House of M

アクセスカウンタ

zoom RSS 「ソーシャル・ネットワークThe Social Network」に関する未完成の覚書。

<<   作成日時 : 2016/10/20 10:18   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

汝、引き篭もりて光る小さな画面から世界を見よ。 Shut yourself inside your mind and have a careful look at the world through a small LCD screen.


ソーシャル・ネットワーク [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2011-12-21

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ソーシャル・ネットワーク [Blu-ray] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

「ソーシャル・ネットワーク The Social Network」(2010年)
監督:デヴィッド・フィンチャー
製作:スコット・ルーディン他。
製作総指揮:ケヴィン・スペイシー
原作:ベン・メズリック
脚本:アーロン・ソーキン
撮影:ジェフ・クローネンウェス
プロダクションデザイン:ドナルド・グレアム・バート
衣装デザイン:ジャクリーン・ウェスト
編集:アンガス・ウォール&カーク・バクスター
音楽:トレント・レズナー&アッティカス・ロス
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ)
アンドリュー・ガーフィールド(エドゥアルド・サベリン)
ジャスティン・ティンバーレイク(ショーン・パーカー)
アーミー・ハマー(キェメロン&タイラー・ウィンクルボス)
マックス・ミンゲラ(ディビヤ・ナレンドラ)
ブレンダ・ソング(クリスティ・リン)
ルーニー・マーラ(エリカ)他。

今作は、数々の犠牲を払いながらも、異様なほどの熱意でもって自身の夢の実現とその死守に固執した男の、一代成り上がりサクセス・ストーリーだ。だがスクリーンを占めるのは、今や世界最大のソーシャル・ネットワーク・システムとなった“フェイスブック”誕生の黎明期と現在の大成功に至るまでの輝かしい表舞台の興奮ではなく、その裏に隠された苦々しい物語である。
今作に登場する人物は、皆一様にクセモノであり、観客はおそらく誰にも共感することはできないだろう。それに、事実に基づいたストーリーだと謳いつつ、“所々に創作を加味した”内容には、まだ隠されたスキャンダルがあるに違いない。あのビル・ゲイツだって、その生涯を映画化するとしたら、今作以上のえげつない裏切りと騙し合いが横行する悪夢のようなストーリーを、多分に脚色しなくてはならないだろう。実際には、今作に描かれた以上の醜い争いがあっただろうことを、映画はほのめかしているようだ。

画像

尤も、この手の伝記映画に関しては、“描かれる事柄が真実かどうか”といった部分に、あまり神経質に拘る必要はないと思われる。実際のザッカーバーグがどんな人間なのか、映画がそれにどれぐらい忠実であるかなんて、この作品の命題ではないからだ。結局、“マーク・ザッカーバーグ”も“エドゥアルド・サベリン”も、アイデアの盗用を理由にザッカーバーグの裏切りを司法に訴えた“ウィンクルボス兄弟”も、アメリカという国を解析、表現するためにシンボライズされたキャラクターに過ぎないのだ。映画は、彼らが辿った運命ですら“法廷”という場を借りて客観的に分析し、そこから洋の東西を問わぬ普遍的な哲学を見出そうとする。

アメリカの名門大学生たちによる、実に閉鎖的な“コミュニケーション”を巡る愛憎が、引いてはアメリカ社会経済全体を読み解くためのテーマに広がり、最後には再びコミュニケーションにおける個人的な問題に帰結する流れには、改めて感心するしかない。改めて、社会がどんなに複雑な組織であれそれを形作っていくのは
それに、脚本のアーロン・ソーキンによるタイトで切れの良いストーリー運びと、デヴィッド・フィンチャー監督による澱みなく流れるような演出は、高度に洗練された映画的技法の出現を痛感させ、むしろ快感と呼ぶべきものだ。

本編観賞後、最も印象に残ったのがトレント・レズナーの手になるスコアだった。それから、意味があるようで無い、噛み合わないようで最後に全てのピースがキッチリ噛み合うソーキンの脚本。この両者の力によって、今作は確実に2010年度のオスカーの最優秀作品賞を獲得するだろうと、私自身はオスカー授賞式の直前まで考えていた(苦笑)。勿論、実際にはアカデミー会員は「英国王のスピーチ The King's Speech」を選んだわけだが。本質的にアカデミー賞という映画賞は、アメリカによるアメリカのためのアメリカの映画に賞を与えることを目的にしているが、よく言われているようにアカデミー会員の高齢化に伴い、今作のような先鋭的かつ実験的な作品は敬遠される傾向が顕著になってしまった。それでも尚、「ソーシャル・ネットワーク The Social Network」は、徹頭徹尾“アメリカ”という国の本質について語り続ける、真のアメリカ映画の傑作である。そんな映画が作品賞に選ばれなくてどうすんだ、オスカーよ。アメリカは、世界でも有数の自己分析国家であるのに。

しかしながら、トレント・レズナーのスコアとソーキンの脚本がなかったら、現在今作が獲得している評価は3割ほど目減りするような気も一方ではする。

今作はとにかく、劇作家でもある脚本家アーロン・ソーキンお得意の、含蓄溢れる洒落た台詞の応酬の氾濫(笑)に、まずは面食らってしまう。基本的には、登場人物同士の会話のやり取りで場面が転換し、ストーリーも進められている。ところが不思議なことに、時間の経過と共に移ろっていくはずの、肝心の彼ら自身の内面は、台詞ではあまり説明されない。そこを補完するのが、レズナーのスコアであるのだ。登場人物の心象風景やスクリーンに映し出される光景の背後にある真意を、緩急心得たスコアが代わりに物語っているというわけ。そして、実際に目に見えるシーンを更なる高みに押し上げる役割まで担っていた。それをよく実感できるのが、一卵性双生児ウィンクルボス兄弟の出場するレガッタのシークエンスだ。とりわけ、このシークエンスにおけるスコアのセンスは飛びぬけて素晴らしい。

劇中で戦わされる、極めて演劇的な、選び抜かれたセンテンスで構成された台詞を追っていくと、最終的には、一大学内に存在する小さな小さな社会構造が、アメリカという大国の本質―平等を謳いながら特権階級と被支配層の格差が広がるばかりの社会構造、資本主義思想が行くところまで行き着いた、実態すら失った弱肉強食の経済構造、白人によるユダヤ人、他の有色人種への潜在的な差別意識と優越意識…等々―を忠実にトレースしていたことが理解できる。ソーキンの脚本にはアドリブを入れる余地がなかったそうだが、さもありなん。この脚本は、大学生間のコミュニケーションという小さな題目を、結果的にアメリカ社会の構造解析にまで展開させた完璧な見取り図だったのだ。これ以上何も足すことも、引くことも不可能だろう。

つまり今作は、カメラ、音楽、脚本など、映画言語のあらゆるテクニックが駆使され、それらがこれ以上ない程上手く噛み合った、“映画の興奮”に満ちた快作であるということだ。しかしもうひとつ白状すると、とりわけ“映画テクニックの可能性”といった側面で完璧な映画だといわれる「市民ケーン」同様、私にとっては、そのテクニックに感心こそすれ、何度も繰り返して観たいと思わせる作品にはなりえない。完全無欠の作品であることに敬意は表するが、これはあくまでも、自分にとっては少し遠い位置に鎮座する偶像に手を合わせて拝むような感覚に近い。

画像

「ソーシャル・ネットワーク」を観ていると、若者特有の無謀さが生む莫大なエネルギーに、未来の可能性を感じたりもする。これこそが、社会を前に押し進めるダイナミズムの源泉だろう。だがそれと同時に、それらのエネルギーを現実のものとするためには、その若者特有の甘さを捨てねばならないこともわかる。
ザッカーバーグにとって、フェイスブックを彼自身の人生最良の創造物にすることこそが最終目標であった。具体的には、フェイスブックを巨大ビジネスに成長させ、世界中の人々をユーザーにすることだろう。そのためには、未来を見据える力を持たなかった凡人である親友や、カリスマ性はあるものの企業にとって不安要素となる人物を、思い切りよく切り捨てる決断を下さねばならない。いつまでも甘酸っぱい友情の感傷を引き摺っていては、フェイスブックという無限の可能性を秘めたツールを守ることはできないのだ。だからこそマーク・ザッカーバーグは、たった1人の現実世界の親友エドゥアルドと、フェイスブックを世界中に拡大させたショーン・パーカー(“音楽泥棒”のあだ名も持つ、楽曲無料共有サイト、ナップスターの創始者)を捨てた。そうすることで、彼は彼自身の青春時代に別れを告げたといえるだろう。

画像

フェイスブックとは元来、個人情報を共有し、共通するものを持つ人間同士を繋げるためのコミュニケーション・ツールだ。それは当初は、ネット世界と現実世界を取り結ぶという役割も担っていた。あるいは、現実世界で実現できないコミュニケートを、ネットを介して可能にする魔法でもあった。だが、マーク・ザッカーバーグという稀代の変人天才が生み出したフェイスブックは独自に肥大化を続け、いつのまにか現実世界の“コミュニケーション”の意味合いをも新しく上書きしてしまった。おそらく御本人は、根本的なその変化に気づいていないだろう。その皮肉を、ソーキンの脚本はよく伝えている。

facebook
青志社
ベン・メズリック

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by facebook の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い
ナイス
「ソーシャル・ネットワークThe Social Network」に関する未完成の覚書。 House of M/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる