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zoom RSS 「ファッションを創る男〜カール・ラガーフェルド〜 Lagerfeld Confidential」

<<   作成日時 : 2015/05/12 13:25   >>

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“満足いくまで生きたら、まるで私など最初から存在しなかったように、ひっそりと消えたい”


ハイ・ファッションの世界のことなど何一つ知らぬのに、何故かカール・ラガーフェルド Karl Lagerfeld氏のドキュメンタリー映画「ファッションを創る男〜カール・ラガーフェルド〜 Lagerfeld Confidential」を観たり、イヴ・サン・ローランの伝記映画「イヴ・サン・ローラン Yves Saint Laurent」を観ていたりします。こないだは、フランスの老舗ブランド、クリスチャン・ディオールのデザイナーに就任したラフ・シモンズを追ったドキュメンタリー映画「ディオールと私 Dior et Moi / Dior & I」を観て、すっかり感銘を受けた次第。

どの作品も、ファッション業界という私にとっては未知の世界の一端を垣間見せてくれた、実に興味深い内容でした。


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シャネル(CHANEL)とフェンディ(FENDI)という、私ですら名前を知っている著名ブランドのカリスマ・デザイナーとしてファッション業界に君臨するだけではなく、ご本人の華やかな言動がニュースになってしまう名物セレブでもあるラガーフェルド氏。「ファッションを創る男〜カール・ラガーフェルド〜 Lagerfeld Confidential」は、その彼の激動の半生を振り返りながら、彼が実際にデザインを行っている様子や、コレクションの舞台裏、ホテルや別荘に滞在しているときの表情や飛行機で移動中のプライベート・ショットまで披露する、ラガーフェルド氏を丸裸にする勢いの(笑)ドキュメンタリーでしたよ。

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「ファッションを創る男〜カール・ラガーフェルド〜 Lagerfeld Confidential」(2007年)
監督:ロドルフ・マルコーニ
製作:グレゴリー・ベルナール
撮影:ロドルフ・マルコーニ
出演:カール・ラガーフェルド
ニコール・キッドマン他。


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比類なき読書家で、誰にも言わないが本当は大変な近視。
実はカメラも大好きで、ファッション・デザインの世界に入っていなければカメラマンになりたかった程。今ではブランド用の写真も自分で撮ってしまう。
もちろん新しいものに興味津々で、アンテナは違う分野にまで常に伸ばしている。
今は活動拠点をパリとニューヨークに置いているので、毎日の生活に移動はつきもの。だから旅行は好きだが、子供の頃、乳母に刺繍してもらったカバー付きのクッションが傍にないと眠れない。旅行中も専属のコックを連れて食事には気を遣う。
特に自身の体調管理に関しては、ショーを企画している時同様に厳しい。
最近の若いデザイナーの中には、自分自身の身なりに無頓着な輩も多いが、いただけない。昔かたぎと言われようが、毎日身につけるアクセサリーに至るまで、デザイナー自身のトータル・コーディネートにも気を配るべきだと思っている。それがデザイナーのファッションへの敬意というものだろう。
各国の王室メンバー、映画スターや社交界のセレブなど、庶民には手の届かぬ雲の上の人々と、時にはファッションを武器に対等に渡り合い、時に長い友情を築いたりする。気を遣うことだが、それを苦痛に思ったことはない。

ファッション・デザインの世界に入ったのはなぜか、もしファッション・デザイナーになっていなければ何をしていただろうか、70歳を超えた今も新しいデザインに挑戦し続けるモチベーションはどこから生まれるのか。そしてつまるところ、ファッション・デザインとは彼にとって何を意味するのか。

……“ファッション・デザインなんて、今の自分の状況に抱いてるフラストレーションを発散する方法でしかないさ(笑)!皆、ファッションの世界を特別視しすぎる。デザイナーの仕事なんざ、アートでもなんでもない。絶え間ない重労働だよ!毎日こつこつと働き続ける。それだけなんだ”
―ラガーフェルド氏自身のファッション・デザインへの分かりやすい見解(笑)

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私生活のことも、彼の人生を左右した母親との思い出も、過去のことも、すべてあっけらかんかんと(笑)語ってしまう、そのどこまでもラガーフェルド氏らしい生き様に、こちらもついつい絆されてしまいますね(笑)。ファッションに興味があるわけでなし、カール・ラガーフェルドという名を耳にしても、“ああ、あの口の悪いオッサンか”程度にしか認識していない私ですら、彼が持つ天性の吸引力、そして、彼自身は絶対認めないでしょうけど(笑)、デザイナーとしての己が感覚を磨き続ける絶え間ない努力とファッションへの献身に、頭が下がる思いです。

まあしかし、自分自身について饒舌に語る人間は、えてして自身の真の姿を千万の言葉の陰に隠して皆を煙に巻いてしまうもの。このドキュメンタリー映画で明らかにされるラガーフェルド氏の“素顔”も、やはりご自身の手で巧みに演出・カモフラージュされたものなのでしょうよ。今作のインタビュー中、御大がペロッと漏らしてらっしゃったように、もはや御自身でも自分の本当の姿がどうなのか、わからなくなっちゃってるきらいもありますな(笑)。それでも、どんな分野でも大きな足跡を残す人間には、探求すべき迷宮の如き奥深さがあるものだと感心させられます。

さて、ドキュメンタリー作品としての今作は、ラガーフェルド御大自身が企画段階から関わっていたため、『カール・ラガーフェルドの素顔を赤裸々に公開する』という大きな目的は充分に達成されていると感じます。そして、素っ裸にされても尚謎めいた部分が残る、カール・ラガーフェルドという人間の面白さ、味わい深さが、余韻のようにスクリーンの残像に残る後味も、ほろ苦さが加味されてなかなか良いものです。

デザイナーとしての、きらびやかなばかりではない忙しい日常を追う傍ら、彼の半生を振り返ったり、人生の信条について語ったりするインタビュー映像が時折挟まる構成は悪くありません。悪くないですが、もうちょびっと映像を整理して挿入して欲しかったなあという要望もありにけり(笑)。含蓄あるラガーフェルド氏の言葉が、ただ漫然とばらまかれているにも見えるので。
タイトルの“Confidential”という雰囲気を強調するためでしょうね、ラガーフェルド氏に密着し、彼を追い続けるカメラは主に手持ちカメラでした。この映像がブレること、ブレること(涙)。三半規管が弱いわたくしめ、ちょいと涙目になった部分もありました。インタビュー時やオフショット時はいいのですよ。本当に彼の服のポケットの中に潜り込んで、彼の日常の一部始終を覗き見しているような感覚が味わえるので(笑)。私が困ったのは、ショーの舞台裏の映像でした。舞台の照明がキラキラしている上に、華やかなドレスを着たモデルさんたちもキラキラ。それを映す手持ちカメラはブレブレ(笑)。…ピ○チューがピカピカするシーンをガン見していたお子さんたちが目を回し、病院に担ぎ込まれた事件が脳裏をよぎりましたね、咄嗟にね(笑)。

ラガーフェルド御大の幼少時の原風景として、本編に何度かシンボリックに挿入される海辺で遊ぶ光景。これは、年代を経たフィルムから起こしたような映像処理が施されたものなのですが、妙に印象に残ります。当時としては型破りな生き方をした彼の母親のことは、御大自らがインタビューで率直に語っていますが、その語り口から察するに、御大自身はおそらく愛憎半ばずる複雑な思いをお母様に対して抱いてらっしゃったのでしょう。そこから出発した御大の人生が、独創的かつ、グラマラスに濃密化していったのは、なんとなく運命だったのではないかと思ってしまいますね。

伝記映画「イヴ・サン・ローラン Yves Saint Laurent」にも、ニコライ・キンスキー演じるところの(結構似てたよ・笑)カール・ラガーフェルド氏が登場するのですが、この御大、よくよく考えたら、故イヴ・サン・ローランの全盛期も目撃している、ファッション業界の生き証人なんですよね。本物の美を創造した本物の才能の生き様を、彼は自分自身の目で見てきたわけです。あらゆる世界を見て歩き、貪欲に知識を欲し、禁欲に仕事に精進し、一心に美を求め、およそ普通の人間の数万倍もの速さで生きた彼の人生は、飽和状態に向かって今だに膨らみ続けています。

思い立ったように何度も繰り返される御大の記憶の原風景―何の悩みも不安もなかった幼い頃の自分が、母親が見守る中、海辺で無心に遊ぶ様子―が、ひょっとしたら、私たちの想像する以上に大きな意味を持っているのかもしれませんね。まるで膨張し続ける宇宙空間のように、大きく豊かになった人生を締めくくる際、“最後は幻のようにひっそりと消え”るため、ラガーフェルド御大は海辺で遊んでいた子供の頃にまで戻ろうとしているのではないか、と。


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