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zoom RSS 魔界よりの使者―アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーAndrew Kevin Walker

<<   作成日時 : 2017/02/16 15:25   >>

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前略、デヴィッド・フィンチャー様。貴方に謹んでこの言葉をお贈りしたいと思います。

No happy endings, the REAL LIFE!!


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アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー (Andrew Kevin Walker)

1964年8月14日生まれ
アメリカ、ペンシルヴァニア州Altoona出身

Penn State大学を卒業後、犯罪サスペンス映画の金字塔「セブン Se7en」の脚本を完成させるまでの3年間、テレビ・シリーズの脚本を手がけるかたわらタワー・レコードで働いていた。この「セブン」が実際に世に出た経緯には、脚本家兼監督のデヴィッド・コープ David Koepp(「カリートの道」「ジュラシック・パーク」「ミッション・インポッシブル」「パニック・ルーム」等の脚本で知られる)が大きく関わっており、最終的にこの作品のメガホンをデヴィッド・フィンチャー David Fincherがとることになった。そして、「セブン」以降、犯罪サスペンス映画の定義は大きく書き換えられることになる。

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また、ウォーカー自身とフィンチャー監督の運命も、大きく変わることになった。しかしウォーカーというライターは、どちらかというと、プロデューサーや製作会社の望みに合わせて脚本を書くという柔軟性と器用さに欠けるタイプだ。「セブン」以降の彼の脚本が、ほとんど“劇場用映画”として実を結んでいない実情は、彼のストーリーテリングに対する愚直なまでの頑固さと、一途な信念を物語っている。

ウォーカーはやはり、フィンチャー監督とのコンビネーションに最も居心地良さを感じていたようだ。フィンチャー監督はウォーカーの脚本の行間をよく読み取り、「セブン Se7en」を暗鬱で悲劇的で暴力的な、まさしく“世紀末”を体感するかのような作品に仕立て上げた。続く劇場用映画作品「8mm」も、本来ならフィンチャー監督が手がけるべき題材であったと思う。ハリウッドの便利屋的職人監督ジョエル・シュマッカーの重苦しい映像も悪くはなかったが、センセーショナルなシーンを強調するあまり、途中間延びする展開がかなり挟まれてしまったのは残念だ。立体的な空間撮り、あるいは、暗い映像の中を縫うように突き進む細かいカット割りといった、フィンチャーらしい“カオス映像”の中でこそ、ウォーカーの仕掛けた絶望的で皮肉極まるストーリーが映える作品であったろう。

ウォーカーは、そのフィンチャー監督の「ゲーム The Game」(1997年)では“スクリプト・ドクター”としてクレジットなしで脚本のリライトを行い、監督がブラッド・ピットと再び組んだ「ファイト・クラブ Fight Club」(1999年)でも、クレジットなしで脚本に関わっていた。スクリプト・ドクターとして関わった作品には、他にポール・アンダーソン監督のSFホラー「イベント・ホライゾン Event Horizon」(ローレンス・フィッシュバーン、サム・ニール、ジョエリー・リチャードソン出演)や、リチャード・マシソン原作小説を映画化した、くだんのデヴィッド・コープ監督作品「エコーズ Stir of Echoes」(1999年)がある。

「セブン」以降、ウォーカーが手がけた劇場用映画の脚本の中で最も知られている作品は、やはりティム・バートン Tim Burton監督の「スリーピー・ホロウ Sleepy Hollow」(1999年)であろう。“首なし騎士”の伝説に取材したワシントン・アーヴィング Washington Irvingの原作小説『The Legend of Sleepy Hollow』を、ミステリアスでグロテスクな風味たっぷりに脚色してみせた。主演のジョニー・デップとバートン監督のコラボレーションから、彼ら2人の持つファニーで風変わりな持ち味が強く前面に押し出されてはいるが、18世紀末のアメリカの陰惨な側面をゴシック・ホラーと絡めてあぶりだした点にウォーカーらしさが垣間見える。

「X-メン X-MEN」や、新しいスーパーマン映画の企画が立ち上げられたとき、ウォーカーはそれらの映画のために第一稿を書いていたのだが、悲しいかな、メガホンを取る監督が入れ替わり立ち替わりするゴタゴタの中で、彼の脚本は結局葬り去られてしまった。アメリカで人気を博したテレビ・シリーズ「アントラージュ★オレたちのハリウッド」の中の1エピソードの脚本を手がけるなどしていたが、映画界ではいつのまにか彼の名前を聞かなくなってしまっていたのも事実。

「ホラー映画の最高なところは、“ハッピー・エンド”の呪縛から解放されることさ」

「スリーピー・ホロウ Sleepy Hollow」以後、約10年ぶりに彼の名前を劇場用映画のクレジットの中で発見した。日本でも劇場公開された「ウルフマン The Wolfman」である。

