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zoom RSS Vidal Sassoon the Movie, 笑顔の革命児“ヴィダル・サスーン”に学べ。

<<   作成日時 : 2016/01/14 09:28   >>

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この「ヴィダル・サスーン Vidal Sassoon the Movie」、ドキュメンタリー映画ながら非常に考え抜かれた構成と演出が施され、美容業界の枠内に留まらぬヘア・デザイナーだったサスーンに敬意を表し、大変スタイリッシュに仕立てられた映像も魅力的でありました。とりあげた題材もドラマティックなら、彼の足跡を追った映像の方も、サスーン本人へのインタビュー映像とアーカイヴを中心に、モノクロや60年代を思わせるレトロ・カラフルな映像を効果的に挟んで飽きさせません。このサスーン・ドキュメンタリー企画は、書籍とこの映像作品と同時進行で製作が進められたらしく、仕掛け人は、晩年のサスーンと親交の深かったマイケル・ゴードン(美容サロンとヘアケア製品のメーカー、バンブル&バンブルの創設者。90年代に美容界の巨人を取材した書籍「ヘア・ヒーロー」も上梓。この本が縁でサスーンと知り合う)で、とにかく過小評価されがちなサスーンの功績をもう一度世に問いたいという熱意が、エネルギッシュな今作にもよく表れていました。

私は、ドキュメンタリー作品という分野はとにかく、映像の美しさ云々以前に、フォーカスする対象を観る者にわかりやすく解説できていなければ失格だという意見を持っています。今作は、幼い頃に父親に捨てられ、苦労を重ねた母親との強い絆に支えられた少年時代から始まり、ユダヤ人のアイデンティティが生む葛藤に苦しんだ青年期、美容業界に転身し、やがて60年代の到来と共に英国のモードを象徴する存在へと成長する姿を、“ヴィダル・サスーン”という名前を知らない人間が見ても容易に理解できるよう、うまく描写できていたと思います。その上で更に、一つの“エンターテイメント作品”としても出色の仕上がりをみせています。これまであまり知らなかった“ヘア・デザイン”の世界の歴史を、大層興味深く拝見いたしましたよ。

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この作品は、2012年5月ロサンジェルスで亡くなった、伝説的なヘアデザイナーにして最も成功した実業家の一人であったヴィダル・サスーンの、波乱の生涯を追ったドキュメンタリー映画です。60年代という、最も刺激的な空気が沸点に達していた時代に、美容界を内側から変革して他の分野と結びつけ、新しいアートのカタチを生み出し、果ては女性のライフスタイルさえ変えてしまった男。

戦後のロンドンで、ユダヤ人として貧困と差別に苦しんでいた彼が、どうやってたった一人で美容業界に革命を起こし、またヘアデザインとビジネスを上手く結びつけたのか。ヴィダル・サスーンは、目の前にある厳しい現実を自らのチャンスに変えていった、真のファイターでありました。マイケル・ゴードンのインタビューに答えるサスーン(当時80歳)は、老齢に達しても尚チャーミングそのものの笑顔、悟りの境地をひらいたかのような穏やかな話術で、スクリーンのこちら側にいる観客までもあっという間に魅了してしまいます。しかし、その一見柔和な笑顔のすぐ裏側には、今もなお燃え盛るような創造への情熱を宿し続けていることも、同時にうかがえますね。彼はおそらく亡くなる直前まで、貪欲かつ冷徹なファイターであっただろうことが容易に理解できるのですね。

1965年から活動の拠点をアメリカに移して以降、83年に“ヴィダル・サスーン”ブランドのヘアケア製品開発部門を他企業に売却(その後すぐにその企業がP&Gに買収されたため、サスーンはP&Gとの契約に縛られることになる)するまでの間、彼は美容のカリスマとしてテレビ業界に進出したり、健康ブランド作りに貢献したり、いわゆる“タレント”化して幅広い活躍をみせました。常に未来を見据えながら、美容業界に留まらぬ広い視野を持ち続け、未踏の地を前進し続けたサスーンでしたが、80年代からはピークを過ぎた者が見舞われる挫折を味わうことになります。離婚、長女カチャのオーバードーズによる死去、サスーンの名前を冠したサロンとアカデミー(美容学校)の売却等々、一時代を築いた不屈のファイターにとっては公私共に悔いの残る時期があったことが、本人の重い口からきちんと説明されていました。

成功者の光と影を客観的に描くことで、彼が老いたりといえども、今尚“満足”を知らぬ現役であることを強調しようとしたのでしょう。が、私自身は少し違う感慨も持ちました。美容業界における華やかな業績に反し、私生活の方は必ずしも恵まれていなかったサスーン。都合3度の離婚を経験したことは、幼い頃に父親の愛情を得られなかったトラウマと相まって、サスーンのダーサイドを一層深いものにしてしまったように感じます。彼は結局そのトラウマを一生克服出来なかったのでは。だからこその、あの、一瞬たりともじっとしていられないパワフルな活動に繋がったのでしょうね。

90分のこのドキュメントは、サスーンの過去の功績を振り返る内容のものですが、劇中でサスーン本人が指摘しているように、彼の歴史を紐解くことで、不安定な現在の世界情勢や先行きの暗い経済界を立て直すヒントにもなると思います。酸いも甘いも噛み分け、成功も挫折も全て飲み込んで、それを糧にさらに前進する決意。混沌とした状況の中から、一筋のチャンスを見出していく先見の妙。特に、今現在、苦しい状況に置かれている多くの迷える日本人にとっては、何よりの励ましと指標となるものが発見できるでしょう。

できれば、若い人にこの映画を観て欲しいなあ。パンフレットに記載されていた、生前のサスーンの最後のインタビューにあったように、震災後の混乱した社会を生き抜かねばならない若い人たちが、この映画を観てなんらかの閃きとパワーを得られれば、美容界の巨人サスーンの魂への最大の供養にもなるでしょうから。

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閑話休題。

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ところで、ファッションにはとんと縁のない私ですが、髪の毛に関しては実は結構興味を持っていたりします。60年代を象徴するといっても過言ではない、サスーン・オリジナルのヘアスタイルの中でも最高傑作“ファイブ・ポイント・カット”には、心底憧れておりました。髪の持ち主の骨格に沿ってヘアスタイルを決めていくという、“タレントの誰それさんと同じ髪型にしてくださ〜い♪”などととても口に出せない真のオリジナル・スタイルですもんね。

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サスーン先生の提唱する“建築学流ヘア・デザイン”カットなら、持ち主の言うことをさっぱりきかない私の頑固な髪の毛も、おとなしくなってくれるかもしれません。なにしろほれ、雨なんぞ降った日にゃ、私の髪の毛はボッサボサの鳥の巣になってしまうのだからして(笑)。


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