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zoom RSS 全ての恐怖心を捨て、怒りを持て―「カムバック! Cuban Fury」

<<   作成日時 : 2014/11/26 16:21   >>

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“胸毛も剃ったし、おかげで今もチクチクするけど、いろいろな人と会うことができた。そしてやっと自分のいるべき場所に戻ってこれたような気がするんだ”

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「カムバック! Cuban Fury」(2014年)
監督:ジェームズ・グリフィス
製作:ニラ・パーク&ジェームズ・ビドル
製作総指揮:マシュー・ジャスティス &ニック・フロスト&テッサ・ロス他。
原案:ニック・フロスト
脚本:ジョン・ブラウン
撮影:ディック・ポープ
プロダクションデザイン:ディック・ラン
衣装デザイン:ロサ・ディアス
編集:ジェナサン・エイモス&クリス・ディケンズ
音楽:ダニエル・ペンバートン
音楽監修:ニック・エンジェル
出演:ニック・フロスト(ブルース)
ラシダ・ジョーンズ(ジュリア)
クリス・オダウド(ドリュー)
イアン・マクシェーン(ロン・パーフィット)
ロリー・キニア(ゲイリー)
オリヴィア・コールマン(サム)他。

ブルースはまだ何者でもなかった少年時代、テレビで情熱のラテン・ミュージックにのって情熱のサルサを踊るダンサーを観て、情熱の啓示に打たれた。ブルースはすぐにサルサ用のシューズを買い求め、サルサの熱いコラソンを伝える熱い指導者ロンと出会い、妹サムとコンビを組んでサルサを学び始める。元々サルサとの相性は抜群で、才能もあった。そこにロン直伝のコラソンが加わったブルースのサルサはめきめきと上達し、サムと共に出場する大会という大会をことごとく制覇し、残すタイトルは全国大会のみとなった。メディアも彗星のごとく現れた天才少年サルサダンサーの勝利を確信していたが、もちろんブルース本人も勝利のみを念頭に置いていた。

ところが。

決勝戦の舞台となる会場に入る直前、既に衣装を身に着けていたブルースは、運悪く地元の悪ガキグループに絡まれ、酷いリンチを受ける。なにしろサルサダンサーの衣装は、男性のものもド派手が基本だ。それこそ全盛期のバリー・マニロウ、あるいはリベラーチそのまんまの、シルクあるいはサテンのドレスシャツは原色ヒラヒラ、会場の派手なライティングを跳ね返す勢いのスパンコールもキラキラなのである。保守的な低所得者層が多く住む街では、ダンスなど大の男がやるもんじゃないと思われている。それが異国のダンスなら尚更だ。ブルースは衣装についていた全てのスパンコールを毟り取られ、それを食べさせられ、暴行される。襲撃が収まったときには、ブルースの心は完全に打ち砕かれ、サルサダンスへのコラソンも恐怖で冷え切ってしまっていた。いつまで経っても会場にやってこない愛弟子を心配していたロンは、彼が巻き込まれた事件のことを全く知らされぬまま、その愛弟子からの一方的な縁切りの電話一本で、100年に1人の逸材である愛弟子との絆を失う羽目になった。“サルサダンスなんて女のやるモンだ”という捨て台詞は、その後のロンの心をずっと痛め続けることになったのだが、ブルースがそれを知ることはなかった。

25年後。サルサダンサーだった頃の面影はすっかり姿を消し、だるまさんのようなメタボ体型が板に付いたブルースは、設計技師として大手の製鉄会社に勤めるサラリーマンとなっていた。毎朝チャリで通勤し、そのくせ受付の監視の目を何とか掻い潜り、チャリを仕事場まで持って行こうと必死になる。だって、自転車置き場が会社の玄関から遠いんだもん。

元々手先が器用だったブルースは、誰よりも精密な図面を描くという、サルサに代わる新しい特技を身につけた。ブルースがこれまでに考案してきた新しいデザインの部品は、会社にも、女たらしの格好つけアホ上司のドリューの実績にも貢献してきた。ドリューは背が高く足が長いことだけが自慢の空気頭だが、ブルースの努力を盗んで自分の手柄にし、同時にブルースを愚図でノロマな亀男として本人にも周囲にも印象付け、ブルースの手綱を握って離さないことにだけは、抜群の才覚を発揮してきた。長年ドリューに利用され、頭を押さえつけられてきたおかげで、ブルース自身までも自分を何の取り柄もない、不細工でメタボで女っ気なしの哀れな負け犬だと信じ込むようになってしまった。あのサルサの全国大会決勝前で受けた心の傷は、大人になっても癒えることなくブルースの心を蝕んでいたのだ。

ある日、ブルースの部署に、アメリカから引き抜かれてきたという凄腕営業ウーマンがやって来た。女性で製鉄業界で抜群の営業力を持つ人材は珍しく、ドリュー達営業課の連中は興味津々だ。彼女ジュリアは、ドリューとブルースの部署のトップに就任するのだが、ご本人は製鉄業のイメージからは程遠い、ラテン系のチャーミングな女性だった。屈託のない明るい笑顔でその場を和ませるジュリアに、ブルースは一目で恋に落ちる。ところが、いい女を放ってはおかないドリューもまた目の色を変えた。ジュリアを巡るブルースとドリューの攻防が始まる。

ブルースが所属する“彼女いないクラブ”は、数年前から続く格式あるクラブだ。会員はブルース、ゲイリー,、ミッキーの3名しかいないが、毎週1回欠かさず、ゴルフの打ちっぱなしを併設するスポーツクラブに集まり、いかに女っ気がない日常生活かを報告し合う。その週、最も女性との遭遇の確率が低かった敗者が、ゴルフ打ちっぱなし大会の後のビールを他の会員におごるという厳格なしきたりに従わねばならないのだ。クラブの中では唯一ゲイリーが妻帯者ではあるが、妻とは既にシベリア並みのお寒い関係であることを鑑みても、このクラブが会員に求める人生の苦行はかなりのものだといえよう。

しかしブルースは、この格式あるクラブに創設以来初めての大騒動を引き起こした。

アメリカからやってきたラテン系の美人で性格も良くて有能な、そりゃなんかの冗談だろオマエ的なマドンナに一目惚れしちゃった。しかも、ドリューのアホがジュリアの気を惹こうとキザったらしいことをやり始めたのが嫌で会社の歓迎パーティーを抜け出したら、廊下で偶然ジュリアに鉢合わせして、挨拶した拍子に社員証のひもが絡んじゃってなかなか解けなくて困ったっよって、そりゃ一体何のディズニーわん○ん物語の世界だよ。仕方が無いので照れ隠しに立ち話したら、社員証の名前がラテン系の男性名“フリオ”になってて、それ誤植なんだけど本人がいたく気に入っちゃってそのままにしてあるの♪って、それなに?それなに?むか〜しサルサダンスやっててラテン系にめっちゃ縁があった自分と遠い運命の赤い糸で繋がってるってこと?ねえ繋がってる?とか。オマエら何十年前の学園ロマコメものの話してんだよ、勝手に向こうでやってろよ!!!!

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ブルースはゲイリーのやっかみ交じりの冷やかしを振り切って、スポーツクラブにやってきたジュリアの後を追いかけた。あわよくばデートに誘うためである。ところが彼女はクラブの2階にあるサルサダンス教室に入っていった。そこで彼女は初歩のステップを練習し、上手くできると実に嬉しそうに笑っていた。
なんということか!彼女はブルースがかつていた世界の住人だったのだ!共通点大アリじゃん!でも、何故よりによってサルサダンスなんだ!ダンスなら他にもいろいろあるだろう、社交ダンスとかタンゴとか!
…ブルースは大昔に決別した世界を、今現在も彼を苛むトラウマの元凶であるサルサを思い出した。そして、かつての師匠である鬼コーチ、ロンの激怒した顔を思い出した。……ロン、怒ってるだろうなあ。最後はあんな苦々しい別れ方だったし……。てか、まだ生きてるんだろうか……。しかしとにかくこれで、何はともあれ、ライバル、ドリューに差をつけられるチャンスができた。ブルースにも可能性が出てきたのである。彼は、今となってはブルースとサルサの決別の真相を唯一知る、かつての良き相棒にして妹サムに相談を持ちかけた。現在は酒場で最高に美味いカクテルを作るサムは、侘しい兄の人生に華やぎと生きがいが出来たことを祝し、サルサダンスを再開するよう強く勧めるのだった。

サムお手製、アルコール度数計測不能のカクテルを何杯もあおった結果、ブルースは泥酔して自宅アパートの部屋を破壊しつつ、サルサダンサー時代の思い出の品を引っ張り出した。大志を抱いていた少年時代の大会優勝時の新聞記事の切り抜きだ。昔は、それらを全部集め、イラストを描いてスクラップブックに仕立てるのが大好きだった。しかし25年経った今では、最後の全国大会決勝時の棄権の記事が胸の痛みを呼び覚ます。だが酔った勢いもあり、ブルースはついにトラウマを乗り越える決心をした。もう一度サルサダンスと向き合うのだ。25年のブランクが不安だが、なに大丈夫。これでも昔は天才と呼ばれてたんだ、ロンに習ったステップも技も全てこの身体が覚えている。一度レッスンしてもらえば、すぐに感覚を思い出すさ。

ブルースは多少の罪悪感も躊躇も25年の歳月もものともせず、ネット検索でロンが経営するバーをお手軽に探し出した。25年ぶりに再会した恩師は、やはりそれなりに老けてはいたが、まだサルサを教えているのだろうか、精悍な容貌と獣のようにしなやかな体つきは相変わらずだった。ブルースの事情を知らないロンは、かつての愛弟子を見てもそっけなく、むしろそのメタボっぷりの方に驚嘆した程で、最後の大会のことも、また今になってなぜブルースが姿を現したのかも詮索しようとせず、そ知らぬ態度であった。ブルースとしては、一度稽古してもらえば充分だと思っているので、取り付く島の無い恩師にも強気だったのだが。

会社では、ブルースがジュリアに接近しようとする度、ことごとくドリューの邪魔が入る。意識している女性の前ではしどろもどろになってしまうブルースを鼻で笑いつつ、ドリューはジュリアの関心を自分の方に向けてしまうのだ。そしていつも以上にブルースをコケにし、抜かりなく頭を押さえつける。サルサ以外ではドリューに太刀打ちできない現実に歯噛みするブルースだった。

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ブルースは初心者用のクラスを受けることを強制された。何せ25年ぶりだから。ことサルサに関しては絶対の自信を持つブルースは、会社でのドリューとの攻防戦に苛立っていることもあって不満タラタラだ。ところが、世界大会優勝者の女性ダンサーにこてんぱんにのされ、25年のブランクを思い知らされたブルースは、仕方なく初心者に混じって基礎からやり直しを図る。だが悪いことばかりではない。そこで知り合ったイラン人べジャンは、髭剃り跡も青々した筋肉隆々のお姐様にして、炭酸を完全に抜いたファンタを愛し、展開と意図の全く読めない深遠なるジョークを飛ばす変人だったが、サルサの世界でも、また会社や“彼女いないクラブ”以外でも、ブルースにとっておそらくはじめての友人になってくれた。彼に腕を引っ張られて足を踏み入れたサルサ・クラブでは、人生始まって以来初の胸毛剃毛となんちゃって日焼けクリームを経験し、サルサが本来楽しいものなのだということを思い出した。ベジャンのキョーレツさのせいで、ゲイリーにはあらぬ誤解を受ける羽目になったが、結果的にサルサ・ダンスをやっていることを長年の友人にやっとこさカムアウトできた。そして、ベジャンはブルースに内緒でサルサ・ダンスの大会Santo Vitoにエントリーし、それに向けてトレーニングを再開するという、大きな目標をブルースに与えてもくれたのだ。

