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zoom RSS 何度もかみ締めてこその第33回ロンドン映画批評家協会賞。

<<   作成日時 : 2012/12/20 12:11   >>

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1913年に設立されたロンドン批評家協会は、この種の協会では世界でも最も長い歴史を誇る組織なのだそうです。所属メンバーは400人を超え、全て英国メディア内で批評家として活動する者ばかり。映画のみならず、建築、音楽、舞踏など芸術全般に深い造詣を持つ批評家で構成されています。協会の映画部門は、映画批評家、ジャーナリストなど120名以上のメンバーからなり、彼らの投票で受賞者を決定するロンドン映画批評家協会賞は、1980年に設立されました。

そして、今年で第33回目を迎えるロンドン映画批評家協会賞のノミネート全リストが、先日発表されていました。アメリカの映画賞との選出の傾向の違いを比較するべく、ここでも触れておきます。


33rd London Film Critics’ Circle Nominations in Full

・The Sky Movies Award: FILM OF THE YEAR
Amour (Artificial Eye)
Argo (Warners)
Beasts Of The Southern Wild (StudioCanal)
Life Of Pi (Fox)
The Master (Entertainment)

・FOREIGN LANGUAGE FILM OF THE YEAR
Amour (Artificial Eye)
Holy Motors (Artificial Eye)
Once Upon A Time In Anatolia (New Wave)
Rust And Bone (StudioCanal)
Tabu (New Wave)

・DOCUMENTARY OF THE YEAR
The Imposter (Picturehouse/Revolver)
London: The Modern Babylon (BFI)
Nostalgia For The Light (New Wave)
The Queen Of Versailles (Dogwoof)
Searching For Sugar Man (StudioCanal)

・The May Fair Hotel Award: BRITISH FILM OF THE YEAR
Berberian Sound Studio (Artificial Eye)
The Imposter (Picturehouse/Revolver)
Les Miserables (Universal)
Sightseers (StudioCanal)
Skyfall (Sony)

・The Spotlight Award: ACTOR OF THE YEAR
Daniel Day-Lewis – Lincoln (Fox)
Hugh Jackman – Les Miserables (Universal)
Mads Mikkelsen – The Hunt (Arrow)
Joaquin Phoenix – The Master (Entertainment)
Jean-Louis Trintignant – Amour (Artificial Eye)

・ACTRESS OF THE YEAR
Jessica Chastain – Zero Dark Thirty (Universal)
Marion Cotillard – Rust And Bone (StudioCanal)
Helen Hunt – The Sessions (Fox)
Jennifer Lawrence – Silver Linings Playbook (Entertainment)
Emmanuelle Riva – Amour (Artificial Eye)

・SUPPORTING ACTOR OF THE YEAR
Alan Arkin – Argo (Warners)
Javier Bardem – Skyfall (Sony)
Michael Fassbender – Prometheus (Fox)
Philip Seymour Hoffman – The Master (Entertainment)
Tommy Lee Jones – Lincoln (Fox)

・SUPPORTING ACTRESS OF THE YEAR
Amy Adams – The Master (Entertainment)
Judi Dench – Skyfall (Sony)
Sally Field – Lincoln (Fox)
Anne Hathaway – Les Miserables (Universal)
Isabelle Huppert – Amour (Artificial Eye)

・BRITISH ACTOR OF THE YEAR – In association with Cameo Productions
Daniel Craig – Skyfall (Sony)
Charlie Creed-Miles – Wild Bill (The Works/Universal)
Daniel Day-Lewis – Lincoln (Fox)
Toby Jones – Berberian Sound Studio (Artificial Eye)
Steve Oram – Sightseers (StudioCanal)

・BRITISH ACTRESS OF THE YEAR
Emily Blunt – Looper (eOne) and Your Sister’s Sister (StudioCanal)
Judi Dench – The Best Exotic Marigold Hotel (Fox) and Skyfall (Sony)
Alice Lowe – Sightseers (StudioCanal)
Helen Mirren – Hitchcock (Fox)
Andrea Riseborough – Shadow Dancer (Paramount)

・YOUNG BRITISH PERFORMER OF THE YEAR
Samantha Barks – Les Miserables (Universal)
Fady Elsayed – My Brother The Devil (Verve)
Tom Holland – The Impossible (eOne)
Will Poulter – Wild Bill (The Works/Universal)
Jack Reynor – What Richard Did (Artificial Eye)

・The American Airlines Award: DIRECTOR OF THE YEAR
Paul Thomas Anderson – The Master (Entertainment)
Kathryn Bigelow – Zero Dark Thirty (Universal)
Nuri Bilge Ceylan – Once Upon A Time In Anatolia (New Wave)
Michael Haneke – Amour (Artificial Eye)
Ang Lee – Life Of Pi (Fox)

・SCREENWRITER OF THE YEAR
Paul Thomas Anderson – The Master (Entertainment)
Mark Boal – Zero Dark Thirty (Universal)
Michael Haneke – Amour (Artificial Eye)
Quentin Tarantino – Django Unchained (Sony)
Chris Terrio – Argo (Warners)

・BREAKTHROUGH BRITISH FILM-MAKER
Ben Drew, writer/director – Ill Manors (Revolver)
Sally El Hosaini, writer/director – My Brother The Devil (Verve)
Dexter Fletcher, co-writer/director – Wild Bill (The Works/Universal)
Bart Layton, writer/director – The Imposter (Picturehouse/Revolver)
Alice Lowe & Steve Oram, writers – Sightseers (StudioCanal)

・The Sky 3D Award: TECHNICAL ACHIEVEMENT AWARD
Anna Karenina – Jacqueline Durran, costumes (Universal)
Argo – William Goldenberg, film editing (Warners)
Beasts Of The Southern Wild – Ben Richardson, cinematography (StudioCanal)
Berberian Sound Studio – Joakim Sundstrom & Stevie Haywood, sound design (Artificial Eye)
Holy Motors – Bernard Floch, makeup (Artificial Eye)
Life Of Pi – Claudio Miranda, cinematography (Fox)
Life Of Pi – Bill Westenhofer, visual effects (Fox)
The Master – Jack Fisk & David Crank, production design (Entertainment)
My Brother The Devil – David Raedeker, cinematography (Verve)
Rust And Bone – Alexandre Desplat, music (StudioCanal)

・DILYS POWELL AWARD FOR EXCELLENCE IN FILM: Sponsored by PREMIER
Helena Bonham Carter


このラインナップ、正直に申し上げてかなり面白いです。大変に興味深い…というか、英国の映画賞らしい選出だなあと。

単純にノミネート数を合算していくと、複数部門に渡ってノミネートされたミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アモール」とポール・トーマス・アンダーソン監督の「ザ・マスター」がリードしている形になっています。ロンドンの映画通の嗜好は、いかにもヨーロッパの映画作家らしい味わいのハネケ監督と、アメリカ生まれ、アメリカ育ちの純生アメリカ映画監督ながら、複雑で屈折したテイストを持つアンダーソン監督を評価している、ということなのでしょう。

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まず興味深いと思ったのが、死を間近にした老夫妻の心の軌跡を描いたハネケ監督作品「愛、アモール」ですね。この作品は、英語以外の言語で製作された“外国語映画”であるにもかかわらず、そういった言葉の壁を乗り越えて、たびたび複数の映画賞で他の英語作品を押しのけて“最優秀作品賞”に選ばれている現象を引き起こしています。
「エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜」でオスカーを掲げたマリオン・コティヤール(フランス語作品の主演でフランス語での演技)、あるいは、昨年度のヒット作品「アーティスト」の躍進が、ひょっとしたら、“英語圏の映画賞の主要部門に選ばれるためには作品を英語で製作しなければならない”というジンクスを破ったのかもしれませんよ。「愛、アモール」からは、作品賞の他にジャン・ルイ=トランティニャン、エマニュエル・リヴァ共々、主演男優賞、女優賞部門に揃ってノミネートされています。また、リヴァの方は、先に発表されたロサンジェルス映画批評家協会賞では既に主演女優賞を獲得済み。英語での演技であるかどうかにかかわりなく、“素晴らしい演技”にはもれなく賞を与えるという柔軟な風潮は、個人的には大変素晴らしいものだと思っております。これがいわゆる、映画界におけるグローバル化っちゅうやつですかね。
以前、ハネケ監督に対しては相当に辛らつな意見を書いたのですが、彼がシニカルかつ陰鬱な諸作品群を経て、どのような達観に至ったのかを確認してみたい誘惑に駆られています。ハネケ印の作品を見る度に、ハネケその人が背後であっかんべーをしているのを感じるような、奇妙な苛立たしさと敗北感を覚えたものですが(笑)、今回の作品からはまた違った感慨が得られるやもしれませんね。

とにもかくにも、“FILM OF THE YEAR”の候補作品の中に、「アルゴ」と「ザ・マスター」を入れてくれて本当にありがとう、と言いたいですね(笑)。「アルゴ」に関しては、脚色を担当した(原作は主人公トニー・メンデスの自伝)クリス・テリオがノミネートされたのも喜ばしいです。この奇想天外な実話のストーリーを、映画製作の際に監督が描く絵コンテ風に進めていく手際は非常に面白かった。導入部の解説と、最後の“めでたしめでたし”を絵コンテで仕上げた演出は、この作品の本質を言い表しているのではないかと思いますよ。

また、“BRITISH FILM OF THE YEAR”候補の中に007映画「007 スカイフォール」が入っていることに、思わずニンマリしてしまいました(笑)。これは当然ですわいね。007映画50周年記念作品ですものね。「スカイフォール」は、観終わった後しばらく時間が経ってから、ひたひたと切ない余韻が押し寄せてくるタイプのエンタメ大作でした。作品の根幹は、ダニエル・クレイグ扮する007と、彼を最後まで信じたM(デイム・ジュディ・デンチ)のリレーションシップ。どんな背景であろうと、どんな物語であろうと、そこに人と人がいる限り、彼らの間に生まれるケミストリーは必ずドラマを生みます。そんなことを実感した作品でした。彼らが揃って“BRITISH ACTOR OF THE YEAR”と“BRITISH ACTRESS OF THE YEAR”の候補になっているのも、まあ当然かなあと思います。

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しかし、今猛烈に興味をそそられているのは、「裏切りのサーカス Tinker Tailor Soldier Spy」にも出演していたトビー・ジョーンズ主演の「Berberian Sound Studio」!これが観たくて観たくてたまらんのですよ、わたくしめは!英国映画界期待の新鋭クリエイター、ピーター・ストリックランド(監督、脚本兼任)の2作目の商業用長編映画で、70年代に隆盛を誇ったイタリアン・ホラー映画の撮影スタジオを舞台にしたサイコ・スリラーだそうです。ジョーンズが演じるのは、そのスタジオで働く音響技師。最近のスリラーときたら、やたら派手なこけおどしか、時間軸をグニャグニャいじるばかりの自己満足系作品ばかりで飽き飽きしていましたのでね。このポスターの絵柄を見ていても、60年代から70年代に流行ったスリラー/ホラー作品のような、奇妙にレトロなイメージがあって期待大であります。ジョーンズは、ダニエル・クレイグ、ダニエル・デイ=ルイスの“Wダニエル”という強力なライバルらと共に、堂々“BRITISH ACTOR OF THE YEAR”の候補者リストの中に食い込んでおります。健闘を祈りたいもんですな。

最後に、英国期待の新鋭クリエイターにも注目をば。青田刈りが楽しめる“BREAKTHROUGH BRITISH FILM-MAKER”部門には、第56回BFIロンドン映画祭で、やはり最優秀新人監督賞に輝いて一躍時の人となった女流監督Sally El Hosainiがノミネートされています。その彼女の作品が、こちら「My Brother the Devil」ですね。

“My Brother the Devil” (2012) - Official Trailer


ロンドンに生きる二人の兄弟の確執の物語。英国内では既に公開され、各誌から高い評価を得るに至っております。さらに英国インディペンデント映画祭では主演の一人James Froydが新人賞を獲得し、作品はアメリカでも来年3月に劇場公開されることになりました。お話の舞台は英国ロンドンですが、観る者のエモーションを掻きたてるドラマには普遍性も備わっているものです。日本でも広く紹介されることを願ってやみません。


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