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zoom RSS 「モーターサイクル・ダイアリーズ The Motorcycle Diaries」の旅。

<<   作成日時 : 2016/11/08 14:58   >>

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現在でも、“反体制のイコン”として世界中の人々の精神的支えとして君臨する革命家チェ・ゲバラ(本名:エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ Ernesto Rafael Guevara de la Serna、1928年6月14日生まれ1967年10月9日没)。彼がまだ“チェ・ゲバラ Che Guevara”として覚醒する前、学生時代に親友アルベルト・グラナードと共に1年がかりで敢行した南米大陸縦断の旅は既に伝説となっていますが、この顛末を、ゲバラが残した日記とグラナード本人の証言を元に映像化したロード・ムービーが、ウォルター・サレス Walter Salles監督、ガエル・ガルシア=ベルナルとロドリゴ・デラ・セルナ主演の「モーターサイクル・ダイアリーズ The Motorcycle Diaries」です。

このグラナード氏が2011年年3月5日、1961年以降住み続けていたキューバにて死去しました。享年88歳。元はゲバラと同じアルゼンチン出身だった同氏、ゲバラと友情を育んだことで、生涯に渡り生化学者としてキューバと関わりを持ち続けたのだそうです。

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「モーターサイクル・ダイアリーズThe Motorcycle Diaries」(2003年製作)
監督:ウォルター・サレス Walter Salles
製作:マイケル・ノジック&エドガード・テネンバウム&カレン・テンコフ
製作総指揮:ロバート・レッドフォード他
原作:エルネスト・チェ・ゲバラ「モーターサイクル南米旅行日記」(現代企画室刊)&アルベルト・グラナード
脚色:ホセ・リベーラ
撮影:エリック・ゴーティエ
美術:カルロス・コンティ
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ)
ロドリゴ・デ・ラ・セルナ(アルベルト・グラナード)
ミア・マエストロ(チチーナ)
メルセデス・モラーン(セリア・デ・ラ・セルナ、エルネストの母)
ジャン・ピエール・ノエル(エルネスト・ゲバラ・リンチ、エルネストの父)他。

ブエノスアイレスで医学を学んでいたエルネストは、自身喘息もちながら理想家肌で好奇心旺盛な若者だった。恋人チチーナもいたが、裕福な家庭に生まれた彼女との恋愛はうまくいかず、一念発起して7歳年上の親友アルベルトを南米大陸縦断の冒険に誘う。所持金はわずか、移動手段はアルベルトのおんぼろバイク、ポデローサ(怪力)号のみ。ぶっつけ本番のあてのない旅である。
1952年、彼らはアルゼンチンを出発してパタゴニアへ向かい、雪に埋もれるアンデス山脈を越え、チリの海岸線に沿って北上していく。マチュピチュ遺跡の神秘に触れ、さらに南米大陸の北の突端にある街カラカスを目指すのだ。ろくな装備もなく野宿を繰り返して、次々に襲い掛かる困難と戦いながら、エルネストとアルベルトは様々な人々に出会い、成長していく。彼らは旅の途中で唯一の足であったポデローサ号まで失ってしまうが、出会う人全てを魅了するエルネストの純粋さと、アルベルトの陽気さ、なによりその若さゆえのパワーで前進し続ける。アルベルトは、時に喘息の発作に悩まされるエルネストを支え、2人の結束はますます強くなるのだった。
ひたすら北を目指す彼らの目には、南米社会の最下層で苦しむ労働者や抑圧されるハンセン病患者の実態が、否が応にも映る。それは、バイクを失って徒歩で旅するようになったために明らかになったものだった。自身裕福な家庭でなに不自由なく暮らしていたエルネストは、彼らの置かれた悲惨な状況に衝撃を受ける。しかしそれが南米社会の大多数を占める人々の現実であり、彼の胸には初めて、南米社会の構造への疑問と彼ら最下層の人々への愛情が沸き起こる。喘息の発作をおして、アマゾン河を越えるために船上の人になった彼は、もう以前のような子供のように純真な青年ではなくなっていた。

そして、このラテン・アメリカ旅行の最終目的地と決めていたベネズエラのカラカスに、遂にたどり着いたエルネストとアルベルト。大変な苦労を共にした者同士、万感の思いを込めてそこで別れる。新たな未来に向かって踏み出すため、今度は1人でそれぞれの道を行くのである。

ゲバラはこの後帰国して、休学していたブエノスアイレス大学医学部を卒業、医師免許を取得する。南米の政情は不安定になり、1956年、メキシコ亡命中であったフィデル・カストロと弟のラウル・カストロと運命の出会いを果たし、キューバ革命に深く関わっていくことになる。“政治家、革命家”としてのゲバラを描いた映像作品はたくさんあるが、本人が遺した手記を基に彼の短い生涯を史実に忠実に追った映画に、「チェ Che (28歳の革命 The Argentine / 39歳 別れの手紙 Guerrilla)」(スティーブン・ソダーバーグ Steven Soderbergh監督)がある。


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この旅は、後に全世界に名を知られることになる、“革命家ゲバラ”の根幹を形作ったものだったのでしょうか。映画はその問いに対する答えを用意してはいません。ただ、1人の情熱的な正義漢が、旅を通じて己の知らなかった世界に足を踏み入れ、確実に自身の未来を変えていく姿を淡々と追っていくのみです。サレス監督は、エルネストとアルベルトの絆が、当初の子供じみた馴れ合いから、徐々に成熟した人間同士の関係に熟成されていく点に重点を置いているのですね。後の革命家の思想や政治的見解を云々するのではなく、エルネストの幼少期がいかにして終りを告げたのか、古今東西を問わず繰り返される大人への通過儀礼を、彼らの旅の中に見出そうとしているようです。

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私たちは皆、エルネスト、後のチェ・ゲバラが大人になった後、どのような最期を遂げたかを知っています。だからこそ感傷を極力排したこの作品の、最も痛み高ぶる瞬間は、アルベルト本人が登場する最後のシーンに集約されていると言っていいかもしれません。エルネストと別れ、人生の岐路を別の方向に探って年老いた彼が、高い空の彼方に懐かしい日々を思い起こすとき、私たちもまた彼と共に“青春の輝き”の中に佇んでいます。それは誰の心の中にもある大切な思い出であり、人生という旅路において何人たりとも犯してはならない聖域であるのです。
この作品はまた、普段あまり目にすることのない南米の神秘的ともいえる自然がふんだんに登場し、折り目正しいサレス監督の演出に野趣を添えていますね。エルネストを演じたのは、以前にもテレビムービーでチェ・ゲバラに扮した経験のあるガエル・ガルシア・ベルナルです。単純で陽気ながら、エルネストのかけがえのない親友であるアルベルトを印象深く演じたのは、なんと実際のゲバラと“はとこ”の関係にあるというロドリゴ・デ・ラ・セルナでした。彼らの息の合った演技が、この映画の最大の見所であるのは言及するまでもありません。

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映画の原作となった回想録がこれです。支配・被支配の社会からの脱却を目指してキューバ革命を起こしたものの、志半ばにして39歳の若さでボリビアで処刑されたゲバラ。彼自身が何を考え、どのような哲学、信念に基づいて行動していたかは、結局のところ本人の胸の内に永遠に秘められてしまいました。しかし、彼の身近にいて彼を観察した人たちの手によって、彼の目指していたであろう“理想郷”は、今もって様々な角度から解析が試みられることになったわけです。ある意味、ゲバラ自身がシンボルとなったことで、彼の信念も理想も全てが生き永らえる結果になったのかもしれません。
ゲバラ自身の運命は、グラナードと共に南米縦断旅行に出発したときからすでに動き始めていました。ですが、それを少し離れた場所からずっと見守り続けたグラナードの心中は、一体どのようであったのか…。本編に引き続いて公開された「モーターサイクル・ダイアリーズ」のドキュメンタリー映画も観ましたが、ご本人の全てを達観した微笑みを目にするたび、捕まえたと思った“焦点”―ゲバラの原点でもある、彼ら二人が共有した経験の持つ意味―が手をすり抜けてどこかへ消えてしまう気がしました。いろんな伝記本、研究本の類も読みましたが、一人の人間の生き方を決定付けた、その人間の根幹をなすものが何だったのかは、ついに分からずじまい。

もしもグラナードお爺ちゃんに「何かわかったかね?」と問われたら、私は「何も。また振り出しに戻ってしまったよ」と答えるしかありませんね。せめてこの本を読み返して、在りし日のゲバラとグラナードの青春に思いを馳せてみたいと思います。今頃はきっと、天国で彼を待ちかねていたエルネストと一緒に、昔話をつまみに古ぼけたバイクの修理に精を出しているのでしょうかね。

もうひとつ、忘れてはならない重要な要素は音楽ですね。ニキ・カーロ監督の「スタンドアップ The North Country」等も手がけ、ハリウッドでも注目される作曲家グスターボ・サンタオラヤ(サンタオラージャ) Gustavo Santaolallaのペンになるスコアは、あくまで映画の背景を助けるという役割を逸脱しない範囲で、上手く民族色を取り入れており秀逸です。アカデミー賞では、Jorge Drexlerの歌う“Al Otro Lado Del Rio”が最優秀歌曲賞に輝きました。ところが、授賞式でのパフォーマンスを行ったのは、なんとスペイン人のアントニオ・バンデラス。主催者側は、バンデラスがアメリカ人にも知名度の高い人物であることを考慮したそうですが、ベルナルはこれに抗議して授賞式の出席をボイコットしました。

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●収録曲

1. 旅の始まり
2. フリアス湖
3. チチーナ
4. チピ・チピ
5. 山
6. 労働者の行列
7. 小道
8. 庭
9. 旅立ち
10. ポデローサ号を捨てて
11. リマ
12. リマを離れて
13. ザンビータ
14. エル・マンボ
15. 川をひとまわり
16. アマゾン川
17. 川くだり
18. 療養所
19. 密航
20. レプロサリオからの旅立ち
21. ウスアイアからラ・キアカへ
22. 熱き革命
23. 河を渡って木立の中へ


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