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ジュリアのためにラテン・ミュージックを厳選した“サルサ・サイコーMix”カセットを己の技術を総動員して制作しても、ジュリアのために苦手なボーリング大会を耐え忍んでも、ブルースの努力は全てドリューのアホにオジャンにされる。その度に、負け癖のついたブルースは無様にへこたれてしまうが、ベジャンやサムのお陰で再会後も衝突していたロンと漸く和解し、そのロンに尻を叩かれつつ、サルサ・ダンサーとして、何より本来の自分自身を取り戻すため、ブルースは無心にステップを踏む。長い間眠っていた全身の筋肉と運動神経が目覚め始め、遂に勘を取り戻したブルース。会社の昼休み、鼻息も荒くドリューのアホにダンス対決を申し入れ、トーシローのへなちょこダンスを炎のサルサ・ステップで打ち負かし、天才サルサ・ダンサーの復活を誰かの車の屋根の上で高らかに叫ぶのであった。

Santo Vito大会にジュリアを誘い、一緒にサルサを踊ってもらう。人生の最も大切な時間をサルサに賭けてきた本当の自分を、ジュリアに見てもらいたい。サルサの世界は深遠だ。学ぶべきことはまだたくさんある。これからの人生を、サルサ・ダンスの追求と、サルサを通じて知り合った多くの面白い人たちとの友情に費やそうと願う自分のパートナーになって欲しい。ブルースのジュリアへの愛情と、天才サルサ・ダンサーとしてのカムバックは叶えられるのか。

カムバック! 【Blu-ray】
TCエンタテインメント
2015-02-11

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本当に面白いコメディ映画を作るのは至難の技だなんてよく言われますよね。そりゃ確かにその通りですが、良い作品を作るのが困難なのは、何もコメディに限ったことじゃありません。恋愛映画にしろサスペンス映画にしろ戦争映画にしろ、どんな種類の映画でも、きちんと練り上げられたストーリー、一つ一つのエピソードを丁寧に積み上げていく演出、素晴らしい演技、音楽、カメラワーク、最終的に作品の質を決定付ける優れた編集といった様々な要素が上手く噛み合ってはじめて、観客の心に届く映画が生まれるのです。
今流行の奇をてらった演出、最新映像技術やギミックに頼り切った空疎な作品群を見ていると、面白いストーリーを考え、それをより良く研磨するために持ち得る最大の技巧を凝らす、といったモノ作りの基本を多くの人が忘れているように感じますね。一回こっきりでも構わないから、とにかく観客をびっくりさせるだけのコケオドシ、映画の要素を必要以上に捻くりまわして悦に入る独り善がりが、必ずしも“斬新な”作品を意味するわけではありません。

諸々のことを総合すると、今日ご紹介したこの「カムバック!」は、今の時流には乗っかっていない、とてもオーソドックスな作品だといえます。負け犬癖がついちゃったトホホな主人公、その良き相談相手である善良な妹、厭味でアホな上司、可愛くて性格も良くて素敵なマドンナ、めっちゃ厳しくて怖いが主人公の最大の理解者たる恩師、キョーレツな個性で口は悪いが人柄は良い友達などなど、キャラクターもその設定も、口の悪い人なら類型的だと一刀両断しちまうでしょうよ(笑)。ストーリーにしても、過去のトラウマから自分自身に負けてしまっていた主人公が、そのトラウマと正面から対峙し、失敗を乗り越えてそれを克服することで、自分自身への誇りを取り戻し素敵な恋人も手に入れちゃったという、展開も結末も予想できてしまう内容です。

でもね。

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たとえ先のストーリーが読めてしまっても、中学生日記みたいな初々しいラブコメ展開でも、本物の悪人が出てこない、毒っ気が足らない薄味ドラマであっても、私は大いに主人公ブルースに共鳴し、彼が躓くたんびにヘナヘナになってしまう不甲斐なさに同情し、サルサを通じて彼が本当の自分を徐々に取り戻していく過程に涙したんですわ。なぜか?そりゃあーた、キャラクターそれぞれがきっちり描き込まれていて、細かいエピソードが時間の経過に従って丹念に積み重ねられているからですよ。時間軸や時空をびゅんびゅん飛び回るややこしい映画がもてはやされる今どき、ホントに珍しいぐらい正攻法です。安心してストーリーやキャラクター達に入り込める映画です。楽しい映画作りの基本とは何か、を考えさせられました。

“こんなもんDVD観賞で充分っしょ☆”とかほざいてる人達に特に言いたいが、私は映画館でこれを見て本当に良かったと満足しています。

あともう1本、映画館で見て良かったと痛感しているのは、フランスの人気俳優ギヨーム・ガリエンヌ(「イヴ・サン・ローラン」)の監督デビュー作にして自伝的内容の主演作、「不機嫌なママにメルシィ! Les garcons et Guillaume, a table!」ですね。これは、私が想像していた以上に映像美に重きが置かれた作品でした。一人称で語られる主人公の意識の流れと、映像の独創的な展開が連動しているというもの。世の中のジェンダーに対する典型的な誤解であるとか、親子関係の難しさといったデリケートな問題への風刺を描きつつ、小難しい理論や過激な主張を振りかざすのではなく、ユーモアでくるんでしまう。尚且つ、舞台での演技と映画ならではの映像表現が一体となり、主人公の内的世界が映画としてちゃんと成立しているという、映画館でこそ堪能できる複雑な構成だと感じました。

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では、なぜ「カムバック!」も映画館での観賞に相応しい作品だと思ったのか。理由はたった一つ。ニックがあの巨体で、めっちゃ凄いサルサ・ダンスを踊るからでありますよ(笑)。大きなスクリーンで見ておいてホンマに良かったわ。どえらいわよ(笑)。私、上映中に「「「「スゲエエエエエエエエエエエエエエ」」」」って絶叫しましたもんさ(ごめんなさいw)。しかも、サルサに似合うように頑張ってダイエットして痩せて素敵になりました!ってな流れにはなっていないんです。私にとって、これってかなり重要なポイントでしてね。ニックが、あのトトロそのまんまの体型で凄まじいサルサ・ステップを披露してくれるからこそ、この映画の説得力がぐんと増したと思うのです。周囲の人たちも、ブルースに痩せろとは一言も言わない。そのまんまで天才サルサ・ダンサーの誇りを思い出せ、ちゅうわけなんです。雪の女王じゃござんせんが、“ありのままの自分を受け入れて再び立ち上がる”ことを勝利宣言としたこの作品、きっと想像以上に多くの人の心を勇気付けるのでは?

猛烈に古い話を蒸し返して申し訳ないのですが、かの「タンゴ・リブレ 君を想う Tango Libre」も、今作ぐらいふんだんに“踊る”シーンを入れておけば、もっと鮮烈なラブストーリーになったと思うのですよ。

ダンス映画は踊ってナンボの世界。とにかく踊らねば。下手でも上手くても、皆して踊って踊って踊りまくるのだあっ!ボリウッド映画ぐらい、特に意味も理由もなく踊り狂うぐらいが良ろしい。日常会話の一語のように、何気ない身振りの一端のように、ごく自然に踊らん哉、踊らん哉。
さすれば、タンゴの名ダンサーであるチチョ・フルンボリが「タンゴ・リブレ 君を想う Tango Libre」の中で言っていたように、“本来タンゴとは(他の形態の踊りも含めて)、気に入った女をモノにするために野郎同士がタンゴのステップで凌ぎを削った、戦いの道具であった”という意味が、明らかになるでしょう。方やタンゴ、方やサルサ、踊りのベースはそれぞれ違えども、双方共に踊りは愛情の発露と分かち難く結びついています。チチョのこの言葉は、図らずも、“踊ること”の真髄をズバリと言い当てているのではないかと思いますね。

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ですから、ブルースがサルサ・ダンスで一目惚れした女性に純愛を捧げるのも、アホなライバルにダンス対決で戦いを挑むのも、至極至極正しいのでありますよ!

「ショーン・オブ・ザ・デッド Shaun of the Dead」「ホット・ファズ Hot Fuzz」「ワールド・エンド The World's End」のエドガー・ライト監督によるコルネット・トリロジーや、相棒サイモン・ペッグとの何本目か既に分からんようになってるコンビ作にして、私が愛して止まない「宇宙人ポール Paul」(わたしゃこれが大好きなんだよ!家で何回再生したかわかんねぇぐらい何遍も見てるよ!)だけではなく、ピンでも様々な作品に助演したり主演したり製作に携わったりしている多才なニック・フロスト。

話がそれますが、彼のInstagramアカウントでは、たまに自作料理写真が投稿されるんですよね。どの料理も美味そうなんだわ、これがまた。日本時間でちょうど腹の減ってくる夜中の時間帯に料理写真投稿攻撃かまされたひにゃ、見たことを後悔します(笑)。イギリス料理は不味いと信じている人はいまだに多いと思うのですが、少なくともニックの手料理の数々は本当においしそうです。そして、カロリー上限といったことにも全く気を使っていないことが窺えます(泣笑)。彼が食べることを愛しているのが伝わってきますね。ニックのそういうところも好きです。

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そして個人的な経験からすると、料理が好きな人というのは、多くが器用な方です。今作を見て、心の底からニック・フロストという役者さんの器用さ、サルサによって徐々に変わっていく精神、肉体のキレまできっちり可視化した才能、サルサ・ダンスをあそこまでモノにしたど根性に感服しました。もちろん、ダブルのダンサーが吹き替えたシーンもあるでしょうが、ニックに関しては、その手のごまかしはあんまり使えなかったのでは?だって、ニックと同じような体型のサルサ・ダンサーてのもなかなかいないでしょうし(笑)。ラスト、Santo Vitoサルサ大会での、妹サムと25年振りに一緒に踊るシーン、本気で興奮しました。そう、本気のダンス・シーンも、ニックの体全体がきちんと見えるように撮影されていたために、私も何の躊躇もなく“こりゃホンモノだぁっ!”と思っちまったのですよ。裏にカメラワークの技術があるのは分かっていてもね。細かいことでしょうが、そういう演出の気配りって、役者に本物の努力を要求するけれど、その代わりギミックではないリアリティも生まれます。派手な映像に目を眩まされるばかりでなく、映画の裏側にある多くの人達の地味な努力に感謝しましょう。

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ブルースをいいように弄ぶドリューには、私のお気に入りアイルランド野郎クリス・オダウドが扮しました。散々アホアホ言いましたが、ファンです(笑)。女に手の早いニヤケ野郎を演じるのに、さてはダイエットしやがりましたね(笑)?こんな二の路線の役もイケるんですなあ。んがしかし、細いウェストはいただけませんな。普段の、ちょいポヨヨンとした腹を愛するわたくしが許しませんよ(笑)。ブルースとドリューが愛を捧げるジュリアには、ラシダ・ジョーンズが。素直でキュートなマドンナ役を嫌味なく演じておられました。この手の映画には欠かせない名脇役、ブルースの師匠ロン役で、本物のラテン系とみまごう濃いめのメーク(笑)のイアン・マクシェーンが貫禄を見せていました。初登場後しばらくの間、マクシェーンだと気付かなかったぐらい(笑)。ブルースの妹サム役で、場慣れしたというか、ちょいスレた感じの中年に差し掛かり気味(笑)女性を演じてくれたのが、私のアイドルの一人であるところのオリヴィア・コールマンさんです。格好良かった〜。ラストでは豹柄タイトミニドレス、ダンスの決めポーズでは美脚大披露で、思わず座席で正座いたしました私。ありがとう、ニック。ありがとう、オリヴィア。涙ちょもれそうになりました。ニックのダンスもオリヴィアのダンスも、信じられんぐらい格好良くてね。二人とも、踊っていない時とのギャップが良かったわ。ブルースの良き友人になるベジャンも、“本物のいい男”を完全に理解している慧眼の持ち主で(笑)気に入ったし。他の映画なら真っ先に編集でチョン切られそうな、彼らのような脇のキャラクターにもきちんと光を当ててくれる今作で、私は結構癒されたのでありますよ。


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