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zoom RSS 破壊の神になった男。―「プロメテウスPrometheus」エンジニア考

<<   作成日時 : 2012/09/12 23:33   >>

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弟のトニー・スコットが自死した悲しみを癒すべく、現在は一時的に公の場から姿を消し、遺族と共に過ごしているといわれるリドリー・スコット監督。今現在、私生活でも身辺慌しい状況にある監督ですが、彼が久しぶりにSF映画の領域に戻ってきたとして話題を呼んでいる新作「プロメテウス Prometheus」も、観客、批評家入り乱れ、賛否両論真っ二つに分かれた姦しい議論が繰り広げられています。

「プロメテウス」には、人類の始祖となり、かつ同時に破壊者にもなりうる(映画本編を観る限り、幸いにも地球は彼らの破壊活動から逃れた模様)宇宙人“エンジニア”が登場します。この“エンジニア”と呼ばれる謎の宇宙人について、ちょっと考えたことをまとめてみますね。

コインの表と裏のように、彼らには、自らのDNAでもって全ての生命の根源を生み出す一面と、逆に彼らを滅ぼす最終兵器を作り出す一面があります。そのアンビバレントはあたかも、“人間”を創造したはいいが、自らの意思を持ち、知恵と傲慢に驕った彼らに手を焼いた末、大雨と大洪水でノア以外の全人類を滅ぼそうとした“神”のようですね。

もし私たちが、いわゆる“神”と呼ばれる存在を目にすることがあれば、彼らは一体どんな姿をしているのでしょうね。ギリシャ神話や北欧神話の神のように、“人間”の基準で考えるところの完璧な美貌を持つ存在でありましょうか。それとも、私たちの想像を軽く凌駕する異形なのでありましょうか。「プロメテウス」では、エンジニア(=神)その人こそ、我ら人類の原型だという設定ですので、その姿かたちは、人類とそんなにかけ離れたものではありません。しかし、人類と共に彼らが作りあげた“エイリアン”は、全ての人類が持つ憎しみと恐怖、残忍さ、愚かさといった暗黒面を極限まで濃縮したかのようなすさまじき造形でした。それは果たして偶然の産物だったのでしょうか?

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「プロメテウス」を観ながら感じたのは、エンジニアにとっては、所詮“人類”も“エイリアン”も全く同等のクリーチャーであり、彼らが己の科学力(神の力)を誇示するために作った製品に過ぎないのだろうということです。我が子“人類”の禍を帳消しにするため、もう一人の我が子“エイリアン”を戦わせるという発想。これはまるで、おもちゃに飽きた子供が、新しいおもちゃを手に入れた途端、古いおもちゃに見向きもしなくなり、やがては他のガラクタと一緒にそれを捨ててしまうようなものですよね。
「プロメテウス」に登場したもう一人のキーパーソン、アンドロイドのデヴィッド8は、早い段階からそのことに気づいていたようです。デヴィッドとて、エンジニアの“製品”たる人類の更なる産物なのですから、使い物にならなければ遺棄される“製品”の運命を嫌というほど承知しているはず。彼は、自分を使役する人類に向かって、そして、自らを神と同等に扱おうとする人類に向かって、『あなた方も、エンジニアにとってはいずれ廃棄処分となる製品の一つに過ぎないのですよ』と声を大にして言いたかったのかもしれません。エンジニアの強大なパワーの前では、何人たりとも、吹けば飛ぶような羽虫と同じようなものなのですから。

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映画冒頭のこのシーンは、エンジニアが自らの肉体とDNAを生贄にして多種多様な生命を生み出さんとする、これぞまさしく“生命誕生”のシーンなのです。彼らは何の疑念も持たず、はたまた何らの恐怖心もなく、己の強固な信念(あるいは哲学)にのみ基づいて、他の生命誕生のために自分自身の生命を投げ出します。それは、なにかとても尊く気高い行動のように見えますが、彼らが最終的にもう一つの“製品”であるエイリアンの返り討ちにあってしまう(まだ彼らの母星が登場していないので、今後の作品で他のエンジニア達が紹介される可能性はあります)皮肉な末路を思うと、これもやはりエゴイスティックで驕慢な行動だったのかと思いますね。エンジニアの目的とは一体なんだったのか。新しい生命を生み出し、彼らを平伏させて、彼らの上に君臨することを願ったのでしょうか。

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我ら人類の神話に描かれる神はいずれも、神への絶対服従を強いる冷酷で非情な存在であり、その度合いが過ぎて、結局人類の前から姿を消してしまいます。神が神とは思えぬほどの傲岸不遜な存在として描かれるのは、そこに人類の神への不満があったからに他なりません。絶対的パワーで頭を押さえつけられるうちに、いつの間にか生まれた人類の自我は、服従することへの不満の澱をやがて爆発させます。自らを“万物の長”と呼び、創造主である神に近づき、神に反旗を翻し、神に成り替わる野望を人類の胸に産み付けていったのですね。人類はその行動を“進化”という言葉で飾り、その誤った“進化”の結果、創造主と同じようにいずれは地上から消え去る運命にあるのでしょう。結局我々人類は、エンジニアと全く同じ運命をトレースしているだけなのかもしれません。

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本作の主人公である“探求者”エリザベス・ショウは、恋人と仲間全員を亡くした末に、“結局人類もその創造主であるエンジニア同様、消滅の運命にある儚い生き物だ”という結論に到達します。エンジニアは、おそらく地球以外にも自らのDNAによって生命を生みつけていたのでしょうが、それが一体何が原因で、彼らの祝福された子である人類を滅ぼそうと考えを変えてしまったのか。人類がエンジニアと同じように知識と文明を身につけ、冷酷、残忍なダークサイドをあらわにし、創造主に牙を向き始めたからなのか。

