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zoom RSS 夢のまた夢―「インセプション Inception」

<<   作成日時 : 2017/04/15 13:14   >>

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“夢から醒めて、現実と向き合え”

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「インセプション Inception」(2010年)
監督:クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
製作:エマ・トーマス&クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
撮影:ウォーリー・フィスター Wally Pfister
プロダクションデザイン:ガイ・ヘンドリックス・ディアス
衣装デザイン:ジェフリー・カーランド
編集:リー・スミス
音楽:ハンス・ジマー Hans Zimmer
出演:レオナルド・ディカプリオ(コブ)
渡辺謙(サイトー)
ジョセフ・ゴードン=レヴィット(アーサー)
マリオン・コティヤール(モル)
エレン・ペイジ(アリアドネ)
トム・ハーディ(イームス)
ディリープ・ラオ(ユスフ)
キリアン・マーフィ(ロバート・フィッシャー)
トム・ベレンジャー(ブラウニング)
マイケル・ケイン(マイルズ)
ピート・ポスルスウェイト(モーリス・フィッシャー)
ルーカス・ハース(ナッシュ)他。

他人の夢の中に潜入してカタチになる前のアイデアを盗み出す企業スパイが活躍する時代。コブは、この危険な犯罪分野で世界屈指の才能を持つ男。しかし、今や国際指名手配犯として、またこの世を去った妻モルの殺害容疑者として逃亡の身となってしまい、大切なものすべてを失うこととなっていた。そんなコブに、サイトーと名乗る男からある依頼が舞い込む。成功すれば、コブの犯罪歴を全て抹消し、子供達の元に戻って再び幸せな人生を取り戻すことができる。しかしその依頼とは、これまでのように盗み出すのではなく、ターゲットの潜在意識にあるアイデアを植え付ける“インセプション”というものだった。かつてない危険なミッションと自覚しながらも、これが最後の仕事と引き受けたコブは最高のスペシャリスト集団で立ち向かうべく、すぐさまメンバー探しを開始。やがて、相棒のアーサー、“設計士”のアリアドネ、“偽造士”のイームス、“調合師”のユスフ、そしてサイトーを加えたメンバー6人でターゲット、ロバートの夢の中に潜入するコブだったが…。
 ―allcinemaonlineより抜粋

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結論から簡潔に申し上げると、“単純なアクション・エンターテインメント”として、館長は充分この作品を楽しみました。…んで、狙撃覚悟で(笑)白状すると、実は初見時には、それ以上の作品ではなかったようにも思われました。映画公開当時巷で喧伝されていたような、“壮大な精神世界の物語”とか、“その中で奏でられる悲劇的な愛の物語”とか、“いまだかつて見たことのない驚異の映像世界”とか…、なんていうんだろう、近未来アクション映画に付加されたそれらのプラスアルファ的価値感に、私自身はさほどの感銘を受けなかったんですね。どのシーンにも、“ああ、これはいつかどこかで見た覚えのあるものだなあ…”という感慨が常に付きまとっていたのは事実です。

私たちは既に「マトリックス The Matrix」(1999年)や「イグジステンス eXistenZ」(1999年)(デヴィッド・クローネンバーグ監督によるバーチャル・リアリティ逃避型ゲームのお話)といった、潜在意識下の世界で冒険する作品を観て知っている訳で、それらからの“インセプション inception”込みで今作に対峙することになります。従って、今作の各シーンからデジャ・ブを感じてしまっても、多分仕方がなかったのでしょう。

ところが。

時を経てつい先日、この作品を再見したときには、かつて事前に膨らんだ期待感がちょいと萎んじまった感覚とはまた違う感想を持ちました。ソーシャル・メディアに社会の仕組み全体を乗っ取られようとしている今、この作品を見直してみると、何層にも分けられた“夢の世界”に植え付けられた“思考の種”によって、その人間の思想や精神までが大きく左右されてしまう恐怖を、“ソーシャル・メディア社会 Social Media Society”に置き換えることができるからですね。今作に登場する、“夢を見ること”に憑りつかれ、夢の世界に現実世界を侵食されているコブのような人物は、今でいうところのソーシャル・メディア漬けになっている多くの一般市民と同じだと考えられます。日々、パソコンやスマホによって、目に見えない“マトリックス世界”に無理矢理繋げられている私たちは、ソーシャル・メディア上に流れるニュースに無条件に影響を受け、思考までも支配されてしまいます。コブがモルに施したような“インセプション”は、今ではソーシャル・メディア上では日常茶飯事の出来事だといえるのです。それを考えると、この「インセプション Inception」は、今の社会を予言したかのような、不気味な側面も持つ作品だった、といえるかもしれませんね。


