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zoom RSS 種を超える愛情物語―「もりいちばんのおともだち」「ふゆじたくのおみせ」

<<   作成日時 : 2012/11/10 09:48   >>

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おおきなクマさんとちいさなヤマネくんの物語。2匹は、体の大きさから好きなものから生活スタイルに至るまで、何から何まで全く正反対でありましたが、だからこそ大親友だったのです。



「もりいちばんのおともだち」
ふくざわゆみこ:文と絵
(福音館書店)

おおきなクマさんとちいさなヤマネくんの物語。

森で一番体の大きなクマさんは、小さなものが大好き。森で一番小さな体のヤマネくんは、反対に大きなものが大好き。だから2人が初めて出会ったとき、すぐに森で一番の仲良しになりました。
ある日2人が散歩していると、森のケーキ屋さんから甘くて美味しそうな匂いが漂ってきました。2人ともケーキが大好物。早速お店に入ってケーキを注文しました。クマさんははちみつたっぷりのモンブラン、ヤマネくんはくだものたっぷりの3段重ねデコレーションケーキ。大きなクマさんには、モンブランは手のひらより小さなサイズでしたし、小さなヤマネくんには、3段重ねデコレーションケーキは巨大なお城のようでした。クマさんは、コーヒーを飲みつつゆっくり味わいながらいただきます。ヤマネくんは、忙しくケーキの上を走り回ったり、トンネルを掘ったりして一生懸命いただきます。
2人が食べ終えると、ブルドッグの店長さんがお花の苗のプレゼントをくれました。クマさんは一番小さな鉢植えを選び、ヤマネくんは一番大きな鉢植えを選びました。
クマさんは家の前を耕して小さな花畑をこしらえます。ヤマネくんは広い広い花畑。しばらくすると、ヤマネくんの花畑には綺麗な白い花がたくさん咲きました。かたつむりやもんしろちょう、みつばちたちが集まってきました。でもクマさんの花畑は、ヤマネくんの花畑よりもずっとたくさんの花が咲き、まるでジャングルのようです。ヤマネくんはクマさんの大きな花畑をうらやましがりましたが、小さなものが好きなクマさんは、ヤマネくんの花畑も素敵だと思っていました。
花が落ち、実をつける季節になると、クマさんの花畑には大きなかぼちゃの実が鈴生りになりました。遊びに来たカエルさんやアナグマくんも感心することしきり。クマさんは、一番大きなかぼちゃをヤマネくんにプレゼントしようとヤマネくんの家に向かいました。ヤマネくんの花畑は、すっかり枯れ果ててしまっていました。ヤマネくんは泣き出しそうです。ところがそのとき土の中からモグラさんが飛び出してきて、しょんぼりしているヤマネくんに土の中を掘ってみるよう教えてくれました。そう、土の中には見事なサツマイモがどっさり実っていたのです。心配していたクマさんもカエルさんもアナグマくんも、みんな大喜び。それからはみんなで大収穫です。
山のようになったかぼちゃとサツマイモを前に、クマさんとヤマネくんは“秋の収穫パーティー”をすることに決めました。

“秋の収穫パーティー
焼き芋
焼きかぼちゃ
かぼちゃのプリン
サツマイモのアイスクリーム
いっぱい用意して待っています。クマとヤマネより”

招待された森中の動物たちがやってきました。シカもタヌキも野ウサギもリスもイノシシもフクロウも、皆秋のもみじを手にしています。一面黄金色の野原の中で、皆で食べるかぼちゃとサツマイモは、美味しい秋の味がしました。もうすぐハロウィーンです。クマさんは、一番大きなかぼちゃで作ったハロウィーンの置物をヤマネくんにプレゼントしました。

\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/

ふくざわゆみこさんの絵本には、他に「ぎょうれつのできるパンやさん」という暖かい作品があります。独特の柔らかな色合いとリアルながら優しい絵柄で、目下息子たちのお気に入り作家となっていますね。この「もりいちばんのおともだち」は、以降人気シリーズとなる“おおきなクマさんとちいさなヤマネくん” の、記念すべき第1作目に当たります。
森で一番体が大きくて力持ちのクマさんは、実は小さくてかわいいものが大好きで、森の中でも体の小さなヤマネくんは、なんでもかんでも大きいものが大好き。このちぐはぐ感がなんとも言えず面白い。“隣の芝生は青い”と申しますが、現実世界でも、人間は自分にないものをうらやみ、欲する傾向があります。それが、自分とは正反対の人間に惹かれる要因になるのですが、この絵本でも、体の大きさも性格も考え方もなにもかも正反対であるが故に大親友になる2人の… いえ2匹の(笑)様子が、ことごとく対照的に描かれています。ケーキ屋さんでケーキを選ぶ際にも、また、それを食べる様子も、彼らが花畑を育てる様も、可笑しいほど正反対。そんなだからこそ、彼らはお互いにない部分を補い合っていけるのでしょうね。種を超えて友情を育む彼らクマさんとヤマネくんは、“違う”からこそ上手く共鳴します。“違う”ものを抹殺しようとする傾向がますます強まっていくこの社会は、彼らの姿から学ぶことが多々あると思いますね。

またこの絵本では、彼らがかぼちゃとさつまいもの世話をする様子から、その生育の仕方の違いもきちんとわかるようになっています。絵本巻末には、かぼちゃとさつまいもの栽培について補足説明が付け加えられていますので、お子さんに読み聞かせをする際にはその辺りも注意してあげるとよいかもしれません。うちの長男はただいま、何事につけても“なぜこうなるの?”という疑問が湧き出てくる時期。なぜさつまいもが地下にできるのかという質問にも、親は答える義務があるのですよ(笑)。

ふくざわさんの絵柄で特徴的なのは、「ぎょうれつのできるパンやさん」でもそうでしたが、とにかく食べ物が大変美味しそうに見えることです。この作品では、ケーキ屋さんに並ぶケーキ。ふっくらと焼きあがったスポンジに、クリームやら果物やらがトッピングされている様は、見ているだけで甘い香りが漂ってきそう。特に、クマさんとヤマネくんが食べるモンブランとデコレーションケーキには、細かい字で詳しい解説が付してあり、その外見同様きっと素敵であるはずのケーキの味をつい想像してしまいます。子供たちの「ボクも食べたい食べたい」の合唱を聴きながら、親もよだれを飲み込むことになるわけですね(笑)。

絵本一面が淡い黄金色で輝くような、最後のパーティーのイラストは素晴らしいです。旬の野菜を最も美味しい方法で味わうことの幸せが、こちらにまで伝わってくるようですね。作物を育てることで季節を感じ、また収穫が得られたことに感謝し、それを仲間達と分かち合う幸福は、他の何にも換え難い喜びであるのです。



「ふゆじたくのおみせ」
ふくざわゆみこ:文と絵
(福音館書店)

おおきなクマさんとちいさなヤマネくんの物語。

森が赤や黄色に色づく頃。クマさんの家のポストに、大きな葉っぱの手紙が届きました。冬支度のお店が開店したお知らせです。同じ頃、ヤマネくんの家のポストにも小さな葉っぱの手紙が届きました。森のみんなが冬篭りの前に利用する、冬支度のお店のお知らせです。クマさんはヤマネくんを誘って、ヤマネくんはクマさんを誘って、2人は揃って冬支度のお店に走っていきました。
冬支度のお店は、木で出来た小さな小屋です。その中に、冬の間を過ごすために必要な品々が所狭しと並べられているのです。品物には全て値札がついていました。いもの詰め合わせ、お値段どんぐり100個。本のセット、お値段どんぐり50個、素敵なクッション、お値段どんぐり70個。森のみんなも、お店の前で各々欲しいものの値段を確認中です。アナグマくんはいもの詰め合わせを、モグラくんは本のセットを、カエルくんはお姫様のベッドみたいなクッションを狙っているようですよ。さて、ヤマネくんはといえば、どんぐり500個もする大きな大きな真っ白のセーターに目をつけました。クマさんにプレゼントしようと思ったのです。クマさんはクマさんで、小さな小さなかわいらしい赤のチョッキに目が釘付けです。このチョッキを着たヤマネくんを見てみたいと思ったクマさんは、どんぐり50個を集めようと決心しました。森の仲間たちは、皆どんぐりを拾いに散っていきます。
金色の枯葉と木の実で地面が埋め尽くされた森の中、皆一心にどんぐりを探します。ヤマネくんはつむじ風のように森中を駆け回り、目にも留まらぬ早業でどんぐりを拾っていきました。クマさんは、大きな体を窮屈そうに折り曲げながら地面を見つめています。でも、クマさんがゆっくりしている間に、どんぐりは他の仲間たちにどんどん拾われていってしまいました。
秋も終りに近づく頃、冬支度のお店は、どんぐりを抱えたお客さんでごった返していました。アナグマくんとカエルくんとモグラくんも、無事に目当ての買い物を済ませましたが、クマさんとヤマネくんの姿が見えません。なんと、2人ともまだどんぐりを探し続けていました。ヤマネくんは、クマさんにセーターをプレゼントするために。クマさんは、ヤマネくんにチョッキをプレゼントするために。後1個で必要な数が揃うので、2人とも必死です。でも、それから何日経ってもどんぐりは見つかりませんでした。もう森中のどんぐりは拾いつくされてしまったのでしょうか。疲れ果ててひっくり返った2人の目に、木の枝に1個だけ残っていたどんぐりが映りました。2人は同時にそのどんぐりに手をかけます。例え親友のためだろうと、このどんぐりだけはどうしても譲れません。仕方なく、2人はじゃんけんをすることにしました。小さなヤマネくんの手は器用にチョキを作り、大きくて分厚いクマさんの手は思わずパーの形になっていました。負けてしまったクマさんは、がっくりと肩を落とします。その後姿を黙って見送っていたヤマネくんは、すばやくクマさんの頭上の木に登ると、そのどんぐりをクマさんの頭目がけて落としてやりました。杉の木からどんぐりが落ちてきたことを訝りながらも、クマさんはようやく集まったどんぐり50個をもって冬支度のお店に走りました。一方ヤマネくんも、やっと500個分のどんぐりを集めて大きな荷車を引きます。向かう先は、同じく冬支度のお店。
ところが、2人がお店に着いてみると、お店は既に売り切れ閉店となっていました。あの白いセーターも赤いチョッキもなくなっています。どんぐりを抱えたまま泣きべそをかく2人の前に、お店の主のリスの夫婦が現れました。夫婦は、クマさんとヤマネくんを出迎えて言いました。「今年最後のお客様、ずっとお待ちしておりました」
お店の中には、リボンで飾られたきれいな包みが2つ並んでいます。中身はもちろん白いセーターと赤いチョッキ。森の仲間たちからのたっての願いで、リスの夫婦はセーターとチョッキを売らずに取り置きしておいたのでした。喜んだクマさんはどんぐり50個を払って小さな包みを買い、ヤマネくんはどんぐり500 個を払って大きな包みを買いました。そして、アナグマくんたちが見守る中、それをお互いにプレゼントし合ったのです。白いセーターはクマさんにぴったり。赤いチョッキはヤマネくんのためにあつらえたように似合いました。彼らがふと空を見上げると、冷たくて白い雪が舞い降りてきました。森に、冬が訪れたのです。

\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/

実は、このおおきなクマさんとちいさなヤマネくんのシリーズで、最初に読んだのがこの作品でした。
秋から冬に入るまでの季節を背景としているため、絵本全体のトーンは暖かい秋の色に統一されています。また、見る者の心を癒すような柔らかいタッチの絵柄に目を奪われ、見過ごされがちではあるのですが、挿絵の隅々にまで細かい描きこみがなされている点は素晴らしいですね。それが最も顕著なのは表紙のイラストでしょう。クマさんとヤマネくんが、冬支度のお店の中でひしめく品物に囲まれる構図なのですが、手前のテーブルには果物や野菜の瓶詰めがびっしりと並び、棚には毛糸や食器等細々した雑貨が押し込まれているのです。天井からは干しニンニクの束がぶら下がり、まるでヨーロッパの田舎の農家の趣き。昔々パリの一角で見つけた小さなよろず屋を思い出します。そう、ふくざわさんの描かれる情景は、なんとなくヨーロッパのそれを思わせるのですね。また、クマさんとヤマネくんをはじめ、彼らを取り巻く森の動物たちの表情も、1つ1つが愛嬌たっぷりに描き分けられています。彼らが、どんぐりを探しにいっせいに森の中に散っていくシーン、あるいは冬支度のお店に買い物に来ているシーンなどで、どんな動物が登場しているか、子供と一緒に探してみる楽しみもありましょう。個人的には、ヘビが自分と同じぐらい長いマフラーをうれしそうに巻いている箇所や、ぶっさいくな(失礼)ガマガエルであるカエルくんが、フリルびらびらのクッションにご満悦という、ちょっぴりアイロニカルなユーモアがツボでした(笑)。

その中で繰り広げられる、今回のクマさんとヤマネくんの友情物語は、かの「賢者の贈り物」に想を得たかのような、なかなか泣かせる一遍になっていますね。クマさんもヤマネくんも、それぞれが相手へ素敵なプレゼントをしたいばかりに、1個だけ残ったどんぐりの取り合いまで演じてしまいます。もっとも、“相手の喜ぶ顔がみたい”という根本的な行動原理は同じですから、彼らはちゃんと譲り合いもできているわけです。己のエゴばかりを優先させ、円滑な関係性の維持ができない人間様とは大違いですな(笑)。

彼らの友情はまた、他の森の仲間たちの友情にも広く支えられています。仲間たちが、クマさんとヤマネくんのために、2人が買おうと目論んでいた品物を取り置くよう計らわなければ、2人の努力も水の泡となるところでしたものね。昔は、こうした横の連帯が強い社会、いわゆる長屋的コミュニティーがあったものですが、今は必ずしもそうではありませんね。人と人の絆は、大きな社会の中でブツブツと短く断ち切られざるを得ません。そうして個々に孤立していく人間は、他人のことを深く思いやる余裕すらなくしてしまうのです。この絵本の中には、クマさんとヤマネくんの固い絆だけではなく、それを根底から支える大勢の仲間たちの輪(あるいは和)も描かれています。皮肉なことに、現実社会ではそんなコミュニティーの調和も薄れつつあるのですね。

それにしても、大きな体のクマさんが、手のひらに乗るほどのサイズのチョッキを買うために慣れぬ細かい探し物をする様は、自然と読む者の微笑を誘いますよね。ひときわ小さな体のヤマネくんが、あっという間に大きな荷車いっぱいのどんぐりを集めるのとは対照的です。映画でも、凸凹コンビが抜群のコンビネーションを発揮する物語が多々ありますが、この絵本もそんな“バディ”ものの面白さに溢れています。

この“大きなクマさんと小さなヤマネくん”の種を超えた友情譚、世知辛く殺伐とした現世では、まるで砂漠の中のオアシスのように心安らぐお話です。そう考えたファンが多かったのか、シリーズ化されています。




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