラダップ、「フランシス・ハ Frances Ha」で一挙に私の注目株女優となった(笑)グレタ・ガーウィグちゃん、最近じゃあ、愛すべきオタ映画監督ニコラス・ウィンディング・レフンが手がけた最新ホラー「ネオン・デーモン The Neon Demon」で、極悪血まみれ殺人変態美女(なんじゃそりゃ)に扮して大きく成長した、エル・ファニングちゃんなど、俳優陣も個性あり過ぎの面子です。達者な演技陣である彼らが(おそらく)マシンガンの連射如きにしゃべり続ける台詞の乱れ打ち(ラリーにすらなっていないという・笑)が展開されそうで、めっちゃ楽しみですわ。

とにかく、最近、質の高いコメディ映画って本当に少なくなってしまいました。あれだ、絶滅危惧種だ。今の映画界から、時代の空気を反映しつつ、しかし優れたコメディ映画の伝統も汲んだ、本当に面白いコメディ映画の血筋を絶やさぬようにしましょう。そんな使命に燃えた(多分)ニューヨーク映画祭運営陣は、今年の映画祭の中心作品に、なんとコメディ映画を選出。もうね、今年のニューヨークはいろんな意味で型破り過ぎて、面白過ぎる。開幕がめちゃくちゃ楽しみ。


画像

閉幕上映作品 Closing Night
"The Lost City of Z" dir. James Gray 2016年製作
アメリカ USA

そして、極めつけは閉幕上映作品に、ひねくれ者の映画好きに愛される映画作家、ジェームズ・グレイ監督の新作が登場します。この第一報は数日前に私も見てびっくり仰天したのですが、前作の「エヴァの告白 The Immigrant」(2013年)も素晴らしく、また私が愛して止まない「リトル・オデッサ Little Odessa」(1994年)という静かなる傑作をものにしてくれたグレイ監督の才能が、もっともっと広く認知されるようになれば幸いですね。

今作は、ジャーナリストのデヴィッド・グラン David Grannが書いた同名ノンフィクションが原作。元英国の軍人パーシー・フォーセット中佐が、アマゾン奥地に消えたとされる失われた都市を探索する探検家となり、次第にその“失われた都市”に憑りつかれていく様を、「エヴァの告白 The Immigrant」でも組んだ撮影監督ダリウス・コンジ Darius Khondjiの壮麗なカメラワークと共に描き出す意欲作です。軍隊での功績も地位も名誉も失い、妻や子供たちとの絆すら危うくしてもなお、あるかどうかも定かではない幻の都市への執着を断ち切れない男の苦悩を、チャーリー・ハナムが熱演しているそうですよ。神の領域である大アマゾンの圧倒的な自然美、それに比して妄執に押しつぶされていく人間存在のなんと卑小なことよ。グレイ監督のこれまでの作品群の背骨を貫いていた、異人種、異国籍、異文化の人間達の衝突と葛藤と苦痛の末の融合というテーマは、今作でも健在であると思います。

共演陣も、ロバート・パティンソンやトム・ホーランド等、曲者ぞろい。これも楽しみな一作です。


画像

"Aquarius" dir. Kleber Mendonca Filho 2016年製作
ブラジル、フランス Brazil/France

引退したブラジルの音楽評論家クララは65歳、夫に先立たれ、ブラジルの港町にうち捨てられたかのような古いアパートAquariusで、たった1人で暮らしていました。そこへ、突然現れた金持ちがクララをアパートから追い出そうとします。彼はアパートを含め近隣一帯をすべて買い上げていたわけですな。出ていく気などさらさらないクララは、この金持ちと睨みあうことに。不動産をめぐる争い、その背景にあるブラジル経済の実情、人情ものに通ずる庶民のドラマ、なによりクララを熱演した名女優ソニア・ブラガ Sonia Braga(「ミラグロ/奇跡の地 The Milagro Beanfield War」(1988年))の存在感が、第69回カンヌ国際映画祭でも高く評価されることになりました。