エリザベスより一足先に、同じような結論にたどり着いていたデヴィッド8は、エンジニアの母星に行って更なる探究を続けようとする彼女に問います。

「今更そんなことを知ってどうするのです?」

人類もエンジニアも同じように、過信した己のパワーの産物によって足元を掬われ、あっけなく滅びる。結論は既に出ているではないかと。しかし、自分の知りたいと願う真理を手にするまでは、たとえ死の危険を冒しても探究せずにはおれないのも、また“探究者”の宿命です。生物はすべからく運命と宿命に沿うもの。同じように真理を求めながらも、“知る”ことへの怒涛のごとき欲求、解析不能な感情を一切伴わないデヴィッドには、エリザベスのような探究への執念はありませんし、理解もできません。

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全知全能となり、他に探究すべきものがなくなってしまったエンジニアには、もう“破壊する”ことしか残されていなかったかもしれませんが、人類はそうではないですよね。一つの真理に到達したと思っても、さらに新たな疑問が生まれてきますし、その禅問答には終わりがありません。エリザベスはきっと、“エンジニア”という存在そのものを理解したいのだろうと思います。彼らを理解できれば、きっと人類をも理解できるでしょうから。もっといえば、エンジニア自身も気づいていないかもしれない彼らの存在意義を、彼女は突き止めたいと思っているのではないでしょうか。

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それはすなわち、“生きとし生けるものはなぜに生きるのか?”という、究極の真理への探究を意味するのです。


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映画「プロメテウス」のノベライズ。これ、日本だけでしか出ていない小説だとちらっと小耳に挟んだのですが、真偽の程は存じません。

さてと。
ここで終わってしまうと、唐突に「プロメテウス」のエンジニアの話なんか始めちゃって、豆酢はどっかで頭でも打ったのかと奇異に思われる方もいらっしゃるでしょうから(笑)、ちょっとだけ補足を。

結局「プロメテウス」という映画は、SF映画史に残る傑作SFホラー「エイリアン Alien」シリーズの新たなる始まりとは言えないのではないかと考えたのですよ。“あの「エイリアン」の興奮をもう一度っ!!!”と期待していた方々の目には、おそらく今作品は“期待はずれ”と映ったことでしょう。「エイリアン Alien」第1作目を思い出してみてください。よもやこんな長寿シリーズになるなど予想もしていなかったダン・オバノン Dan O'Bannon達クリエイターは、後先の設定のことなぞ考えず、ただひたすら密室内で未知の恐怖と戦うおぞましさを追求していました。それが功を奏し、広大な宇宙を背景としながらも、逃げ場のない空間で絶望するという皮肉な恐怖を、存分に描出できたわけです。

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この「プロメテウス」では、エイリアン誕生の理由を明らかにすると同時に、人類誕生も恐るべきメカニズムを経て、予め計画されていたことだったのだという新しい神話を始めようとしたのではないでしょうか。エイリアンと人類の切っても切れない関係性はどこから始まったのか、そして、なぜエイリアンと人類はこの世に生を受けねばならなかったのかを説明しようというわけです。これは、過去の「エイリアン」シリーズとは、出発点こそ共有する関係なれど、実は全くもって新しい物語の始まりを意味しています。つまり、「プロメテウス」を分岐点として、未来に向かっては、エレン・リプリーという孤独なサバイバー対エイリアン(+ウェイランド社)の戦いの神話が続き、過去に遡っては、エリザベス・ショウという苛烈な探究者によるエンジニア探索の神話が続く(だろう)という按配ですね。今作と過去の「エイリアン」シリーズとの関係は、そんな風に位置づけられているような気がします。このように整理しいていくと、混乱した思考も少しは落ち着くでしょうか。

それからもう一つ。「プロメテウス」の劇場用作品は、おそらくストーリー上大切なシーンがところどころカットされた状態ではないかと推察します。今後発売されるDVDとBlu-rayでは、リドリー・スコット作品では既にお馴染みの(笑)“ディレクターズ・カット版”がリリースされるでしょう。それを観れば、今作で説明不足だった部分、あるいは、もう少し突っ込んだ描写が欲しかった部分などが、補完されるのではないでしょうかね。それを期待しましょう。

「プロメテウス」のもう一人の主人公と断言しても良いエンジニアのお話をしたので、最後はエンジニアで〆ましょうか。映画冒頭で自ら生贄となって、ある惑星(地球かもしれない)に多種多様な生命の源を産み落とすエンジニアが登場しますね。記事中にも画像を貼りました。このエンジニアを演じている役者さんの画像が、海外の映画サイトに掲載されていたので、ちょっとお借りしてみます。あんなに見事な身体の(笑)宇宙人を、一体誰が演じとったねん?!と密かに気になっていた方も多かったのでは?

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エンジニアの母星で“選ばれし者”に任命されたのであろう、生贄エンジニア。

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実は、ダニエル・ジェームズさんというイケメンが演じておられました。

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パテというかゴムというか、そんなものをゴッテリ盛られ中。全身特殊メイクは大変ですね。

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でもやっぱり、改めてしげしげじっくり舐めるように眺めてみると(大笑)、中の人、ダニエルさんも相当にエエ身体の持ち主だとわかります。映画後半に登場する、コールド・スリープから覚醒したエンジニア(話しかけてきたデヴィッド8の頭を引っこ抜いちゃったエンジニアね)は、また別の役者さんが演じているそうですよ。

うーん、映画ってやっぱりロマンですねえ…。

オチが失速しちゃって申し訳なく候。


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