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クリストファー・ノーラン監督には申し訳ないと思うけれど、お話の構造は巷で言われているほど複雑でも斬新でもないし…。所詮は夢の中のお話なのだから、もっとこう単純に大暴れ系冒険活劇に仕立てても良かったんじゃないかしら。ほれ、今作はさしずめ、“マトリックス+イグジステンスmeets特攻野郎Aチーム”といった感じなのだから(違うか・笑)。高尚な哲学的要素に色気を出さない方がいいと思う。劇中で繰り返される夢と現実の相関関係についての薀蓄や、夢=現実逃避が精神に及ぼす危険性についての薀蓄も、確かにその通りではあるけど、改めて繰り返されるほどの深遠な内容ではなかったような気がするしね。劇中で展開される無重力アクションとか、上の階層の夢世界の出来事が下の階層の夢世界に思わぬ影響をもたらして、ハラハラドキドキ度アップ!といった仕掛けが面白いのだから、そっちをもっと派手に展開して欲しかったかなあ。夢の世界から現実世界への帰還の方法(キック)とか、ここが現実世界かどうかを確かめるための小道具の存在等々、細かい設定はツボに嵌りましたわ。いや、ノーラン監督って、絶対ジグゾーパズルとか迷路とか得意なタイプの人だとお察ししますよ(笑)。それに、あれですよ、薀蓄語りも大好きに違いありません(笑)!

ま、冗談はともかく。

今作は、全編に渡ってキレのいいスピード感で疾走でき、心地よい満足感を得られるのは確かなのですが、唯一の不満は、皮肉なことに主人公コブの存在。彼が亡き妻モルへ抱く捨てがたい罪悪感が、要所要所で表出してしまうために、再三仲間をピンチに晒してしまうのですね。尤も、それが物語に予測不能なサスペンスをもたらす要素になっているのだから、致し方ないのですが。それにしても、恋女房を亡くして自責の念に駆られる気持ちはよくわかるけど、コブのエゴイズムは結構鼻につきます。コブを信じ、危険なミッションに捨て身で参加してくれた仲間達に対し、あの態度はないんでないの。まあ最近の“ヒーロー像”の定番は、欠点も弱さも抱える等身大のヒーローというものですから、コブのキャラクター造形がああなったのでしょうが、彼に感情移入できないのが辛いですね。
コブとモルの相互依存関係は誰が見ても不健康だし、正直、コブの苦悩の要因としては、動機が幼稚すぎて説得力に欠ける気もしました。あれじゃ、彼らの子供たちが不憫なだけだよ…と、ついつい思ってしまうのです。親ってね、現実にどれほど幻滅し、絶望していても、子供がいるから厳しい世界にも立ち向かっていける生き物なんですよ。それをハナっから放棄してしまっている人間も確かに存在しますが、あまり共感できません。だから、今作に関しても、コブとモルの悲恋物語〜と謳われても、いまひとつピンとこなかったのでしょうかね。私にとっては、彼ら2人の関係とは、単に物語に起伏を与えるための要素としか感じられませんでした。…ええ、意地悪な見方をすると、コブがいない方が、今回のミッションもサクサク成功していたでしょうね(笑)。

しかしながら、コブ以外の仲間には実に個性的な面々が揃っていて、彼らの活躍には溜飲が下がりました。今作は、主人公の動向を追うよりも、各キャラクターを楽しんだ方が面白いかもしれませんね。

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我らがムッシュ・ケン・ワタナベも、想像以上に大きな役回りで頑張ってくれました。文字通り身体張っていましたもの(涙)。しかも、同郷のよしみという点を差し引いても、主人公コブより義理堅く度量も大きく、人間的魅力に溢れているように感じましたね。

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そして今作最大の収穫が、この人、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット。いやはや、「(500日)のサマー」では印象の薄い男の子で、映画終了後には顔も思い出せないほどでしたのに(笑)、今作のアーサー役では見違えるほど素敵に変貌していて。惚れ直しましたねえ(笑)。
そして、多才な彼は役者だけの活動に飽き足らず、以前から在野の様々なアーティストたちとコラボレートして、興味深い実験的映像作品などを製作していました。いろいろな分野で活躍する才人たちとの仕事で培われた経験を糧に、今年のジョゼフは、「Don Jon」というコミカルなドラマ作品の監督として、世界中の映画祭で腕試しの真っ最中であります。新進映画監督としてのジョゼフの今後も、末永く見守っていきたいものですなあ。

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「インセプション」の頃は、若い頃のキアヌさんを髣髴とさせるちょいとエキゾチックな雰囲気でした。スーツ姿が古風な感じで決まっていて、将来、007役もイケルんじゃないかと妄想しましたよ(笑)。

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第2階層の夢世界で、眠る無防備な仲間たちを守りつつ孤軍奮闘するアーサー。コブに裏切られても忠誠を尽くす男であり、ピンチの際には実は一番頼りになります。アーサーがリーダーでも良かったんじゃないかとすら思いました(笑)。ところで、この階層の無重力シーン(なぜ無重力状態になってしまったかは、映画をご覧あれ)、大変だったでしょうね。皆を覚醒させるために、全員を簀巻きにして運んでいくこのシーン、笑っちゃいけないんだろうけどなんだかちょっと可笑しかった。

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あと、ミッション成功のための綿密な計画を立てる、情報収集、変装の達人イームスもセクシーでした。イームスも、キャラクーとしては触れ幅の少ない安定した部類に入るため、観客には頼り甲斐があるように見えます。従って、コブが登場するたんびに“ヘマやらかすなよコブ”とハラハラしてしまうんですな。演じるトム・ハーディ、やはりイームスの印象は強烈だったとみえ、この作品の後は同じノーラン監督による「ダークナイト・ライジング」等続々と新作が決定しました。渋エロい演技派俳優として大成して欲しいものです。

夢世界の設計士アリアドネを演じたエレン・ペイジちゃんも、相変わらずの堂々たる存在感で良し。オスカー女優である長身のマリオン・コティヤールに、文字通り頭上から見下ろされる格好になっていましたが(笑)、身体はちっこくても個性は強力。劇中では、コブの抱える根本的な問題点をいち早く見抜き、それに対する的確なアドバイスを出すなど、プロファイラーとしての能力も優れていることを示していました。チームのお母さん的役回りか。

深い階層まで潜っていくため、植物人間状態になるギリギリ一歩手前の強力な鎮静剤を作るユスフも、ポジションとしては典型的な脇役でしたが、いい味わいでしたね。チームが活躍するお話では、やはり各キャラクターの個性の描き分けがしっかりなされなくてはいけません。やや予定調和でありながらも、「インセプション」はチームメートの個性のぶつかり合い、軋轢を乗り越えた上での協力といった群像劇の面白さが、ストーリーの展開にきちんと生かされていました。

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そうそう、今回のミッションのターゲットになるロバート坊ちゃまに扮したキリアン・マーフィー、こんな線の細〜い役柄が大変お似合いですね。生まれながらのボンボンで、偉大な父ちゃんを超えられずに苦悩する辺りはお約束として、彼のルックスが、某アメコミ蝙蝠映画のビリオネアのそれを気弱〜な感じにした風だったのには苦笑しました。いやいや、ゴッサムにお住まいの某ビリオネア氏とはまた違う方向性で、こちらの坊ちゃまも素敵でございました。ございましたが、例の蝙蝠ビリオネア映画では、キリアンもあのストイックな某坊ちゃまとしてオーディションを受けていた事実を本日知りまして、個人的にべっくらこいている次第であります(笑)。まあ、ビジネスマン紳士風スーツ姿の時の坊ちゃまはいいとして、あのごっつい蝙蝠スーツをどう着こなすつもりだったのか、この繊細なスーツ姿からはちょっと想像できませんね。

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コブたちチームは、ミッションの目的こそ“依頼人サイトーの商売敵を潰す”という物騒なものだったわけですが、結果的にこのロバート坊ちゃまにポジティヴな道標を示したことになりますよね。なんだ、いいことしてんじゃんコブたち(笑)。

オマケ。

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パリでの「インセプション」プレス・カンファレンス時の画像だそうです。坊ちゃま役キリアンと、イームス役のトム・ハーディ。か・わ・い・いーっ!!!

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このお方の映画は、永遠に醒めることのない悪夢の子宮の中を漂っているようなものですね。

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