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zoom RSS 冒険に踏み出そう―「Much Better Now」

<<   作成日時 : 2013/03/06 13:50   >>

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埃を被った本の間に挟まれたまま長い間忘れ去られていた栞(しおり)が、風の力を借りて偶然本の外に飛び出しました。このショート・アニメは、一枚のちっぽけな栞が遭遇する奇想天外な冒険を、観ている私たちも一緒に体感できる見事な作品です。

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“Much Better Now”

Much Better Now from Salon Alpin on Vimeo.



「Much Better Now」(2011年)
Director: Philipp Comarella & Simon Griesser
Writer: Philipp Comarella & Simon Griesser

・受賞
“Children Jury Award” at Bristol Encounters 2012
“Best Short” at Content Award Vienna 2012
“Bronzener Nagel” at Art Directors Club Germany 2012
“Rookie of the Year” at Creativ Club Austria
“Special Mention” at Rome Idependent Film Festival 2012
“3rd Price” at Athens Film And Video Festival 2012

・Official Selection
ECU 2012 Paris
Vilinius Shorts
Mo & Friese Hamburg
Taafi 2012
SAL Surf At Lisbon 2012
Tyrolean Independent Film Festival 2012
Nord Nordwest
Supertoon etc, etc

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その栞は、埃を被ったまま持ち主にも忘れられた古い本の間に挟まっていた。本の存在が忘れられているぐらいだから、持ち主はもちろん栞のことなど記憶の一片にもとどめてはいないだろう。

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彼は長い長い間、本のページに挟まったままだったので、端の方が黄ばみ始めていた。きっとこのまま、自分は朽ち果てるまでここにいるに違いない。他のたくさんの本や栞たちと同様に。

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ところがある日、強い風が書斎の中を通り抜け、本が机の上にぱたりと倒れてしまった。その拍子に本のページが開いて風に吹かれ、栞も挟まっていたページの外に弾き出された。初めて外から本のページを見つめる。そこにはサーフボードの挿絵と共に解説が載っていた。どうやらこの本は、サーフィンについて書かれた指南書だったようだ。

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初めて目にする“ページの外”の世界。いつも本に挟まっていた彼は、外の世界を見たことがなかったのだ。そして、初めて目にする自分の身体。ぺらぺらの紙切れだった彼に手足がついた。彼は自力で立ち上がった。

すると…

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またしても強い風にあおられ、栞はちょうど開いていた本のページに吹き飛ばされてしまった。栞が飛び込んだそのページが、みるみるうちに青い海に変化していく。いったん海に沈んだ栞は、再び海上に飛び出した。

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波は高く強い。波乗りにはもってこいのコンディションだ。ページの向こうからやってきた紙のサーフボードに飛び乗った栞は、勇んで波に挑んでゆく。

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しかし、初めてサーフボードに乗る栞はコツがつかめず、すぐさま海の外に放り出されてしまう。

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何度放り出されても栞は果敢にチャレンジし続けた。

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しかし、栞の挑戦をあざ笑うかのように、波は安々と彼とちっぽけなサーフボードを放り出してしまう。凪いでしまった海面で、くたびれた栞はボードの上でぼんやりと浮かんでいた。

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突然海面が立ち上がり始め…

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とんでもないビッグウェーブが到来。栞はボードと一体化し、ついに波を捕らえることに成功した。

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さあ、波乗りの開始だ!

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ビッグウェーブを自在に乗りこなす栞。波と一体化したかのような、とてつもない経験だ。

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しかし更なるビッグウェーブが視界を覆いつくしたとき、栞はあまりの勢いに押され、外に弾き出されてしまった。

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あの波が海が、消えてしまった。それもそのはず、本がついに閉じてしまったのだ。ちっぽけな栞では、この分厚くて重い本のページを再び開くことは出来ない。何度も本によじ登ろうとして、叶わなかった栞は落胆する。

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彼の後ろから明るい日差しが差し込んできた。彼の目の前には無数の本が散らばっている。そう、海の世界は閉じてしまったが、別の本にはまた違う冒険が待っているに違いない。つまり彼は今、無限に広がる未知の世界の入り口に立っているのである。

いやぁ〜、実にいいもんですなぁ(にこにこ)!

いやもう、内容云々とか映像どうたらこうたら、技術的にどーしたこーしたなぞこの際どうでもええわと思うほど(笑)、気分爽快、ダイナミックかつリズミカル、そして希望が暗示されるラストも大変後味の良ろしい、素敵なショートアニメでありました。ええまあ、今作がやっぱり私の大好きなストップモーション作品だということもあって(笑)、点数は甘くなりがちではありますけれど、そういう贔屓目を除外しても、これ凄くよく出来ていると思いません?

オーストリアを拠点とする、ヴィジュアル・アート、グラフィック・デザイン、イラスト、アニメーション、映画製作等々、様々な形のアートを生み出すプロダクション・スタジオSalon Alpinで制作された、ハンドクラフトを用いたストップモーション・アニメ作品です。粘土を使ったストップモーション・アニメで有名なのはアードマン・スタジオですが、ここでは紙を用いた作品を製作しているとかで、折り紙文化を持つ私たち日本人にとっては、なかなかに興味深いですね。スタジオの公式サイトをリンクしておきましたので、興味のある方は訪問されたし。スタジオが作っている他の作品にも、面白そうなものがありますよ。

このSalon Alpinのスタジオの近くには海があるそうでして、スタッフにとってもサーフィンは身近なスポーツ。この海、サーフィンと紙細工という異質な要素をなんとか結び付けられないか。試行錯誤の末生まれたのが、この「Much Better Now」のストーリーだったようです。言われてみれば確かに、紙だけで出来ているとは俄かには信じ難い波の表現に圧倒されますよね。分厚い書籍が開いてページがパラパラとめくれていく様子を、波が繰り返し押し寄せる映像に見立てるとは、さすが。アイデアの勝利です。

そして、ハンドクラフトの技術を縦横無尽に生かした、二次元の薄い世界を立体的に見せる構成の工夫と、躍動感溢れるカメラワークの妙により、紙でビッグウェーブのダイナミズムを再現することに成功しています。ただの薄っぺらい紙の世界に生きていた栞が立体的な海と戯れる様子が、こんなにリアルに見えるというのも凄い話です。

またストーリーもいい。本のページに挟まれることだけが存在意義の全てだった栞が、意思を持って立ち上がり、二次元の平坦な世界から未知の三次元世界に足を踏み出していくというね。例えそれが、風のいたずらで偶然出現した異世界にしか過ぎなくても、この冒険によって彼はこれまでの自分自身の常識の殻を破り、生きる世界をぐんと広げることになったわけです。
ところどころ黄ばんだちっぽけな栞でも、その気になりゃ、栞として与えられた運命に従順であるだけの生き方から脱却できる。そのために必要なのは、一歩外に出てみようかな…という、ほんのちょっとした勇気だけではないかと思いますよ。ちょびっとだけ足を踏み出して、外の世界を覗いてみれば、夢も希望も未来も何もないと思い込んでいたくすんだ灰色の世界が、意外にも光と可能性に満ちていることに気づくかもしれません。

オマケ。

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キミもボクと一緒に外に出ておいでよ!

…可愛いw。栞、可愛いよ。可愛いよ、栞。


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