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zoom RSS 「プリシラThe Adventures of Priscilla Queen of Desert」

<<   作成日時 : 2014/08/21 11:12   >>

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愛は、虹色!

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「プリシラ The Adventures of Priscilla, Queen of The Desert」(1994年製作)
監督:ステファン・エリオット
製作:アル・クラーク&マイケル・ハムリン
脚本:ステファン・エリオット
撮影:ブライアン・J・ブレーニー
衣装:リジー・ガーディナー
編集:スー・ブライニー
音楽:ガイ・グロス
出演:テレンス・スタンプ(バーナデット)
ヒューゴ・ウィーヴィング (ミッチ)
ガイ・ピアース(フェリシア)
ビル・ハンター(ボブ)他。

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シドニー在住のドラァグ・クィーン、ミッチは、オーストラリア中央部の砂漠地帯アリススプリングスのカジノで、ショーを披露する仕事を引き受ける。ショーを成功させるため、ミッチは2人の友人に声をかけた。完全に性転換している古参のドラァグ・クィーン、誇り高きバーナデットと、まだ若くてキャピキャピのフェリシアだ。3人が3人ともワケありのクセモノ揃い。そんな彼女たちが1台のバス“プリシラ号”に飛び乗り、シドニーから遥か砂漠のど真ん中まで3000キロの道のりを一緒に旅するのだ。

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ビーチサンダルを繋げたド派手なステージ衣装で気合を入れ、孤高の貴婦人を気取るバーナデット、同じくド派手なメイクと羽飾りで孔雀のごとき華やかさの、皆をとりまとめるリーダー的存在ミッチ、3人の中では一番若いフェリシアは抜群のプロポーションが自慢だ。ご機嫌なBGMさえあればいつでもどこでもパーティー状態、3人の底抜けの陽気さと派手派手っぷりは、どこまでも荒涼とした光景が続くオーストラリアの砂漠地帯とは、しかし哀しいことに相容れない。

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目的地までの行程には、異分子を受け入れない小さな町が点在する。ゲイで、尋常でない女装をして、しかもそれを臆さず見せびらかす3人の言動は、道中、排他的な町の住人と軋轢を生んでしまう。ドラァグ・クィーンとしての生き方に誇りを持ち、強くたくましく世間を渡ってきたはずの3人も、存在すら否定されてしまっては取り付くしまも無い。持ち前のガッツで何度踏みつけられても立ち直るのだが、旅先での様々な出会いや別れは、そんな彼女たち各々が心の奥底に隠してきた秘密や苦悩を浮き彫りにしてゆく。そして、3人がそれぞれ自分自身の真の内面と対峙するときがやってきた。

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懐かしのディスコ・ソングをバックに、唖然とするほどド派手な3人のドラァグ・クィーンが、それは真摯に歌い踊る。それはプロフェッショナリズムに貫かれた、どこまでもパワフルで楽しい極上のエンターテインメント。この映画を観た者は、誰しもその華やかさと艶やかさに圧倒されてしまうだろう。

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だが、彼女たちのド派手ないでたちの裏側には、物悲しくもほろ苦い人間のドラマが隠されている。まるで水と油のように、周囲の日常情景から浮きまくる3人の姿は、彼女たちのような異分子が多くのコミュニティの中でどのような立場にあるのかを暗に物語っていると思う。もちろん、“パフォーマンスを行うプロのドラァグ・クィーン”という、カリカチュアされた設定があるからこそのカルチャー・ギャップなのだが、それを差し引いても、“他人と違う”マイノリティとマジョリティの間に横たわる深い溝には、暗澹たる気分にさせられる。劇中に頻出する、いわゆるカルチャー・ギャップ・ギャグが可笑しければ可笑しいほど、また、ピンポン女(意味がわからない人は映画を観るように・笑)などの強烈なキャラクターが自己主張すればするほどに、その裏に暗示されるマイノリティへの無理解、蔑視が哀しく迫ってくるのだ。

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“平和に幸せに暮らしたい”…3人だって心の底ではそう願っている。何も好き好んでワル目立ちし、周囲と摩擦を起こしたいわけじゃない。でもドラァグ・クィーンはやめない(やめられない)。例えその信念に周囲の理解が得られなくとも。また、その信念の故に家族や恋人を失う羽目になったとしても。彼女たちが“ドラァグ・クィーンである理由”が明らかになるにつれ、異分子もマジョリティも皆同じような悩みや喜びを抱えた、全く同じ人間なのだとわかってくる。

