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zoom RSS 「コッホ先生と僕らの革命 Der Ganz Groe Traum」…追記しました。

<<   作成日時 : 2012/11/19 11:11   >>

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本日のお題は、「コッホ先生と僕らの革命 Der ganz grosse Traum」。

ドイツ版「いまを生きる」と称される本作、ドイツに初めて“サッカー”という概念を持ち込んだ、ドイツ・サッカーの父“コンラート・コッホ先生”の伝記映画ですね。ドイツ・サッカーの黎明期を探ると同時に、19世紀末のドイツでは当たり前でもあった、厳格で保守的なモラルと哲学に、柔軟性と自由をもたらそうと真っ向から対立したコッホ先生と、彼を支えた生徒達の熱き戦いの物語でもあります。

コッホ先生はサッカーボール一つで、規律と服従と忍耐を強いるドイツの教育理念をも根底から揺るがし、帝政ドイツを支えていた厳しい階級制や国粋主義の殻を、子供達のために破ることになりました。もちろん、彼のこの“革命”がどれだけ困難な状況であったかは、本編を観れば充分すぎるほど伝わってきます。しかしながら、彼がドイツのためにこじ開けた扉が為政者の圧力によって閉じられてしまう前に、その扉を蹴破る原動力となったのは、やはり彼の教え子たちでした。彼らが大人達に強いられていた手枷足枷を自らの意思で解き、新しい時代の可能性を肌身で実感したのは、コッホ先生のサッカーボールがきっかけだったというのがね、また泣かせてくれますよ(感涙)。

登場する子供達のキャラクターの描き分けは、金持ちで地域の名士を父に持つ優等生的少年をリーダー格に、その手下的少年たち、クラスの中では割と中立的だけど父親へのコンプレックスに打ち勝てない少年、金持ちのための学校に特例で入学を許可された、貧しい出自なれど優秀な、でもいじめられっこな少年…等々、この手の作品ではお馴染みの演出です。加えてコッホ先生にも、旧ドイツ独特のモラルにがんじがらめにされている弱みがあり、子供達に階級制度を打破する“新しい目”と、同時に根本的な人間性そのものへの敬意を教え説くうちに、彼自身が“新しいドイツ社会”に飛び込む勇気を得ていく流れも真っ当ですね。

一番最初のきっかけは、サッカーボールを見たこともなかった子供達に、生まれて初めて“ボールを蹴る”ことを教えたコッホ先生でした。でも、ボールを蹴ることで生まれる自立精神、自信、仲間との連帯感(チームプレー)や対峙する相手を敬う心(フェアプレー)を、新しい時代を迎えようとしていたドイツ社会に実際に根付かせたのは、コッホ先生の“子供達”の世代。本編最後とそれに続くエンドロールで登場する、実際のコッホ先生の子供達の写真や記事でその事実が明らかになります。

…ここでコッホ先生の実像を明かすのもどうかとも思いますが、映画への翻案といった意味合いで少しだけ触れておきます。実際のコッホ先生は、映画とは違い、英国への留学経験はありませんでした。その代わり、英国で生まれたスポーツ、サッカーを児童教育に取り入れることで、教育の中で最も重要である“子供達の人間性の発達”に貢献できるという信念の下、サッカーをきっかけとした近代的な児童教育の確立に腐心した人物であったそうです。同時に、当時のドイツと敵対する関係であった英国を凌ぐためにも、ドイツの子供達は英語を知るべきだとし、サッカー用語を通じて英語の普及にも努めたとか。
こんな彼の“教育革命”は、天敵英国を海戦で破ったばかりで士気の上がるドイツ国家の中では、当然なかなか理解されませんでした。しかし、彼の子供達の発奮のおかげで、彼は学校を卒業した子供達と共に、ドイツ初のサッカークラブを設立。ドイツ国内でもサッカーを禁ずる地域は根強くあったのですが、彼らの粘り強い普及活動の成果で、徐々にサッカーを解禁する地域が増えていきました。そして、長い年月を経て、欧州でも有数のサッカー大国となった現在のドイツがあるのですね。
そんなわけで、映画本編での、コッホ先生と英国の教師仲間との絆や、彼らがコッホ先生の窮地を救うためにはるばる英国からドイツに親善試合にやってくる…といったくだりは、多分にフィクションであります。しかしまあ、そこはそれ、別にコッホ先生の伝記を美化したというわけではなく、映画的なメリハリをつけるといった意味で、あっても良い脚色だと思いますよ。それに、サッカー映画にはね、やはり“試合する”シーンがクライマックスであって欲しいのよ!!試合するシーンのないサッカー映画なんて…なんて…、溶き卵のないすきやきみたいなもんですもの(笑)!!

なにはともあれ、ストーリーには多少の脚色は施されているにせよ、それが作品のテーマを曇らせることにななりません。全ての子供達には、学校や地域社会の中でちゃんとした居場所が確保されて然るべきですし、それを用意してやるのは我々大人の責任でもあります。サッカーというスポーツがそのことに役立った素晴らしい例が、このコッホ先生のケースだったということでしょう。

子供はすごいです、ほんとに。彼らが備えている未知なるパワーって計り知れません。大人になるにつれ、いろんなものを諦めてしまうようになった私たちの世代も、その子供達の未来のためにもう一頑張りするか!という気にさせられますもんね。

…結論。
サッカーに、貴賤の差も国境も人種の別もない。
それを身をもって教えてくれたコッホ先生の授業、私も受けたかった(本気)!!!
奇を全く衒わない、まっすぐで素直な演出、コッホ先生と生徒達の冒険を熱く演じるダニエル・ブリュールと子供達の演技に、予定調和だとわかっていてもやっぱり共感してしまうのは、私がサッカー好きだからでしょうかね(笑)。

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「コッホ先生と僕らの革命 Der ganz große Traum」 (2011年)
監督:セバスチャン・グロブラー
製作:アナトール・ニチュケ&ラウル・ライネルト
原案:セバスチャン・グロブラー&ラウル・ライネルト
脚本:フィリップ・ロト&ヨハンナ・ストゥットゥマン
撮影:マルティン・ランガー
プロダクションデザイン:トーマス・フロイデンタル
衣装デザイン:モニカ・ジェイコブス
編集:ディルク・グラウ
出演:ダニエル・ブリュール(コンラート・コッホ)
ブルクハルト・クラウスナー(グスタフ・メアフェルト校長)
ユストゥス・フォン・ドーナニー(リヒャルト・ハートゥング会長)
カトリン・フォン・シュタインブルク(クララ・ボーンシュテット)
トマス・ティーマ(ボッシュ先生)
テオ・トレブス(フェリックス・ハートゥング)
アドリアン・ムーア(ヨスト・ボーンシュテット)
ティル・ヴァレンティン・ヴィンター(オットー・シュリッカー)
ユルゲン・トンケル(イェッセン先生)
アクセル・プラール(シュリッカー・シニア)
ヘンリエッテ・コンフリウス(ロザリー)他。

19世紀後半、普仏戦争でフランスに勝利し自信を深めた帝政ドイツでは、イギリスとの覇権争いへと関心が向かい、国民の反英感情がかつてない高まりを見せていた。そんな中、イギリスに留学していた青年コンラート・コッホが、名門カタリネウム校にドイツ初の英語教師として赴任してくる。しかしすぐに、生徒たちのイギリスに対する強い偏見と階級による露骨な差別意識に直面する。さらに、規律を重んじ、教師への絶対服従を強いる学園の封建的な雰囲気にも不満が募る。そこでコッホは授業にサッカーを採り入れ、生徒の自主性を引き出すとともにフェアプレーの精神とチームワークを学ばせることを思いつく。最初は戸惑っていた生徒たちもいつしかすっかり夢中になり、サッカー用語を通じて英語も学ぶようになっていくのだったが…。 ―allcinema onlineより抜粋


出演陣の中では、クラスの中のいじめられっ子であったのに、サッカーによって意外な才能を伸ばし、仲間に認められるようになる“ミスタ・ボーンシュテット”を演じたアドリアン・ムーア君と、そのボーンシュテット君をいじめていた金持ちの子息フェリックス役のテオ・トレブスが出色。特にテオ・トレブス君の方は、権威を笠に着た父親の圧力に一旦は屈したものの、使用人の娘との身分違いの恋や、仲間との確執と和解を経て父親を超える存在に成長するといった過程を、無理なく演じてみせてくれました。ぱっと見には少々冷ややかなイメージのルックスも相まって、今後様々な作品に起用されるのではないかと思っています。

そして、この作品を観ていてしみじみ感じたのですが、いつまでも若手だと思っていたコッホ先生役のダニエル・ブリュールも、“先生”を演じる年齢になっていたのですねえ…。「グッバイ、レーニン!」での初々しさが、ついこの間のことだとばかり思っていましたのにね(笑)。いやはや、月日が経つのは早いもんだわ…(遠い目)。

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そして、世界中どこに行ってもサッカー三昧な素敵な中年が、この人たちになります。

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