画像

"Certain Women" dir. Kelly Reichardt 2016年製作
アメリカ USA
アメリカモンタナ州出身の作家マイレ・メロイの短編小説を映画化した今作は、モンタナの小さな町で暮らす女性弁護士、彼女の不機嫌なクライアント夫婦、若い牧童、町の夜学の教師として赴任した女性など、複数の女性の人生が交錯するドラマです。複雑かつ繊細な女性心理を追ったドラマ。


画像

"Elle" dir. Paul Verhoeven 2016年製作
フランス、ドイツ、ベルギー France/Germany/Belgium

ポール・ヴァーホーヴェン監督久々の新作が、またもや世界中の映画祭、世界中の映画評論家の間で激論を呼んでいます。今年のカンヌにも招待され、やはり賛否両論となりました。自宅のキッチンでフードを目深にかぶった不審な男にレイプされた女性が、泣き寝入りすることを拒否し、自分の手で犯人に正義の鉄槌を下そうとします。…ここまでは、トリュフォー監督の名作「黒衣の花嫁 The Bride Wore Black」(1968年)や、70年代に作られた数々の“リベンジ・ムービー”の流れに沿っていますが、興味深いのはその復讐行為がエスカレートしていくくだり。ヒロインは、相手を完全に支配するか、それとも相手に完全服従するかという危険なゲームにのめり込んでいってしまいます。そう、被害者が加害者に変貌していくわけです。このあたりの心理描写の変化は、個人的には面白いと思うのですが、受け入れられない人もいることは理解できますね。


"Fire at Sea / Fuocoammare" dir. Gianfranco Rosi 2016年製作
イタリア、フランス Italy/France
今年のベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた、ジャンフランコ・ロッシ Gianfranco Rosi監督のドキュメンタリー作品がニューヨークにも招かれました。大量の難民が祖国の戦禍を逃れてヨーロッパの国々に流れ着き、様々な問題が起こっている現状を捉えた作品です。(Winner of the Golden Bear at the Berlin Film Festival)

画像

"Graduation / Bacalaureat" dir. Cristian Mungiu 2016年製作
ルーマニア Romania
「4ヶ月、3週と2日 4 Months, 3 Weeks and 2 Days」(2007年)で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞し、一躍脚光を浴びたルーマニア出身の鬼才クリスチャン・ムンギウ Cristian Mungiu。彼の「汚れなき祈り Beyond the Hills 」(2012年)以来となる新作が、カンヌに引き続きニューヨークにも招待されました。テーマは“教育”。英国の大学からの奨学金を受けることで、2人の娘を不安定な政情のルーマニアから他所の国に脱出させようと悪戦苦闘する両親のお話。日本に住み、子供の教育に同じく苦心している私たちのような人間にも身につまされる話でありますなあ。ちなみに今作は、今年のカンヌ国際映画祭で最優秀監督賞受賞作品に輝きました。(Winner of the Best Director prize at Cannes Film Festival)


"Hermia and Helena" dir. Matias Pineiro 2016年製作
アルゼンチン、アメリカ Argentina/USA
初めて故郷アルゼンチンを離れて撮った作品が、ニューヨーク映画祭に招待されたマティアス・ピニェイロ監督。彼も多くの同郷の映画人と同じように、生まれもアルゼンチンなら教育を受けた場所もアルゼンチンであるにもかかわらず、実際に製作に携わったのは外国でありました。現在はニューヨークを拠点に活動されているそうです。この作品では、彼自身が“育ての親”たるニューヨークに抱いている複雑な感情を、ビタースウィートなコメディに仕上げました。


画像

"I, Daniel Blake" dir. Ken Loach 2016年製作
英国 UK

今年のカンヌ映画祭で再度パルムドール Palme d'Orに輝いた、英国の名匠ケン・ローチ監督の新作『I, Daniel Blake』が、ニューヨークでもお披露目されることになりました。

