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zoom RSS 24年後の再会―24 years later, "Empire of the Sun "

<<   作成日時 : 2011/01/19 11:00   >>

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スティーヴン・スピルバーグ Steven Spielberg監督の作り出す作品は、賞賛より批判の対象になることの方が多い気がする。理由は色々あるだろう。興行的に大ヒットをかっ飛ばした作品を数多く手がけたことへの、同業者からの妬み、成功した作品と失敗した作品の間にある出来の落差が大きいこと、つまりは、取り上げる題材によっては、その卓越した演出力を充分に生かしきれないケースが目立つこと、そして、彼がユダヤ人であること…等々。


クリスチャン・ベイルが子役時代に主演した作品「太陽の帝国 Empire of the Sun」(1987年)も、スピルバーグのフィルモグラフィーの中では酷評される部類に入るのではないだろうか。SF作家故J・G・バラード J.G.Ballardが、自身の少年時代の思い出を基にした自伝的小説が原作だが、不思議なことに、日本でも欧米でも今作を嫌っている人が多いように感じる。

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「太陽の帝国 Empire of the Sun」(1987年)
監督:スティーヴン・スピルバーグ Steven Spielberg
原作:J・G・バラード J.G.Ballard
脚色:トム・ストッパード Tom Stoppard
撮影:アレン・ダヴィオー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:クリスチャン・ベイル
ジョン・マルコヴィッチ
ミランだ・リチャードソン他。

…今作が敬遠される理由の1つには、第2次世界大戦時の日本軍による上海侵攻が背景にあり、しかも主人公のジム少年は、よりによって日本軍の強制収容所に入れられてもいる。作品中のそうした要素が、おそらく無意識のうちに日本人の観客を醒めさせてしまったのだろう。
しかしながら、今作に登場する日本人は、ハリウッド映画が描きがちな“愚鈍な悪魔”ではなく、驚くほど日本人の感性に近いナチュラルな描写を施されている。“特攻”という、今ならさしずめ自爆テロを想起させるであろう日本人独特の価値観や感覚にも敬意を払っているし、英国人であるジム少年と、彼にとって仇であるはずの日本人との間に生まれた交流は、私の目には非常に純粋なものと映る。要は私は、この作品から感じる敬意に胸を打たれるし、だからこそスピルバーグ監督の感性が好きだし、また好意的に解釈もしているのだが。私が思うに、監督のこの辺りの演出の方向性が(日本人を完全なヒール villainとして描かなかった部分)、欧米の観客を萎えさせることになったのではないか。

そんなわけで、結局「太陽の帝国 Empire of the Sun」は、欧米人にも日本人にも受け入れられないという、実に不幸な運命を辿ったのである。

ジム少年を演じたクリスチャン・ベイルはじめ、過酷な収容所内の生活の中で、ジム少年の親代わり的な存在になるベイシーに扮したジョン・マルコヴィッチ、ナガタ軍曹を演じた伊武雅刀など、出演陣の好演は一定の評価を得ている半面、戦時下における一般人のサバイバル物語やら、1人の少年の成長物語やら、日本人という異文化との衝突と交流の物語やら、1本の映画に様々なモチーフを貪欲に取り入れた結果尺が長くなり過ぎ、途中で少々間延びする展開も生んでしまった側面は、よく指摘される今作の瑕だといえる。

しかしそれでもなお、私は今作は不当に過小評価されていると感じる。素直に観直せば、今作の描く少年の心情の移ろいの軌跡は瑞々しくもリアルだとわかるのだ。多大な犠牲を払いつつ、少年の人生の糧となった成長への道筋は、彼自身の心にいくつものほろ苦い傷を刻み付けたことを、映画はしっかり捉えている。そしてそこに、日本軍が侵攻したせいだからという安直な理由付けを施すのではなく、世界中の戦争全般への非難、ひいては、戦争に駆り立てられる人類の愚かさへの自省というメッセージを織り込んだ、優れた反戦映画だとも思う。

スピルバーグ監督の演出家としての特筆すべき一側面を、今作はとても正直に反映しているのではないか。今一度、今作がきちんと評価されることを願って止まない。


この「太陽の帝国」から実に24年の年月が経った今年、先日行われた第16回放送映画批評家協会賞授賞式において、この作品に主演したクリスチャン・ベイルとスティーヴン・スピルバーグ監督が顔を合わせた。

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白状すると、ゴールデングローブ賞でクリスチャンがトロフィーを手にしたときより、この写真を見たときの方が胸に迫るものがあった。よく考えれば、両者とも世間的には評価される以上に、誤解を受けることの方が多い存在だし。

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「太陽の帝国」からこっち、2人の間に何がしかの交流があったのかそれは定かではない。24年の月日が経過しても変わらなかったものも、そして時間と共に失われてしまったものも含め、こうして久しぶりに顔を合わせた彼らの表情には、やはり24年間の“重み”を感じてしまう。

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監督の方が見上げねばならないほど、あのジム少年は大きく成長した。ジム同様、クリスチャンも映画界でサバイブし続け、今この場に立っている。彼らが再びコンビを組んで映画を作るとしたら一体どんな作品になるのか、おおいに興味を引かれるところだ。




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