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そしてミッチ、バーナデット、フェリシア自身も、旅の過程で様々な偏見を受けるうちに、“ドラァグ・クィーン”が彼女たちにとっての“身を守る鎧”であったことに気づく。羽飾りもスパンコールも取り払われた上で、改めて自身の抱える問題に裸で対峙することを余儀なくされていくのだ。それは、自我を取り戻そうと苦闘する人間のドラマである。ゲイだのノーマルだのといった違いも関係ないし、はたまたマジョリティとマイノリティといった差異をも乗り越えた、ごく普遍的なドラマが最後に表出するのだ。彼女たちがそれぞれに、それぞれの方法で、自身の内面と向き合ったとき、当初はあれほど違和感のあった彼女たちの異様が、砂漠の寂寞とした光景の中に静かに溶け込んでいることがわかる。3人が進むべき道を別ってしまった後も、きっとそれぞれに最善の道を探し当てるだろう。砂漠の上の抜けるような青空からは、絶えず希望という名の太陽の光が降り注いでいるのだから。

今作は、ゲイ・ムービーの古典であるのはもちろんのこと、オーストラリアという舞台背景のなせる業か、摩訶不思議な魅力のロード・ムービーの良作だという認識が非常に強い。砂漠とドラァグ・クィーンとディスコ・ソング。このハレーションを起こすような取り合わせが、時に手厳しい現実を突きつけるドラマを牽引していくのだ。旅の道連れに様々な人間関係が交錯し、ケミストリーを起こしてゆく様は、極上のエンタメというオブラートに包まれていながらも、どこかドライで簡単な感情移入を許さない雰囲気も漂う。そこが純然たるハリウッド産映画とは一線を画す、興味深い部分だろう。

ロード・ムービーは、ストーリーの起伏が平板になりがちであるため、登場するキャラクターに強い性格付けが為されていることが多い。今作にも強烈なキャラがたくさん登場するが、しかしなんといっても魅力的なのは3人のクィーンたちだろう。誇り高き老クィーンに扮したテレンス・スタンプの美しさはどうだ。その名演は、少なくとも私にとっては、他作品における彼のどんな名演よりも忘れがたいものだった。長年の間に蓄積された哀しみにも、昂然と顎を上げて毅然と立ち向かうその佇まいには、観ているこちらが思わず膝を正してしまう気迫すら漂っていた。おまけにあのビーチサンダルドレス!奇抜としか言いようがない素敵なアイデアだが、あれは、スタンプが着こなしたからこそ、アカデミー賞の衣裳デザイン賞受賞に繋がったのだと思う。今作の衣装を手がけたデザイナーのリジー・ガーディナーは、オスカーの授賞式にアメリカン・エキスプレスのゴールド・カードを繋げたドレスを来て登場したそうだ。ナイス。

「マトリックス」シリーズの、うじゃうじゃ増殖するエージェント・スミス役で、あの特異な風貌が目に焼きついてしまった映画ファンも多いヒューゴ・ウィーヴィング。彼は今作では、重大な秘密を抱え、アイデンティティの危機に瀕するクィーン、ミッチを演じた。大変失礼だが、あの実に男らしい顔立ちがピエロのごとき厚塗りメイクで化けていく(笑)様子を見るのは、なにか不思議な生き物でも見るような心持ちだ(笑)。でも、彼が口パクで歌い舞う姿は妖艶そのもの。彼の黄金の役者魂を堪能させてもらった。メイクがぐしゃぐしゃになるのも構わず、ミッチが泣き崩れるシーンが忘れられない。ミッチもまた美しいハートを持ったクィーンであった。

映画「ザ・ロード」では最後の最後に、非常に象徴的な意味合いを帯びて登場するガイ・ピアース。主人公とはまた一味異なる父性を持つキャラクターであったが、「ザ・ロード」は未見の方も多かろうから詳しい言及はここまで。そんなガイ・ピアースも今作ではまだまだ若かった(笑)。キャピキャピである(笑)。「LAコンフィデンシャル」の冷酷なイメージとも、「メメント」のやさぐれた陰のあるワイルドさとも、およそ1万光年離れたキャラクターだ(笑)。スタンプの達観した存在感と、ウィーヴィングの人間臭さの間をつなぐジョイントの役割を為す。ほろ苦いシーンも少なくはない今作においては、フェリシアの存在はオアシスだろう。


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近年世界各地で、LGBTへの偏見が根強い国でも、プライド・パレードが開催されるようになった。

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このイベントは、何故毎度賑やかに華やかに催されるのか。この、ことさら派手な装いは単なる見世物か?いやそうではない。ド派手なレインボーカラーは、彼らの自由とプライドの象徴であり、マジョリティへのメッセージだ。そしてまた、彼らの傷つきやすい心を守る鎧でもある。そのことに多くの人が気がつかねばならない。世界中の人間が、ありとあらゆる人間が、本当の意味で平等の立場になれる時がくることを祈って。


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