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zoom RSS 「アメリカン・ハッスル American Hustle」でハッスルハッスル(違)。

<<   作成日時 : 2013/12/15 01:29   >>

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先の記事でご紹介したニューヨーク映画批評家組合賞で、作品賞、脚本賞、助演女優賞(ジェニファー・ローレンス)を制したのが「アメリカン・ハッスル American Hustle」(ハッスルhustleは“不正な金儲け、詐欺行為”の意味)でした。そして、前の記事で一覧をご紹介した第71回ゴールデン・グローブ賞でも「それでも夜は明ける 12 Years A Slave」(気持ちは分かるけど、まるで演歌のタイトルみたいな邦題です)と並んで最多7部門でノミネートを受け、俄然映画賞レースを賑やかにかき回してくれています(笑)。

いい感じだなあ。こんな風に元気があって、威勢のいい映画で盛り上がるのも好きですわ。奇しくも、この作品の舞台となる1970年代後半のアメリカにあった、あの独特な色気と活気と退廃がない交ぜになったような雰囲気を、映画そのものが発散していますよね。

アメリカの映画サイトや評論家の方々の反応を見ていると、オスカーに向けてハリウッド内の空気の流れが変わってきているのを感じます。トロント国際映画祭で最高賞を受賞し、アカデミー賞のフロントランナーと目されていた「それでも夜は明ける」に対しては、映画としての完成度、激しいエモーションを容赦なく叩きつける作品のインパクトに一定の敬意を払っているものの、アメリカの歴史の中でも一番触れて欲しくない恥部を暴く内容が、アカデミー賞を前にして、この作品を無条件に支持することを躊躇させている要因になっているのかもしれません。人間の尊厳を踏みにじる行為自体は、何も奴隷制度の頃だけのお話ではなく、今も形を変えて平然となされているのが現実です。だからこそ、「それでも夜は明ける」の描くテーマは、今もなお普遍性を持っていると言えるのですがね。しかしまあ、それをこの大国に突きつけてみたところで、“世界の警察”というワケのわからん理屈を盾に頑として認めないでしょうし、どうにもなりゃしませんわね。

停滞した自国の経済を活性化させるために、はたまた、ライバル国を打ちのめすためだけに、戦争を起こしたくてウズウズしている狂人達が国政をつかさどる、この恐ろしい世界。これが、今現在私達が生きなければならない世界の全てです。

話を元に戻しますと、結局、アメリカ人が一番嫌いなテーマを口の中にねじ込まれるがごとき「それでも夜は明ける」より、よく考えたらこれもアメリカの政治史の中の大きな恥部には違いないが、映画が扱う史実を知っている人があまりいない「アメリカン・ハッスル」の方が、アメリカ人にとっては共感しやすいという事情もあったと思います。「アメリカン・ハッスル」が描く、アメリカ政治史における一大スキャンダル“アブスキャム事件”では、その捜査過程に多大な問題はあったにせよ、最終的にFBIによって、汚職に染まった悪徳政治家どもが芋づる式に逮捕されました。私達が大好きな“正義”の鉄槌が、非常にわかりやすい形で下されたわけです。もし、あなたや私がアメリカ人だったなら、同胞であるアメリカ人によって成された善行の映画の方を支持したくなるのは人情でしょう。

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「アメリカン・ハッスル American Hustle」
監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本デヴィッド・O・ラッセル&エリック・ウォーレン・シンガー
製作:チャールズ・ローヴェン他。
製作総指揮:マシュー・バドマン&ブラッドレイ・クーパー&ジョナサン・ゴードン&ジョージ・パーラ&エリック・ウォーレン・シンガー
撮影:リヌス・サンドグレン
音楽:ダニー・エルフマン
美術:ジュディー・ベッカー
衣装:マイケル・ウィルキンソン
編集:アラン・バウムガーテン&ジェイ・キャシディ&クリスピン・ストラザース
出演:クリスチャン・ベール(アーヴィング・ローゼンフェルド)
ブラッドレイ・クーパー(リッチー・ディマソFBI捜査官)
エイミー・アダムス(シドニー・プロッサー)
ジェレミー・レナー(カーマイン・ポリート市長)
ジェニファー・ローレンス(ロザリン・ローゼンフェルド)
ロバート・デ・ニーロ(ヴィクター・テレージョ)
ルイス・C・K(ストッダード・トールセン)
マイケル・ペーニャ(パコ・ヘルナンデス)
ジャック・ヒューストン(ピート・ムセイン)
エリザベス・ローム(ドリー・ポリート)
エリカ・マクダーモット(アディー・エイブラムス)
メリッサ・マクミーキン(サブリナ)
コリーン・キャンプ(ブレンダ)
アレッサンドロ・ニヴォラ(アントニー・アマード)
Saïd Taghmaoui(アーヴィングが仕立てた囮捜査官、アラブの族長という触れ込み)
トーマス・マシューズ(フランシス・ポリート)他。

公式サイトはこちら

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アメリカの映画評論家の多くは、現在、「アメリカン・ハッスル」の方をアカデミー賞のフロントランナーだと認識しているようです。この快進撃を見ていて思うのは、コミカルな味付けの作品で、…もっと言えば“コメディ映画”と分類されるような作品で、アカデミー賞の作品賞を狙えるのかどうかということですね。
従来なら、やはりオスカーの威信に賭けても、最高峰の賞たる作品賞を与えられるのは、重厚で真面目な作品に限るという伝統を破ることが出来ませんでした。演技部門や監督賞は受賞する可能性はあってもね。「アメリカン・ハッスル」が、“体裁はコメディ映画でも、現代社会が抱える諸問題について極めて賢いやり方で問題提起したり、社会の非についてはごくスマートに風刺したりすることが可能なのだ”と証明できれば、これからのアカデミー賞は、ジャンルの垣根も飛び越え、シリアスな映画同様にコメディ映画にも広く門戸を開くようになるのではないでしょうか。

今年のゴールデン・グローブ賞で、日本のアニメ映画「風立ちぬ」がもはやアニメ映画の枠ではなく、他の実写映画と並んで“外国語映画賞部門”にノミネートされた現象には、私達が考える以上に重要な意味が含まれています。これと同じ意義、同じ使命を持っているのが、実は「アメリカン・ハッスル」なのです。つまり、“ジャンルに拘らず、最も出来の良い映画に最も相応しい賞を与える”という、賞選出時におけるジャンルの束縛を打ち破る使命でありますね。

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「ザ・ファイター」でも「世界にひとつのプレイブック」でも、複数の役者さんによる上質のアンサンブル演技をまとめることに、一際演出の冴えを見せたラッセル監督らしく、今回も、意外な俳優を意外な役柄に配置して、面白いケミストリーを生み出しているようです。

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画像向かって右側が、“アメリカン・ハンサム”なブラッドレイ・クーパー。左側がみんな大好き「アベンジャーズ」のホークアイ。…説明されなければ、誰が誰だかわからんようになっていますね(笑)。ブラッドレイの方は、実際にカーラーで髪を巻いて作り上げた天然パンチパーマで、思い通りにならないとブチ切れる危ない男を熱演し、ジェレミーは、数十年前に確かに大流行だったリーゼントで、小者感たっぷりの悪徳政治家(笑)役が妙に板についていますし。

今作では、70年代のアメリカという特殊な時代背景を演出するため、役者さんたちは皆、ビッチでグラマラスな“ザッツ・70's・ショー”的衣装に身を包んでおられます。ヘアスタイルもメイクも、この時代に最先端だったセクシーなもの。これらの力を借りた役者さんたちは、まるで70年代にタイムスリップしたかのような爛熟したイメージを体現していますよね。

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天才詐欺師だったアーヴィングの正妻ロザリンを演じるジェニファー・ローレンスも、演じる役柄より本人の年齢が大幅に下であるにもかかわらず、夫に浮気され、自らの立場に絶望した女を雰囲気たっぷりに演じています。

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「魔法にかけられて」では、お姫様なのに妙に老けた雰囲気で、ちょっぴり痛々しい印象のあったエイミー・アダムスは、「ザ・ファイター」ではリアルな場末感に溢れた酒場女に変身し、はたまた「ザ・マスター」では、良妻賢母の仮面を被りながらも影で夫を完全に操るマクベス夫人のような恐ろしい女に変貌。そのカメレオン役者振りは、地味ながら彼女の俳優としての実力を充分に証明するものでした。今回はグラマラスなドレスに身を包み、アーヴィングの愛人に扮してセクシー・オーラをこれでもかとアピール。今までの彼女にはなかったタイプの役柄ですね。彼女が演じるシドニーは、ただ単にエロいというだけではなくビジネスの才覚もあり、アーヴィングのビジネス・パートナーとしても“デキるセクシー美女”っぷりを見せてくれるというのですから、儲け役でしょう。

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詐欺でしょっ引かれたアーヴィングは司法取引を行い、リッチー・ディマソFBI捜査官の囮捜査作戦への協力を引き受ける羽目になります。アーヴィングとは正妻ロザリンを挟んで三角関係にあるため、シドニーはいつの間にかリッチーにも惹かれていくわけですね。アーヴィングとリッチーという対照的な2人の男性の間で揺れ動くオンナ心も垣間見せ、エイミーはGG賞の主演女優賞(映画コメディ・ミュージカル部門)にノミネートされました。

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もう一人の主役、詐欺師アーヴィング役には、体重の増減だけでなく髪型から顔の輪郭まで変えていくカメレオン役者クリスチャン・ベイルが扮します。ブルース・ウェイン役の彼を見て惚れたファンの方々には辛いルックスに見えるかもしれませんが、いい感じですよ、これ(これって・笑)。「シンドラーのリスト」のときのレイフ・ファインズを上回るボテ腹が、トトロを連想させてわたしゃ大好き(笑)。上目遣いで愛人を見上げる視線だとか、正妻と嵐のような夫婦喧嘩をしているときのぶてくされた表情とか、本当は、見た目の派手な変化ではなく、細かい表情の変化で演技に繊細な陰影をつける役者振りがクリスチャンの本領です。今回のGG賞への主演男優賞へのノミネートは、その辺りが評価された結果なのかなと思いますね。


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『ダイジョブ、ダイジョブ!この作品ではだいぶ太ったけど、今頑張って痩せてるところだから!それより「アメリカン・ハッスル」を日本のミナサンも楽しんでクダさいね!』


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