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「ウルフマン The Wolfman」(2010年)
監督:ジョー・ジョンストン Joe Johnston
製作:スコット・ステューバー&ベニチオ・デル・トロ他。
脚色:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー&デヴィッド・セルフ
オリジナル脚本:カート・シオドマク
撮影:シェリー・ジョンソン
プロダクションデザイン:リック・ハインリクス
衣装デザイン:ミレーナ・カノネロ
編集:デニス・ヴァークラー&ウォルター・マーチ
音楽:ダニー・エルフマン
特殊メイクデザイン:リック・ベイカー
出演:ベニチオ・デル・トロ(ローレンス・タルボット)
アンソニー・ホプキンス(ジョン・タルボット卿)
エミリー・ブラント(グウェン・コンリフ)
ヒューゴ・ウィーヴィング (アバライン警部)
ジェラルディン・チャップリン(マレーヴァ)
リック・ベイカー他。

実はこの作品、実際に製作されてから約1年もの間お蔵入りの憂き目に遭っていた。以下の内容は、まだ私がフランスに滞在していたときに、今作を観賞した際の感想である。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

19世紀末の英国。アメリカで人気俳優となっていたローレンス・タルボットは、兄ベンの婚約者グウェンからの手紙によって久しぶりに帰郷する。陰鬱で広大な荒野ブラックムーアのはずれに建つ、領主タルボット家の城がローレンスの生家であった。グウェンの手紙によると、ここ何年もの間、ブラックムーアの村を震撼させている狼男ウルフマンの捜索に参加したベンが、以来消息を絶っているということであった。
ブラックムーアには、数年前からジプシーの一団が住みつくようになり、村人達としばしばトラブルを起こしていた。彼らがもたらした妖しげな民間伝承が、ウルフマンによる殺戮事件を助長していると信じる人々が多いからだ。おまけに、タルボット城主、すなわちローレンスの父親ジョンが、ジプシーの女性を妻に娶ったこともあり、村人達のジプシーとタルボット家への不信感は募るばかりであった。そこへ舞い戻った“よそ者”のローレンスは、程なく、バラバラに引き裂かれた兄の遺体と対面する。到底人間業とは思えぬ遺体の様子に違和感を覚えたローレンスは、遺体のそばに落ちていたという黄金のメダルを手がかりに、“ウルフマン”の正体を調査し始める。
ジプシーを治める女マレーヴァの元を訪れ、ウルフマン伝説の詳細を訊ねようとしたローレンスは、村人達によるウルフマン狩りの集団から襲撃を受ける。ウルフマンへの恐怖から、ついに我慢の限界に達した村人達が、ジプシー達を焼き討ちにしようとしたのだ。そこへ本物のウルフマンが現れ、人々を血祭りにあげてゆく。ライフルを手にとったローレンスもウルフマンに咬まれ、瀕死の重傷を負ってしまった。だがマレーヴァの手当てで一命を取りとめ、彼は城に帰って来る。悪夢のようなビジョンにうなされたローレンスは、やがて、自分もまたウルフマンになってしまったことを悟る。いつしか心を通わせるようになったグウェンに、危険が及んではいけない。早急に彼女をロンドンに帰したローレンスであったが、ある明るい月夜、父ジョンに導かれるように、ついにウルフマンに変身した。そんなローレンスを止めるでもなく、ジョンは冷笑すら浮かべてモンスターと化した息子を外に解き放つ。そして、ブラックムーア中に断末魔の悲鳴が響き渡ることになった。
翌朝ジョンは、殺戮の限りを尽くした息子を、スコットランドヤードから派遣されてきた警察官アバラインにあっさり引き渡した。父の不可解な行動を理解できないローレンスは、なすすべもなくロンドンに移送されて拷問を受ける。程なく、刑務所に息子を訪ねてきたジョンは、ある忌むべき事実を話して聞かせるのだった…。

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さて。

今作のプロデュース陣には、“ウルフマン”を熱演した主演のデル・トロも名を連ねている。彼にとっても大切な主演作品であることは想像に難くないのだが、観賞後はなんともいえない後味の悪さと違和感が残った。まあ、後味の悪さはともかくとして(なにしろ、我らがアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの脚本なのだから)、違和感の原因を考えてみよう。

@今作のメガホンを取った“ジョー・ジョンストン Joe Johnston”は、実は、「ロケッティア」「ジュマンジ」などのジョー・ジョンストン監督とは同姓同名の別人だった。

Aいやいやそうではなくて、ジョー・ジョンストン監督は今作製作時、一時的に精神錯乱状態にあった。

B某ハーレクインロマンス系吸血鬼映画を観た今作のプロデューサー陣が、軟弱な吸血鬼と女子高生を取り合うようなチンケな狼男なんぞ、“ウルフマン”を名乗る資格なし!とばかりに、今作をでらハードに編集し直してしまった。

C“魔界からやってきた脚本家”こと、アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー Andrew Kevin Walker(今作の脚色も担当、他の作品に「セブン Se7en」「8mm」などがある)の呪いのせい。

…果たして正解はどれ(笑)?

