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zoom RSS 今年のゴールデン・グローブ賞ノミネートは、若干偏っている?追記。

<<   作成日時 : 2013/12/13 00:07   >>

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再追記::「それでも夜は明ける」について、自分でキャプチャした画像を追記しておきました。

つい先ほど、第71回目を迎えるゴールデン・グローブ賞のノミネートが発表されました。このリストをざっと見た限りでは、今年のゴールデン・グローブ賞は“自分達が本当に好きな作品を正直にチョイスした”という傾向が一層強まった印象を受けます。先頃ここでも取りあげたナショナル・ボード・オブ・レビューもそうのですが、この2つの映画賞のリストには、他の映画賞では選考から漏れていた作品や映画人の名前も多く見られ、私などはとてもフレッシュなチョイスだと感じたのですけどね。

先日の記事でも書きましたが、今は一つの作品が、作品賞も監督賞も主演男優/女優賞も何もかも独占するという時代ではありません。映画界が慢性的なアイデア不足、才能不足、経済停滞に苦しみ、卓越した名作を生みだせないという事情ももちろんあるのですが、私自身はむしろ、これまで一箇所に集中していた映画界の才能が、世界各地に分散し始めているせいでは、とも考えています。というより、映画界がハリウッドだけで成り立つ業界ではなくなり、世界各地に点在するエンタメ市場、エンタメ業界も全て含んだ上での大きな意味での“映画界”に変貌しつつあると表現すべきか。ハリウッドはあくまでも、その大きな映画界の中の一角に過ぎなくなっているということです。

それなら、アカデミー賞で、各部門ごとに受賞する作品が違ってくるという現象も、なんとなく納得できるような気がします。それは必ずしも悪い意味ではなくて、クオリティーが拮抗した良作がたくさんあり、それぞれの作品に異なる個性が備わっているから、また、作品を吟味する審査の目だってそれぞれ嗜好が異なるのだから、一概に“この作品が全て一番!”とは言えない状況なのかもしれませんでしょ?どの作品にも、それぞれが最も優れた部分の分野の賞を与えられるべきだ、という考え方が既に浸透しているのでしょうかね。個人的には、それはとても健全な風潮ではないかと思います。

まあ、アメリカの映画サイトの中には、アメリカで人気のある作品のいくつかがリストから外されたこともあり、“選考が幾分偏っているのでは?”と意地の悪い見解も見られます。また、“どうせ今年もゴールデン・グローブ賞の結果なんぞ、オスカー本番には影響しないだろうよ”と断定する意見も。だったら、外国人記者クラブの面々がどのような作品を評価しているのか、つまり、アメリカ人以外の、ハリウッド人種以外の世界中の観客が本当はどんな作品を好んでいるのか、その傾向を知る重要なチャンスだと思って、GG賞の結果を待つことにしましょう。

ゴールデン・グローブ賞授賞式は、ティナ・フェイ&エイミー・ポーラーの女傑コンビ(笑)を再度司会に迎え、1月12日に行われます。


第71回ゴールデン・グローブ賞ノミネート・リスト


・作品賞(映画ドラマ部門) BEST MOTION PICTURE – DRAMA
それでも夜は明ける 12 Years a Slave
キャプテン・フィリップス Captain Phillips
ゼロ・グラヴィティー Gravity
あなたを抱きしめる日まで Philomena
ラッシュ/プライドと友情 Rush

・主演女優賞(映画ドラマ部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A MOTION PICTURE – DRAMA
ケイト・ブランシェット Cate Blanchett, “Blue Jasmine”
サンドラ・ブロック Sandra Bullock, “Gravity”
ジュディ・デンチ Judi Dench, “Philomena”
エマ・トンプソン Emma Thompson, “Saving Mr. Banks”
ケイト・ウィンスレット Kate Winslet, “Labor Day”

・主演男優賞(映画ドラマ部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A MOTION PICTURE – DRAMA
チュイテル・エジオフォール Chiwetel Ejiofor, “12 Years a Slave”
イドリス・エルバ Idris Elba, “Mandela: Long Walk to Freedom”
トム・ハンクス Tom Hanks, “Saving Mr. Banks”
マシュー・マコノヒー Matthew McConaughey, “Dallas Buyers Club”
ロバート・レッドフォード Robert Redford, “All Is Lost”

・作品賞(映画コメディ・ミュージカル部門) BEST MOTION PICTURE – COMEDY OR MUSICAL
“アメリカン・ハッスル American Hustle”
“Her”
“Inside Llewyn Davis”
“ネブラスカふたつの心をつなぐ旅 Nebraska”
“ウルフ・オブ・ウォール・ストリート The Wolf Of Wall Street”

・主演女優賞(映画コメディ・ミュージカル部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A MOTION PICTURE – COMEDY OR MUSICAL
エイミー・アダムス Amy Adams, “American Hustle”
ジュリー・デルピー Julie Delpy, “Before Midnight”
グレタ・ガーウィグ Greta Gerwig, “Frances Ha”
ジュリア・ルイス=ドレイファス Julia Louis-Dreyfus, “Enough Said”
メリル・ストリープ Meryl Streep, “August: Osage County”

・主演男優賞(映画コメディ・ミュージカル部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A MOTION PICTURE – COMEDY OR MUSICAL
クリスチャン・ベイル Christian Bale, “American Hustle”
ブルース・ダーン Bruce Dern, “Nebraska”
レオナルド・ディカプリオ Leonardo DiCaprio, “The Wolf of Wall Street”
オスカー・アイザック Oscar Isaac, “Inside Llewyn Davis”
ホアキン・フェニックス Joaquin Phoenix, “Her”

・アニメーション映画 BEST ANIMATED FEATURE FILM
“The Croods”
“Despicable Me 2″
“Frozen”

・外国語映画 BEST FOREIGN LANGUAGE FILM
“アデル、ブルーは熱い色 Blue is the Warmest Color”
“The Great Beauty”
“偽りなき者 The Hunt”
“The Past”
“風立ちぬ The Wind Rises”

・助演女優賞(映画) BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A SUPPORTING ROLE IN A MOTION PICTURE
サリー・ホーキンス Sally Hawkins, “Blue Jasmine”
ジェニファー・ローレンス Jennifer Lawrence “American Hustle”
ルピタ・ニョンゴ Lupita Nyong’o, “12 Years a Slave”
ジュリア・ロバーツ Julia Roberts, “August: Osage County”
ジューン・スクィブ June Squibb, “Nebraska”

・助演男優賞(映画) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A SUPPORTING ROLE IN A MOTION PICTURE
Barkhad Abdi, “Captain Phillips”
ダニエル・ブリュール Daniel Brühl, “Rush”
ブラッドリー・クーパー Bradley Cooper, “American Hustle”
マイケル・ファスベンダー Michael Fassbender, “12 Years a Slave”
ジャレッド・レト Jared Leto, “Dallas Buyers Club”

・監督賞(映画) BEST DIRECTOR – MOTION PICTURE
アルフォンソ・キュアロン Alfonso Cuaron, “ゼロ・グラヴィティー Gravity”
ポール・グリーングラス Paul Greengrass, “キャプテン・フィリップス Captain Phillips”
スティーヴ・マックィーン Steve McQueen, “それでも夜は明ける 12 Years a Slave”
アレクサンダー・ペイン Alexander Payne, “ネブラスカふたつの心をつなぐ旅 Nebraska”
デヴィッド・O・ラッセル David O. Russell, “アメリカン・ハッスル American Hustle”

・脚本賞(映画) BEST SCREENPLAY – MOTION PICTURE
スパイク・ジョーンズ Spike Jonze, “Her”
ボブ・ネルソン Bob Nelson, “Nebraska”
ジェフ・ポープ、スティーブ・クーガン Jeff Pope, Steve Coogan, “Philomena”
ジョン・リドリー John Ridley, “12 Years A Slave”
エリック・ウォーレン・シンガー、デヴィッド・O・ラッセル Eric Warren Singer, David O. Russell, “American Hustle”

・オリジナル作曲賞(映画) BEST ORIGINAL SCORE – MOTION PICTURE
アレックス・エルバート Alex Ebert, “All Is Lost”
アレックス・ヘッフェ Alex Heffes, “Mandela: Long Walk To Freedom”
スティーヴン・プライス Steven Price, “Gravity”
ジョン・ウィリアムス John Williams, “The Book Thief”
ハンス・ツィマー Hans Zimmer, “12 Years A Slave”

・オリジナル歌曲賞 BEST ORIGINAL SONG – MOTION PICTURE
“Atlas,” “Hunger Games: Catching Fire”
Music by: Chris Martin, Guy Berryman, Jonny Buckland, Will Champion
Lyrics by: Chris Martin, Guy Berryman, Jonny Buckland, Will Champion

“Let It Go,” “Frozen”
Music by: Kristen Anderson Lopez, Robert Lopez
Lyrics by: Kristen Anderson Lopez, Robert Lopez

“Ordinary Love,” “Mandela: Long Walk to Freedom”
Music by: Bono, The Edge, Adam Clayton, Larry Mullen, Jr., Brian Burton
Lyrics by: Bono

“Please Mr Kennedy,” “Inside Llewyn Davis”
Music by: Ed Rush, George Cromarty, T Bone Burnett, Justin Timberlake, Joel
Coen, Ethan Coen
Lyrics by: Ed Rush, George Cromarty, T Bone Burnett, Justin Timberlake, Joel
Coen, Ethan Coen

“Sweeter Than Fiction,” “One Chance”
Music by: Taylor Swift, Jack Antonoff
Lyrics by: Taylor Swift, Jack Antonoff

・テレビ・シリーズ作品賞(ドラマ部門) BEST TELEVISION SERIES – DRAMA
“ブレイキング・バッド Breaking Bad”
“ダウントン・アビー 〜貴族とメイドと相続人〜 Downton Abbey”
“グッド・ワイフ The Good Wife”
“ハウス・オブ・カード 野望の階段 House Of Cards”
“Masters Of Sex”

・主演女優賞(テレビ・シリーズ、ドラマ部門)BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A TELEVISION SERIES – DRAMA
ジュリアナ・マルグリーズ Julianna Margulies, “The Good Wife”
Tatiana Maslany, “Orphan Black”
テイラー・シリング Taylor Schilling, “Orange Is The New Black”
ケリー・ワシントン Kerry Washington, “Scandal”
ロビン・ライト Robin Wright, “House Of Cards”

・主演男優賞(テレビ・シリーズ、ドラマ部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A TELEVISION SERIES – DRAMA
ブライアン・クランストン Bryan Cranston, “Breaking Bad”
リーヴ・シュライバー Liev Schreiber, “Ray Donovan”
マイケル・シーン Michael Sheen, “Masters of Sex”
ケヴィン・スペイシー Kevin Spacey, “House of Cards”
ジェームズ・スペーダー James Spader, “The Blacklist”

・テレビ・シリーズ作品賞(コメディ・ミュージカル部門) BEST TELEVISION SERIES – COMEDY OR MUSICAL
“ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則 The Big Bang Theory”
“Brooklyn Nine-Nine”
“ガールズ Girls”
“モダン・ファミリー Modern Family”
“Parks & Recreation”

・主演女優賞(テレビ・シリーズ、コメディ・ミュージカル部門)BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A TELEVISION SERIES – COMEDY OR MUSICAL
ズーイー・デシャネル Zooey Deschanel, “New Girl”
レナ・ダナム Lena Dunham, “Girls”
イーディー・ファルコ Edie Falco, “Nurse Jackie”
ジュリア・ルイス=ドレイファス Julia Louis-Dreyfus, “Veep”
エイミー・ポーラー Amy Poehler, “Parks & Recreation”

・主演男優賞(テレビ・シリーズ、コメディ・ミュージカル部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A TELEVISION SERIES – COMEDY OR MUSICAL
ジェイソン・ベイトマン Jason Bateman, “Arrested Development”
ドン・チードル Don Cheadle, “House of Lies”
マイケル・J・フォックス Michael J. Fox, “The Michael J. Fox Show”
ジム・パーソンズ Jim Parsons, “The Big Bang Theory”
アンディ・サムバーグ Andy Samberg, “Brooklyn Nine-Nine”

・テレビ・ミニシリーズ、テレビ映画作品賞 BEST MINI-SERIES OR MOTION PICTURE MADE FOR TELEVISION
“アメリカン・ホラー・ストーリー American Horror Story: Coven”
“恋するリベラーチ Behind The Candelabra”
“Dancing on the Edge”
“Top of the Lake”
“White Queen”

・主演女優賞(テレビ・ミニシリーズ、テレビ映画部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A MINI-SERIES OR MOTION PICTURE MADE FOR TELEVISION
ヘレナ・ボナム・カーター Helena Bonham Carter, “Burton and Taylor”
レベッカ・ファーガソン Rebecca Ferguson, “White Queen”
ジェシカ・ラング Jessica Lange, “American Horror Story: Coven”
ヘレン・ミレン Helen Mirren, “Phil Spector”
エリザベス・モス Elisabeth Moss, “Top of the Lake”

・主演男優賞(テレビ・ミニシリーズ、テレビ映画部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A SERIES, MINI-SERIES OR MOTION PICTURE MADE FOR TELEVISION
マット・デイモン Matt Damon, “Behind the Candelabra”
マイケル・ダグラス Michael Douglas, “Behind the Candelabra”
チュイテル・エジオフォール Chiwetel Ejiofor, “Dancing on the Edge”
イドリス・エルバ Idris Elba, “刑事ジョン・ルーサー Luther”
アル・パチーノ Al Pacino, “Phil Spector”

・助演女優賞(テレビ・ミニシリーズ、テレビ映画部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTRESS IN A SUPPORTING ROLE IN A SERIES, MINI-SERIES OR MOTION PICTURE MADE FOR TELEVISION
ジャクリーヌ・ビセット Jacqueline Bisset, “Dancing on the Edge”
ジャネット・マクティアー Janet McTeer, “White Queen”
ヘイデン・パネッティーア Hayden Panettiere , “Nashville”
モニカ・ポッター Monica Potter, “Parenthood”
ソフィア・ヴェルガラ Sofia Vergara, “Modern Family”

・助演男優賞(テレビ・ミニシリーズ、テレビ映画部門) BEST PERFORMANCE BY AN ACTOR IN A SUPPORTING ROLE IN A SERIES, MINI-SERIES OR MOTION PICTURE MADE FOR TELEVISION
ジョッシュ・チャールズ Josh Charles, “The Good Wife”
ロブ・ロウ Rob Lowe, “Behind the Candelabra”
アーロン・ポール Aaron Paul, “Breaking Bad”
コーリー・ストール Corey Stoll, “House of Cards”
ジョン・ヴォイト Jon Voight, “Ray Donovan”


結局、スティーヴ・マックィーン監督&チュイテル・エジオフォール主演の、アメリカ南部に奴隷制度がはびこっていた頃の暗黒の時代の実話ベースドラマ「12 Years A Slave」改め「それでも夜は明ける」が合計7部門、12月に入ってからアメリカン・フィルム・フェスティヴァルへの参加など活発な宣伝活動が始まった、「世界にひとつのプレイブック」のデヴィッド・O・ラッセル監督の新作「アメリカン・ハッスル」も同じく7部門でノミネートを受ける結果になりました。この二つが、今年の英国映画(「それでも夜は明ける)とアメリカ映画(「アメリカン・ハッスル」)をそれぞれ代表する作品として選ばれた…ような印象も受けますね(笑)。
毎年毎年、このように、今年の英国映画代表作品と、今年のアメリカ映画代表作品が、まるでオリンピックのようにアカデミー賞本番でガチンコ対決する…という構図が、お約束のようになってまいりました。ただまあ、今回の“「それでも夜は明ける」対「アメリカン・ハッスル」”エントリーは、あくまでもゴールデン・グローブ賞の見解ですから、オスカーまでにはまた新しい作品が祭り上げられることになるかもしれませんけどね。オリンピック同様、“アカデミー賞にも魔物が潜んでいる”ようですから(笑)。

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映画部門の作品賞候補に「あなたを抱きしめる日まで Philomena」と「ラッシュ/プライドと友情 Rush」が選ばれたことには、いろいろなご意見もあるでしょうが、私は、“今年の映画界の中で本当に満足できる作品は何か”という問いかけに対し、大変に忠実に出された回答ではないかと思っています。前者は以前の記事でちょこっとご紹介しましたが、遠い昔に我が子を手放さざるを得なかった母親の、子供探しの旅のお話。デイム・ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガンの凸凹コンビといいましょうか、見るからにソリが合わなさげな(笑)2人の人間が、旅を通じて徐々に友情を育んでいくというロード・ムービーならではの面白さもさることながら、何が起こっても親が終生子供を思い続ける気持ちと、逆に、親に見捨てられた側の子供の心境など、親子の愛情の発露の難しさを描き、家族ドラマとしての共感度も高いことが、GG賞のみならず多くの観客に支持された理由でしょう。

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後者は実在のF1レーサー、ジェームス・ハントとニキ・ラウダの友情関係、ライバルとしての戦いを、主に1976年の世界選手権での2人の戦い振りを中心に描くドラマです。さいぜんから早く観たい早く観たいと騒いでおりましたが、2014年2月7日から日本でもめでたく劇場公開されることになりました。

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「マイティ・ソー」等で、筋骨隆々なマッチョ・スタイルでハンマーをブン回してスターになったクリス・ヘムズワースが、嵐のように激しい性格の“ハント・ザ・シャント”ジェームス・ハントを好演したことが話題になりましたが、役者冥利に尽きる役柄は、むしろ今も健在なニキ・ラウダを演じたダニエル・ブリュールの方でしょう。ド派手なライフスタイルと豪快な走りっぷり、チャーミングな人柄とハンサムな容貌で、とにかく目立つハントの影に隠れていたラウダの、私生活では長年の親友でもあるハントへの友情と嫉妬心の間で揺れ動くプライドを表現するのは、簡単な作業ではないと思うからです。
私も大ファンだったラウダの凄いところは、1976年のドイツGPで、命に関わるような大怪我をしたクラッシュ事故の後も、諦めずにリハビリを続け、1977年には根性でレースに復帰、ワールド・チャンピオンのタイトルをハントから奪取してしまったこと。また、レースの勝敗がレーサーのテクニックではなく、マシンの性能に左右されるようになった70年代後半、1979年に突然引退を表明するも、1982年シーズンから現役に復帰。しかも、なんと1984年には3度目のワールド・チャンピオンに輝いたのですから、凄いとしか言いようがありません。本当に、本当に、ラウダのプロフェショナルとしての姿勢には、頭が下がるばかりです。結果がすぐには出なくても、ハントのようにすぐに不貞腐れてぷいっと辞めてしまうのではなく、先を見据えて粘り強く努力を続ける大切さを、私はこの人から学んだようなもんです。…実行できていませんけどね(涙)。
コンピューターのように精確極まる走り、真のプロフェッショナル、冷静沈着で努力を惜しまぬ強靭な精神、そして自身の航空会社を立ち上げて成功させるほどの頭の良さを持スーパーマンのような人間にも、もちろん他人には見せられない苦悩が山のようにあったはず。それをブリュール君の繊細な演技で見られるとしたら、ドラマ作品としての今作の成功は約束されたも同然でしょう。


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映画部門の主演男優賞と、テレビ・ミニシリーズ、テレビ映画部門の主演男優賞の2部門に、同時にノミネートされることになったのは、皆が愛してやまないペントコスト司令官ことイドリス・エルバ(“Mandela: Long Walk to Freedom”と日本では2011年から放映中のドラマ「刑事ジョン・ルーサー Luther」)と、館長が猛プッシュしている「キンキー・ブーツ」のローラ姐さんことチュイテル・エジオフォール(「それでも夜は明ける」とBBC2制作のドラマ“Dancing on the Edge”)であります!拍手!皆さん拍手してください、ほらっ!これ、なにげに快挙じゃないですか?ね?

日本で“英国俳優”といえば、古い歴史を誇る英国美男子俳優の系譜に連なる、英国の良い家柄出身であろうお坊ちゃま俳優さんたちを思い出すファンの方々がほとんどでしょう。実際には、いわゆる中流家庭出身ではなくても、名門私立校に通って名門演劇学校を出て、白人で、教養豊かで、頭も良く、正装が死ぬほど似合えば、皆、ブリティッシュ・プリンス・チャーミング・アクターとカテゴライズされます。今までは、そんな系譜上の俳優さんたちがオスカーを受賞したりして、“ブリティッシュ・インベイジョン”と呼ばれていたわけですが、今年の映画界は、“ブラック・ブリティッシュ・インベイジョン”の幕開けとなる重要な年になるかもしれませんね。

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随分前の記事で、今も大流行の伝記映画製作の難しさについて書いたことがありましたが、世界中がその死を悼んでいるネルソン・マンデラ氏の若き日の苦闘を描いた映画“Mandela: Long Walk to Freedom”は、言い方が大変悪いのを承知の上で書きますと、マンデラ氏の死去によって突如高いニュース性を持つようになりました。実はね、今作が招待された映画祭…例えばトロント国際映画祭では、作品自体への評価は概して低かったんです。各映画サイトの作品レビューは、総体的に辛口。タイトルロールを熱演したイドリスへの賛辞はありましたが、歴史を脚色して映像にすることへの批判もよく見かけましたね。結局、マンデラ氏が亡くなる前までは、この作品を巡る評価は厳しかったといわざるを得ません。
ところが、4館のみで限定公開されているアメリカでは、今後上映館を増やし、拡大公開に踏み切る予定だそうです。GG賞にイドリスがノミネートされたのは、もちろんめちゃくちゃ嬉しいのですが、マンデラ氏が亡くなったばかり…という事実があるために、何となく…何となく後味の悪い想いも消えないのですよね…。気にしなければいいのでしょうが、なんだか辛いですわい。

さて、テレビ・ドラマの方の「刑事ジョン・ルーサー」ですが、一体どんな内容なのかご存じない方のために説明しますってぇと、こんな具合になります。

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こんな感じのドラマです(笑)。

…何、分からない?おかしいですね、この画像が全てを物語っているドラマですのに(笑)。

ロンドン警察の一匹狼的存在の主任警部ジョン・ルーサーは、高いプロファイル能力を持ち、難事件も度々解決してきました。しかし、時に犯罪者の精神のダークサイドに心の安寧を乱され、自身の心にも闇を抱えるようになってしまいます。妻ゾーイとは関係がギクシャク。そんなルーサー刑事が、数少ない友人のイアン警部や、子犬のようにルーサーを慕う新人刑事ジャスティン君、理解ある上司ローズ警視などのサポートを得て、難しい事件に立ち向かっていくお話ですね。
その中でルーサーは、かつて神童と謳われた程の天才にもかかわらず、両親殺害の嫌疑がけられたことのあるアリス・モーガンという女性と、徐々に親しくなっていきます。2人ともに情緒不安定な者同士、彼らの関係性は常に緊張を孕んでおり、視聴者もハラハラしながら見守っている次第です。また、シーズンが進むごとに明らかになっていくルーサー自身の心の闇も、このシリーズのストーリーを側面から大きく動かしていきます。あのFBIプロファイラー捜査官たちの活躍を描く老舗ドラマ・シリーズ、「クリミナル・マインド」の影響を感じさせる内容ですね。“一人クリミナル・マインド”という感じ。
1ドラマ丸ごと素敵なイドリスをてんこ盛りにしちゃうぞ!というBBCの熱い意気込み(違)が伝わってくる「刑事ジョン・ルーサー」は、シーズン3まで完成。犯罪者心理を克明に追い、被害者側の事情も描いていくこのドラマは、英国でもアメリカでも大好評で、なんでも、プリクエール的な内容の映画版ができるのではないかという噂まであります。


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後日記事にまとめますが、ボストン映画批評家組合賞では、作品賞はじめ主要部門を独占した「それでも夜は明ける」からは、他にも助演女優賞にルピタ・ニョンゴが、助演男優賞にはマイケル・ファスベンダーがノミネートされました。ルピタちゃんの助演女優賞獲得はかなり確率が高いと睨んでいますが、問題は助演男優賞部門。主演男優賞部門と並び、おそらくオスカーでも激戦部門になると思われます。というのも、こちらも実在の人物を描いた「ダラス・バイヤーズ・クラブ」でトランスジェンダーの男性を演じるジャレッド・レト入魂の演技がやはり素晴らしく、各映画賞で軒並み高い評価を獲得しているからですね。主演男優賞もそうですが、もはや誰が受賞してもおかしくはない、高いクオリティの作品が並んでいる状態です。

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この作品は、取り上げるテーマがテーマだけに、その完成度の高さゆえ、逆に苦痛や嫌悪感を抱いてしまう観客も相当数おられると思います。日本でも来年の3月に公開予定ですが、デリケートな日本の方々の反応がちょっぴり心配。しかしまあ、私は誰が何と言おうとも、このチーム、このファミリーが大好きですので、GG賞のみならず、オスカーでも健闘してもらいたいのでありますよ。

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“The best director of the best film of the year ― Steve McQueen and ‘12 Years A Slave’.” by Spike Lee

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「…頑固で世渡りの下手そうなスティーヴ・マックィーン君へ。君も私のように孤高の映画作家の道を選ぶというのなら、ユーモアだけは忘れないようにしなさい、とアドバイスしておこう。快適な高速道路を傍目に、険しい山の中の茨の小道を歩むのは、心身ともに厳しいことだからだ。冗談でも言っていなければ、やりきれない」

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