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zoom RSS 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ Only Lovers Left alive」

<<   作成日時 : 2016/02/12 16:59   >>

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Only Jim Jarmusch's world left alive.......


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「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ Only Lovers Left Alive」(2013年)
監督:ジム・ジャームッシュ
製作:ジェレミー・トーマス&ラインハルト・ブルンディヒ
脚本:ジム・ジャームッシュ
撮影:ヨリック・ル・ソー
プロダクションデザイン:マルコ・ビットナー・ロッサー
衣装デザイン:ビナ・ダイヘレル
編集:アフォンソ・ゴンサウヴェス
音楽:ヨーゼフ・ヴァン・ヴィッセム
出演:ティルダ・スウィントン(イヴ)
トム・ヒドルストン(アダム)
ミア・ワシコウスカ(エヴァ)
アントン・イェルチン(イアン)
ジェフリー・ライト(ドクター・ワトソン)
スリマヌ・ダジ(ビラル)
ジョン・ハート(クリストファー・“キット”・マーロウ)
ヤスミン・ハムダン(ヤスミン)

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ Blu-ray
東宝
2014-06-18

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デトロイトのアンダーグラウンド・ミュージック・シーンでカリスマ的な人気を誇る謎に包まれたミュージシャン、アダム。彼の正体は永遠の命を生きる吸血鬼だった。とはいえ、人を襲うようなことはなく、血液も病院で高品質なものを手に入れていた。そんなある日、モロッコのタンジールに暮らす吸血鬼イヴがアダムのもとにやって来る。2人は何世紀も愛し合う恋人同士。久々の再会を喜び、2人で親密な時間を過ごす。ところがそこへ、イヴの妹で問題児のエヴァが突然転がり込み、彼らの運命は静かに狂い出す…。
ーallcinema onlineより抜粋

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ジャームッシュ監督の作品は、一見さんお断りなところがある。“見る人を選ぶ映画”という程捻くれてはいないはずなのに、どの作品も何となく常連さん向きな雰囲気を漂わせていて、継続して彼の映画を見ているわけではない遠いファンの足を、益々遠のかせているような気がする。

彼の映画に大ハマりするか、さもなければ全く食指が動かないか、映画好きを二つに分けてしまうタイプの映画作家なのかもしれない。白状すると、若い頃の私はジャームッシュ作品とはウマが合わなかった。あの独特の緩やかなリズムと、こちらの予想を裏切るタイミング外しの妙に、上手くのっかることができなかったのだ。しかしまあ、彼自身はそんな観客の思惑なんぞに拘る人じゃなかろうし、自分の映画を褒められようがけなされようが関係なく、あまり多くはないこれまでのフィルモグラフィーの中で、一貫して私小説的なプライベートな映画を撮ってきた。

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ヴァンパイア同志の永遠に続く愛の物語などと、どこの女子高生の妄想かと耳を疑うテーマの新作「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(長いので以下OLLAと省略)」でも、中身はやっぱり徹頭徹尾ジャームッシュ美学に染め上げられたクールな作品となっている。つまり、永遠の命を持ち、愚かなままの人間性を疎んじるスノビッシュなヴァンパイアたちの日常生活を覗き見しつつ、彼らの口を借りて、彼独自の哲学を開陳しているのだ。その話題は多岐に渡る。ニコラ・テスラをはじめとして、世界から誤解されてきた科学、芸術の分野における先駆者達への人間の愚行を批判し、魔女狩りに代表される異端者たちへの弾劾を切り捨て、いつまで経っても戦争をやめられず、近年ますます荒廃していく人間性を嘆き、真に美しいものに背を向け、退化していく人間をゾンビと呼んで憚らない。

「OLLA」は全体的には、鬱で自滅的なアダムの口を借りるまでもなくかなり悲観的なトーンで統一されていると思う。ただ、そんなジャームッシュ恨み節の中にも、彼自身が愛して止まないデトロイトの街の衰退を嘆くと同時に、イヴには“やがて活気と繁栄を取り戻す”と言わせたり、人間社会の停滞に倦み疲れ、自殺を試みようとしたアダムをイヴに叱りつけさせたり、逃亡先のモロッコで血液の供給方法を絶たれてピンチに陥っていても、街中の店で歌う無名ミュージシャンの中に真の才能の原石を発見してみせたりして、“最後の手段=自死”を先延ばしにする理由を、逃げ道として幾つか提示してみせている。そんなストーリーの流れが、どんよりと悲観一色に曇ることから映画を救っているともいえそうだ。

“まあ、不満を挙げればキリがないし、馬鹿な人間どもは益々馬鹿になる一方で救いようがないけれど、それでも、たった一つでもこの世界に美しいものがある限り、そこに私たちの生きる意味もあるのだ”と、最後には、やはりいつものジャームッシュ・リズムにゆぅらゆぅらと身体を揺らしながら考えを巡らせることになる。

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彼の映画には心地よい“余白”が必ずもうけてあり、私のように気が向いた時にふらっとやってくるだけの遠いファンにも、想像する余地と自由をふんだんに与えてくれる。それが、私には本当にありがたい。なんといっても、最近の映画ときたら、映像や音や主張や信念やらが、やたら隙間なく詰め込まれた作品ばかり。想像することすら許されないのだから。まるで映画館の椅子に手足を拘束された状態で、2時間たっぷり五感を痛めつける騒々しい映画を観せられる拷問のようだな。今日び、映画の余白に自分の想像を描き込む自由は、大変な苦労をして勝ち取るものになってしまった。
…私が「OLLA」をむしろ盤で半永久的に手元に保存しておきたいと願うのは、多分にそのせいだろう。五感を破壊する勢いでジェットコースターに乗る映画流行りの今だからこそ、ジャームッシュ作品のゆるやかな世界にゆったりと横たわり、自由奔放な想像の羽を伸ばすことで、一息入れたいのだ。作品レビューするのが大変難しい映画監督ベスト3に入る(笑)ジム・ジャームッシュ監督だが、今作は今までの彼の作品の中では最も磨き上げられた美意識を鋭く感じると共に、個人的に最も気に入った作品ともなった。

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永劫の時を生きる吸血鬼を、人間とその文明についての観察者とした発想がとにかく面白い。人類の歴史の全てを見てきた彼らだからこそ言える、人間の愚行、衰退していく文明への厳しい批評の言葉は、いずれも真実を突くものの、しかし虚しくも聞こえる。なぜなら、彼ら吸血鬼が如何に肉体的にも知性にも秀でた生き物であろうとも、進化しようとしない愚かな人間を忌み嫌おうとも、彼らとて人間の生き血がなくては生きてゆけない脆弱な存在だからだ。この辺りのジレンマは、“人間”の存在そのものに怒りを隠さないアダムを、それを今更咎め立てしても仕方ないではないかと諌めるイヴの、半ば諦めにも似た言葉によく現れているだろう。
また、アダムとイヴ共通の知己であり同じ吸血鬼のクリストファー・“キット”・マーロウが、歴史の表舞台では最後の最後まで人間達の政治に翻弄された挙句、その後は誰からも見つからぬよう身を隠して生きざるを得なかった悲劇。いくら、世界中の人間から世紀を超えた今も尚愛される“シェイクスピア”として、その偉大な作品群を歴史に残し得たとはいえ、他でもない人間達の汚染された血液を飲んで死に至る最期の皮肉ときたら、哀れさえ誘うではないか。
彼ら吸血鬼達の抱えるアンビバレンスは、アダムとイヴが最後まで守ろうとした自尊心(多分に排他的で利己的な)を遂にかなぐり捨てた、見ようによっては哀しくも映るラストシーンにも現れる。ジャームッシュ監督もいわゆる“ゾンビ”の一人には違いないのだから、あのラストには、“それでも生きよう”とする前向きさも込められているのでは、とする感想も分からないではないのだが、うーん…私には何とも言えないなあ。

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ラストシーンにおける“究極の選択”は、ポジティヴでもあるかもしれないし、脆弱なようで、しかし、さすがは何世紀にも渡ってしぶとく生き抜いてきた連中だけあり、最後は研ぎ澄まされた“本能”のままに生きようとする図太さも感じられる。だが私が感じた感情の大半は、本編を何度か観た後でも、“ここに欲しいものはないね”というアダムの捨て台詞が象徴する“絶望と恐怖”だ。
これから新たに“水”を巡る戦争を始めるに違いない人類=ゾンビ達の未来を予見しつつ、今後ますます熾烈になっていくであろう“生き残るための戦い”を暗示しているのだから。…エレガントにして誇り高く、美しくも儚い彼らが、それらすべての美徳をかなぐり捨て、野生を剥き出しにその戦いに臨まねばならないのかと思うと、私は哀しい。

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何事にも悲観的で否定的な傾向のアダムは、何百年生きていても危なっかしくて世話のかかる“ろくでなし(マーロウ談)”だ。そのアダムを、それこそ何百年にも渡って母親の愛情で包みこんできたイヴ。アダムが影ならイヴはそれを照らそうとする光だろう。永劫の命を生きるということは、実は大変に難しく、また恐ろしいことだ。大抵の人間は、よくよく考えもせずに“永遠の若さと命”に憧れるものだが、私は嫌だな。限りある命だからこそ何ものにも勝る美しい瞬間があるのだし、人生に限りがあるからこそ、試練にも耐えられるわけであって。たった一人で何世紀もの長い長い時間を孤独に生きていくなんて、とてもじゃないが私には無理だ。アダムもイヴも基本的にはそうだろう。時に挫けそうになるアダムをイヴが叱咤激励しつつ、また逆も然りで、2人は共に支え合って生きてきた。2人でいたからこそ、“生き残って”これたのだと言い換えてもいい。

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この作品のベースは、共に風変わりな存在であるアダムとイヴの永きに渡る愛情の物語だ。彼らのやり取りを見ていると、長く続くパートナーシップを築くために必要なのは、お互いの良いところも悪いところも全て受け入れることであるなあと痛感する。友達であれ恋人であれ夫婦であれなんであれね。相手の長所短所をジャッジするのではなく、ただただ受け入れることが重要。若い人達にもこの映画をお勧めする理由は、まだ若い年齢のうちにジャームッシュの美学や哲学に触れると良い刺激を受けるから…ということだけではなく、アダムとイヴに象徴される、人と人との関係性(吸血鬼だけどね)の理想論にも思いを巡らせて欲しいと思うからだ。

確かに、ジャームッシュ監督のことを何も知らないで、また、シェークスピア周辺の英国文壇史や世界中の音楽情報に疎かったらば、映画の内容をよく理解できないのではないかと危惧する人もいるかもしれない。本編中に散りばめられた隠喩や言葉遊び、あるいは時には楽屋オチ的な逸話を拾っていくのは、宝探しにも似て、やはり愉快な作業だから。でも、事前の情報なしのまっさらな状態で観ても充分楽しめるし、却って全く違う観点からこの作品を紐解けるのではないだろうか。とにかく、自分の想像力を駆使すればいい。ジャームッシュ監督の作品はどれも、“こういう風に観なさい!”という押し付けがましさとは無縁だ。観た人が自由に発想し、自由に連想し、自由に想像を飛躍できる充分な余地がある。私達はそれぞれのビジョンで彼の映画を満喫し、解釈を己の色に染めていけば良いのだと思う。それこそが、ジャームッシュ作品の最大の魅力なのだ。

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明白なストーリーと呼べるものもない、吸血鬼の日常生活の一コマを切り取った「OLLA」。尤も、吸血鬼のお話だけに、本編ほぼ全てが夜のシーンである。だがジャームッシュが描く夜の闇はちっとも怖くない。古くとも上等なベルベットを広げたような手触りの良さで、むしろ思わず安堵してしまうのだ。その夜の闇に心地良く沈んで胎児のように身を丸め、まどろんでいたのに、イヴの悪名高き妹エヴァの乱入によってその安寧がかき乱される。夜のデトロイトの荒廃から夜のモロッコの混沌へ、追われるように逃げ込む2人の吸血鬼。モロッコの夜はデトロイトのそれとは異なり、どこからか嗅いだことのないような強い香りが漂ってくるような、原色の色彩を裏に隠した闇の色だ。なんとはなく攻撃的で、そわそわと不安を掻き立てられる。ここに永遠の巣を作ることは無理かもしれない…。

こんなお話が映画として成り立つためには、吸血鬼を演じる役者さんたちの佇まいによっぽど説得力がなければだめだろうね。その点、アダムとイヴを演じたトム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンも、どこか浮世離れしたイメージにぴったりで出色だった。
もちろん、老いて尚やんちゃで子供のように可愛らしいイメージのマーロウを、ご本人の素の魅力そのままに演じたジョン・ハートも相変わらず魅力的。余談だが、マーロウとイヴがモロッコの海辺で語り合うシーンでの、彼の“ボケ”演技には吹き出した(笑)。あれは演出なのか、はたまたアドリブなのか。この作品のあちこちに、こんな風に、ストーリーのタイミングを絶妙に外すユーモアが見られる。
「イノセント・ガーデン Stoker」の女の子をもっとあからさまにビッチにしたような(笑)、現実世界では出来れば友達になりたくないタイプの困ったちゃんエヴァを演じたミア・ワシコウスカも、さすがの存在感と演技力で見事だったと思う。

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音楽の選曲センスの良さは、今更改めて指摘するまでもない。個人的には、アダムがデトロイトの自宅で作曲していた葬送曲がA Perfect Circleっぽくて非常に気に入ったので、いつかサントラ盤もリリースして欲しいと願うばかり。

Only Lovers Left Alive
Fklg
2014-02-20
Original Soundtrack

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サントラ盤リリースされています!繰り返し聴くほどに癖になるサントラです。

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