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zoom RSS 身長120センチ以下、万歳―「白雪姫と鏡の女王 Mirror Mirror」

<<   作成日時 : 2012/10/11 17:54   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 6 / トラックバック 0 / コメント 0

全く期待せずに観に行った、ターセム・シン監督の「白雪姫と鏡の女王 Mirror Mirror」。結論から述べると、もう一本の白雪姫映画「スノー・ホワイト Snow White & The Huntsman」より、よっぽど面白く観られた映画でありましたぜよ。頻出していた酷評レビューが叩くほど、酷い内容ではなかったと思うけどね。

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「白雪姫と鏡の女王 Mirror Mirror」(2012年)
監督:ターセム・シン・ダンドワール
製作:バーニー・ゴールドマン &ライアン・カヴァナー&ブレット・ラトナー
脚本:マーク・クライン&ジェイソン・ケラー &メリッサ・ウォーラック
撮影:ブレンダン・ガルヴィン
視覚効果監修:トム・ウッド
プロダクションデザイン:トム・フォーデン
衣装デザイン:石岡瑛子
振付:ポール・ベッカー
音楽:アラン・メンケン
音楽監修:ハッピー・ウォルターズ&ボブ・ボーウェン
出演:ジュリア・ロバーツ(女王)
リリー・コリンズ(白雪姫)
アーミー・ハマー(王子)
ネイサン・レイン(ブライトン)
メア・ウィニンガム(ベイカー・マーガレット)
マイケル・ラーナー(男爵)
ロバート・エムズ(チャールズ・レンボック)
ショーン・ビーン(国王)
ジョーダン・プレンティス (ナポレオン)
マーク・ポヴィネッリ(ハーフ・パイント)
ジョー・ノッフォ(グラブ)
ダニー・ウッドバーン(グリム)
セバスチャン・サラセーノ(ウルフ)
マーティン・クレバ(ブッチャー)
ロナルド・リー・クラーク(チャック)他。

白雪姫は、小さいながらも豊かで平和な国の皇女として生まれた。間もなく母親が逝去し、父親である国王は男手一つで娘を育ててきたものの、年頃になっていく娘には母親が必要だと考え、美しい後妻を迎えた。白雪姫が8歳になったとき、国王はたった一人で怪物退治に出かけ、深い森の中で消息を絶ってしまった。白雪姫は嘆き悲しんだが結局国王は戻らず、彼女自身も18歳の誕生日を迎えた今日まで、継母によって城内に幽閉されることになった。
継母は美しかったが傲慢で我侭、己のドレスや靴、美容のために国費を使い果たし、国王亡き後は“女王”を名乗って権力を掌握し、気まぐれに他の男と結婚・離婚を繰り返すありさまであった。限度を超える税金を長年にわたって取り立ててきたために、国民は貧窮し、財政は破綻をきたしていた。
白雪姫は、仲良しの下女ベイカー・マーガレットに促されて城を抜け出して外の世界を視察し、国民の暮らし振りがあまりに酷いものであったことにショックを受ける。その頃、アルコット国の王子が従者を連れて白雪姫の国の森の中に迷い込んでいた。彼らは、森の中に住む7人の盗賊団に襲われて身ぐるみはがされたが、そうとは知らない白雪姫によって救出されていた。王子は女王の城に客として滞在することになる。イケメンの、しかも豊かな資源に恵まれた裕福な国の王子の出現に女王は喜び、彼との結婚を画策。しかし、女王の肝入りで開催された舞踏会には、王位継承者としての責任に目覚めた白雪姫がこっそり紛れ込んでおり、王子は美しい姫と恋に落ちてしまった。女王は怒り狂い、おべっか使いの臣下ブライトンに白雪姫暗殺を命じる。
ブライトンは姫の父王への恩義から、彼女を森の中に逃がしてやった。森の怪物に怯えた姫は、王子を襲った7人の強盗団に偶然助けられ、彼らの仲間に入れてもらうことに。強盗団たちは、実は生まれつき身長の低い(全員120センチ以下)者達であり、その容姿のせいで、女王や国民から“小人(ドワーフ)”と忌み嫌われ、理不尽にも国を追放された身の上だった。その境遇を恨んだ彼らは、国の人間から金品を巻き上げることで森の中でひっそりと暮らしていたのだ。白雪姫は、困窮した国民の血税を盗んだ彼らを戒め、それを彼らの名において返却させた。以来、姫と強盗団の絆は深まり、女王への逆襲を誓う姫に7人のドワーフが協力することになった。
一方、白雪姫が生きていることを知った女王は、鏡の精の黒魔術を使って姫の抹殺を画策。王子には惚れ薬(子犬用だったが)を飲ませて意のままに操った。姫とドワーフたちは辛くも魔術から逃れたが、無理矢理女王の虜にされてしまった王子と女王の結婚が明日に迫っている。姫はドワーフたちの助太刀を得て、彼らの結婚式に乗り込む決意を固めるのだった。


前置きしたように、このグリム童話原作の“白雪姫”をリブートした映画は2本あり、1本が先に日本公開されていた「スノー・ホワイト」で、もう片割れが今作「白雪姫と鏡の女王」となります。白雪姫に関する詳しいお話は、以前の記事でも書きましたので繰り返しませんが、結局、この2本ともを鑑賞することになったわけですね。

「白雪姫と鏡の女王」に関連するブログ内記事
鏡よ鏡、ショーン王は何処? "Mirror Mirror"と白雪姫。
『Mirror Mirror』のキャラクター・ポスターとアーミー・ハマー。
The Three Faces of Sean―ショーン・ビーンさんの3つの顔。

…ご参考までに。

「スノー・ホワイト」は、今流行の“シリアス&ダーク路線”で白雪姫の物語を解釈し直し、魔法と現実が渾然一体となった時代に展開された白雪姫と魔女の戦いを描きます。しかしながら、幽閉されていた城を姫が命がけで脱出するくだり以降、急速にトーンダウンし、どうでもよいエピソードをだらだら繋げて間延びしてしまうぐらいなら、いっそ「白雪姫と鏡の女王」のように、御伽噺を確信犯的にお笑い&悪ふざけ路線で紐解いた方が楽しいですわいな。

実際の話、私は「白雪姫と鏡の女王」を大変愉快に鑑賞させていただきましたよ。エンドクレジットまで、随所に挟まれたシニカル風味のギャグに笑いつつ、徹頭徹尾“ターセム色”に染め上げられた白雪姫に良い意味で予想を裏切られた印象です。それはおそらく、この物語が、あくまでも“白雪姫と7人のドワーフたちの絆”を中心にして展開されているためでしょうね。

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そうなんです。今作の勝因(私が勝手にそう思っているだけですが・笑)は、このドワーフたちを、単なる白雪姫の背景に留めるのではなく、彼らそれぞれのキャラクターから、コミュニティー内における辛い境遇に至るまで、ここだけは妙にリアルに丁寧に描写したことにあるのです。女王が権力を握る社会の中では、子供のように我侭で己の欲望に忠実な女王が、後先考えず幼児のごとく暴君ぶりを発揮します。その圧制に虐げられるのは国民でありますが、さらにその下には、貧窮する国民たちですら蔑む存在があるのですね。身体に何らかの障害を持って生まれた人たちは、社会の中の最下層に貶められるのが世の常です。
かつて名君の下で国が繁栄していた時代には、国民全体が豊かで余裕もあり、ドワーフたちのような存在もごく普通にコミュニティーに受け入れられることができました。しかし、女王による搾取の時代が始まって国が貧しくなると、抑圧された国民の欲求不満の矛先をかわすため、誰かが犠牲にならねばなりません。そんな国民のスケープゴートにさせられたのが、7人のドワーフたちであったというわけ。コミュニティーの中からはじき出されたドワーフたちは仕方なく、魔物がうろついている危険な森に身を潜め、旅人から金品を奪う強盗にまで身を堕としてしまったのです。
最初に彼らの襲撃に遭う育ちの良い王子でさえ、彼らの本当の姿を見て“子供のようだ”とあざ笑いますが、彼は何も悪意があってそんな態度をとるわけではありません。無意識のうちに“自分とは違うもの”を“自分より劣っているもの”と捉え、意識下で常に働いている異分子への差別や偏見を表出させたに過ぎないのですね。王子が無邪気に“子供とは戦わない”と口を滑らせるシーン、よくよく考えると、恐ろしい意味が暗示されていると思いますよ。表向き誠実で正義の人、そしてドワーフのようなか弱き人々を真っ先に助けねばならない王子にすら、一皮剥けば下衆な差別意識があるんだぜ、というね。まあそんなわけで、無言のうちに多方面から蔑まれているドワーフたちが、自分らの身長ほどもあると思しき竹馬を装着し、“大きな人たち―身分も身長も態度も―”を見下してコテンパンにやっつけるシーンは、大変に爽快です。

