House of M

アクセスカウンタ

更新情報

zoom RSS 記憶はあなたに嘘をつく。

<<   作成日時 : 2016/04/10 22:20   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

人の記憶ほどあてにならないものはないようだ。心理学関連の書物を紐解けば、何度も同じ内容の話を目にする。いわく、“人間は自らの記憶を意図的に操作することがある”と。


例えば、ある人の身の上に、酷い心理的後遺症を残すような事件が起こったとする。その人の記憶回路は、当人が気づかぬうちに、別の記憶情景にすり替えることがあるという。従って当の本人は、実際に起こったことに関する記憶を忘れてしまう(ショックで一時的に忘却する場合も含む)という仕組みだ。これは、痛ましい記憶によって、人の精神が混乱と崩壊をきたさないようにするための一種の自己防衛システムというべきであり、人間の身体の不思議を感じる。

それに、普段の生活においても、“これは絶対Aだ”と記憶していた事柄が実際にはBであったりして、自分でその思い違いに驚くことなどしょっちゅうだ。このように、記憶の確実性を阻害しているものの一つに、おそらく私たちの“思い込み”があると思う。何事かを強く思い込めば、いつしか人はその“思い込み”に支配された行動をとるようになる。ことほど左様に、人間の“思い込み”の及ぼす影響は強力なのだともいえるだろう。

だからこそ余計に、この“強制的記憶喪失”というのか、“意図的な記憶のすり替え”は、本人ではない第三者の手によっても案外たやすく発生させられてしまうのではないだろうか。俄かには信じ難いが、かつて実際に起こった事件のように、心理学の専門知識を持つ者が故意に患者の記憶の操作を行うことも、あながち非現実的な話ではない。

それにしても、強制的な記憶の操作によって、何年もの間偽のトラウマに苦しめられる羽目になった被害者にとっては、本当に酷い話だ。途中で“自分は嵌められているのでは?”と仮に疑いを抱いたとしても、精神世界に関わるデリケートで曖昧な問題だけに、下手に動けなかったのだろう。心から同情する。

画像

事件が発覚したケースでは、密室で密やかに行われていた犯罪に調子に乗り過ぎたせいで、犯人は尻尾を掴まれた感が強いが、今後は、この手の心理犯罪がより巧妙化していく気がする。

画像

猫も杓子もカウンセリング流行の風潮の、まさに死角を突いた犯罪であるだけに、違法性を証明するのも困難だからだ。年中慢性的に得体の知れぬ不安を抱え、正体なき恐怖に怯える私達現代人が陥りやすい罠だといえよう。

画像

世界中のニュース・サイトでも引き合いに出されていた映画「インセプション Inception」も、このケースのように、第三者が人の潜在意識に入り込んで、その記憶を操作するアイデアで成り立っていた。

画像

今映像で見えているものが本当に現実なのか、それともただの夢なのか、映画を観ている観客までが分からなくなっていく。今確かに大地を踏みしめているはずの足元が、ぐらぐら揺らいで消えていくような曖昧さ。これこそが、映画「インセプション」が伝える本当の恐怖だろう。私たちの存在証明でもある“アイデンティティ”というやつは、記憶、潜在意識、感情…等々、顕在化不可能な世界と分かち難く結びついている。

画像

“現実と非現実を見分ける術を失う”とはすなわち、私たちの自我の拠って立つところがなくなることを意味するのだ。これは想像を絶する恐怖であるが、日常生活の中でそのことに気づく機会はあまりない。従って、私たちは簡単にその恐怖を忘れてしまう。恐怖の記憶もまた、脳の集積回路がいち早く書き換えてしまうものだからだ。してみると、人間の神経回路を守るためのこの“忘却”システムこそを、真に恐れるべきなのかもしれない。

画像

…現に、ただ今の私の精神状態もまた、現実と非現実の境界を跨いだごとくの、危ういものだ。

画像

…なぜなら、どっちが本物でどっちが偽モノだったか、既に分からなくなっているからだ。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

にほんブログ村

記憶はあなたに嘘をつく。 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる