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zoom RSS ありえないほど悲しい時。

<<   作成日時 : 2016/04/22 09:10   >>

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「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い Extremely Loud & Incredibly Close」を観てきました。「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ダルドリー監督でしたね。

妙に奇をてらったか、もしくは、てらう気力もなくて派手なCGや3Dにおんぶに抱っこの映画ばかりでウンザリする昨今、ストーリーの面白さと演技者の力量だけで直球勝負した、珍しくも素直なドラマでした。余裕がある人は、一度は観ておいて損はない作品だと思います。
エリック・ロスが脚色しただけあって、父の遺品である鍵にぴったり合う鍵穴を探すオスカーの旅と、その謎の鍵は一体何のための鍵なのか?というミステリーが明らかになっていく過程が上手くリンクしています。そして、最終的に謎が明かされる段階で、オスカーの“父親の足跡探し”の旅は、実は、父親を喪うことで無くしてしまった彼自身の自我探しの旅だったことが分かる仕掛けになっています。予想される展開だとはいえ、そこに至るまでの道筋が丁寧に描かれるために、観る側は大きな満足感を得られると思いますね。

この作品の主人公オスカー少年は、ありえないほどの善意に溢れた、ものすごく大きくてあったかい愛情に包まれていたのだという幸せを、最後に認識できました。それもこれも、彼には帰るべき家と、大切な人が1人欠けたとはいえ、家族がいたから。だから彼は、喪失から再生するきっかけも掴めた…。


死者を納める霊廟は、生者が住むマンションの地下に作るといい。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い Extremely Loud & Incredibly Close」
監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:エリック・ロス
原作:ジョナサン・サフラン・フォア
製作:スコット・ルーディン
音楽:ニコ・マーリー
撮影:クリス・メンゲス
編集:クレア・シンプソン
出演:トム・ハンクス(オスカーの父)
サンドラ・ブロック(オスカーの母)
トーマス・ホーン(オスカー)
マックス・フォン・シドー(オスカーの祖母から部屋を借りている男)
ヴィオラ・デイヴィス(「浅い関係がオスカーに深い影響をもたらす夫婦」の妻)
ジョン・グッドマン(スタン)
ジェフリー・ライト(「浅い関係がオスカーに深い影響をもたらす夫婦」の夫)
ジェームズ・ガンドルフィーニ(ロン)
ゾーイ・コールドウェル(オスカーの祖母)他。

人と上手く接する事が苦手な11歳の少年オスカー・シェル。彼はお父さんが大好きだった。お父さんと一緒に、失われたニューヨークの第6区めを探索する冒険は最高に楽しかった。お父さんと矛盾語法ごっこをするのも大好きだった。お父さんがちょっと肩をすくめておどけてみせる仕草も大好きだった。大学で優秀な成績を収めたけれど、家族のために科学者になる夢を諦めたお父さんは、いつだって誇りだった。
でも、一年前に起こったあの“最悪の日”、飛行機がワールド・トレード・センターに突っ込んだあの日、お父さんはそのセンターの中にいたために、永遠に家に帰ってこれなくなった。そしてオスカーは、あの最悪の日からちょうど一年たった日に、お父さんの部屋で不思議な鍵を見つけた。鍵を入れた封筒には“Black”とだけしか書いていない。一体なんのための鍵で、何を開けるものなのか。オスカーは、この不思議な鍵をお父さんからの形見だと思い、その謎をとくことを決心する。“Black”とは誰のことなのか、そして、鍵とその人物との関連は?オスカーは、解答を求めてニューヨーク5区をまたぐ壮大な旅に出発した。



…それでは。

家も家族も故郷も、全部津波に流されて消え果ててしまった人達はどうしたらいいんでしょう。放射能に全てを奪われた人達は?

3.11から5年が年が経過しますが、癒しようのないExtremely PainとIncredibly Sadnessを抱えて途方に暮れる人達が、日本には大勢いるのだということを、エンドクレジットが流れる暗い劇場内で考えました。私たちの国には、700人にも上るオスカー少年がおります。彼らの悲しみは全く癒されないまま。映画を観ながら、私は上映時間中泣いていたのですが、しまいには一体自分が何を悲しんでいるのか解らなくなるほどでした。
映画は映画、現実は現実。両者を切り離して考えねばならないことは百も承知ですけど、そうするには、この映画が描く痛みは生々し過ぎますね。

オスカーを演じたトーマス・ホーン君、この年齢の子供特有の透明で捻れた四次元世界を見事に体現していました。将来彼がどうなるのか不明ですが、今作における彼の存在感は出色。今作を生かすも殺すも彼次第だっただけに、映画を成功に導いたパワーには感服いたしましたよ。ただ、期待したほどマックス・フォン・シドーが出てこなかったのが残念。彼が演じる謎の間借り人は、オスカーが先天的に抱いている過度の恐怖心を克服するために、さりげなく手を差し伸べる存在です。正体は割りと早くにわかってしまうのですが、オスカーの成長を手助けする役割を担うために、もうちょっと突っ込んだ描写も欲しいかなあとないものねだりをしてみます(笑)。

今回私自身は、サンドラ・ブロック演じるママの心模様に最も近く寄り添えた気がしますね。それは、私も彼女と同じ立場だからでしょう。父親を喪った痛みを息子と二人で乗り越えるにしても、彼女のように、少し離れた場所から子供を辛抱強く見守り続けることが、果たして私に可能だろうか?ちょっと考えてしまいますね。だって、そうするには、子供を心から信頼しなければいけませんもの…。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
NHK出版
ジョナサン・サフラン・フォア

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この作品は、ビジュアル・ライティングというユニークな文体で現代アメリカ文壇を代表する作家となった、ジョナサン・サフラン・フォアの小説が原作です。“サフラン・フォア”という姓から察しがつくように、彼の家系はユダヤ人でありまして、日本で訳出されている彼の別の小説「エブリシング・イズ・イルミネイティッド」(これも映画化されました)では、ウクライナに自分のルーツを探しに行く、ユダヤ系アメリカ人の青年の冒険を描きました。おそらくこれは、サフラン・フォア自身の“ルーツ探し”の意味も込められた作品だったのでしょうね。

彼の著した小説を読んでいると、おそらく彼自身が多分にアスペルガー的なのであろうといつも思います。それほど彼の文体はユニークであり、同時に多大な読みづらさも併発しておるわけです。この「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、映画の方を先に見たので順序は前後しましたが、読後の感想は他の作品に劣らず独特だったなあというものでありました。初めて読んだ時は、エニグマ暗号を解読しているような気になりましたしね(笑)。

でも、サフラン・フォアのひねくれた文章に、途中で投げ出さずに最後までちゃんと付き合ってみました。オスカー少年が、9.11というありえないほど悲しい出来事を咀嚼し、父親の死を受け入れるようになるまで、何度も何度も繰り返し父親の足跡を辿ったように、この小説がゴールまでたどり着く過程を、あっちこっちでつっかえながらも繰り返し読んでみました。こんがらがって、ガッチガチに固められてしまった自分の思考が、いずれほどけてくることを願って。

そして、何度かサフラン・フォアの“暗号”に目を通すうちに、荒れ放題だった心の内側が凪いできたことを実感したものです。不思議なもんですよね。このヘンテコな本が、此れほどまでに読む者を癒す力を持っているのは何故なのか?…考えてみても、理由は分かりませんでした。皆目ね(笑)。

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