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しかし、観客としてそれを見ている私らは、どちらかというと王子や大多数の“無辜の民”の方にカテゴライズされる立場。スクリーンで7人のドワーフたちが初登場するシーンでは、その姿を目の当たりにすることへの途惑いを隠せない人も多かったのでは。ところが、そんな私たちの後ろめたい思いも、一切の偏見を持たない意味でも純白な白雪姫という存在に緩和され、彼らが協力して形勢を逆転していく様子に溜飲を下げるようになります。結局、白雪姫もドワーフたちも、社会から追い出されてしまった似た者同士ですもんね。弱い立場の者に肩入れしたくなるのも人情です。

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さて、ドワーフたちと白雪姫の絆が、監督によって意図的に現実世界を反映した関係になっているのと同じく、実は我侭浪費女王のキャラクター背景にも、一捻り面白いアレンジが施されています。若い頃はそりゃ別嬪さんだったろうし、それを武器に散々好き勝手やってきたんだろうけど、寄る年波によって美貌が衰えていくことへの危機感と、美しく成長したティーンエイジャーの脅威に怯える中年女。彼女にとっては、世界で最も美しい自分が権力の頂点に居座ることだけが人生の最重要事項であり、それ以外はどうでもいいのです。いい年して、おつむも人間としての器も空っぽ。つまりそれが、この映画における女王を表現する全てです(笑)。

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おまけにこの女王様、「スノー・ホワイト」のシャーリーズ・セロン兄貴のように凄い魔力を持っているわけでもありません。顔を歪めると、心底意地悪オババの顔になっちまうジュリア・ロバーツ女王は、黒魔術を駆使する鏡の精と契約を結んでいるに過ぎない、ただの人間なんですね。ですから、女王は鏡の言いなり。魔法を使いたければ、女王は自分自身を生贄にして鏡の精に膝を折らねばなりません。そんな諸々の設定もかなり意地悪ですし、それに女王のような中年女って、ちょっと周囲を見回せばあなたの近くにもいますでしょ?んまー、年甲斐もなく若い娘と張り合おうと、ティーンが好むような格好で若作りして、却って墓穴を掘っている女性(笑)。そう考えると、この女王様のキャラもかなりリアルだといえないこともないわ(笑)。

女王が“鏡よ鏡…Mirror mirror, on the wall”と唱える呪文はお約束のシーンですが、さすがは“箱庭”映像を撮らせたら一流のターセム監督、女王と鏡の精をつなぐ世界観も一風変わっていました。呪文と共に鏡が水のようになり、女王はその中を通って、鏡の精が待つ鏡の国に入っていきます。見れば、そこは随分広々とした空間のようなのに、女王は湖の真ん中に渡された細〜い木の橋を渡り、わざわざ粗末な木の小屋の中に入っていきます。女王は、何事か叶えて欲しい要件があると、その小屋の中に住む鏡の精に会いにいくのですね。この精霊は、現実世界の真実とこれから起こるであろう未来も予見できるため、まるで考えなしの、行き当たりばったりで愚昧な女王を見下しております。そんな力関係にある精霊と女王の容姿が全く同じ(ただし精霊は年はとらないため、若い娘の姿のまま)だというのも辛らつ。

ジュリア・ロバーツは、彼女の実年齢相応のえげつない押し出しで、楽しそうに邪悪な女王を演じていますが、これどうなんでしょう。余計なお世話かもしれませんが、彼女が演じている女王様って、現実世界の彼女自身のような人種を揶揄したキャラクターだということは、引っ掛からなかったのかしら(笑)?なんぼ女優さんでも、自分自身をカリカチュアしたような役柄に扮するなんて、自虐以外のなにものでもないでしょうにね。

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さて、今作では、白雪姫と女王の戦いのキーパーソンというか、ぶっちゃけ要因となる王子様ですが。「ソーシャル・ネットワーク」では名家の跡取り息子ウィンクルボス兄弟を一人二役で演じ、「J・エドガー」ではフーパーFBI長官の右腕クライド・トルソン(こちらも、元は由緒正しい家柄の出身だった)に扮し、ブレイク間近だといわれているアーミー・ハマーが演じております。本編が到着する前から、かなりのおバカ演技を披露してくれるのだろうという期待はありましたが、まさかここまで吹っ切れているとは思わなかった(爆笑)!!
折り目正しく、良い教育を受けた、知的で善良なる王子様ではあるのですが、詰めが甘くていつも土壇場でやられてしまうタイプ。ドワーフたちにもあっさりやっつけられましたし、ドワーフたちに鍛えられ、成長著しい白雪姫の初陣(笑)でも背後を取られたし。おまけに、年増女王の手管と魔法で操られてしまうのだから情けないやら。現代の御伽噺では、この頼りない王子様をしっかり者のお姫様が助けに行かねばなりません。
アーミーの実家は、本当にアメリカの由緒正しい名家だそうで、あの黙って立っているだけでも感じられる“いいとこの坊ちゃん”オーラは地だったのですね。そんな、生まれてくる時代を明らかに間違えたようなアーミー坊ちゃまが、捨て身のコミカル演技を大熱演。いやー、わたしゃ、彼に対する評価がこの作品で随分上がりましたよ、ホント。

この作品、確かにお気楽、能天気なストーリーに見えますが、実際には、王位継承を巡る姫と女王の権力闘争と、一人の男を巡る女と女の意地を賭けた争奪戦を描いたものです。これをそのままリアルにシリアスに映像にしちゃったら、吐き気を催すほど陰惨な絵になったでしょうね。そうはならなかったのは、故石岡暎子女史をはじめとする“ターセム・ファンタジック・アート・チーム”による、やばいクスリでも極めたかのようなカラフルでポップな色合いと、動物をモチーフとした奇妙で斬新なデザインの衣装や小道具、全てが作り物じみているような箱庭的人工美を追求した美術に、観客が目を奪われてしまうせいです。そして、登場人物たちの、時に悪ノリ過ぎるコミカルでテンポ良いやり取り、オーバーにカリカチュアされた演技に、ついつい笑ってしまうからです。ダメ押しでもう一つ、姫に扮するリリー・コリンズ(フィル・コリンズの実娘)の今どき珍しいおぼこくて可愛らしい佇まいと、そのままディズニー映画の実写版に出ても違和感がないような美男アーミー王子様が、世知辛い現実をほんのいっとき忘れさせてくれ、絵に描いたような御伽噺を夢見させてくれるからですね。“御伽噺”の現代的解釈の一つのあり方として、これはひょっとしたら正しく映画的な作品なのかもしれません。

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ショーン・ビーン扮する王様の扱いですが、私はこれでよかったと思っています。そりゃまあ、もっと出番を増やしてくれてもいいんじゃないかとは考えましたがね(笑)。特に冒頭の、王様が失踪して白雪姫が幽閉されるまでを説明する人形劇のシーン。あれはあれで、ターセムが最も得意とする“夢をみる感覚の再現”にマッチした、不思議な美しさを持つもので好きなのですが…。ただでさえ王様の扱いが軽いお話なのに…ねえ(笑)?
まあでも、王様をああいう形でこの楽しいお話に登場させてくれただけでも、私は幸せですよ。詳しくは本編を観ていただければわかりますが、事情が事情ですから、あの時のショーン王の演技はあれでいいんです。それに、ショーンがこれまで“出演作で必ず死ぬ俳優”だとか“登場してすぐに死ぬ俳優”だとか言われてきた経緯を考えると、世間様のショーンへのそうした先入観をひっくり返す計らいだったのかとも思えます。…違うかもしれんけど(笑)。

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女王様以外の登場人物たちが、“happily ever after”とマサラ映画のように歌い踊る大団円、キッチュでシュールでカラフルで、へんてこな御伽噺が終わり、なんとはなしに寂しい気分になりましたとさ。


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