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zoom RSS 摩天楼は映画館。―第52回NY映画祭 The 52nd NY Film Festival!

<<   作成日時 : 2014/09/21 23:44   >>

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The movies on skyscrapers! This year's NY Film Festival will welcome the various great movies from all over the world!! 北米最大の映画祭がトロント国際映画祭だとしたら、9月26日から開催されるニューヨーク映画祭は北米で2番目に歴史の古い映画祭なのだそうです(笑)。

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アート志向の高い映画作家やヨーロッパ映画の近代主義がアメリカの映画産業に大きな影響を与えた結果、アメリカン・ニューシネマの潮流が沸き起こりました。そのさなかの1963年、世界でも有数の経済、文化、政治の中心地である街ニューヨークで産声を上げたこのニューヨーク映画祭(NY Film Festival)は、今も尚、国境を越えて世界中から選りすぐられたユニークで思慮深く、かつ枠組みに囚われない進歩的な映画を観客に提示し続けています。今年は9月26日から10月12日まで、新作映画や過去の名匠の作品の回顧展、映画人と観客のパネル・ディスカッションなどの面白い企画が連日開催される予定。たっぷり17日間、摩天楼が丸ごと映画の巨大スクリーンになるわけですね。毎年毎年、NY映画祭はそのラインナップと各部門賞の選出に独特の嗜好を示しており、オスカーの前哨戦云々といった狂騒から一歩距離を置いたスタンスが明らか。実はトロント同様、私が密かに楽しみにしている映画祭の一つです。

第52回NY映画祭公式サイト The 52nd New York Film Festival Official Site

・第52回ニューヨーク映画祭主要ラインナップ


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“Gone Girl” directed by デヴィッド・フィンチャー David Fincher
ギリアン・フリンの世界的ベストセラー小説の完全映画化作品。脚色もフリン本人が行った。現代アメリカ社会を象徴するような、健全で幸せで満ち足りた結婚生活を送っていたニック・ダンとその美しき妻エイミー。ところが、よりによって彼らの5年目の結婚記念日に、エイミーは忽然と姿を消してしまう。理想的な結婚に満足していたはずのエイミーがなぜ失踪したのか。彼女は自らの意思で姿を消したのか、それとも犯罪に巻き込まれたのか。捜査は迷走し、事件は謎が謎を呼ぶ展開を見せはじめ、アメリカ中のマスコミがこの事件に食いついた。警察は、この種の事件捜査の常套手段として、エイミーの最近親者、つまり夫のニックの事件への関与を疑っていた。
日々異常な過熱ぶりを見せるマスコミの違法取材と、警察からの圧力に耐えかねたか、ニックの言動が次第におかしくなっていく。その様子を世間は見逃さず、真実そっちのけで、彼が妻を殺害したのではないかという疑惑をさらに煽っていくのだった。

SNSの発達によって、マスコミだけではなく社会全体が不確かな情報の温床になってしまった。何事かが起こると、必ずどこかの哀れなスケープゴートが血祭りにあげられる。姿の見えない“大衆”がその野蛮な欲望を満足させるまで、スケープゴートはあらゆる方法で責め苛まれ、やがて全ての人権を剥ぎ取られる。そんな恐ろしい現代の魔女狩りを、何度も目撃してきた。この作品は、相互監視社会となった今の世の中の異常性を、妻の失踪の謎というミステリーに絡めて鋭く示唆している。社会の闇を独特の視点と手法で切り裂いていくフィンチャー監督の快作。

映画祭開幕上映作品、ワールド・プレミア開催(9月26日)


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“Inherent Vice” directed by ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
1970年のロサンジェルスを舞台にした、トマス・ピンチョンの同名小説の映画化作品。無頼漢の探偵ラリー・“ドック”・スポテッロは、元カノのボーイフレンドが失踪した事件を追っていく。当時のLAは、あの有名なシャロン・テート惨殺事件の容疑者として逮捕されたマンソン・ファミリーの裁判を巡り、大揺れに揺れていた。サイケデリック、フラワーチルドレン、ヒッピー。パラノイアとカオスが支配する世界へようこそ。

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アンダーソン監督の前作「ザ・マスター The Master」に続いて、ホアキン・フェニックスが主演。前作で演じた無頼漢とはまた趣を異にする、一癖も二癖もある探偵をどう演じるのか注目が集まっている。ジョッシュ・ブローリンが相棒のクリスチャン・“ビッグフット”・ビヨレンセンを演じる。

映画祭目玉作品の一つ、ワールド・プレミア開催(10月4日)


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“Birdman or The Unexpected Virtue of Ignorance” directed by アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ Alejandro González Iñárritu
いまやキャリアは下り坂のアクション・ヒーロー役者リガンは、レイモンド・カーヴァーの作品“What We Talk About When We Talk About Love”を自ら戯曲化した舞台に立ち続けている。彼を苛むのは、一癖も二癖もある仲間たちだけではない。かつて彼を本物のヒーロー“バードマン”として有名にした、彼自身の特殊能力とヒーローとして再び喝采を浴びたいという抗いがたい誘惑に、彼は打ち勝たねばならないのだ。
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の作品は、いつでも人間の業をドラマティックにパワフルに生々しい手触りそのままに突きつけてくる。そのイニャリトゥが、なんとスーパーヒーローものを手がけたと聞いて、驚いた人は少なくないはずだ。だがストーリーを見る限り、ブラックでハードな笑いをあちこちにまぶしつつ、人間ドラマとしてもかなり面白そうな、一筋縄ではいかない作品に仕上がっているようだ。

映画祭閉幕上映作品(10月11日上映)


“CITIZENFOUR” directed by Laura Poitras
一世を風靡した感のある“告発者”エドワード・スノウデンに密着し、その素顔と怒涛の人生を逐一フィルムに収めたドキュメンタリー。
特別上映作品、ワールド・プレミア開催(10月10日、11日上映)


“’71” directed by Yann Demange
ベルファストで突如トラブルに巻き込まれ、丸腰で敵の陣地に囚われの身となった男。誰が敵か誰が味方か分からなくなっていく。
9月27日、9月28日上映。


“Beloved Sisters” directed by Dominik Graf
ドイツの詩人フリードリヒ・シラーと、彼を同時に愛した2人の良家の子女シャーロットとキャロライン姉妹が三角関係に陥る。3人の共生の行方は。
北米プレミア開催(9月30日、10月1日)


“The Blue Room” directed by マチュー・アマルリック Matheu Amalric
ジョルジュ・シムノンの犯罪小説の映画化作品。田舎のホテルの一室“青い部屋”で出会った一組の男女が辿る、予想も出来ない運命とは。
北米プレミア開催(9月29日、30日上映)


“Clouds of Sils Maria” directed by オリヴィエ・アサイヤス Olivier Assayas
中年に差し掛かったもう若くはない女優マリアと、彼女の若きアシスタント、駆け出しの若い女優の関係。
アメリカ・プレミア開催(10月8日、9日上映)


“Eden” directed by ミア・ハンセン=ラヴ Mia Hansen-Løve,
1990年代初期、フランスのレイヴ・シーンのDJの先駆者となったハンセン=ラヴ監督の実弟スヴェンの実体験に基づいた作品。
アメリカ・プレミア開催(10月5日、7日上映)


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“Foxcatcher” directed by ベネット・ミラー Bennett Miller
ペンシルヴァニアの億万長者ジョン・E・デュポンは、地元に自らの家名を冠したレスリングのナショナルチームを作ろうと計画。レスリング競技のアメリカ・チャンピオンであるデイヴとマーク・シュルツ兄弟をスカウトしてきた。ところがこの3者の間に奇妙な緊張関係が生まれ、それはやがて信じられない悲劇を引き起こす。典型的なアメリカン・ライフの裏側を描く作品。
10月10日、11日上映。


“Goodbye to Language / Adieu au langage” directed by ジャン・リュック=ゴダール Jean-Luc Godard
現在御年83歳、ヌーヴェル・ヴァーグ当事者の最後の生き残りであるゴダール監督はいまだ創作に意欲を失っておらず、新しい技術や表現方法をも常に貪欲に作品に取り入れている。43本目を数えるゴダール監督作品としては初の3D映画であり、先にお披露目されたカンヌでも驚きをもって迎えられた。そのカンヌ招待作品の中で、唯一ニューヨーク映画祭にも招待された貴重な一作である。
9月27日、10月1日上映。


“Heaven Knows What” directed by Josh & Benny Safdie
ハーレイはイリヤを死ぬほど愛している。だがイリヤの方はハーレイを気遣い、彼女に愛情を示す余裕がなかった。二人ともヘロイン中毒で、仕事もなく、一日の大半をヤクを探してニューヨークの街中をさすらい、ケンカばかりしている。綱渡りのような不安定な彼らの未来は。
アメリカ・プレミア開催(10月2日、10月5日上映)


“Hill of Freedom / Jayuui Eondeok” directed by Hong Sang-soo
山間部からソウルに戻ってきたクウォンは、彼女にプロポーズするために日本からソウルにやってきた日本人青年森からの手紙を受け取った。文化の違いと男女の心のすれ違いを描く作品。
アメリカ・プレミア開催(9月30日、10月8日上映)


“Horse Money / Cavalo Dinheiro” directed by ペドロ・コスタ Pedro Costa
2006年のコスタ監督の作品「Colossal Youth」の主役を演じ、ここ数年間のコスタ作品に欠かせない俳優Ventura。彼の心の内側を探求する旅は、忘却の彼方に封印されようとしていた彼自身の記憶を辿る旅であり、70年代半ばのカーネーション革命時に友人と決闘した過去をフィルム上に甦らせた。
アメリカ・プレミア開催(10月7日、10月8日上映)


“Jauja” directed by リサンドロ・アロンソ Lisandro Alonso
アロンソ監督初の時代劇(1870年代のお話)、初のオリジナル脚本を詩人にして小説家のファビアン・カサスと共同で書き上げたもの。デンマーク軍の技術者ガンナー・ディネーセンは、恋人と駆け落ちしてしまったティーンの娘を捜索する。彼が不思議な土地の旅で出会ったものとは。
アメリカ・プレミア開催(10月7日、9日上映)


“Life of Riley / Aimer, boire et chanter” directed by アラン・レネ Alain Resnais
アラン・アイクボーンのベストセラー小説「Relatively Speaking, Life of Riley」の映画化作品であり、アラン・レネ監督の遺作。英国の田舎町に住む3組のカップルは、彼ら共通の親しい友人が重病であると知った。
アメリカ・プレミア開催(10月10日、11日上映)


“Listen Up Philip” directed by Alex Ross Perry
駆け出しの小説家にして鼻持ちならぬ自信家、自意識過剰の芸術家気取り屋フィリップ・ルイス・フリードマンを巡る、可笑しくてどこかほろ苦い哀感を漂わせるお話。
10月9日、10日上映。


“Maps to the Stars” directed by デヴィッド・クローネンバーグ David Cronenberg
映画の都ハリウッドに魅せられ、毒された人間達―落ち目の女優ハヴァナ、売れっ子精神科医と子役スターの一家、成り上がるためなら何でも利用する運転手―の絶対零度の孤独を炙り出す。
アメリカ・プレミア開催(9月27日、28日上映)


“Misunderstood / Incompresa” directed by アーシア・アルジェント Asia Argento
著名なホラー映画作家ダリオ・アルジェント監督の娘として、生まれたときからショービジネス世界の裏側を見てきたアーシアが、多分に彼女自身の自伝的要素を込めて完成させた作品。1980年代のローマ、歌手の母親と俳優の父親の間に生まれた娘アリアは、共に忙しい両親に碌に構ってもらえない。芸能界という特殊な世界ゆえ、同世代の友達もおらず、一匹の大きな猫を相棒に毎日をやり過ごす。1人の多感な少女が成長していく姿を、ユーモアと大きな愛情をもって見つめるヴィヴィッドかつリアルな作品。
北米プレミア開催(9月27日、29日上映)


“Mr. Turner” directed by マイク・リー Mike Leigh
英国の著名な風景画家J.M.W.ターナーの伝記映画だが、単なる画家の一生をなぞるのではなく、芸術のあり方、創造とはいかなることかを解析した作品。完璧な光をキャンバスに移植することに執着し、芸術のために自身の家族ですらも犠牲にしたターナーの、問題山積みの1人の人間としての側面も描く。
10月3日、4日上映。


“NYFF52 Shorts Program 1” 短編映画特集1

In August (Jenna Hasse, 9分)
Young Lions of Gypsy (Jonas Carpignano, 16分)
Ophelia (Sergei Rostropovich, 12分)
Humor (Tal Zagreba, 5分)
A Paradise (Jayisha Patel, 14分)
Wu Gui (Jordan Schiele, 15分)
The Girl and the Dogs (Selma Vilhunen & Guillaume Mainguet, 15分)
9月28日、29日上映。


“NYFF52 Shorts Program 2” 短編映画特集2

Chlorine (Marcelo Grabowsky, 18分)
The Return (Yohann Kouam, 20分)
Hepburn (Tommy Davis, 6分)
La Estancia (Federico Adorno, 14分)
The Kármán Line (Oscar Sharp, 24分)
Crooked Candy (Andrew Rodgers, 6分)
9月28日、29日上映。


“Pasolini” directed by アベル・フェラーラ Abel Ferrara
イタリアが生んだ伝説的映画作家にして詩人、小説家、敬虔なキリスト教徒且つ筋金入りのコミュニスト、近代のイタリアにとって常に不都合な招かれざる客、それがピエル・パオロ・パゾリーニ監督の肖像である。この不世出の天才映画作家の最後は、しかし謎と不都合な真実と無念に覆われている。ニューヨークのインディペンデント映画界の雄、アベル・フェラーラ監督が、盟友ウィレム・デフォーにパゾリーニ役を託した伝記映画。
アメリカ・プレミア開催(10月2日、3日上映)


“The Princess of France / La Princesa de Francia” directed by Matías Piñeiro
父親の死後ブエノスアイレスに戻ってきたヴィクターは、ラジオ・プロダクション“Love’s Labour’s Lost”の準備のためメキシコに滞在する。その過程で、ヴィクターの恋人や不倫相手、仕事仲間や友人といった人間関係が拗れはじめる。製作が進むにつれ、現実と“Love’s Labour’s Lost”の作品世界が入り混じり、次第に両者の間の境界線が曖昧になり、現実が作品の主題そのものに摩り替わってしまう。
アメリカ・プレミア開催(10月5日、6日上映)
“The Old Man of Belem” directed by マニュエル・デ・オリヴェイラ監督短編同時上映。


“Saint Laurent” directed by Bertrand Bonello
現在日本でヒット中のイヴ・サン=ローラン伝記映画とは別の、同じ人物をテーマにした伝記映画だが、今作は伝記映画のルールや限界を打ち破ることに挑戦している。映画は、サン=ローランのデザイナー人生の中で最もワイルドで危険で不道徳であった時代(1967年から77年)の10年間にスポットライトを当てている。若き日のサン・ローランを演じるのは、容貌までも本人に似せて役作りをしたガスパール・ウリエル。老いたサン=ローランは、ヘルムート・ベルガーによって演じられる。
北米プレミア開催(9月30日、10月2日上映)


“La Sapienza” directed by Eugène Green
アレクサンドルとアリエノールは結婚後、長い間を共に過ごしてきたが、精神的に満たされているとはいえない倦怠期に入っていた。建築家のアレクサンドルは、昔からの夢だった、バロック時代の天才建築家フランチェスコ・ボローミニの著作に取り掛かることを決める。夫婦関係のリフレッシュも兼ね、アレクサンドルとアリエノールは連れ立ってボローミニの生誕地であるティチーノへリサーチ旅行に出かけた。そこで夫妻は、建築家を目指すべく留学することを望む青年と、その妹で兄を失うことを極度に恐れる娘に出会った。夫妻は兄妹に援助を申し出、友情を育む。風光明媚な景色と天才の創造した建築、そして若い兄妹との交流が、アレクサンドルとアリエノールの関係にも不思議な作用をもたらしていく。
アメリカ・プレミア開催(9月27日、28日上映)


“Tales of the Grim Sleeper” directed by Nick Broomfield
アメリカで最も野心的なケーブル局であるHBOが製作したドキュメンタリー。ロニー・フランクリン・Jrが2010年にロサンジェルスで逮捕されたとき、その罪状は複数の黒人女性を殺害したというものであり、ロサンジェルス警察は、ロニー逮捕が20年に及ぶ捜査の結果であると発表した。その4年後、ドキュメンタリー作家であるニック・ブルームフィールドは、ロニーをよく知る近所の人々、彼の友人、知人、そして連続殺人犯に殺された被害者の遺族にカメラを向けた。ロニー逮捕の信憑性を探るためである。ロスに住むアフリカ系アメリカ人と、ロサンジェルス警察の間には、今だに根深い人種差別の壁が存在していることが明らかになってくる。
10月6日、7日上映。


“Timbuktu” directed by Abderrahmane Sissako
私達はこの映画を通じて、マリの古都ティンブクトゥの特異な社会状況を体験することになる。ティンブクトゥでは、外国からやってきたイスラム教徒たちによって、スポーツや音楽を楽しむことを禁じられ、また女性は必ず顔を隠して生活するよう強制された。そんな、住民が息詰まる程徹底管理された街での抑圧が、人の心にどんな歪みをもたらすのだろうか。人が人を支配する恐怖を見つめるシサッコ監督の視線は、あくまで冷静沈着でどこまでも明瞭である。
アメリカ・プレミア開催(10月1日、2日上映)


“Time Out of Mind” directed by Oren Moverman
もしも私達に帰るべき家がなかったとしたら。この作品に登場する初老の男ジョージは、間借り人が追い出されたアパートの浴槽の中で眠っていた。屋外で眠るよりはるかにマシだったから。しかしアパートのメンテナンスにやって来た作業員によって、彼は浴槽から放り出され、身に着ける服や食べ物や飲み物、寝る場所を探してひたすら街をさまよう暮らしに戻った。忙しない都会の喧騒は、孤独で寄る辺ないジョージを圧倒し、苦しめ、そこに居ることすら誰にも気付かれない程、ちっぽけで無為な存在であると思い知らせるのだった。
アメリカ・プレミア開催(10月5日、9日上映)


“Two Days, One Night / Deux jours, une nuit” directed by ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ Jean-Pierre & Luc Dardenne
『社会の秩序が安全に保たれるためには、いくつもの矛盾が社会そのものにしわ寄せされてくることを防ぐため、定期的に最下層の人間を切り捨て、不満の声を他所へそらすことが必要である』
ある小さな会社では昨今の不況のあおりを受け、従業員に支払わなければならないボーナスを捻出するために、従業員を1人辞めさせねばならなくなった。社長は卑怯にも、そのスケープゴートを従業員たち自身に選ばせたのだ。結果として、今会社をクビになっても、別の働き口を見つけられる可能性の高い若い女性従業員が犠牲になった。その女性は2日間、元同僚達を訪ね歩き、シングルマザーと幼い子供の生活を守るためにボーナスを諦めてもらえないかと、必死に説得してまわった。世界的に進んでいる社会の二極化は、今後益々酷くなる。いずれ全ての社会には、一部の支配階級と、彼らを支えるその他大勢の被支配階級だけしかいなくなるだろう。そして、ごく一部の支配階級を守るため、被支配階級のコミュニティーには、少ないパイの分け前を獲り合い、血で血を洗う闘争構造が出来上がるだろう。魔女狩りは中世に廃れたかもしれないが、社会の階級構造を守るため、姿を変えた魔女狩りは再び私たち庶民全員に襲い掛かるに違いない。
10月5日、6日上映。


“Two Shots Fired / Dos Disparos” directed by Martín Rejtman
新しい才能が次々と生まれている、活気溢れる南米映画界からまた一つ異能が誕生した。アルゼンチン発、まるで実存主義者の小説を紐解いているかのような、オフビートな不条理コメディ。16歳のマリアーノは、唐突に拳銃で自らの腹部と頭部を撃ち抜いた。しかしアンビリーバボーなことに、マリアーノはぴんぴんしている。彼の母親と兄は、マリアーノをマリアーノ自身から守ろうと必死になるが、兄はファースト・フード店の不機嫌なウェイトレスとの恋に走り、母親は何の前触れもなく見知らぬ男とフラッと旅行に出てしまう。1人取り残されたマリアーノはどうなってしまうのか。
アメリカ・プレミア開催(9月29日、30日上映)


“Whiplash” directed by Damien Chazelle
ニューヨークの音楽アカデミーで学ぶ、ジャズ・ドラマーを目指す学生と、生徒達に恐れられる程強烈な方法で彼らを鼓舞し、挑発し、時に罵り、彼らの才能を引き出していく教師の2人芝居。一対一で対峙する学生と教師の、“音楽教育”をテーマにした真剣勝負である。
サンダンス映画祭で絶賛され、審査員賞と観客賞受賞の二冠を達成した。ドラムを叩き続ける学生に扮したマイルズ・テラーと、“ジュリアード音楽院版フル・メタル・ジャケット”と評されたのも納得の強烈な教師を、スキンヘッドの強面で演じきったJ.K.シモンズの火花散る演技合戦が見もの。
9月28日、29日上映。


“The Wonders / Le meraviglie” directed by Alice Rohrwacher
カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品。イタリアで養蜂業を営む一家が、現代社会で昔ながらの伝統を守るために遭遇する出来事に、特に一家の長女であるティーンエイジャーのジェルソミーナが大きな影響を受け、大混乱してしまう。福祉事業の一環としてティーンの問題児を農場に迎え入れたり、テレビ番組に一家の養蜂業が取り上げられて、身辺がにわかに騒がしくなったり。伝統が現代社会で生き延びるために、文化も伝統も何もかもを全て“製品化”してしまう社会に迎合することに異を唱える作品。それと同時に、現代に生きる伝統
の毎日の儀式をまるでドキュメンタリーのように追い、そこにミステリアスな雰囲気をも醸し出す映像が魅力。
北米プレミア開催(10月3日、4日上映)


今年のニューヨークのラインナップは、一言で表現するなら、ズバリ“マニアック”です。だが、それがいい。いやむしろ、それでいい。映画通が泣いて喜ぶようなコアな作品選出は、作品がハリウッド的な意味でメジャーか否かを全く無視し、今現在勃興し始めている新しい映画の潮流を巧みに取り入れた結果だと思います。南米からは新しい才能が続々と発掘されており、混沌とした才能の原石たちは、活気溢れる南米の空気をそのまま反映しているかのよう。「Jauja」のリサンドロ・アロンソ監督もカンヌに引き続き、メインストリームで紹介されることになります。ニューヨークはトロントと違い、アジア映画界ではなく、南米映画界によりフォーカスしているようですね。


・第52回ニューヨーク映画祭回顧展 NYFF52 Retrospective

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ジョゼフ・L・マンキーウィッツ Joseph L. Mankiewicz:“因襲破壊主義者” Joseph L. Mankiewicz: The Essential Iconoclast

今年の温故知新企画は、ハリウッドの職人肌の映画監督だったジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督(1909年 - 1993年)。しかし彼は実のところ、因襲を打破しようとした革新派であり、反骨精神溢れる生き様を全うした人物でありました。そんな映画監督の一連の作品を上映。これは羨ましい。私もぜひ全ての作品をスクリーンで見直したいですなあ。

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