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zoom RSS 最悪な映画?それとも、観客に理解されない不幸な映画?

<<   作成日時 : 2013/10/05 01:09   >>

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オスカー本番が近づくにつれ、あちこちで“今年度本当に素晴らしかった映画はどれ?”といった内容のランキングや、各映画賞の受賞結果が発表されたりしますね。しかし昨今のオスカー選考結果は、ある決まったパターンに則った、しかも各映画製作会社の勢力図や政治も加味した出来レースに過ぎないとする批判も、依然として根強いです。それでもやはり、“映画賞のトリ”を務めるのは、このオスカー様だという世間一般の認識は変えようがありません。

従って、オスカー本番を睨み、各国で相次いで映画祭が開催される秋になると、どこかそわそわした雰囲気が世間を覆いがち。そこで、2010年という古いニュースながら、気になる作品がいくつか取り上げられているある記事に触れてみたいと思います。


英国の映画雑誌エンパイア・マガジンが、“あなたが選ぶ最悪な映画”というお題でオンライン調査を敢行したことがありました。本当に面白くなかったワースト映画10本を発表しよう(あるいは晒そう)という試み。…イギリスの媒体って、こういうのホントに好きですよね(^^;;。他にも、“映画史で最もセクシーなキャラクターは誰?”だとか、“映画史で最も怖かった悪役は誰?”だとか、いろいろなお題でランキングをまとめております。


「最悪な映画」ランキング、G・クルーニー主演のバットマンが1位=エンパイア・マガジン誌調査
―2010年2月3日ロイター通信

ジョージ・クルーニーがバットマンを演じた「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲」(1997年)が1位に選ばれた。 しかも同作品は、2位のジョン・トラボルタ主演「バトルフィールド・アース」の約3倍という、ぶっちぎりの得票数を獲得しているという。

ランキングの上位10作品は、以下の通り。

1.「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲」(1997年)

2.「バトルフィールド・アース」(2000年)

3.「愛の伝道師 ラブ・グル」(2008年)

4.「レイズ・ザ・タイタニック」(1980年)

5.「鉄板英雄伝説」(2007年)

6.「天国の門」(1980年)

7.「Sex Lives of the Potato Men(原題)」(2004年)

8.「ハプニング」(2008年)

9.「ハイランダー2/甦る戦士」(1991年)

10.「The Room(原題)」(2003年)



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…この手のランキングには、必ずといっていいほど上位に食い込んでくる(涙笑)ジョージ・クルーニー兄貴の忘れ去りたい恥過去「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲」。堂々第1位を獲得してしまいました。…気の毒に。尤もこの作品には、前カリフォルニア州知事とか、館長が世界一の美女だと信じているユマ・サーマンなど、結構な有名どころが揃っていたんですけどね。シリーズのゲストとして派手な敵役を怪演した割には、彼らはあまり批判の矢面に立たされず、なぜだかクルーニー兄貴のバットマン・マスクの似合わなさやら、アクション・シーンのすっとこどっこいっぷりばかりが取り沙汰されているような気もします。

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誰も何も言わないけど、我が心の美女ユマに、こんなおっぺけぺーなキャラクター(及び演技)をやらせるだなんて、バットマンも罪な映画ですよ。ティム・バートンが監督した旧シリーズ第1作目のような、歪でビザールな世界観があるわけでもなし、漫画本をそのまま映像にしただけのような安っぽさはやはり観ていて悲しいですね。技術や美術にどれだけ金をかけようが、そこに確固たるビジョンがなければ、映画は面白くならないというよい例でした。この作品が本当に観客をがっかりさせている点って、たぶんその辺りに原因があるのでは。クルーニー兄貴は、“アメリカン・ヒーロー”の象徴であるバットマンに扮したばっかりに、たまたま観客の失望感の集中攻撃を受けただけなのでしょうね。いくらドル箱シリーズだからといって、惰性で続編を作ってはいけないのですよ。



2位の「バトルフィールド・アース」は、ただいま各所でトラブルを起こしている新興宗教団体サイエントロジーの創始者L・ロン・ハバードの小説を原作に、同じくサイエントロジーの信者である俳優ジョン・トラボルタが製作、主演した映画です。ご覧になったことがある方も、割といらっしゃるのではないでしょうかね。今作のヒーロー、ジョニーに、ハンサムなバリー・ペッパーが起用されましたから。