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冗談はこのぐらいにして、今作は1941年の作品「The Wolf Man(邦題「狼男の殺人」、「狼男」)」(ロン・チェイニー・Jr Lon Chaney Jr.主演)のリメイク作にあたるそうだ。英国の荒野の陰鬱な雰囲気といい、ローレンスが心ならずも戻ってくるタルボット城の荒れようといい、物語の背景の雰囲気はとてもいい。ローレンスと父ジョンがなぜ何年もの間音信不通であったかも、“母の非業の死”をひとつのヒントとし、オリジナル作よりうまく脚色できていたように思う。また、兄ベンの存在を介して、ローレンスとグウェンが次第に歩み寄っていく流れも自然。

ただ、非常に残念なのは、最近の映画の風潮なのか、やたらとストーリーの展開が早いこと。そりゃローレンスを早いとこウルフマンに仕立て上げねばならんのだから、物語の説明は最小限にしてでも、早く先へ…という気持ちもわからないではない。しかし、ローレンスの苦悩の大部分は身勝手な父親ジョンとの確執にあるわけで、その辺りの描写をもっとじっくり描いてもよかったのではないか。それから、せっかく“ジプシー”が登場しているのだから、ウルフマンの伝説に絡め、閉鎖的な村社会にありがちな“よそ者排除”の考え方をもう少し強調して欲しい気もする。

これら、物語をより一層深める働きを成すドラマ要素が希薄であるために、やたらと生々しく描かれるウルフマンによる大殺戮シーンが妙に浮いてしまうのだ。ブラックムーアで、はたまたローレンスが移送されたロンドンの拘置所で、ウルフマンは度々変身し大暴れするのだが、映画を観終わった後で印象に残っていることといえば、人間の首がもげ、腕や脚が吹っ飛び、内臓が引きちぎられ、大量の血しぶきが撒き散らされるゴアなシーンのみ…ということになってしまう(笑)。
アンソニー・ホプキンス、ベニチオ・デル・トロというオスカー役者を競演させているにもかかわらず、演じるキャラクターに深みも何もなくては、演技のしようもないだろう。実にもったいない話である。その意味では、今回、悲劇のヒロインとして登場するエミリー・ブラントのグウェンも、極めて地味な存在感に終始してしまった。彼女の扱いが軽すぎるのも今作の弱点のひとつ。婚約者に続いて愛した男ローレンスの喪失に遭ってなお、凛とした美しさを貫くグウェンからの視点にもっと比重を置くべきであったとも思う。この悲劇の語り手は、他ならぬ彼女なのだから。

まあ、文句ついでにもうひとつ難点を挙げるとすると、ダニー・エルフマンによる音楽がうるさすぎる。始終がなりたてるようなスコアが背後に流れ続けており、ただでさえせわしないストーリーが、余計にせかせかした印象になってしまった。静と動のコントラストをはっきりさせる緩急を心得た演出が、今作のようなサスペンス・ホラーには必須だと個人的には思うのだが、音楽もまたその法則に従うべきではないか。

ことほどさように、今作については不満も多いのだが、感心したのは“いったん狼男に変貌した人間は、絶対に元には戻れない”という、モンスターものの大原則を忠実に守っている点だ。ヒロインの真実の愛の力だの(笑)、ヒロインの涙だの(再笑)といったもので、ウルフマンを救うことなどできはしない。アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーは、“ひょっとしたら…”という淡い希望を垣間見せておいて、最後の最後に観客を絶望のどん底に突き落とすストーリーを構築した。やはり、ホラー作品はこうでなくては。

“本当にロマンティックなシーンを見ると、人って思わず笑っちゃうものだ。ならば僕は、観客に“リアル”を体感してもらうために、彼らをショック状態に置くことを選ぶね”

●フィルモグラフィー Filmography

2016年『Nerdland』
2010年「ウルフマン The Wolfman」
2001年『The Hire:The Follow』
2001年『The Hire: Ambush』
1999年「スリーピー・ホロウ Sleepy Hollow」
1999年「8mm」
1997年「クロニクル 倒錯科学研究所」(TVシリーズ)
1995年「セブン Se7en」
1995年「ハイダウェイ」
1994年「ブレインスキャン」
1993年「テイルズ・フロム・ザ・クリプト」(TVシリーズ)


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