House of M

アクセスカウンタ

zoom RSS 何故人類は滅亡しなければならないか―「MAN」

<<   作成日時 : 2013/01/06 23:24   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 14 / トラックバック 0 / コメント 0

さて、既に日本のサイトでも紹介されている作品なのですが、これはちょっと当館でも無視できない程秀逸なショートフィルムなので、ご紹介しておきます。


―何故、人類は滅亡しなければならなかったのか―

“MAN”

MAN from Steve Cutts on Vimeo.



“MAN”(2012年)
Animation & Story & Director: Steve Cutts
Music: "In the Hall of the Mountain King" by Edvard Grieg
Copyright © 2012 stevecutts.com

―神は、自らが生み出した人間の暴走にほとほと手を焼いていた。良かれと思って彼らにつけてやった知恵のせいで、彼らは自身を創造主に並ぶ存在であると錯覚してしまったのだ。増長した我が子の誤りを時間をかけて諭し、正しい道へと教え導くのが人間の父たる神の役目だとはいえ、それも度重なると面倒くさくなる。そこで神は、地上に大雨と洪水をもたらし、全てを文字通り水に流してしまった。ところが、いったんはその危機的状況から立ち直った人間は、またもや母なる地球を破壊し尽くそうとしている。


画像

―汝、隣人を愛しなさい―
人間は、その神の尊い教えを守るべく、常に“Welcome”の精神を胸に抱いている。歩み寄ってくる者を拒まず、去る者を追わない。決して驕らず、騒がず、常に謙虚な姿勢で周囲に平等に対峙しておれば、いずれ汝の周囲には才能ある者どもが集まり、汝は世界の王となるであろう。

画像

…今から思うに、おそらくその最初の教えがマズかったのではないだろうか。

画像

そう、諸人こぞりて受け入れよという“Welcome”の精神で、最初は小さき生き物たちの命を、出会う先から片っ端に犠牲にした人間たち。

画像

…だが人間は、己の生活をもっと豊かにするために、さらなる大きな犠牲を求めるようになったのだ。

画像

…もっと豊かに…

画像

もっともっと豊かになるため、山の木々をことごとく紙に変え…

画像

もっともっと快適に暮らすため、人間に恵みをもたらしてきた自然の山河を潰して巨大な都市を作り…

画像

もっともっと豊かに快適に暮らすため、莫大な数に膨れ上がった人間を飢えさせぬよう、巨大な工場で星の数ほどの生き物たちの肉が切り刻まれ…

画像

もっともっと豊かに快適に便利に暮らすため、増え続ける人間全てに寒くて暗い思いをさせぬよう、無限のエネルギーを手にできる禁断の扉を開け…

画像

もっともっと豊かに快適に便利に、ついでに楽して暮らすため、人間は技術革新の代償であるゴミを吐き出し続けてきた。汚物はやがて地上を覆い尽くしてしまうだろう。周囲にあるもの全てを破壊し尽くし、その果てのゴミの山の上に築かれたのが、我ら人間の玉座であるのだ。

―神は思案した挙句、最終的な解決策を思いついた。そのまま放っておいても、やがて哀れな子羊達が野垂れ死にすることは明らかではあるのだが。しかしそれではいくらなんでも、創造主としての面子というか矜持というか、まあそういったつまらぬプライドというやつが治まらない。自らが生み出した失敗作への未練を断ち切るためにも、この最期のシナリオはやはり必要であったのだと、神は納得することにした。



人間はいつか必ず滅亡します。…いや別に、変な宗教に惑わされているわけではありませんのでご安心を(笑)。盛者必衰の理というものは、古今東西を問わず繰り返される真理だというだけの話です。

祗園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
娑羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず
唯春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ
偏に風の前の塵に同じ    ―「平家物語」より抜粋


人間がこの世に生まれ、如何にして横暴の限りを尽くして地球をダメにしていったかが、3分弱で手に取るように理解できる作品です。…もうね、一目瞭然とはこのことよね。余計な解説は必要ありません。人間は、あらゆる面において“進化”を言い訳にし、しかしその実は己の欲望を満足させんがため、自然の恵みを利用した挙句に破壊してきました。まあ、およそ人間の欲望ぐらい、底なしの果てしない闇はないわけで、神様はこんな業を背負ってしまった我々をどのように思っていらっしゃるのでしょうかね。
…今現在世界中を覆っている漠然とした終末観は、このショートフィルムの最後のような事態に陥るのを、内心恐れて止まない我々が生み出した精神の汚物なのでしょう。つまり、口にはあえて出さないまでも、誰しもが同じような結末を予感しているのでは?

さて、かの“ボレロ”のように、楽器の種類や音量、テンポを増しながら同じ旋律を繰り返すことで、楽曲の威力を体現するエドヴァルド・グリーグの「ペール・ギュント Peer Gynt」からの楽曲“In the Hall of the Mountain King”。時間が経過するに連れて徐々に増してゆく熱狂の沸点が、やがて狂気の領域にまで達する旋律は、文字通り戦慄を覚えるほどの凄まじさです。その悪魔のメロディにのって、進化という狂気にかられて暴走する人間の姿は、まるでブレーキが壊れてしまった暴走機関車のごとし。旋律と映像が、お互いに絡み合うように繰り広げるおぞましき狂演は、その相乗効果も相まって我々に恐怖をもたらします。しかし、それを最後まで目をつぶることなく見届けねばならないのもまた、真実でありますね。

ペール・ギュント (論創ファンタジー・コレクション)
論創社
ヘンリック イプセン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ペール・ギュント (論創ファンタジー・コレクション) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

「ペール・ギュント Peer Gynt」は元々、ヘンリック・イプセン Henrik Ibsenが1867年に生み出した戯曲(劇詩)です。農夫の息子であったペール・ギュントは、奔放な放蕩者であったがゆえに家業を放棄し、遠い国々を旅して血湧き肉踊る冒険を重ねます。しかしやがて年老い、打ちひしがれた姿のまま家に帰ってくるまでを追った物語ですね。そういったことを踏まえると、この「MAN」における人間の遍歴は、ペール・ギュントの物語に通ずるものがあるのかもしれません。ペール・ギュントも我々“MAN”も、結局最後は“死”という家に戻ってこなければならないのですから。

画像

(shared from Steve Cutts)
この見事なショートアニメーションを作り上げた才人の名は、Steve Cutts(スティーヴ・カッツ)。Farnham Universityで総合美術を学んだ後、4年間の会社勤めを経てフリーランスのアーティストになりました。彼は現在、このショートフィルムでもお分かりのように、独特のシュールな味わいを持つイラストやアニメーションなどを駆使して、コカ・コーラ、リーボック、トヨタ、ソニーPSP、ケロッグ等々そうそうたる企業のために創作活動にいそしんでおります。スティーヴ・カッツの作品をご覧になりたい方は…

公式Facebookページはこちら
公式Twitterアカウントはこちら
公式サイト Steve Cutts

…などの公式ページをチェックしてみてください。彼が得意としているのはやはりイラストとアニメーションのようですが、例えばイラスト作品ひとつをとってみても、依頼された仕事にもよるのでしょうが、バラエティに富んだ仕上がりで興味深いですね。しかしながら、どの作品にも共通しているのは、シュール、グランギニョール、グロテスク、ユーモラス、シニカル、ブラックジョークといった形容詞群。彼の作品には、描く対象を緻密に冷ややかに観察し、本人も気づいていないであろう秘められた真実を、実に飄々と形にする意図が感じられます。

Vimeoに投稿されたアニメーション作品には、他に「In The Fall」、彼が活動拠点としているShoreditchの同僚達をモデルにした、ゾンビ・パロディ・ショートフィルム「Shoreditch of the Dead」などが公式サイトに挙げられています。どちらもすこぶる面白い内容なので、興味をもたれた方はご覧になってみてください。

にほんブログ村 映画ブログ 映画備忘録へ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 14
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス
面白い
ガッツ(がんばれ!)
何故人類は滅亡しなければならないか―「MAN」 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる