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zoom RSS ブラッド・レンフロの哀しみ。ーLullaby for Brad Renfroー

<<   作成日時 : 2013/02/21 14:03   >>

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『依頼人』でデビューしたブラッド・レンフロがロサンゼルスの自宅で死亡した。25歳だった。一緒にいた友人たちの話しによると、レンフロは自宅でいびきをかいて寝ていたらしいが、その後呼吸が止まったため救急車を呼んだとのこと。検死事務所はレンフロの死を認めているが死因などは発表されていない。レンフロは酒気帯び運転で10日間の実刑判決を受け刑務所にも入所。2006年にはヘロイン所持などでも逮捕され、リハビリ施設に入所し立ち直ろうとしていた。最近では、エイドリアン・ブロディ主演の『ジャケット』に出演していたほか、ウィノナ・ライダー、ビリー・ボブ・ソーントンの新作『ザ・インフォーマーズ』(原題)がクランクアップしたばかりだった。―2008年1月15日、レンフロが亡くなった当時のシネマトゥデイの記事から抜粋


まだたった25歳での死。子役からの脱却に苦しんだ彼も、様々な紆余曲折を経て大人の俳優として再スタートを切ろうとしていた矢先での死。原石のまま隠れていた才能が、まさにこれから研磨され、輝こうとしていた瞬間に訪れた無情な死。

数ある死の中でも、これほどやるせなく、また悔やみきれない死もないと思います。

いびきは呼吸のリズムと同期して起こる為、それが途切れる事が一定レベル以上起こると、睡眠時無呼吸症候群の発見の手がかりとなる。―Wikipedia から抜粋

彼の死因が何にせよ、この衝撃を和らげる特効薬にはなりえません。せめてその後の眠りが安らかでありますように。あらためて、ご冥福をお祈りいたします。

子供の頃からショービジネスの世界で生きている者の中には、このような残念な形でキャリアも人生も終えてしまうケースがいくつか見られます。これは、ハリウッドが巨大ビジネスになった頃からの忌まわしい系譜ですね。


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ブラッド・レンフロ Brad Renfro

1982年7月25日生まれ
2008年1月15日没
アメリカ、テネシー州ノックスヴィル出身

5歳の時両親が離婚して以来、祖父に引き取られて育ったそうです。あまり良い環境ではなかったのかどうなのか、10歳の時、麻薬防止を啓蒙する教育劇で、麻薬の売人(子供なのに・涙)を演じました。それの演技があまりにも真に迫っていたため、映画「依頼人」のオーディションを受けるよう勧められます。数多い候補者の中から見事目撃者マーク少年の役を得ました。映画公開当時日本でも、翳りを帯びた美貌の天才少年現る!と大騒ぎになりましたね。
その後は「マイ・フレンド・フォーエバー」などで健気な少年役をいくつか演じ、タイプキャストを嫌って出演したブライアン・シンガー監督作「ゴールデン・ボーイ」では、妖艶ささえ漂わせる悪役を見事に演じきりました。サー・イアン・マッケランとの演技ガチンコ勝負でも、真正面から挑み全く引けをとっていませんでしたね。まあ成長するにつれ、例によってドラッグや飲酒の問題を抱えるなど、私生活が乱れてしまいました。と同時にキャリアもスランプに陥り、子役から大人の役者への脱皮に苦しんだわけです。

●フィルモグラフィー

2008年「インフォーマーズ」(未)
2006年「狼の街」(未)
2005年「ジャケット」
2003年「レディ・キラー」(未)
2002年「デュースワイルド」
2002年「BULLYブリー」
2001年「ファットマン」
2001年「ゴーストワールド」
2000年「誘惑の接吻」(未)
1998年「ゴールデンボーイ」
1997年「17 セブンティーン」
1996年「スリーパーズ」
1995年「マイ・フレンド・フォーエバー」
1995年「トム・ソーヤーの大冒険」(未)
1994年「依頼人」

低迷していた時期の作品は、インディ系のものがほとんどですね。私、前に「BULLYブリー」を観たことがあったのですが、そこでのレンフロは…なんともはや…形容に困る状態でした。作品自体も、セックスやドラッグに耽溺する若者たちのリアルライフを赤裸々に垂れ流す…という露悪趣味な仕上がりで、なかなか質を評価するに至らないものでしたしね。
彼もエドワード・ファーロング同様、ウェイトの管理ができず太っていた時期があったと思うのですが、エイドリアン・ブロディ主演の「ジャケット」で名前もついていない若者役でふらっと画面に出てきたときは、雰囲気がまた変わったなあという印象を持ったんです。これはひょっとすると、ワイルド路線で復活できるかも…と思っていた矢先の、この訃報。本当に残念でたまりません。ご本人は生前、“ポスト・ジェームズ・ディーン”というレッテルを貼られるのを相当嫌っていたようですが、彼と同じように若くして亡くなることになったとは、なんとも皮肉なおはなしです。

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「ゴールデンボーイ Apt Pupil」(1998年)
監督:ブライアン・シンガー
製作:ジェーン・ハムシャー他。
原作:スティーヴン・キング
脚本:ブランドン・ボイス
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル
音楽:ジョン・オットマン
出演:ブラッド・レンフロ(トッド・ボウデン)
イアン・マッケラン(クルト・ドゥサンダー)
ブルース・デイヴィソン(リチャード・ボウデン)
アン・ダウド(モニカ・ボウデン)
ジェームズ・カレン(ビクター・ボウデン)
イライアス・コティーズ(アーチー)
デイヴィッド・シュワイマー(エド)他。

ロサンゼルス郊外の住宅地。高校生トッド・ボウデンは、文武両道の優秀な少年だった。彼はある日、ひょんなことから町の片隅でひっそりと暮らす老人が、かつて悪名高きナチスの将校であったことを知る。その老人クルト・ドゥサンダーは、戦時中に多くのユダヤ人を殺戮し、“吸血鬼”のあだ名をいただいていた。もちろん戦犯である彼は、発見されれば即刻祖国に強制送還され、戦時中の罪により裁かれる運命にある。トッドは狡猾にも、素性を隠して町に住むクルトを恐喝するようになる。町中の親がうらやむような“良い子”トッドには、隠された本性があった。暴力、血への抑えがたい衝動だ。トッドはクルトの過去を暴かない代わりに、彼が戦時中に犯した全ての罪をこと細かく話して聞かせるよう強制した。ユダヤ人をどのようにして拷問し、虐殺したのか。かくしてクルトは、トッドに自らの忌まわしい過去をレクチャーする羽目になってしまう。その危険な“授業”は、トッドの心の深遠で燻る殺人への衝動を満足させ、かつクルト自身の封印された破壊への渇望をも呼び覚ましていく。

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私自身は、レンフロの出演作品の中ではかなり好きな部類に入るものです。また、映画界とは絶望的に相性が悪い(笑)御大スティーヴン・キング小説の映像化作品としても、結構面白いと思えるものですね。キング小説の特徴は、あまりに緻密な状況・心理描写です。多分に映像的な小説であるがゆえに、下手な監督が手を出すと、小説の内容の単なる丸写しになってしまう。多くのキング印の映像作品に“失敗”の烙印が押されているのも、どこまでを映像にし、どこからを観客の想像にゆだねるのか、その演出のさじ加減が非常に難しいせいですね。
多くの失敗作が、薄っぺらい血しぶきホラー映画に堕してしまっているのは、キング小説にはよくある“曖昧なニュアンス”を無視してしまっているから。あの「ミスト」も、原作の方のラストは映画版ほど明確ではなく、不穏な余韻を残したまま結論を留保して終わるものでした。「ミスト」は例外にしても、キングの陰惨で執拗な表現をそのまんま映像に置き換えて明らかにしてしまうと、興醒めするホラー映画になるわけですね。
その点、この「ゴールデンボーイ」は、原作の方向性を多少軌道修正してあるのが興味深い。原作では、トッド少年の危険な願望はクルトの“授業”によってさらに血なまぐさい妄想に変化し、やがては彼をして歯止めの利かない殺戮へと駆り立ててしまいます。トッドがいかにしてクルトの狂気に取り込まれていったかを、非情な描写を駆使して執拗に描くわけです。映画では直接的な描写を極力避け、トッド少年の精神が悪の誘惑とわずかに残る良心とに引き裂かれて揺れ動く様や、元ナチス将校に対して心理戦をけしかける、少年らしからぬ狡猾さを強調。つまりは、レンフロの演技力に高いレベルが要求されることになったのです。
通常のキング映画と異なり、明確に悪徳で残酷な結末を曖昧に留め置いた今作への評価は、概してあまり高くありません。まあ見方によっては、陰惨なホラー映画に仕上げてレイティングを上げない処世術を施した、といえなくもないですが、だからといって作品の面白さが下がるわけでもないと思います。一見して映像的に中途半端だと感じる部分は、多分に登場人物のデリケートなメンタル描写に準拠しています。つまり、この作品の真価とは、トッドを演じるレンフロとクルトに扮するサー・イアンの、世代を超えた心理合戦、演技合戦を置いて他にないと断言できるものなのです。レンフロの演技は、確かにまだまだ荒削りな部分を残してはいますが、表情の微細な変化で、キング作品が本来持っている“曖昧なニュアンス”をうまく伝えてくれていると思います。

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クルトを脅迫し、やがてはその精神面を乗っ取って操るまでになる秀才少年の二面性を、その美貌と共にスクリーン上に妖しく写し取っていったのはブライアン・シンガー監督。監督は、今作をカミングアウトの先駆者であるサー・イアンに捧げる意図で演出したそうですが、なるほどそういえば、“同性愛”というメンタリティも男女双方のそれを併せ持つといった意味で、“異性愛”の明確な境界線を曖昧にするものですよね。
物事には、何にしても多面的な要素があり、それらの間にある境界線なんて実に曖昧模糊としたもの。善悪の彼岸も深い霧に覆いつくされて、その輪郭ははっきりと見えないのです。人間の中の何が悪で、何が善なのか。善は簡単に悪に堕ち、悪は更なる悪を招きよせてしまいます。その悪循環は、ひょっとしたら正されることは不可能なのかもしれません。レンフロの、暗い湖の底のごとき哀しげなまなざしを見るにつけ、そんな考えが頭をよぎります。



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