心臓発作を起こして以来、これまでの仕事に従事できなくなったダニエル・ブレイク。生活のために政府に給付金を申請しなければならなくなりました。ところがまあ、お役所仕事ってのはどこの国でも事情は同じであるようですな。書類を出すのにもあちこちの窓口をたらい回しにされた挙句、同じ書類を何度も何度も提出させられたり、今の時代には必要不可欠なコンピューターのスキルがゼロである事実を嫌という程突きつけられたり。役所の職員というだけで、横柄な態度を隠そうともしない連中がいたり。ほとほと嫌気が差してきた時、ダニエルと同じくお役所に心が壊れそうになっていたお仲間、ケイティーと出会うのです。

舞台こそ英国ですが、この作品で描かれる官僚主義の権化と庶民の闘いって、慢性的な不況と世界情勢不安のために経済が低迷する我が国でも日常茶飯事。他の国でも、似たような状況はみられると思いますよ。だからこそ、ケン・ローチ監督らしくケレン味も派手さも皆無ながら、人種や国の違いを超えて多くの観客の心を捉え、共感を集めることができるのです。加えて、ローチ監督の視点は常に名も無き庶民の側にあり、彼らへの共鳴を通じて社会に潜む問題を炙り出してきました。そして、そもそも社会は人間が構成するもの。ですからこれまでの彼の作品は皆、庶民が社会問題の只中で苦闘する姿を描くことで人間の真の姿をも映し出してきたのです。今作においても、彼のスタンスとライフワークは変わらないと言えるでしょう。世界的な政情不安と不況にあえぐ庶民の姿は、今の時代を如実に反映しているのですから。

つまり、ローチ監督がこれまでに手掛けてきた作品の全ては、社会と一般庶民の関係を通じて、人間そのものを描こうと試みたものだったともいえるのです。その意味において、カンヌが今作にパルム・ドールを与えた理由も理解できると思います。


画像

"Julieta" dir. Pedro Almodovar 2016年製作
スペイン Spain

豊熟の時を迎えてからのペドロ・アルモドヴァル監督の作品群は、“母性”の中にある聖性や魔性を紐解こうとするようなテーマが強く見られます。突飛な出来事によって、個人のアイデンティティ(セクシュアリティを含む)が危機に晒されたり、あるいは、家族とは一体何なのかといった普遍的なテーマが追求されるパターンですね。そういったテーマを、アルモドヴァル独特の複雑な構成の脚本とケレン味たっぷりの演出で、時に観客を煙に巻きながら毒々しく語るのですよ。

この新作は、ノーベル文学賞受賞者である短編の名手、小説家アリス・マンロー Alice Munroの3つの短編小説『Chance』『Soon』『Silence』(短編小説集『Runaway』(2004年出版))から翻案されたものです。アルモドヴァル監督にとって記念すべき20作目の長編劇映画作品となった今作は、ジュリエッタという1人の女性の、愛情と絶望に翻弄された30年間に渡る数奇な運命を、フラッシュバックを大胆に多用した演出で描くものです。過去に生み出された映画技法の遺産を引用・応用しつつ、アルモドヴァル監督自身のこれまでの監督人生の総決算を試みたかのような内容になっているそうです。これは興味深いですね。


画像

"Manchester by the Sea" dir. Kenneth Lonergan 2016年製作
アメリカ USA

脚本と監督を手掛けたケネス・ロナーガン Kenneth Lonergan監督は、「ギャング・オブ・ニューヨーク Gangs of New York」(2002年)、「アナライズ・ミー Analyze This」(1999年)等の脚本家として知られています。2000年には自身がメガホンをとった「ユー・キャン・カウント・オン・ミー You Can Count On Me」が大変高い評価を受け、その勢いをかって製作した「マーガレット Margaret」(2011年)では、上映時間の問題を巡ってスタジオと監督が対立し、マーティン・スコセッシ監督やシドニー・ポラック監督などからの支援にもかかわらずポスト・プロダクションが数年間続き、ついに訴訟問題にまで発展してしまいました。監督として天国と地獄を味わったロナーガン監督でありましたが、くだんの「マーガレット Margaret」ですら、監督としては不本意な形であるにせよ、作品への賛辞を惜しまない声も根強いのですよね。つまり、ロナーガン監督自身が、寡作ながら評価の高い映画作家であるということなのです。


