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zoom RSS 「FBIフーバー長官の呪い La Malediction d'Edgar」vs. 私(笑)。

<<   作成日時 : 2015/12/23 06:27   >>

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クリント・イーストウッド Clint Eastwood監督の問題作「J. エドガー J. Edgar」の下地となった、クライド・トルソン Clyde Tolsonによる(と言われる)手記(セネガル生まれのフランス人作家マルク・デュガン Marc Dugain編纂)は、その出自の真偽の程は兎も角として、読み物としてえらく面白いシロモノでした。

FBIフーバー長官の呪い (文春文庫)
文藝春秋
マルク デュガン

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「FBIフーバー長官の呪い La Malediction d'Edgar (原作は2005年にGallimard社から出版)」文春文庫

今日のアメリカ連邦捜査局FBIの基礎を築いた人物であり、また死ぬまで自らが創りあげた警察・防諜機構のトップに君臨し続けた男、エドガー・フーバー。彼が唯一気を許していたといわれる側近中の側近、フーバーのアシスタントを40年以上にわたって務め、後年副長官に就任したクライド・トルソン Clyde Tolsonによる回想録です。…とはいうものの、これが本当にトルソンの手によって書かれたものであるかどうかは、全くの謎。トルソンではない別の人物の手になる手記だという疑惑も濃厚なのだそうです。

しかしながら、この手記をとある出版会社から買取り、編纂したセネガル生まれのフランス人マルク・デュガンは、例えば映画「JFK」を製作したオリバー・ストーンのような映画人とは違い、フーバーの人生に入れ替わり立ち代り登場する絢爛たる著名人を神聖化する行為には、ハナっから興味がなかったようです。この手記が本物だろうが偽物だろうが、激動の時代を生きたエドガー・フーバーという男の複雑怪奇な肖像を通して、国家と政治と頑迷な宗教観に翻弄される人間の愚かな有様をただ見据えたかっただけ。それこそ、歴史に名を刻んだ英雄とも祭り上げられる政治家達が、一皮剥けば色と欲にまみれた普通の人間だったというアイロニーは、カタルシスすら感じさせてくれますね。いわく、誰が真に悪者で誰が本当の聖人だったのか、などという不毛な追及も本書では放棄されています。皮肉なことに、現在非難の槍玉に上がっている非倫理的な“盗聴”によって、フーバーが暴きたてた彼ら政治家や著名人の実像こそが、“人間性とは何によって決定されるのか”といった根源的な倫理観念を読者に突きつけてくるのです。

回想録の主人公であり、トルソンが終生愛して止まなかったヒーロー、フーバーにしてからが、トルソン自身の親愛に満ちた同情的な表現を借りても尚、1ミリも共感できない人物でありますしね(笑)。魑魅魍魎が跋扈する政治の世界で、盗聴という法倫理を逸脱する手段でさらに跳梁跋扈した、人種差別主義者にして頑迷な女性蔑視の冷血漢と称するのがふさわしい。それでもやはり、フーバーと彼を取り巻く世界には、不思議と惹かれるものがあるのも事実なのです。本書中には、もちろんケネディ大統領暗殺の真相など、非常にデリケートかつ複雑な問題が余すところなく描かれており、アメリカで出版されなかった理由もわかる気がしますね(本書はフランスで出版され、当時「ダ・ヴィンチ・コード」と並ぶベストセラーとなった)。

画像

ジョン・エドガー・フーヴァー(John Edgar Hoover)

1895年1月1日生まれ
1972年5月2日没
生地は不明

1924年5月10日にFBI長官に任命されて以来、亡くなるまでそのポストを他者に明け渡すことはありませんでした。就任当時のカルビン・クーリッジからリチャード・ニクソンまで、実に8代のアメリカ合衆国大統領の下に仕えた格好になりますね。もちろん、アメリカ合衆国内では最も長く政府機関の長に留まった人物であり、彼の独裁の所以でFBI長官の任期が10年に制限されることになったわけです。
FBIが、無頼の群れから近代的な一大警察組織となるために尽力した功績は、高く評価されるべきでしょう。しかしながら、盗聴技術を駆使して、敵対する政治家や著名人の私生活に無断で介入し、それを元に恐喝まがいの行動に走っていたことに対しては、歴史から弾劾されてもいたしかたないと思います。アメリカ国内の治安維持という本来のFBIの職務を逸脱した行為ですよね。おそらくこの反省から、FBIとCIAの管轄にはっきりと線引きがなされたのでしょう。
精神的にも肉体的にも明らかに同性愛者であったのに、それを認めるのを忌み嫌い、自らのアイデンティティの矛盾を人種差別や女性蔑視、敵対する人物の追い落としに向けていた男。それでもなお、全盛期における近代的な捜査官としての“冴え”には一目置かざるを得ないのですから、このエドガー・フーバーという男、本当に煮ても焼いても食えない御仁ですね。おまけに、生地をはじめ、生い立ちには今も尚謎の部分が多いときている。

画像

映画の世界でも、フーバーは様々な顔を見せており、その肖像の向く方向はいっこうに定まりません。見る人によってこれだけ印象が変わる人物というのも、そうはいないでしょう。画像は、2009年の「パブリック・エネミーズ Public Enemies」(マイケル・マン Michael Mann監督)でビリー・クラダップによって演じられたエドガー・フーバー長官。この作品では、デリンジャーを捕らえるために行われていた、FBIの盗聴行為も描かれていましたね。映画が描いているのはFBIの黎明期です。確か、若き日のトルソンも登場していたはず。
「FBIフーバー長官の呪い」を読んだ後にこの「パブリック・エネミーズ」を観直しますと、また一味違った感慨も生まれてきます。本当の意味で“パブリック・エネミーズ Public Enemy(国民の敵)”だったのは、果たしてデリンジャーのような盗人だったのか、それとも、正義の仮面をつけて多くの人々を独裁下においたフーバーのような男なのか…。



FBI?独裁者フーバー長官 (中公文庫?BIBLIO20世紀)
中央公論新社
W.サリバン

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