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この作品が嫌われる理由って、まあ真面目に考えれば、脚本も演出も演技も美術もまるでなっとらんというところに落ち着くでしょう。あるいは、サイエントロジー人脈による作品なので、この団体への生理的嫌悪感が観客離れに拍車をかけたか。でも私が思うに、なによりかにより、人類を奴隷化するというサイクロ人のビジュアルが、あまりに汚すぎることが敗因ではないかと推察するわけですよ(笑)。

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「ラスト・キング・オブ・スコットランド」で凶暴な独裁者アミンを熱演し、見事オスカーをものにした名優フォレスト・ウィテカーも、こんな体たらく。なんかね、鼻から鼻水がビロ〜ンって垂れ下がっているように見えるのですよ(笑)。もちろん、あの管にはストーリー上不可欠な設定があるのはわかっていますけどさ。これじゃあ恐ろしい侵略者というより、洞穴にこもったきり1年ぐらい風呂にも入らず、おまけに大風邪を引いちゃった人のように見えてしょうがありません。

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人間なのに鼻ノズルをビロ〜ンと装着されてしまった可哀想なバリー・ペッパー。ハンサム台無し。


「レイズ・ザ・タイタニック」は、作家クライヴ・カッスラー著の冒険野郎ダーク・ピットが活躍するアクション・アドベンチャー・シリーズの映画化作品。これまた上記2作品同様、栄えあるラジー賞にノミネートされていました(笑)。製作費を安くあげるため、原作の込み入ったストーリー展開やエモーショナルな部分をばっさりカットし、肝心要のタイタニック号を引っ張り上げるクライマックス・シーンですら、テレビのドキュメンタリー番組の方がマシという程安っぽくした、渾身の悪燃費映画です。名優サー・アレック・ギネスを引っ張り出してきた意義すらむなしい、典型的なダメ映画ですね。
カッスラー自身も、“今作には失望した”と吹聴して回るほど、観客からも原作者からも見放されてしまった作品ではあるのですが、その後何年も経ってから映画化された別のカッスラー小説「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(マシュー・マコナヘー、ペネロペ・クルス主演)を観てもわかるように、彼の小説からは優良な映画ができにくい理由が他にあるような気もします。正直申し上げて、「レイズ・ザ・タイタニック」は原作もかなりのおっぺけペーだったと思いますしね(笑)。スティーヴン・キング先生の小説の映画化作品が、ほぼ駄作に沈没してしまうのとはまた違った“やりにくさ”が、カッスラーの冒険小説にはあるのかもしれませんよ。


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さて、マイケル・チミノの呪われた問題作「天国の門」について。

これは個人的には、様々な不幸が重なった結果の悪評だと考えます。映画が製作された時代環境や作品が取り上げたテーマの難しさ(アメリカ国内の移民への差別と弾圧という暗黒のアメリカ史)、また、チミノ監督自身の行き過ぎた完全主義等、様々な要因が全て裏目に出てしまったのですね。もしこの作品が、ある程度の時間をかけることができるテレビのミニシリーズとして製作されていたら、おそらく監督が訴えたかったテーマもストーリーも、過不足なく語ることができたのではないかと思います。なにしろ、ズタズタにカットされる前のオリジナル・フィルムでは、合計上映時間が5時間30分あったというのですからね。今ならば、テレビの大河ドラマ扱いとなったことでしょう。
それこそ、HBOのような野心的なケーブル局ならば、多民族国家アメリカにはびこる移民排斥問題という、リスクの高いテーマにも果敢に挑戦できると思われます。

「天国の門 Heaven's Gate」(1980年)
監督:マイケル・チミノ
製作:ジョアーン・ケアリ
脚本:マイケル・チミノ
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
編集:ジェラルド・グリーンバーグ&ウィリアム・レイノルズ
音楽:デヴィッド・マンスフィールド
出演:クリス・クリストファーソン(ジェームズ・エイブリル)
クリストファー・ウォーケン(ネイサン・D・チャンピオン)
ジョン・ハート(ビリー・アービン)
イザベル・ユペール(エラ・ワトソン)
ジェフ・ブリッジス(ジョン・L・ブリッジス)
サム・ウォーターストン(フランク・カントン)
ブラッド・ドゥーリフ(エグルストン)
ジョセフ・コットン(ドクター)
ジェフリー・ルイス(トラッパー・フレッド)
リチャード・メイサー(カリー)
テリー・オクィン(ミナーディ)
ミッキー・ローク(ニック・レイ)他。

1870年、東部の名門大学ハーバードで卒業式が行われていた。未来への希望に燃えた卒業生の中に、ジェームズ・エイブリルとその親友ビル・アービンの顔もあった。
それから20年後、アメリカは混沌とした時代を迎えていた。アービンはワイオミングで小規模牧場を経営していたが、この地にロシアや東ヨーロッパからの移民が大挙して押し寄せ、先住民であるアングロ・サクソン系の人々とのトラブルが激化していたのだ。アービンは、自身の牧場でも雇っている移民を守ろうとして、ヒステリックになるばかりの先住民と貧しい移民の板ばさみになり、苦悩を深めていた。厳しい現実は、彼から学生時代の理想に燃えた情熱を奪い、彼を酒びたりの生活に追い込んでしまった。
アングロ・サクソン系住人は団結し、日頃から鋭く対立する移民への弾圧を厳しくしようとしていた。そしてついに家畜業者協会の評議会の席で、リーダーであるフランク・カントンが驚くべき提案を示した。それは、移民による牛泥棒根絶に名を借りた、移民の一大粛清である。その人数、125名。この大量殺戮計画に恐れをなしたアービンは、偶然保安官としてワイオミングに赴任してきたエイブリルに助けを求めた。
エイブリルは計画を阻止するため、移民の人々をまとめることのできる人物を1人1人訪ね歩いた。移民のたまり場である酒場の主人ジョンや娼館を経営するフランス系移民のエラなど、移民のコミュニティーに深くコミットするうち、エイブリルはエラと愛し合うようになる。ところがやっかいなことに、先住民側に雇われた殺し屋ネイサン・D・チャンピオンもまた、エラに心を寄せていたのだった。
移民の首1人につき50ドルの賞金がかけられ、カントンが雇った傭兵がワイオミングに向かう頃、エイブリルは移民達の憩いの場であるスケート場“Heaven's Gate”に人々を集め、粛清の対象となった125名のリストを読み上げた。エラはネイサンから求婚された上に彼の家族に紹介され、温かいもてなしに心を動かされそうになる。しかし、娼館に戻った彼女を待っていたのは、傭兵によるレイプと娼婦全員の惨殺であった。エラと情を通じたネイサンまでが傭兵の攻撃対象となり、彼はエラの安否を気遣う手紙を残し、家族と共に殺害されてしまう。ついに、先住民対移民の戦争が始まった。Heaven's Gateに集まった移民達は団結を誓い、エイブリルとアービンも武器を手にして移民側について果敢に戦う。移民達の反撃にたじろぐ傭兵。移民達が次々と殺害されていく中、同じ数だけの犠牲者が傭兵側にも出た。州兵騎馬隊が到着して戦いを鎮圧したときには、緑濃いワイオミングの美しい景色は血塗られており、死体の山が築かれていた。エイブリル、アービン、エラは生き残った。アービンが見守る中、エイブリルとエラは手に手をとって再起を誓うが、その矢先、エラはカントン一味の生き残りに殺されてしまった。
数十年後。老いたエイブリルは、ヨットの上で悠々自適の生活を送っている。彼の脳裏を埋め尽くすものは、理想に燃えて戦う自分自身とエラ、そして立場を超え、エラを媒介にして奇妙な友情を培ったネイサンの思い出であった。

綿密な時代考証に基づいた、衣装や舞台装置、小道具に至るまでのディテールの美しさ。あるいは、名カメラマン、ヴィルモス・ジグムンドによる流麗なカメラワーク。チミノ監督のライフワークともいえるロシア、東欧系移民の迫害の歴史という重いテーマ、そんな大きな歴史のうねりの中で翻弄される人々の繊細なるドラマ。
この作品は、実際にジョンソン郡で勃発した土地紛争、ジョンソン郡戦争(Johnson County War)を下敷きにして、チミノ監督が移民迫害の歴史に独自の解釈を加えたもの。セット内に実際に線路を建設して本物の機関車を走らせただの、ロングショットで映る戦闘シーンでのエキストラを大量に増やしたり、納得のゆくショットが撮れるまで、ワイラー監督ばりに何度でも撮り直しを繰り返しただの、勇ましい“製作費の無駄遣い”エピソードには事欠かない作品ですが、核となる部分は、主人公の男2人の繊細で青臭いドラマです。大学で理想主義者になったものの、現実の厳しさに挫折しかけていた男たちが、勝ち目のない戦いに身を投じることで、皮肉にも生への活力を甦らせるというというのが主旋律ですね。これは監督の前作「ディア・ハンター」にも通じる骨子で、いずれの場合も、主人公は直接自分とは関わりのない歴史的出来事にのめりこんだ挙句、最終的には人生の意義を再度見失ってしまうほろ苦い結末に帰着します。いい悪いは別にして、個人のノスタルジアと、アメリカの歴史の影を対比させるところこそ、チミノ監督の本領ではないかと思うのです。
今作のエッセンスは、本来なら対立するはずの立場にあるエイブリルとWASP牧場主側の殺し屋ネイサンが、エラという女を同時に愛してしまったために生まれる奇妙な三角関係ですね。エイブリルにとっても、またネイサンにとっても、移民の女であるエラを愛することは、彼らが属するコミュニティーからの排除を意味する、命懸けの危険な行動でした。その意味で、エイブリルとネイサンの間には、エラを介して不思議な絆が生まれていたと思いますね。この辺りの繊細な感情の揺れが、無理やり短縮された劇場公開版では充分に表現されていなかったのは事実です。
ネイサンとエラの関係は、対立を深める2つのコミュニティーの融和には繋がらず、逆に彼らの直接対決を早める結果になってしまいました。エイブリルとエラ、ネイサンの苦しい関係を軸に、このような極限状態に置かれたWASP牧場主側の人々の物語と、移民側の人々の物語をそれぞれ平行して描こうとした群像ドラマが、本来あるべき今作の姿であったといえるでしょう。
冒頭の卒業式パーティーのシーンなど、観る人によっては冗長だと感じられる部分も多々含まれる作品ですが、やはりオリジナルの上映時間そのままで見直したい作品です。個々人の小さなドラマの綴れ織りが、一国家の歴史のうねりによってどのように踏み潰されていったのか。民族の悲劇と、1人の男の失われた青春への哀しみを同等に語るものではないとする批判も当然あるでしょうが、その2つを共鳴させずにはおれないのが、チミノ監督という業深き映画作家の最大の悲劇だったかもしれません。

この「天国の門」は、チミノ監督の考える理想とは程遠い形で公開され、批評家からは罵声を浴びせられ、興行成績でも惨敗し、結局製作元のユナイテッド・アーティスツ社を倒産に追い込みました。湯水のように浪費された製作費と実際の興行成績の間のギャップは、長い間ギネスブックに掲載されていたほど酷いものであり、かつての“金食い虫監督”エリッヒ・フォン・シュトロハイム同様、チミノ監督も長い間ハリウッドから干されてしまいました。数年後、故ディノ・デ・ラウレンティースに拾われた監督は、「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(ジョン・ローン、ミッキー・ローク主演)で再び異なる文化とコミュニティー間における衝突を描きます。しかしその後は、映画上映後のスクリーンがフェードアウトするように、映画界から姿を消していきました。

しかし、チミノ監督の運命の歯車は、いつも予想外の転調を彼の人生にもたらすようです。昨年のヴェネチア国際映画祭でのこと。チミノ監督に生涯功労賞が授与されただけでなく、なんとこの「天国の門」がノーカット完全版にて復活し、映画祭期間中に上映もされたのですね。そしてさらに、その完全版に日本語字幕がつけられ、国内でも今年度に入って初めて上映されました。また近々、日本語字幕付きでDVDも発売される予定です。

…マイケル・チミノの辿った波乱と流浪と驚きの映画人生に比べれば、奇天烈なストーリーと頓狂な結末で観客をびっくりさせるのが大好きな「ハプニング」の監督のオイタなんて、随分可愛いらしいもんだと感じます。


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