ユー・キャン・カウント・オン・ミー [DVD]
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
2007-02-23

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ユー・キャン・カウント・オン・ミー [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



残念ながら日本では、彼の「ユー・キャン・カウント・オン・ミー You Can Count On Me」も「マーガレット Margaret」も劇場公開は見送られてしまいました。私もDVDで見たのですが、特にマーク・ラファロ Mark Ruffaloの瑞々しい演技が素晴らしかった「ユー・キャン・カウント・オン・ミー You Can Count On Me」が心に残りましたねえ。ロナーガン監督のストーリーは、小さな町で暮らす普通の人々の人生が複雑に交錯してゆく様子を、丁寧な心理描写と共に紡ぎだすもの。ジェットコースターのごとき派手な展開で観客をびっくりさせる作品ではないのですが、登場人物の人生に起こった出来事が家族の中でどのような不協和音を引き起こし、その結果、家族の絆の真の意味が明らかになるといったテーマが追求されているように感じます。

ケイシー・アフレックが、人生に躓き、精神にも彼の人生の未来にも不安を抱える屈折した男を演じる新作『Manchester by the Sea』もまた、機能不全を起こした家族が、ケイシー演じる異分子リーの帰郷によって軋轢を生じ、リー自身の変化と共に変わっていく様を丁寧に追った家族ドラマです。
リーはボストンで便利屋のような仕事をして食いつないでいましたが、兄ジョーが心臓発作を起こして急死したために、マサチューセッツ州北部沿岸にある故郷に戻ってきました。兄ジョーには16歳になる息子がおり、リーは自分が兄の遺児の後見人になっていることを知ります。家族の中で唯一昔の思い出を共有する兄が突如いなくなり、面識の全くなかった16歳の子供の父親になるという状況は、リーの精神を新たな混乱に陥れます。大切なものを喪った悲しみ、未来につながる子供への愛情、新たに生まれる希望。一度壊れてしまった家族は、果たしてもう一度機能することができるのでしょうか。
家族の問題は、誰にとっても永遠の命題です。正しい解答が得られる問題でもありません。この作品ではどのような“解答”が描かれるのか、非常に楽しみです。リーの兄ジョーには、今年のエミー賞にもノミネートされている渋い演技派カイル・チャンドラー(「キャロル Carol」)が扮しています。


画像

"My Entire High School Sinking into the Sea" dir. Dash Shaw 2016年製作
アメリカ USA

グラフィック・ノベルの作者として知られていたダッシュ・ショウ Dash Shawの、初の長編アニメーション映画がニューヨーク映画祭に招待されました。高校時代っちゅうのは、どんな人間にとっても、ちょうど成長過程の一番不安定な時期にあたるために、懐かしい思い出である以上に、恥ずかしい思い出の方が勝っているもんです。そんな、嬉し恥ずかしの高校時代を“アウトサイダー”として過ごした子供たちのお話を、独特の浮遊感溢れる絵柄で描いた作品だそうです。声の出演陣が、ジェイソン・シュワルツマン、レナ・ダナム、マヤ・ルドルフ、はたまた「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ Hedwig and the Angry Inch」(2001年)の監督ジョン・キャメロン・ミッチェルなどなど超豪華であることからも、今作に向ける映画人の称賛の大きさが窺い知れますね。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

にほんブログ村

第54回NY映画祭 54th New York Film Festival Part 1 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる