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zoom RSS ボクとおとんと時々おかん。ー「ネブラスカ Nebraska」

<<   作成日時 : 2014/03/06 10:40   >>

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今日は、家族を描かせたら当代随一のアレキサンダー・ペイン監督「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 Nebraska」のお話。

私がこの作品を映画館に見に来たとき、物凄い人が押し寄せていたんです。尚且つ、彼らの平均年齢が明らかに私よりも上でさ(笑)。なに?どどどどうしたの?!何かあるの?ちょっと怖いわとビビッていたんですが、結局私は、「マイティ・ソー/ダークワールド」はガラガラの入りだけど、「ネブラスカ」は満員御礼になる、そんなミラクル・マジカル・ワールドに住んでいるんだっちゅうことが分かりました(笑)。観客の平均年齢が上がれば、当然需要もそれなりに大人向けの映画になってきます。

洋画を日本で公開するにあたり、なかなか観客動員数が増えないと嘆いておられる宣伝マンさん方へ。今の日本の観客層は、あなた方がターゲットにしようと思っている層より、かなり上なのではないかと疑ってみてはいかがでしょうか。40代、50代、60代辺り。この観客層にアピールするような洋画を、彼らの興味を引くような形で宣伝できれば、状況は少し良くなるかもね。現に、私が「ネブラスカ」を見に来たとき話したおばあちゃんは、おそらく昔からかなりのシネフィルであったのだろうと推測できる方でした。本当に映画が大好きで、毎週末、アートシアター系の映画館を巡っているんだって。邦画だけじゃなくて洋画もたくさん観ると仰ってましたよ。こういう方々が思わず“おおっ!”と膝をのりだすような作品を配給したらどうでしょうかね。それと同時に、未来の映画好きを育成するような、映画紹介TV番組を作って欲しいです。私が何故映画好きになったかを思い起こすに、やっぱり子供の頃に、父ちゃんと一緒にテレビで金曜洋画劇場とか日曜洋画劇場を必死で観ていた経験があったからなんですよね。今の時代にそれが無理でも、せめて、新しく封切られる映画の見所を面白く紹介するテレビ番組がないとアカンのじゃないかなあ。

まあ、私も大概、爺ちゃんが旅する映画が大好きですが、この作品を観に来た皆さんもアレか、爺ちゃん萌え系の筋の人達なのかもしれませんや(笑)。なにはともあれ、映画館が繁盛するのは良いことです。ティーンエイジャーの子達もこぞって映画館に映画を観に来ないとダメだぞ(^o^)/!


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老父が、“あなたに100万ドルの賞金をプレゼントします!”という古典的な詐欺に引っかかり、しかも、それを本当のことだと信じ込んでしまった。彼は既に車の運転もおぼつかなくなっているほど体力が衰えているにもかかわらず、頑固に100万ドルを受け取りにネブラスカまで行くと言ってきかない。歩いてでも行くのだと、フラフラ徘徊しているところを保護されては、強制的に自宅に連れてこられるのを、父は純粋に不満に思っていた。彼は認知症の初期段階にあり、老人ホームに入れるのが妥当だと僕の兄も母も口を揃えるのだが、僕はそんな父が不憫でならなかったんだ。せめてもう少しの間夢を見させてあげたらどうだろう。それに、実際に宝くじの事務所まで行ってみて詐欺だと分かれば、父も納得するだろうから。
40にもなってガールフレンドに逃げられ良いところなしの僕も、長い人生の中で苦労の絶えなかった父も、同じように孤独と不運を囲つ仲間のようなものだ。僕は車を出し、幻の賞金を受け取りに行く旅に同行することにした。アル中でもある父から目を離すことは出来ない。世話をする人間が必要だし。それに、モンタナの父の自宅からネブラスカまでの途中には、父の故郷ホーソーンがある。道中そこに立ち寄ってみて、父の友人や親戚、知人に会ってみてもいい。

こうして、僕ら冴えない親子2人の車の旅が始まった。その先に、うんざりするようなトラブルが待っているとも知らずに…。

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「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 Nebraska」
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:ボブ・ネルソン
製作:アルバート・バーガー&ロン・イェルザ
製作総指揮:ダグ・マンコフ&ジョージ・パーラ&ジュリー・M・トンプソン
音楽:マーク・オートン
撮影:フェドン・パパマイケル
編集:ケヴィン・テント
出演:ブルース・ダーン(ウディ・グラント)
ウィル・フォーテ(デヴィッド・グラント)
ジューン・スキッブ(ケイト・グラント、ウディの妻)
ステイシー・キーチ(エド・ピグラム、ウディの昔の共同経営者)
ボブ・オデンカーク(ロス・グラント、デヴィッドの兄)

モノクロで捉えられるアメリカの原風景―まっすぐに伸びる道路と地平線をさえぎることのない畑、原っぱ、住む人間のいなくなった空っぽの家―が、セリフよりも雄弁に登場人物たちの置かれた状況を物語る。その思わずため息を漏らしたくなるような侘しい情景は、アメリカ社会の底辺近くで生き、社会を支え続けてきた大多数の白人の人生をも物語っているだろう。ウディもケイトも、彼らが故郷に残してきた多くの親戚や知人たちも、皆同じように、社会で一顧だにされることのないまま忘れ去られていく存在だ。そんな儚い“その他大勢”の人の生の中にも、父親と息子の間にほのかな絆が結ばれたり…と、小さな小さな喜びがある。そんな尊い一瞬をスクリーンに映し出した、愛すべき佳作だ。

中年を過ぎた観客には、悲喜こもごもの複雑な思いが胸に去来するに違いない。懐かしくも苦々しい、甘やかな郷愁以上に哀しみに惑わされる、さりとて簡単に切り捨てることもできない、遠いふるさとへの感慨。はたまた、親と子の間の愛憎入り混じる複雑な感情の揺らぎ。それらを、我が身に照らし合わせてしみじみと噛み締める、そんな映画だ。あなたも私も多かれ少なかれ経験のある、兄弟や親子、親戚連中といった厄介な存在との、何とも居心地の悪い関係を思い起こすに違いない。

カンヌ国際映画祭は、今作におけるブルース・ダーンの演技に男優賞を贈った。それに値する滋味深い名演であったと思う。寡黙で頑固でアル中で心の中を全く見せない、おまけに認知症の影響で現実と妄想の境界線が曖昧になりつつある男…。こんな、取りつく島もない状態の老父とその息子が、少しずつ少しずつ歩み寄り、理解し合うようになっていく過程が、観る者の“ああ、ああいうのあるある(苦笑)”という共感と共に丁寧に綴られていく。こんなことでもなければ知ることもなかった父の過去に触れたり、すったもんだの末にようやくポツリと漏らされた父親の本音を聞いて、息子は父親を初めて理解できたのだろう。派手さとは無縁のブルース・ダーンの演技だが、いつまでも心の隅にひっかっかったまま離れてくれない魅力を持っている。

そのブルースと共に、オスカーその他の映画賞にノミネートされ、大きな喝采で称えられたジューン・スキッブのパワフル婆ちゃんっぷりはいっそ天晴れである。登場した瞬間からマシンガンのごとき勢いでウディへの不満をしゃべりまくるのだ(笑)。息子の制止など気にも留めず、夫婦にとっての故郷ホーソーンにいる生き残りのジジイもおっ死んだジジイも、サル以下のアホばかりだと断じて高笑い。そりゃ旦那さんのウディは寡黙になるだろうし、酒に慰めを求めたくもなるわいなあと思わせる強烈なキャラクターを、しかし嫌味なくあっけらかんと魅せてくれる。彼女の存在感は、ウディを演じたブルース・ダーンとは好対照であり、ウディを照らす太陽のようにいつも輝いている。
そして、ウディの100万ドルのホラ話を真に受けて、ノーと言えないお人好しのウディにつけこんだ昔の共同経営者、親戚連中にとり囲まれてピンチに陥った際には、“お前ら全員くたばっちまえ!!!!”と一喝し、頼りないウディと2人の息子たちを救うのだ。いやはや、物凄いテンション。母は強し。見ていて胸がすく。ジューン・スキッブ一世一代の名演であった。

この物語のもう一人の主人公、デヴィッドはウディの次男坊だ。彼の優秀な兄は、鄙びた田舎出身の人間にしては珍しくローカルながらテレビ局に勤め、ニュース番組のキャスターになっている。だからちょっぴり都会風に洗練され、両親の生活からは距離をおいている。だがデヴィッドの方は、一応自立しているとはいえ婚期も逃し、パッとしない毎日だ。そのツイてない中年男のダメさ加減を、垂れ目にいつも困っているように見える情けな〜い表情で、ウィル・フォーテがホントにリアルに体現している(笑)。キョーレツな母親にはいつも力で押し切られ、自由気ままな父親には振り回され、要領のいい兄には面倒な仕事を押し付けられ、デヴィッドは生まれながらの苦労性男。しかし、そんな貧乏くじを引かされた彼だからこそ、ウディの複雑な内面に触れることができたんだろうね。ウディとの旅は、デヴィッドにとって父親を理解し、親子の絆を構築するための大切な道のりだった。ラスト、そんな父親のために彼が仕組んだちょっとしたアイデアは、ウディがこれまでの人生で舐めてきた辛酸を帳消しにはできなくとも、少なくともそれまでの苦労に報いるための“宝くじの賞金”となっただろう。

親子、あるいは知人や親戚同士で交わされる会話は、リアリティも伴って絶品だ。その可笑しさと愛しさと棘をも含んだ妙味は、映画を観ていた観客にも充分に伝わっていた。そこからあぶり出される人間関係の面白さは、洋の東西を問わず、また昔も今も変わることなく演じられる日常生活そのものだと思う。それら全てを包み込む美しいモノクロームの世界と、そこにそっと寄り添いながらほんの少しの感傷を加えた音楽は、最後の最後まで心地良さを感じさせてくれる。極力感傷を廃したドラマを、ドライなユーモアでくるんだ今作は、アレキサンダー・ペイン監督によって絶妙のバランスを保った作品となった。




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